何度も交通事故を起こす問題社員への対応事例

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

依頼者運送業

状況

L社は、運送業を営む会社です。

L社のドライバーとして稼働している従業員Bが、交通事故(物損)を起こしました。

従業員Bは、これまで何度も物損事故を起こして会社に損害を与えてきたので、会社は、今回ばかりは損害をBに負担してほしいと考えていました。

また、L社は運送業なので、従業員B以外の従業員による交通事故も不可避的に発生していました。

そこで、L社としては、従業員Bの対応と、会社全体として交通事故に対する対応を検討していきたいと考えていましたが、どのような対策を取ればよいか分からなかったため、当事務所に相談されました。

 

 

弁護士のアドバイスと実施事項

従業員Bに対する対応

賠償金の請求について

過失によって、会社に損害を加えた場合には、従業員はその損害について賠償する責任を負います。

もっとも、会社は、従業員を雇用して働いてもらうことで、その事業規模を拡大して会社を発展させているので、過失があるとはいえ、生じた全ての損害について従業員に負担させるのは不公平であると裁判実務では考えられています。

従業員が交通事故で会社に損害を与えた場合も同様に考えられています。

こうした裁判実務の考え方に基づくと、全ての損害を従業員Bに負担させた場合、後々トラブルになるリスクがあります。

もっとも、事故の態様や頻度などから、会社として厳しく対応すべきと判断する場合には、全額を請求するという判断もあり得るかもしれません。但し、その場合には、後々の紛争リスクを十分に踏まえなければなりません。

指導、懲戒処分について

就業規則に懲戒処分の規定がある場合には、懲戒処分を行うことができます。もっとも、問題行動に対する処分が重すぎると懲戒処分は無効になり、ケースによっては従業員から慰謝料などの損害賠償請求を受ける可能性があります。

L社には、就業規則の懲戒処分の規程がありましたので、懲戒処分を検討することもアドバイスしています。

交通事故の態様や頻度などにもよりますが、最初の懲戒処分としては、戒告や譴責処分が妥当ではないでしょうか。

運送業という業種を考えると、数回の事故でいきなり懲戒解雇してしまうと無効と判断される可能性が高いでしょう。

会社として、懲戒処分までは必要ないと考える場合には、指導書という形で書面にて指導する方法も考えられます。書面化することで、指導した痕跡をより明確に残すことができます。

問題社員対応書式集については、こちらをご覧ください。

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問題社員対応書式集

会社全体としての対応

管理職L社は、ドライバーが交通事故を発生させた場合の対応を規則等で明確化していませんでした。

そこで、弁護士において、交通事故が発生した場合の対応や損害金の負担などについて規程としてまとめました。

その規定を従業員に周知して、今後は規程の運用を徹底するようにアドバイスを行いました。

また、従業員の交通事故安全の意識を啓発するためにも、規程と同内容のものをペーパーで配布し、内容を確認してもらって、確認した旨の署名をしてもらうようアドバイスを行いました。

 

 





  

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