医師から未払賃金1900万円を請求され、ゼロ和解した病院の事例

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

依頼者:病院(個人経営)
解決までの期間:約1年1か月

弁護士に依頼した結果

 

項目 労働者側の請求額 弁護士介入による結果 減額利益
立替金 300万円 300万円 0円
未払賃金 1900万円 0円 1900万円

 

状況

Hさんは、内科の病院を経営していましたが、高齢により体調が悪化したため、知り合いのY医師に週に1回程度、病院を手伝ってもらっていました。病院を手伝ってもらっていた頃から、Y医師には将来、病院を引き継いでもらうつもりであり、そのことをY医師も了解していました。そして、病院の引き継ぎについて、金融機関の融資などの具体的な話が進行していました。

そんなある日、Hさんは、脳出血により倒れ、意識不明のまま長期間意思疎通ができない状態となりました。

Y医師は、Hさんが倒れた後、病院の業務を引き継ぎ、診療業務だけではなく、新しく職員を採用したり、什器備品を購入したり、負債を返済する等の業務を行いました。

しかし、Y医師はHさんの親族とのトラブルが原因で、一方的に病院を廃業し、引継ぎから10か月ほどで経営を放棄しました。

そして、Y医師は、Hさんに対し、未払賃金として10か月分の1900万円と、引き継いでいた間に返済した買掛金や什器備品の購入代金等の立替え金として300万円の支払を求めてきました。Hさんは、知り合いの弁護士に交渉を依頼し、まず立替金について、全額を支払うという合意を締結しました。しかし、未払賃金については支払う意思がなかったため、交渉が決裂し、Y医師は訴訟を提起してきました。そこで、Hさんは、当事務所に相談にきました。

 

弁護士の関わり

弁護士は、訴訟の中で、そもそも雇用契約が成立しておらず、未払賃金の支払い義務はないと反論しました。

そして、本件は、雇用関係ではなく、準委任契約であることを主張・立証しました。

その結果、未払賃金については支払わないという内容で、和解が成立しました。

 

補足

本件では、HさんとY医師の関係について、指揮監督関係が存在しない事案でした。また、雇用契約書や労働条件通知書等もありませんでした。そして、本件の事実関係からは、本件は雇用契約ではなく、HさんがY医師に対して、病院経営を任せるという、準委任契約とみるべき事案でした。準委任契約は、雇用契約とは異なり、原則として無償の契約であり、Y医師に対して、対価を支払う必要はありません。

 

 





  

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