労働弁護士が教える!良い人材を採用するためのポイント


採用とは

採用

採用とは、企業がその従業者となり得る人材を選考し、取り入れることをいいます。

採用には、いわゆる新卒採用と中途採用があります。

新卒採用とは、大学や高校等の学校機関を卒業する方を対象として、定期(通常年1回で3月頃)に採用することをいいます。

これに対して、中途採用とは、職歴がある方を対象として、不定期に採用することをいいます。

新卒採用と中途採用には、以下のようなメリットとデメリットがあると考えられます。

新卒採用 中途採用
メリット ・一から教育できるので組織文化に適合しやすい

・採用活動が成功すれば、中途と比べて優秀な人財である可能性が高い

 

・経験者を採用すれば即戦力となり得る

・欠員が出たときに早く補充できる

・対象者の過去の経験を活かせれば多様性を生むことができる

 

 

デメリット ・戦力となるまでに相当な教育訓練が必要である

・定期にしか採用できない

・価値観が統一的になり硬直化した組織となりやすい

・組織文化になじまない可能性がある

・以前の職場では問題社員だった可能性がある

 

 

 

新卒採用と中途採用には、上記のようなメリットとデメリットがあり、どちらか一方が正しいというわけではありません。

企業の人材戦略に合わせて、両方の選択肢を組み合わせていくということになります。

 

 

採用の成否の重要性

従業員企業と一口に言っても、そのビジネスの特徴や市場環境は様々です。ビジネスでいえば、サービス業、製造業、物流、建設、金融など多種多様であり、市場環境は大都市、地方都市、国外などで異なります。

しかし、どのビジネスにとっても、通常、「人材は企業の競争力の源泉」といえます。少なくとも、この記事をご覧になっている方々は、人材の重要性を感じている方々だと思います。

また、近年は人手不足であり、いわゆる売り手市場です。優秀な人材は、企業にとって、人「財」となります。多くの企業は、人財を確保すべく、努力されていると思います。

人財を確保するために、最も大切な企業活動は、「採用」です。

そこで、以下、採用を成功させるポイントについて、ご紹介します。

筆者は、労働問題に注力する弁護士ですが、経営大学院においてMBAを学び、多くの企業から人材マネジメントについての相談を受けています。

そこで、マネジメントのポイントに、労働弁護士としての視点を加えた法的対応についても解説します。

 

 

自社にとって必要な人財とは?

会社

人材が重要だとしても、その中身を検討せずに採用活動を行うのはナンセンスです。

企業は、採用のために活動しているわけではありません。

企業にはその存在目的があります。

存在目的のことを、企業理念といったり、ミッションといったりすることもあります。

呼び方はどうでもいいのですが、結局、企業は何のために活動するのか、これを言語化して明確にすることが重要です。

企業理念は企業活動の礎であり、これによって、企業のビジョンや経営戦略は異なってきます。

ビジョンとは、企業理念を達成するための具体的な数値目標と考えてください。

また、経営戦略とは企業理念やビジョンを実現するための打ち手です。

経営戦略の策定には、企業理念だけではなく、環境(顧客、自社、競合)を分析して立案します。

戦略経営戦略を策定する中で、自社にとって必要な人財は何なのかが明確になるはずです。

大企業の場合、部門によってビジネスの特徴が異なるため、必要な人財についても異なる可能性があります。

自社にとって必要な人財が明確になれば、その人財を充足するための人材戦略を検討します。

人材戦略は、言い換えれば人事システムです。これは、大別すると、採用→配置→評価→報酬→育成のサイクルとなります。

上記のうちで、最も重要なのは、入り口の「採用」だと考えています。

なぜならば、優秀な人材であれば、教育訓練にそれほど経営資源を投下する必要がなく、自ずから人財となる可能性があるからです。

ここでは、上記のうち、最も重要な採用について解説します。

 

 

求人のポイントとは

有効な求人媒体の選択

求人媒体には、公的なものとして、ハローワークがあります。

これは無料で利用できます。ただし、労働関係法令に違反しないように、求人の掲載内容について細かい行政指導があります。

その他、リクルートなどの民間会社の有料求人媒体があります。

就職活動これらの求人媒体は、インターネットのオンライン情報や求人誌の紙媒体があります。また、業種によってはその業種に特化した求人媒体もあります。

さらに、ヘッドハンティング、知人の紹介なども求人媒体といえるでしょう。

これらの多様な求人媒体の中から、自社が必要とする人材を獲得するためには、どの求人媒体が最も有効かを選択します。

例えば、ハローワークだけで十分な企業や、ハローワークではまったく採用できない企業もあると思います。

有料求人媒体を利用する場合、自社が獲得したい人材が最も閲覧する可能性が高い媒体を選択します。

 

求人情報の掲載に要注意

求人媒体が確定したら、次に、求人情報を掲載しますが、ここでは以下の点に注意しましょう。

 

事実と異なる記載

例えば、「基本給月額20万円、賞与支給」という求人情報を掲載しているのに、採用後、実際には「基本給を16万円しか支給しない」「賞与を支給しない」などはわかりやすい問題例です。

賃金特に、賃金は労働者が生活するための重要な労働条件です。期待して入社したのに実際は待遇が悪いという状況は、後日労使紛争が起きやすいパターンですので注意しましょう。

また、賃金以外にも、「転勤なし」「残業なし」「職種変更なし」などと求人情報に掲載しておいて、採用後は転勤、残業、職種変更を命じたりする場合も問題となり得ます。

これらの労働条件をめぐるトラブルは、後日、裁判になったり、労基署から調査が入ったり、ユニオンから団体交渉を申し入れられたりする可能性があります。

企業の中には、少しでも良い人材を獲得するために、待遇をよく見せたいと考える事業所もあるかもしれません。

しかし、トラブルを防止するために、重要なことは採用する労働者に待遇についての実際と異なる期待を抱かせないことです。

そのため、企業は、「求人情報には最低限の労働条件を掲載する」というスタンスを持つべきです。

そうすると、採用後、労働者は「期待以上の待遇だった」と思ってもらえるため、トラブルの発生確率が激減します。また、従業員満足度もアップするためモチベーションが上がるでしょう。

 

契約社員について

疑問日本では、正社員として採用すると、解雇はよほどのことがないとできません。すなわち、労働契約法16条は、解雇について、客観的合理性、社会通念上の相当性という要件を求めています。この要件を充足するのは、よほどの事情が必要です。

しかし、企業はいつも業績が良いとは限りません。業績が悪化すれば、一定数の従業員を解雇せざるを得なくなります。

そのため、企業としては、いざというとき、ある程度余剰人員を切りやすいようにしておきたいと考えるのは当然です。

このような企業のニーズに適合するのは契約社員です。

すなわち、契約期間に定めのある雇用形態(例えば、「契約期間6か月:更新有り」など)として、労働者を採用すれば、もし、業績が悪化した場合、更新しない(いわゆる「雇止め」)にすることで、労働力をある程度調整できます(ただし、後述するように、無期転換申込権には注意が必要です。)。

ただ、ここで注意しなければならいのは、契約社員として採用するのであれば、その旨労働条件通知書等できちんと明示しなければならないということです(この点については後記において詳述します。)。

また、フルタイム労働者については、契約社員という条件では、なかなか優秀な人材は集まらないということです。

雇用形態

もっとも、専門性が高い職務の場合に、双方ミスマッチがないかを確認するためであれば、この契約社員という雇用形態は、むしろ無期雇用よりも望ましい場合があります。

採用される側にとっても、離職する際、「自主退職」よりも「契約期間満了」の方が再就職等に有利になる可能性があるからです。

また、求める人材がパートタイマーであれば、契約社員の募集でも、更新可能性があることを明示すれば、優秀な人材が集まる可能性は十分にあると考えます。

企業としては、契約社員として採用するか、正社員として採用するか、十分に検討して求人を掲載すべきです。

 

 

選考のポイントとは

求人情報を掲載し、エントリーがあれば、その中から人材を選考します。

選考の方法としては、書類審査、面接、筆記試験、適性検査等が考えられるため、それぞれのポイントを解説します。

 

書類審査のポイント

履歴書のイメージ画像多くの企業では、まず、履歴書、自己PRシート、その他の資料(学校の成績証明書など)の提出を受けています。中途採用の場合は、職務経歴書も提出させるところが多いと思います。

多くの就職希望者がエントリーする企業の場合、まず、書類審査によって、一定数の方を選考したほうが効率よく採用できます。

 

提出書類は返却しなければならない?

郵便物のイメージ画像

提出書類について、ご質問として多いのは、返却義務についてです。

企業としては、エントリー者が数百人に上ることもあります。これらの書類を一々返却するとすれば、コスト(郵送代や人件費)がかかります。人事担当者の負担も無視できないものとなるでしょう。

そのため、返却しない扱いの企業は多いと思われます。

法律上は、通常の場合は返却義務は認められないと考えます。

ただし、トラブル防止の観点から、以下の対策を取っておくと良いでしょう。

(具体的な状況によって対応は異なりますのであくまで参考程度にしてください。)

◎ 求人情報等に「提出書類は返却せずに選考終了後に破棄します」などと記載しておく

あらかじめこのような方針であることを明示しておくことで、エントリーする方に誤解を与えることを防止できます。

◎ 返却希望者がいれば個別に対応する

エントリーシートを作成するには大変です。不採用となった場合、できれば他で使用したいと考える方もいると思います。企業の状況にもよりますが、個別対応も検討しましょう。

◎ 保管に注意して選考終了後には破棄する

返却義務はありませんが、エントリーシートは個人情報保護法の対象となります。

企業としては、選考終了まで、鍵付きの金庫等で厳重に保管し、選考終了時はシュレッダーで破棄し、個人情報の漏洩に万全を期すべきです。

◎ 就業規則に明記する

採用選考時の書類の取扱いについて、返却しないことを就業規則に明記しておくことで後々のトラブル防止につながります。

 

個人情報への配慮

面接採用に際して取得した応募者の氏名、学歴、住所、電話番号等に関する情報は、個人情報として、法的保護の対象となります。

個人情報保護法では、使用者が個人情報取扱事業者に該当する場合、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、原則として、速やかに、その利用目的を本人に通知し、又は公表しなければなりません。

当事務所の労働問題特化サイトでは、「採用応募者の個人情報の利用目的通知書」に係る書式のダウンロードが可能です。ダウンロードご希望の方はこちらをご覧ください。

また、個人情報についての取扱いについて、詳しくは当事務所までご相談ください。

面接のポイント

採用選考において、面接はほとんどの企業において実施される方法です。

面接における面接官と受験者のやり取りには、プライバシーに関する情報が多く存在します。

まず、注意しなければならいのは質問事項に関する法規制です。

厚生労働省がホームページで「公正な採用選考の基本」として、面接の際に尋ねてはいけないことを掲載しているので、紹介します。

<a.本人に責任のない事項の把握>

・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)

・家族に関すること(職業、続柄、健康、地位、学歴、収入、資産など)(注:家族の仕事の有無・職種・勤務先などや家族構成はこれに該当します)

・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)

・生活環境・家庭環境などに関すること

<b.本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>

・宗教に関すること

・支持政党に関すること

・人生観、生活信条に関すること

・尊敬する人物に関すること

・思想に関すること

・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること

・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

上記のうち、うっかり尋ねそうで特に注意が必要なのは、「尊敬する人物」でしょうか。

 

集団面接は特に要注意

複数名の就職希望者を合わせて面接する集団面接は、以下のようなメリットがあるため選考に積極的に取り入れている企業もあります。

チェックリスト・時間と労力を節約できる

・他の就職希望者と比較できるため優劣がつけやすい

・他の受験者が回答しているときの様子を観察できる

しかし、個別面接とは異なり、他の方に聞かれている状態です。そのため、個人情報への配慮が特に必要となります。

上記の質問禁止事項に留意することはもちろんですが、集団面接ではできるだけ個人情報の保護が問題となる得る質問は避けるべきです。そして、自己アピールを促すような質問を行うようにした方がよいでしょう。

 

筆記試験

試験筆記試験とは、例えば、作文、小論文、教養などの試験です。

筆記試験実施のポイントは、自社が採用したい人財に対して、その筆記試験の内容が適切が否かを検討するということです。

何の問題意識もなく「うちは前からこの筆記試験を行っている」という企業が見受けられます。

筆記試験の内容を見直すときは、自社内で優秀と評価されている社員と、採用時の筆記試験との相関関係を調査するとよいでしょう。

優秀社員と採用時筆記試験の点数に相関関係がなければ、筆記試験自体を見直すべきでしょう。

相関関係は、エクセルの関数で調べることが可能です。

適性検査

ポイント面接試験や筆記試験だけではなく、現在、適性検査を導入する企業が増えています。

適性検査で効果測定できる要素は大きく分けて2つです。

性格・適正

人間性や、考え方の軸など、パーソナリティを定量的に測定

 

学力・能力

思考力や論理性、数値能力など、基本的な能力を定量的に測定

 

どちらも、という選択も可能です。ここで重要なことは、自社が求める人財が明確になっていることです。

その上で、適性検査実施の是非、実施するとしてどのような適性検査を実施するかを選択します。

人材

適性検査には、SPI、CUBICなど、たくさん種類があります。インターネットで「適性検査」と入力して調べてみると、それぞれの特徴やコストがわかると思います。

以前は、大企業のみ実施していましたが、近年は、インターネットを活用することで利用しやすくなり、コストも下がっているため、中小企業も積極的に導入しています。

【法的対応にいて】

適性検査の結果はプライバシー性が極めて強い、個人情報です。

そのため、履歴書等と同様に、検査結果については厳格に管理し、選考終了後は破棄(データであれば削除)するようにしましょう。

 

健康診断

健康診断使用者は、雇入れ時に健康診断の実施が義務付けられています。

では、採用選考時に健康診断書を提出させることが認められるでしょうか。

この点、企業には採用の自由が認められているため、採用の可否を判断するために、健康診断書を求めることは基本的には許されると考えます。

しかし、職務と関連がいない内容の診断結果を提出させるのは問題があります。

厚労省も、前記の「公正な採用選考の基本」において、「合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施」を禁止しています。

例えば、精神疾患にかかる診断書等は、本人の同意が必要となると考えます。

 

うつ病等の病歴の申告について

採用時には見抜けなかった精神疾患や既往症が入社後に発覚するケースが見受けられます。

このような場合でも、解雇は決して簡単にはできません。

そのため、採用の段階で、精神疾患や既往症については把握しておいた方が望ましいといえます。

人他方、メンタルヘルスや病気に関する情報は、プライバシー性が極めて高い個人情報であり、その収集、保管等について、事業主は気をつけなければなりません。

利用目的をきちんと明示し、収集した情報が決して外部にもれないように細心の注意が必要となります。

なお、当事務所の労働問題特化サイトでは、採用選考の際、採用希望者に健康状況等について任意に記載してもらうための申告書を掲載しています。

ダウンロードについてはこちらをご覧ください。

 

 

採用内定の場面

採用内定とは、企業への採用が決定し、正式に入社するまでの関係をいいます。

この採用内定については、取消しの可否をめぐって問題となります。

 

内定を取り消すことができるか?

裁判例採用内定の法的性質は、裁判例によれば、解約権留保付労働契約です。

しかし、内容内定通知書ないし誓約書に記載された取消事由に該当する事実があったとしても、裁判実務上、取消権の行使には制限があります。

下記の判例(最判昭54.7.20)では、内定を取り消し得る場合について、以下のように判断しています。

「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる」

したがって、取消権の行使は、内容内定通知書等に記載された取消事由を手がかりにするものの、最終的には、①客観的合理性と②社会通念上相当性という要件を満たす必要があります。

なお、上記の要件は、解雇について規制する労働契約法16条と同じ文言です。

そこで、内定取り消しについても、解雇と同じように解釈すべきかが問題となります。

質問 経営者内定者の場合、いまだ就労を開始しておらず、その資質、能力その他社員としての適格性の有無に関連する事項が十分に収集されていません。

この内定者と、継続的に就労して使用者との間で既に一定の信頼関係を構築している従業員とを同列に論じることはできないと考えられます。

したがって、同じ①客観的合理性と②社会通念上相当性という文言が使われていても、採用内定の取消しの場合は、解雇と比べてより緩やかに解釈すべきだと考えます。

採用内定について、よりくわしくはこちらをごらんください。

 

 

雇用契約締結の場面

労働条件通知書

六法全書使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を書面などで明示しなければなりません(労基法15条1項)。

そして、この労働基準法を受けて、労働基準法施行規則は、明示の具体的な範囲と方法(書面の交付が必要か、口頭でも足りるか)について定めています(労基則5条)。

これを整理すると、明示事項は下記のとおりとなります。

 

<書面交付が必要なもの>

ァ 労働契約の期間

ィ 有期労働契約を更新する場合の基準

ウ 就業の場所・従事する業務の内容

エ 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

オ 賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項

ヵ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)

<口頭で足りるもの>

キ 昇給に関する事項

ク 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払の時期に関する事項

ケ 臨時に支払われる賃金、賞与などに関する事項

コ 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項

サ 安全・衛生に関する事項

シ 職業訓練に関する事項

ス 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

セ 表彰、制裁に関する事項

 

労働条件の明示義務に違反した場合は30万円以下の罰金が法定刑となっています(労基法120条1号)。

 

パートタイマーの場合

パートやアルバイトのイメージイラストパートタイマーの場合、正社員と比べて、契約期間、就業時間、賃金等の労働条件が個々の状況に応じて柔軟に設定される傾向にあるため、不明確となりがちです。

そこで、上記のァ〜ヵ以外にも、昇給、退職手当、賞与の有無について、書面交付等によって明示すべき事項とされています(パートタイム労働法6条1項)。

当事務所の労働特化サイトでは、労働条件通知書等の労務関連書式をダウンロードできます。

書式についてはこちらをご覧ください。

以下、労働条件通知書のサンプルを示して解説いたします。

 一見、何も問題がない書面に見えます。しかし、下記のとおり、法的リスクがたくさん存在します。

こちらの具体例に沿って解説します。

【就業の場所】

上記のサンプルでは、就業の場所が「福岡市博多区博多駅前2-1-1」と固定されています。

正社員採用では、転勤の可能性がある企業が多いと思います。

就業場所が固定されていると、転勤命令に対して、「勤務地限定の雇用である」と反論されるリスクがあります。

したがって、将来、転勤の可能性があるようであれば、就業場所が変更となる可能性があることを明示すべきです。

 

【業務の内容】

サンプルでは、業務の内容が「営業職」と記載されています。

しかし、業務内容については、会社の業績、経営戦略その他業務の都合、従業員の適正、資質等によって、変更となる可能性があります。

もし、変更となる可能性があるようであれば、業務内容が変更となる可能性があることを明示すべきです。

 

【始業・終業の時刻、休憩時間】

サンプルでは、始業・終業の時刻、休憩時間が固定されています。

業務の都合によって変更する可能性があるようであれば、その旨明示しておくべきです。

 

【休日】

サンプルでは、始業・終業の時刻、休憩時間が固定されています。

業務の都合によって変更する可能性があるようであれば、その旨明示しておくべきです。

 

【昇給についての誤解】

サンプルでは、「昇給(有 毎年4月1日)」と記載されています。

これは、毎年、4月1日に、必ず昇給するように捉えられます。

具体的な額(例えば、「毎年3000円ずつ昇給する」)は明示されていないため、抽象的請求権にとどまり、具体的請求権まではないと考えられますが、トラブル防止の観点からは、「昇給 なし」とするか、「昇給することがある」などと定めた方がよいでしょう。

なぜならば、現在、年功序列的な賃金体系を採用する企業は激減しており、ほとんどの企業は、「当該社員の能力や会社の業績しだいで昇給させる」という運用のはずだからです。

 

【契約社員であるパートタイマーの昇給についての誤解】

パートタイマーの場合は、前述したとおり、昇給については書面交付等によって明示すべき法的義務があります。

例えば、1年間の契約のパートタイマーの方で、契約を更新するときに昇給する場合、「昇給 有」などと記載する企業が散見されますが、これは誤りです。

なぜならば、パートタイム労働法で明示を求めているのは、「契約期間中の昇給の有無」だからです。

更新時に時給をアップするような場合は、「昇給 なし」と記載しなければなりません。

 

【試用期間についての誤解】

求人情報を掲載したり、雇入れのときに労働条件を通知したりする際、試用期間を定めることが一般的です。

通常、3か月から6か月程度の試用期間があり、その間に使用者により労働者の資質、性格、能力などについて実験・観察が行われます。そして、期間満了時に本採用に適していると判定されてようやく確定的な採用となります。

このような試用期間の設定は、ミスマッチを防ぐために、使用者側だけでなく、労働者側にも有用だと思います。

しかし、試用期間の法的な意味合いについて、裁判実務と使用者の認識が大きくズレていることがあります。

すなわち、使用者側は、文言どおり、「お試し期間であって能力不足等の問題があれば正式採用しなくても問題ない」と捉えていることが多々あります。

しかし、試用期間満了時の解雇について、裁判実務は企業側に厳しい傾向です。

最高裁(最判昭和48.12.12)は、試用期間の法的性質について、「不適格であると認めたときは解約できる旨の特約上の解約権が留保されている」としつつ、その留保解約権の行使は、「解約留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される」と判示しています。

したがって、裁判実務では、試用期間満了時の解雇であっても、客観的合理性と社会通念上の相当性という要件を満たさなければ、解雇は無効となります。

この点、上記の最高裁は、「留保権に基づく解雇は、これを通常の解雇と全く同一に論ずることはできず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の事由が認められてしかるべき」と判示していることから、試用期間満了時の解雇は、通常の解雇よりも、多少は解雇しやすいかもしれません。

しかし、多くの企業経営者が考えているほど試用期間満了時の解雇は簡単ではないといえます。

企業は、このような裁判実務を踏まえた上で、正社員の採用を検討しなければなりません。

 

【無期転換申込権に注意】

上記のサンプルは、契約期間の欄を見ると「期間の定めなし」となっています。したがって、雇用期間に定めのないタイプの労働条件通知書です。

もし、「期間の定めあり」として、雇用契約の期間を有期とする場合、無期転換申込権に注意する必要があります。

無期転換申込権とは、一定の要件を満たした有期労働者に認められる権利です。

労働契約法18条1項は、同一の使用者との間で締結された2以上の有期労働契約の通算契約期間が5年を超える場合、労働者が使用者に対して当該有期労働契約満了日までに無期労働契約の締結の申込みをすれば、使用者はその労働者の申込みを承諾したものとみなすと規定しています。

つまり、これまでの契約期間が5年を超える有期労働者から使用者に対して、無期労働契約への転換の申出があった場合、無期労働契約が成立するということです。

契約社員を採用するメリットは、万一、余剰人員が生じたとき、契約社員を雇い止めすることで労働力を調整できるということです。

ところが、この無期転換申込権が行使されると、雇止めができなくなります。

したがって、企業としては、契約社員を採用する場合、雇入れから5年が経過すると、問答無用で無期労働契約に転換されるということを念頭に置いて、採用を考えなければなりません

 

【雇止めに要注意】

前述のとおり、企業は無期転換申込権に注意しなければなりませんが、「5年経過しなければ大丈夫」は間違いです。

すなわち、5年経過前の雇止め(契約を更新しない)であっても、雇止めが無効となることがあります。

この点、平成19年に成立した労働契約者法19条は雇止めについて以下のとおり規定しています。

(有期労働契約の更新等)

第19条 有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

① 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

② 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

上記規定は、契約社員の雇止めについての判例法理を法律上明文化したものです。

したがって、使用者がまだ5年も先の話だからと安易に考え、それに基づいて更新を不用意に続けていると、有期労働契約者との契約を終了させることができないことになり、最終的には労働者に無期転換申込権を行使されるという結果になる危険性があります。

 

雇用契約書

勧告書 イメージ労働者保護の観点から、労働基準法上、労働者に対して、法律所定の労働条件を明示する義務がありますが、雇用契約書を取り交わす義務はありません。

しかし、トラブル防止の観点からは、企業側はできるだけ雇用契約書を作成すべきだと考えます。

すなわち、労働条件通知書は、使用者から労働者に対して一方的に通知するものです。

これだと、例えば、労働条件を巡って裁判になった場合、労働者の方から労働条件に対して「自分は承諾していない」などと言われかねません。

雇用契約書は、使用者、労働者の双方が契約内容について、署名押印を行うものです。したがって、雇用契約書は使用者と労働者との合意内容を証明するものとなるので、労働条件に関するトラブルの未然防止に資する効果があります。

雇用契約書の中身については、前述した労働条件通知書と同じ点について注意する必要があります。

雇用契約書のサンプルについては、当事務所の労働問題サイトからダウンロード可能です。こちらをご覧ください。

 

身元保証契約

身元保証契約とは

問題社員近年、従業員の非違行為により企業に損害が生じる事例が散見されます。

例えば、パワハラ・セクハラ等のハラスメント行為、企業や個人情報の漏洩問題、SNS等への投稿による企業のイメージダウンなどです。

企業としては、これらの問題行動によって損害が生じた場合、直接的には当該労働者が不法行為責任等を負い、賠償義務があります。

しかし、企業の損害が多額に上ることが多く、労働者個人には十分な賠償能力がない場合が多いです。

このような場合に備えて、担保する役割を果たしてくれるのが「身元保証契約」です。

これは、労働者を雇用する際、その家族等に労働者の損害賠償義務を保証してもらう契約です。

 

身元保証契約の注意点

身元保証契約は、企業にとっては有益ですが、反面、保証人の負担が過大となるおそれがあるため、保証人を保護する規定が置かれています。

以下、ご紹介します。

 

①有効期間が限定されている

身元保証契約は、期間を定めず締結した場合、有効期間は成立の日より3年間です(ただし、商工業見習者の身元保証契約については5年)。

また、期間を定める場合、5年を超えることはできません。

例えば、10年と定めても、5年に短縮されます(身元保証契約法2条)。

さらに、身元保証契約は、更新することができますが、その期間は、更新のときより5年を超えることはできません。

 

②通知義務がある

使用者は、以下に該当する場合、遅滞なく身元保証人に通知しなければなりません。

・労働者に業務上不適任または不誠実な事跡があって、このために身元保証人の責任の問題を引き起こすおそれがあることを知ったとき

・労働者の任務または任地を変更し、このために身元保証人の責任を加えて重くし、またはその監督を困難にするとき

 

③契約解除ができる場合

身元保証人は、上記の通知を受けたときは、将来に向けて契約の解除をすることができます。まら、身元保証人自らが、上記の事実があることを知ったときも解除可能です。

 

④賠償額の制限

裁判所は、身元保証人の損害賠償の責任及びその金額を定めるとき、被用者の監督に関する使用者の過失の有無、身元保証人が身元保証をするに至った事由及びそれをするときにした注意の程度、被用者の任務または身上の変化その他一切の事情を考慮して、賠償額を決定します。

 

契約上記のように、身元保証契約には、法律上の制限があります。

しかし、身元保証契約には、企業の損害を防止する効果があると考えます。

なぜならば、身元保証契約を締結することで、労働者側に「悪質な非違行為をしない」という自覚を促す一定の効果があると考えられるからです。

したがって、身元保証契約を導入していない企業は、導入を検討してよいと考えます。

身元保証契約書のサンプルについては、当事務所の労働問題特化サイトから無償でダウンロード可能です。ダウンロードはこちらをご覧ください。

 

各種誓約書

採用時において、労働者の職務や役職等によっては、誓約書を提出してもらうことを検討すべきです。

例えば、マイナンバー等の取扱者には、個人情報の保護するための誓約書を提出してもらいます。

その他、誓約書としては、以下のものがあげられます。

ノート・就業規則等の会社規定の遵守

・企業秘密の保持の誓約

・競業避止義務や引き抜き行為の禁止等の誓約

・通勤方法等の誓約

上記のサンプルについては、当事務所の労働問題特化サイトから無償でダウンロード可能です。ダウンロードはこちらをご覧ください。

 

 

お悩みの企業の方は採用サポートをご利用ください

採用に関しては、上記のように法的リスクがたくさんあります。具体的な状況に応じて、企業が取るべき対応は異なります。

次のようなことでお悩みの企業の方は是非ご相談ください。

質問 経営者・採用活動に苦戦している

・労務に関する法律問題を防止したい

・すでに発生している労務問題に対応してもらいたい

サポート内容

デイライト法律事務所ロゴ・採用活動についての助言

・採用を始めとする人事面についてのリーガルチェック

・その他労働問題全般についてのご相談(ご来所のほか、電話、メール、テレビ電話等でも対応可能です。)

採用サポートの料金(税別)

顧問契約の締結が前提となります。採用等の労務問題は、長期的なサポートが必要となります。

そのため、単発ではなく、顧問契約を締結して継続的にサポートさせていただきます。

企業法務チーム当事務所では、企業の状況に合わせた柔軟な顧問契約をご提案しております。

当事務所の顧問契約について、くわしくはこちらをごらんください。

 

 


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