採用時の書式の書き方・見本一覧【弁護士が解説】
従業員を採用する場合、通常、採用面接を経て、労働条件を取り決め、契約書や入社の手続一式の書類を提出してもらいます。
多くの中小企業では、採用時の書類の整備について、その重要性をあまり意識されていませんが、労務トラブル防止の観点からは、極めて重要です。
例えば、労働法においては、「不利益変更の禁止」ということがよく問題となります。
すなわち、ある従業員を採用したときに、勤務場所を限定していたとします(労働条件通知書又は雇用契約書に就業場所を明記している場合)。
この場合、後から会社の都合で、転勤させると不利益変更となって転勤命令が無効となるリスクがあります。
このようなトラブルを防止するためには、採用時の雇用契約書の記載内容が極めて重要となります。
また、入社後、従業員の問題行動があった場合、会社として相応の処分を検討することとなります。
しかし、処分の前提として、当該行為が従業員として義務に違反していると言えなければなりません。
そのために、就業規則だけでなく、誓約書や身元保証等の整備も必要となるでしょう。
このような入社時のトラブルを防止するために、適切な書類を作成して、保存しておくことが重要となります。
特に、身元保証については、書面で作成しなければ効力がありません。
近年では、SNSの普及によりアルバイトでも企業の信用を毀損することも起こりやすくなっているため、リスク管理のためにも保証を求めるかどうかを検討しておきましょう。
目次
テンプレートのダウンロード
ここでは、採用時にまつわる書式を紹介させていただきます。
デイライト法律事務所の労働事件チームは、企業側専門の労務弁護士として、多くの企業や社労士の方からご相談が寄せられています。
労務管理の基本的な書式集の他、労働組合対応、問題社員対応、ハラスメント関連の書式集なども整備しており、労務書式集としては全国最大級のものであると自負しております。
これらはすべて無料でダウンロードが可能ですので、ぜひご活用ください。
ただし、書式の使用は、弁護士が使用する場合、又は、企業の方が自社において使用する場合のみとさせていただきます。
その他の場合、非弁行為(弁護士法違反)等、法令に違反する可能性があるため使用は認めておりません。
なお、書式はあくまでサンプルです。
具体的にどのような記載を行うかについては、個別の事情によって大きく異なります。
したがって、採用に関する法的な問題のご相談は早めに弁護士に相談してください。
ご相談の流れはこちらから。
採用については、良い人材の採用が企業の死活問題となります。
良い人材採用のポイントについては、こちらのページに詳しく解説しております。
※書式については、その適法性等を保証するものではありません。
採用内定通知書
採用内定者に対して送付する採用内定通知書です。
この通知書を送付することにより、労働契約が成立します。
ただし、この契約は、法律上、解約権が留保されており、通知書は誓約書に記載された採用内定取消事由が発生した場合は、解約することができます。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
採用内定承諾書
本様式は、採用内定通知書を受け取った応募者が、事業主に対して提出する承諾書です。
通常、内定通知書は、解約権が留保されています。
この承諾書は、これに記載された採用内定 取消事由が発生した場合は、内定を解約することができることを明らかにするものです。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
労働条件通知書(正社員用)
労働契約の締結に際し、使用者は労働者に対して賃金、労働時間等の労働条件を明示しなければなりません(労基法15①)。
この通知書は厚生労働省のモデル書式に準じており、使用者として明示すべき最低限の事項を網羅しております。
しかし、トラブル防止のためには、専門家に相談の上、会社の実態に合った雇用契約書を作成したほうが望ましいでしょう。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
労働条件通知書(パートタイマー用)
パートタイム労働者の場合、正社員と比べて労働条件が不安定・不明確となりがちであるため、労働条件の明示がより厳格化されています。
また、近年、パートタイマー労働者とのトラブルが増加しておりますので、労働条件明示の必要性は高いといえるでしょう。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
雇用契約書(正社員用)
労働条件通知書は、使用者の一方的な表示であるのに対し、雇用契約書は労使の合意書です。
したがって、トラブルに備えるためには、雇用契約書の作成が望ましいと言えます。
この様式はあくまで標準的な内容です。
会社の利益を守るためには、専門家に相談の上、会社の実態に合った雇用契約書を作成すべきでしょう。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
雇用契約書(パートタイマー用)
労働条件通知書は、使用者の一方的な表示であるのに対し、雇用契約書は労使の合意書です。
したがって、トラブルに備えるためには、雇用契約書の作成が望ましいと言えます。
また、正社員と比べて、パートタイマー労働者の労働条件はケースバイケースで異なります。
したがって、正社員の場合以上に会社の実態に合った雇用契約書を作成すべきでしょう。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
身元保証書
本様式は、従業員を採用する場合に、従業員の親族等を保証人として、従業員に問題行動などがあった場合に損害賠償責任について従業員とともに身元保証人にも保証してもらうための書類です。
2020年4月1日の民法改正により、身元保証をはじめとする保証契約については、保証する上限金額を記載しておかなければなりません。
具体的にいくらに設定するかについては、正社員か契約社員かどうか、行ってもらう業務内容、企業が想定している賠償リスクといった事情を踏まえて決定する必要があります。
採用について詳しくはこちらをご覧ください。
誓約書
本様式は、入社時に労働者に提出させる一般的な誓約書です。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
秘密保持に関する誓約書
本様式は、入社時に労働者に提出させる秘密保持誓約書であり、様式A7の一般的な誓約書とは別途に提出を受けるものです。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
通勤届
本様式は、入社時に労働者に提出させる通勤届です。
通勤手当の算定だけでなく、労働者の通勤経路の把握のために使用します。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
身上書
本様式は、入社時に労働者に提出させる身上書であり、労働者の心情を把握するために使用します。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
パートタイマーの雇用管理の改善等に関する説明確認書
本様式は、パートタイマーを採用した際、事業主が講ずる措置の内容を説明するときに使用する確認書です。
平成26年4月、改正パートタイム労働法によって、事業主は、パートタイマーを雇い入れたとき、速やかに、差別禁止、賃金、教育訓練、福利厚生、正社員への転換に関して講ずる措置を説明することが義務づけられました。
この書式は、説明を行ったことを確認するための文書です。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
秘密保持・競業避止等に関する誓約書
本様式は、入社時に労働者に提出させる誓約書です。
秘密保持に関する誓約書と異なるのは、競業避止義務や引き抜き行為の禁止等も状況に追加している点です。
このような競合避止義務や引き抜き行為の禁止は、憲法が保障する職業選択の自由を制限するものです。
したがって、一般の労働者の場合は、効力が認められない可能性もあります。
役員や高度専門職などの場合は、制限する必要性、制限の範囲の限定(職種、期間、場所など)、代償措置の存在(好待遇の賃金等)等を総合的に判断し、有効と認められる可能性があります。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
採用応募者の個人情報の利用目的通知書
本様式は、採用応募者の個人情報の利用目的についての通知書です。
採用に際して、取得した応募者の氏名、学歴、住所、電話番号等に関する情報は、個人情報として、法的保護の対象となります。
個人情報保護法では、使用者が個人情報取扱事業者に該当する場合、あらかじめその利用目的を公表している場合を除き、原則として、速やかに、その利用目的を本人に通知し、又は公表しなければなりません。
本様式は、この際に利用目的を通知する書式例です。
また採用については、詳しくはこちらをご覧ください。
健康状況等の申告書
この書式は、採用選考の際、採用希望者に健康状況等について任意に記載してもらう申告書です
採用時には見抜けなかった精神疾患や既往症が入社後に発覚するケースが見受けられます。
このような場合でも、解雇は決して簡単にはできません。
そのため、採用の段階で、精神疾患や既往症については把握しておいた方が望ましいといえます。
他方、メンタルヘルスや病気に関する情報は、気密性の高い個人情報であり、その収集、保管等について、事業主は気をつけなければなりません。
利用目的をきちんと明示し、収集した情報が決して外部にもれないように細心の注意が必要となります。
メンタルヘルスについて、くわしくはこちらをご覧ください。
副業の誓約書(副業先で使用する様式)
この書式は、副業・兼業を行う従業員が本業の会社に提出する誓約書のサンプルです。
一連の働き方改革によって、副業・兼業が注目されています。
しかし、副業・兼業は、労働時間を本業と通算するため、時間外労働となる可能性が大です。
また、人件費の増大や会社の業務に関する秘密が漏洩する等の危険性があるため、注意が必要です。
副業については、こちらのページに詳しい解説を掲載しているので、ぜひご覧ください。
以上、内定段階の通知書、採用時の労働条件通知書や雇用契約書、各種誓約書、その他手続き関連の書類の書式をご紹介しました。
人事上の問題は会社側に大きなリスクをもたらす可能性があります。
このホームページでご紹介している情報が企業や弁護士の皆さまのお役に立てれば幸甚です。
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