安全配慮義務違反の損害賠償請求で大幅な減額に成功した事例

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

依頼者:製造業
解決までの期間:約4か月

弁護士に依頼した結果

 

項目 労働者側の請求額 弁護士介入による結果 減額利益
損害額 8000万円 1700万円 6300万円

 

状況

工事現場S社は製造業を営む大阪の会社でした。

会社の工場内において、車両で作業中に事故が発生し、従業員の方が死亡しました。

会社は、不幸な出来事に対し、ご遺族の方々に対して誠心誠意謝罪するとともに、会社が契約していた車の保険からの保険金2000万円をご遺族に送金する等できるだけのことをしていました。

それから数ヶ月後、その従業員の奥様が弁護士を代理人に立てました。

そして、弁護士が会社に対し、損害額8000万円を支払えという内容証明郵便を送ってきました。

これに対して、会社は早期に解決したいという意向もあり、自ら総額1600万円(月額10万円の分割払い)を提示しましたが、相手方の弁護士が納得しませんでした。

困ったS社は、示談が成立しなかったため、弁護士との交渉をこれ以上自分達では行うことはできないと考え、当事務所にご依頼されました。

損害額
  • 逸失利益:4550万円
    ※基礎収入:429万3531円 ×( 1 - 生活費控除率30% )× 就労可能年数( 67歳 - 38歳 = 29年 )
  • 慰謝料:3000万円
  • 調整金(遅延損害金や弁護士費用):450万円

相手方らの主張合計:約8000万円

 

 

弁護士の関わり

S社から依頼を受けた弁護士は、まずは事故現場を訪問し、現場の確認をしました。

死亡事故が発生しているため、すでに労基署や警察の調査は入っていましたが、刑事記録を閲覧できる時期ではありませんでした。

現場を検証することで、事故が発生した際の車両の位置に疑問点があったり、ヘルメットをかぶっていなかったのではないかという問題が出てきました。

そこで、弁護士としては、亡くなった従業員の方にも少なからず過失があるのではないかという点を指摘していくことにしました。

また、相手方の弁護士が請求している慰謝料額も裁判基準より高額であると考えられました。

数度のやり取りの末、最終的には、裁判などに至ることもなく、S社がもともと弁護士に依頼する前に提示していた当初の提示額に100万円を加えた額(1700万円)を分割払いで支払うという内容で示談が成立しました。

 

補足

この事案のように、労災事故により従業員の方が亡くなられた場合、賠償金も高額になる傾向があります。

すなわち、死亡したことにより将来得られた収入が一切なくなってしまうため、その補償として逸失利益や死亡したことによる慰謝料、葬儀費用といった項目が損害賠償の対象となるからです。

しかしながら、労災事故の中には、企業が全面的に責任を負うべきとはいえないものも多くあります。

「作業中にマニュアルに違反していた」、「従業員に見落としがあった」といったことが事故の原因になることはよくあることです。

そのような場合には、従業員側にも落ち度があったとして過失相殺をしなければなりません。

したがって、安全配慮義務違反が問題となり、損害賠償請求をされる事案では、事故現場を実際に自分の目で見て、状況を再現して検証するという作業がとても大切です。

監督必ずしも写真や地図等ではわからないことがわかる場合があり、まさに「百聞は一見にしかず」です。

また、ご遺族側の弁護士は、ご遺族の心情に配慮して、できるだけ多くの賠償金を得ようと尽力するものです。

それ自体は決して悪いことではないと思いますが、適切な金額から大きくかけ離れていることもあります。

したがって、労災事故が発生し、従業員から安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求を受けた場合には、必ず請求額が妥当なものかどうか、不当な金額になっていないかという点をチェックしなければなりません。

この点、弁護士に相談、依頼することで、請求に対するチェックを専門家の視点で行うことができます。

示談交渉を進めた上で相談されるよりも、交渉を始める前に適切な見通しを立てた上で、交渉を進めていくほうが望ましい解決を得られる可能性が高まります。

安全配慮義務違反の問題でお困りの企業は、早めに弁護士にご相談ください。

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