変形労働時間制


看護師のイメージ画像労働時間は1日8時間、週40時間以下と決められていて、これを超える時間を労働させる場合は、時間外労働となるのが原則です。時間外労働になれば当然時間外手当の問題が生じてきます。

しかし、業態によっては、上記法定労働時間が業務にそぐわない場合があります。例えば、1ヶ月のうち、後半は忙しいが前半はほとんど仕事がないくらい暇だとか、あるいは1年のうち夏は忙しいけど冬は暇だとかいう業種です。また、24時間をカバーする交替勤務制のところは、1日の勤務時間が8時間を超えることが必要不可欠な場合もあります。このような場合、変形労働時間制を採用することで、法定労働時間を超えて就業させることができます。これは使用者にとって有利な制度ということができます。

この変形労働時間制には、1か月単位、1年単位、1週間単位のものがあります。

 

1か月単位の変形労働時間制

運転手のイメージ画像これは、1か月以内の一定期間(例えば、1週でも4週でも構わない)を平均し、法定労働時間(1週間で40時間以下)に収めれば、特定の日や週について、法定労働時間を超えて労働させることができる制度のことをいいます。

例えば、看護師、自動車の運転手、工場で交代制により勤務する者などの労働時間管理に適した制度といえます。

 

1週間で法定労働時間以下に収める例

合計
10時間 10時間 10時間 5時間 5時間 休日 休日 40時間

この例では、月曜日、火曜日、水曜日はそれぞれ2時間の時間外労働となり、本来、残業代を支払わなければなりませんが、変形労働時間制を採用していれば、残業代を支払わなくてよいということになります。

 

1か月を平均して法定労働時間以下に収める例

第1週目 第2週目 第3週目 第4週目 合計
60時間 20時間 20時間 60時間 160時間

この例では、第1週、第4週はそれぞれ20時間の時間外労働となり、本来、残業代を支払わなければなりませんが、変形労働時間制を採用していれば、残業代を支払わなくてよいということになります。

この制度を導入するためには、就業規則に定めるか、または労使協定を締結して労働基準監督署長に届出をしなければなりません(労基法32条の2)。常時10人以上を使用する事業場においては、始業・終業時刻を就業規則において特定することを義務づけられているので(労基法89条1号)、結局、就業規則において労働時間を特定しなければなりません。

また、常時10人未満の事業場であっても、労使協定による導入よりも、使用者に作成権限のある就業規則の方が導入しやすいでしょう。

ただし、労使協定にしろ、就業規則にしろ、単位期間内のどの週ないしどの日に法定労働時間(40時間ないし8時間)を何時間超えるかをも特定しなければなりません(「特定の週」「特定の日」の要件)。裁判例では、「就業規則の変更条項は、労働者から見てどのような場合に変更が行われるかを予測することが可能な程度に変更事由を具体的に定めることが必要である」として、就業規則の変更を特定の要件に欠ける違法、無効なものと判断しています(東京地判平112.4.27労判782-6)。

また、行政通達によれば、業務の実体上、就業規則または労使協定による特定が困難な場合には、変形性の基本原則(変形の期間、上限、勤務のパターン)を就業規則または労使協定で定めたうえ、各人の各日の労働時間をたとえば1か月毎に勤務割表によって特定していくことが認められています(昭和63.3.14基発150号)。

このように、せっかく変形労働時間制を導入しても、この特定の要件を満たしていなければ、後日、紛争となった場合に無効なものと判断され、法定労働時間を超えた労働時間については、残業代の支払が命ぜられることになります。

したがって、変形労働時間制を採用する際は、労働諸法に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 

1年単位の変形労働時間制

これは、1年以内の一定期間を平均して1週間の労働時間を40時間以内に収めれば、特定の日や週が法定労働時間を超えても時間外労働にならないとするものです。

この制度は、業務の性質上、季節的繁閑のある事業場、例えば、ホテルやデパート等において導入すると大きなメリットとなるでしょう。

この1年単位の場合には、1ヶ月単位の変形労働時間制より細かく規制されています。

ホテル業のイメージ画像・1日の上限は10時間まで
・1週の上限は52時間まで
・週48時間を超える設定は連続3週以内(ただし単位期間が3か月を超える場合のみ)
・対象期間を起算日から3ヶ月ごとに区切った各期間で、週48時間を超える週は3回以内
・連続労働日数の上限は6日まで(繁忙な特定の期間は12日)

また、この1年単位の変形労働時間制を採用する場合、1か月単位の変形労働時間制を採用する場合と異なり、必ず労使協定を締結して、労働基準監督署長に届出をしなければなりません。

さらに、常時10人以上を使用する事業場においては、始業・終業時刻を就業規則において特定することを義務づけられているので(労基法89条1号)、結局、就業規則においても、労働時間を特定しなければなりません。

つまり、労使協定と就業規則の両方が必要となります。

ただし、1か月単位の変形労働時間制の場合は、就業規則だけでも構いません。

 

 

1週間単位の非変形労働時間制

飲食業のイメージ画像これは、業務の繁閑の激しい零細規模のサービス業、具体的には、常時30人未満の労働者を使用する小売業、旅館、料理店、飲食店の場合のみ対象となります(労基法32条の5,労基則12条の5)。

この変形労働時間制も労使協定の締結と労働基準監督署への届出が必要となります。

なお、常時10人以上を使用する事業場においては、始業・終業時刻を就業規則において特定することを義務づけられているので(労基法89条1号)、結局、就業規則においても、労働時間を特定しなければなりません。

また、この変形性では、毎日の所定労働時間があらかじめ就業規則は労使協定で定める必要はありませんので、非定型的労働時間制と呼ばれています。

しかし、毎日の労働時間がまったく不確定であれば労働者の生活が不安定となるため、1週間の各日の労働時間をあらかじめ労働者に通知しなければなりません(労基法32条の5第2項)。

そして、この通知は原則として、当該1週間の開始する前に書面により行わなければなりません。

ただし、例外として「緊急でやむを得ない事由」がある場合には変更しようとする日の前日でもよいとされています(労基則12条の5第3項)。

なお、ここでいう「緊急でやむを得ない事由」とは、天候の急変(台風等)などの客観的事実により、業務の繁閑に大幅な変更が生じた場合をいいます(昭63.1.1基発1号)。

この制度を採れば、使用者は1週間40時間の枠内において、1日について10時間まで労働させることができます。

>> 変形労働時間を採用した場合の時間外労働については、こちらからどうぞ

 

 


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