雇用契約書の書き方|テンプレート付きで弁護士が詳しく解説!

執筆者
弁護士 木曽賢也

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士


雇用契約書とは?

雇用契約書とは、使用者と労働者の間で締結する雇用契約の内容を明らかにした上で、その内容に双方合意したことを示す書面のことをいいます。

雇用契約書の特徴は、あくまで契約書であるため、使用者と労働者の双方の署名、押印が必要です。

これに似たものとして、労働条件通知書というものがあります。

労働条件通知書とは、雇用契約を締結するに際し、使用者から労働者へ労働条件を明示した書面をいいます。

労働条件通知書は、使用者から労働者に対して労働条件を一方的に通知するものなので、少なくとも労働者の署名押印は不要です。

雇用契約について、詳しくはこちらをご覧ください。

雇用契約書の法的効力

雇用契約書に記載されている事項については、原則、使用者および労働者がその内容に拘束されます。

もっとも、以下の場合は、例外的に雇用契約書の内容が修正されます。

①労働基準法に反する内容である場合

労働基準法の定めに反する個別の雇用契約は、その部分が無効になり、労働基準法の内容に修正されます(労働基準法13条)。

根拠条文
労働基準法13条
第十三条 この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。
この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。

引用元:労働基準法|e−Gov法令検索

具体例
雇用契約書に、「年次有給休暇は、雇入れの日から起算して2年間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した場合に与える。」と記載
→労働基準法39条1項は、「6ヶ月継続勤務」としていることから、上記契約は労働基準法に反しているため、「2年間継続勤務」という部分は、「6ヶ月継続勤務」に修正されます。 

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

 

②労働協約に反する内容である場合

労働協約とは、使用者と労働組合との間の労働条件その他に関する協定のことです。

労働協約は、書面で作成し、両当事者が署名または記名押印することによって、効力が生じます(労働組合法14条)。

そして、労働協約に反する個別の労働条件も無効となり、労働協約の内容に修正されます(労働組合法16条)。

ただし、労働協約は、原則的に労働組合に加入する組合員にのみ適用されるため、非組合員に対して効力は及びません。

具体例
労働協約に、年末年始の時期に5日間休暇を取得できる旨の記載があるにもかかわらず、雇用契約書には当該休暇の記載がなかった。
→労働協約の内容通り、労働者は、年末年始に5日間休暇を取得できます。
根拠条文
労働基準法14条
第十四条 労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる。

労働組合法16条
第十六条 労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約の部分は、無効とする。
この場合において無効となつた部分は、基準の定めるところによる。労働契約に定がない部分についても、同様とする。

引用元:労働組合法|e−Gov法令検索

労働協約の内容よりも有利な雇用契約を締結できるかについては、こちらをご覧ください。

 

③就業規則に反する内容である場合

就業規則に反する個別の雇用契約は、その部分が無効になり、就業規則の内容に修正されます(労働契約法12条)。

根拠条文
労働基準法12条
第十二条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については、無効とする。
この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

引用元:労働契約法|e−Gov法令検索

具体例
就業規則には、営業職に営業手当を月額1万円支給する旨が記載されているにもかかわらず、雇用契約書には営業手当の額を月額5千円支給すると記載されていた。
→雇用契約書の記載が就業規則の記載を下回るため、使用者は、営業職に営業手当を月額1万円支給しなければなりません。

就業規則について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

雇用契約書は必ず必要か

雇用契約書は、作成しなくても、その事から直ちに違法になるものではありません。

もっとも、使用者は労働者に対して、労働条件明示義務を負っています(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

参考:労働基準法施行規則|e−Gov法令検索

労働条件の明示について、詳しくはこちらをご覧ください。

この労働条件明示義務を果たすためにも、雇用契約書は作成することが望ましいです。

また、雇用契約は、比較的長期に及ぶ契約であることや、日常的に関わるものであることから、どこかのタイミングでトラブルが起きやすいです。

労使間でトラブルが起きた場合、そのトラブルを解決するために重要になるのが雇用契約の内容です。

そのため、雇用契約締結の段階で、雇用契約書を作成し、後々のトラブル防止する必要性は高いものといえます。

雇用契約書がない場合について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

 

雇用契約書の書き方をテンプレートで解説

以下、雇用契約書のテンプレートをもとに、書き方について解説します。

正社員の雇用契約書

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その他契約書のダウンロードは、こちらをご覧ください。

 

雇用期間

雇用期間には、期間の定めがない無期雇用と、期間の定めがある有期雇用があります。

無期雇用の場合は、テンプレートの「1 期間の定めなし」に◯をつけてください。

正社員の場合、多くは無期雇用とするのが一般的です。

有期雇用の場合は、テンプレートの「2 年 月 日~ 年 月 日まで」に◯をつけ、空欄部分にいつからいつまでの雇用期間かを記載してください。

 

勤務場所

勤務場所の所在地を記載してください。

なお、厚生労働省の通達(平成11年1月29日基発第45号)では、雇入れ直後の勤務場所を記載すれば足りるとされています。

参考:労働基準法の一部を改正する法律の施行について|厚生労働省

もっとも、転勤があり得る場合には、その旨の説明を労働者にしっかり説明した上で、雇用契約書の記載も工夫しておかなければ、後々にトラブルになりかねません。

転勤があり得る場合の雇用契約書の記載例は、以下のとおりです。

【パターン①】


◯◯支社(◯◯県◯◯市◯◯町◯―◯―◯)
※業務の都合により、転勤を命じることがある。

 

【パターン②】


◯◯支社(◯◯県◯◯市◯◯町◯―◯―◯)
※地域限定ではない

転勤について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

仕事の内容(業務内容)

当該労働者の仕事の内容を記載してください。

どこまでの業務内容を記載すればよいかは、ケースバイケースです。

業務内容が多岐にわたる場合は、ある程度網羅的あるいは抽象的に記載すべきですし、ある一定の業務しか行わないことが明白(例えば、医師や看護師等の専門職)なのであれば、その実情に合わせて具体的に業務を記載すべきです。

この点に関連して、業務内容の記載においても、厚生労働省の通達(平成11年1月29日基発第45号)では、雇入れ直後の業務内容を記載すれば足りるとされています。

参考:労働基準法の一部を改正する法律の施行について|厚生労働省

もっとも、配置転換等があり得る場合は、勤務場所と同様、労働者にしっかり説明した上で、雇用契約書の記載も工夫しておく必要があります。

業務内容の記載例は、以下のとおりです。

【パターン①】(通常の記載〜農業を例に〜)


農作業全般

 

【パターン②】(職種限定をしない場合〜事務職を例に〜)


事務職、その他これに付随する業務
※業務の都合により、配置転換を命じることがある(職種限定ではない)。

 

【パターン③】(職種限定をする場合〜保育士を例に〜)


児童保育、その他これに付随する業務
※職種限定

配置転換について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

勤務時間等

何時から何時まで勤務するか、休憩時間は何分かを記載してください。

なお、勤務時間等に限った話ではありませんが、勤務時間等は特に法令や就業規則の記載と矛盾しないように注意してください。

通常勤務の記載例
午前8時00分から午後17時00分迄(うち休憩時間60分)

労働基準法上の労働時間について、詳しくはこちらをご覧ください。

休憩時間について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

変形労働時間制の場合

変形時間労働制とは、一定期間内での法定労働時間の変形を認める制度です。

変形労働時間制には、1ヶ月単位(労働基準法32条の2)、1年単位(労働基準法32条の4)、1週間単位(労働基準法32条の5)のものがあります。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

変形労働時間制の導入について、詳しくはこちらをご覧ください。

変形労働時間制の記載例

変形労働時間制等:(1カ月)単位の変形労働時間制として、次の勤務時間の組み合わせにより、毎月○日までに翌月分について通知する。

  • 始業(8時30分)終業(17時30分)(うち休憩時間60分)
  • 始業(11時00分) 終業(21時00分)(うち休憩時間60分)
  • 始業(9時30分)終業(13時30分)(うち休憩時間60分)

※その他、1ヶ月単位の変形労働時間制について、就業規則第◯条〜第◯条に定めるところによる。

 

フレックスタイム制の場合

フレックスタイム制とは、1日の労働時間の長さを固定せずに、1ヶ月などの単位期間(最大3ヶ月)の中で総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決めるという制度です(労働基準法32条の3)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

フレックスタイム制の場合、コアタイム(必ず勤務しなければいけない時間)、フレキシブルタイム(その時間帯の中であれば自由に出勤または退社してよい時間帯)を定めることができます(ただし、コアタイムやフレキシブルタイムは必ず設けなければならないものではありません)。

フレックスタイム制の導入について、詳しくはこちらをご覧ください。

フレックスタイム制の記載例
フレックスタイム制(清算期間を毎月1日から末日までの1ヶ月):始業及び終業の時刻は労働者の決定に委ねる。
ただし、
フレキシブルタイム
始業時間帯7時30分〜9時30分
終業時間帯15時30分〜17時30分
コアタイム
9時30分〜15時30分
休憩時間60分

とする。
※その他、フレックスタイム制について、就業規則第◯条〜第◯条に定めるところによる。

 

事業場外のみなし労働時間制の場合

事業場外のみなし労働時間制とは、労働者が事業場外で業務に従事した場合につき、その労働時間が算定し難いときは、所定労働時間だけ労働したものとみなす制度です(労働基準法38条の2第1項)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

事業場外のみなし労働時間制の導入について、詳しくはこちらをご覧ください。

事業場外のみなし労働時間制の記載例
事業場外みなし労働時間制:始業(9時00分)終業(18時00分)(うち休憩時間60分)
※その他、事業場外みなし労働時間制について、就業規則第◯条〜第◯条に定めるところによる。

 

裁量労働制の場合

裁量労働制とは、一定の業務の遂行方法や時間配分について労働者の裁量に委ね、労働時間については、あらかじめ定めた労働時間を労働したとみなす制度のことです。

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制(労働基準法38条の3)、企画業務型裁量労働制(労働基準法38条の4)の2種類があります。

引用元:労働基準法|e−Gov法令検索

裁量労働制の詳細について、詳しくはこちらをご覧ください。

裁量労働制の記載例
裁量労働制:始業8時00分〜終業17時00分を基本とし、労働者の決定に委ねる。
※その他、裁量労働制について、就業規則第◯条〜第◯条に定めるところによる。

労働時間に関連する各制度の比較について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

休日

会社が任意で定める休日(これを「所定休日」といいます。)を記載してください。

記載例は、以下のとおりです。

【パターン①】(所定休日が定型的に決まっている場合)


毎週土・日曜日、国民の祝日、その他会社が指定した日

【パターン②】(所定休日が不定期な場合)


勤務シフト表により会社が指定した日
※詳細は、就業規則第○条参照

法定休日について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

所定外労働

所定外労働(所定労働時間外での労働、いわゆる残業)や休日労働をさせることがある場合は「有」に○を、その可能性が全くない場合は「無」に○をしてください。

もっとも、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて残業を行わせる場合(これを「時間外労働」といいます。)、労使協定(36協定)を締結して所轄の労働基準監督署に届出をする必要があります。

36協定について、詳しくはこちらをご覧ください。

また、36協定を締結していても、時間外労働の上限は、原則、休日労働を含まず月45時間、年間360時間であることに注意が必要です(労働基準法36条4項)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

 

休暇

年次有給休暇等の法定休暇、会社が任意で定める特別休暇(慶弔休暇、夏季休暇、冬季休暇、リフレッシュ休暇、病気休暇、アニバーサリー休暇、裁判員休暇等)の内容について記載してください。

なお、内容が膨大な場合は、簡潔に示して、就業規則等の条項を参照するよう指示書きするという方法も考えられます。

記載例
1 年次有給休暇 法定どおり(詳細は、就業規則◯条参照)
2 その他休暇(1)夏季休暇(毎年8月13日〜8月15日の3日間)
(2)年末年始休暇(毎年12月30日〜1月3日までの5日間)
※詳細は、就業規則○条参照

年次有給休暇について、詳しくはこちらをご覧ください。

フレックス休暇について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

賃金

①基本給

基本給の額を記載してください。

なお、基本給の設定にあたっては、最低賃金法に定められる最低賃金を下回らないように注意してください。

参考:最低賃金法|e−Gov法令検索

最低賃金額を下回るかどうかの確認する方法については、下記の厚生労働省のサイトが参考になります。

参考:最低賃金額以上かどうかを確認する方法|厚生労働省

記載例
  • 月給制の場合・・・月額(25万円)
  • 日給制の場合・・・日額(1万円)
  • 時給制の場合・・・時給(1000円)
②諸手当

支給する諸手当を記載してください。

諸手当の代表例としては、通勤手当、家族手当、役職手当、技能手当、精勤手当等です。

 

固定残業代に関する手当

固定残業代として、例えば、定額残業手当という名目で残業代を支払っている会社もあるかと思います。

固定残業代については、雇用契約書や就業規則の記載を適切にしていなければ、残業代の支払いとして機能しないことになり、多額の未払い残業代を支払わなければならない可能性があります。

雇用契約書等に固定残業代を記載する場合は、以下の有効要件を意識する必要があります(有効要件については、諸説あるところですが、代表的な見解を記載しています)。

固定残業代の有効要件
  1. ① 所定内賃金の部分と割増賃金の部分を明確に区別できるようにすること
  2. ② 割増賃金の部分が、何時間分の時間外労働等をカバーするのか(ただし、法令を下回るような設定をしてはいけない)を明示することが必要
  3. ③ そのカバーする時間分を超える時間外労働等には、別途上乗せして割増賃金を支払う合意がなされていること

固定残業代には、①定額手当制(基本給とは別に残業代の対価として、●●手当を支払う形態)と、②定額給制(基本給の中に残業代を組み込む形態)の2種類があります。

定額手当制の記載例
定額残業手当 月額◯◯万円(その全額を1ヶ月◯◯時間の時間外労働分として支給する)
※1ヶ月◯◯時間を超えて時間外労働を行った場合には、別途、割増賃金を支給する。
定額給制の記載例
基本給 月額◯◯万円
固定残業制:基本給の月額◯◯万円のうち、◯万円を1か月◯◯時間の時間外労働割増賃金として支給する。
当該時間を超えて、時間外労働を行った場合には、別途、割増賃金を支給する。

固定残業代について、詳しくはこちらをご覧ください。

合わせて読みたい
「固定残業代」って何?

固定残業代に関する裁判例の分析について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

③所定外労働等に対する割増率

残業代を計算する場合の、割増率を記載してください。

労働基準法通りの割増率にする場合の記載例は、以下のとおりです。

記載例
  • イ 所定外 a 法定超(25%) b 所定超(0%)
  • ロ 休 日 a 法定 (35%) b 法定外(25%)
  • ハ 深 夜 (25%)

残業代の割増率について、詳しくはこちらをご覧ください。

休日労働について、詳しくはこちらをご覧ください。

残業代の計算方法について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

④賃金締切日

賃金の計算期間の締切日を記載してください。

記載例
賃金締切日(毎月末日)

 

⑤賃金支払日

賃金の支払日を記載してください。

記載例
賃金支払日(翌月15日)

なお、賃金は、毎月1回以上、一定の支払日を定めて支払うことが必要です(労働基準法24条2項)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

 

⑥賃金の支払方法

賃金は、原則、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければなりません(労働基準法24条1項本文)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

もっとも、労働者の同意を得た場合は、当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込みが可能となります(労働基準法施行規則7条の2第1項1号)。

参考:労働基準法施行規則|e−Gov法令検索

記載例
賃金の支払方法(乙が指定する乙名義の銀行口座に振り込み送金する方法により支払う。)

賃金の預金口座振込に関する協定書の書式については、こちらをご覧ください。

 

⑦賃金支払時の控除

上記のとおり、賃金は、原則、その全額を支払わなければなりません(労働基準法24条1項本文)。

もっとも、法令に別段の定めがある場合や、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合には、例外的に賃金の一部を控除して支払うことができます(労働基準法24条1項ただし書)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

法令に別段の定めがある場合とは、例えば、源泉所得税、住民税、健康保険・厚生年金保険及び雇用保険の保険料の被保険者負担分等の控除です。

記載例
賃金支払時の控除 →(費目、金額等  法定費目及び労使協定で定められた費目)
※詳細は、就業規則◯◯条に基づく

賃金控除協定書の書式については、こちらをご覧ください。

 

⑧昇給

昇給の有無等を記載してください。

記載例

昇給( ○有 / 無 )

(時期、金額等)
勤務成績その他が良好な労働者について、毎年◯月◯日をもって行うものとする。
ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由がある場合は、行わないことがある。
金額等その他の詳細は、就業規則◯◯条〜◯◯条に定めるところによる。

昇給について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

⑨賞与

賞与の支給の有無、賞与の支給がある場合は、支払時期、金額、算定対象期間、算定方法等を記載してください。

なお、賞与は、労働基準法等の法律によって支払いが義務付けられているものではないので、就業規則等で支払いが定められていない限り、「無」としていても適法です。

記載例

昇給( ○有 / 無 )

(時期、金額等)
6月15日、12月15日に支給。
金額、算定対象期間、算定方法については、就業規則◯◯条に定めるところによる。
ただし、会社の業績の著しい低下その他やむを得ない事由により、支給時期を延期し、又は支給しないことがある。

 

⑩退職金

退職金の支給の有無、退職金の支給がある場合は、支払時期、金額、算定対象期間、算定方法等を記載してください。

なお、退職金は、労働基準法等の法律によって支払いが義務付けられているものではないので、就業規則等で支払いが定められていない限り、「無」としていても適法です。

記載例

退職金( ○有 / 無 )→(時期、金額等   退職金規程による)

 

退職に関する事項

定年制

定年制とは、労働者が一定の年齢に達したときに雇用契約が終了する制度のことです。

定年制を定める場合は、当該定年は、60歳を下回ってはならないとされています(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律8条本文)。

また、事業主には65歳までの高年齢者雇用確保措置が義務付けられています。

したがって、65歳未満の定年の定めをしている事業主は、①定年の引上げ、②継続雇用制度の導入、③定年の定めの廃止のいずれかの措置を講じなければならないとされています(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項)。

引用元:高年齢者等の雇用の安定等に関する法律|e−Gov法令検索

記載例

定年制 ( ○有 (60歳)/ 無)

継続雇用制度( ○有(70歳まで)/ 無 )

定年について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

自己都合退職の場合の届出

自己都合退職(辞職)の場合、何日前に届出を要するかを記載してください。

ただし、自己都合退職について、民法上、期間の定めがあるかどうかで以下のような規定になっており、当該規定に留意して記載しなければなりません。

退職時期のまとめ

辞職(期間の定めなし) 辞職(期間の定めあり) 合意解約
退職時期 解約の申入れをしてから2週間後に退職することができる(民法627条1項)。 原則、契約期間終了まで。ただし、「やむを得ない事由があるとき」は、いつでも退職することができる(民法628条)。

1年を超える有期雇用契約の場合で、契約の初日から1年を経過した日以降は、やむを得ない事由がなくても、いつでも退職することができる(労働基準法137条)。

 双方が合意した日。

参考:民法|e−Gov法令検索労働基準法|e−Gov法令検索

例えば、業務の引き継ぎなどの関係で、雇用契約書や就業規則で、自己都合退職につき、「退職する1ヶ月以上前に届け出ること」と記載している会社も多いかと思います。

もっとも、上記のとおり、期間の定めのない雇用契約の場合、予告期間は2週間(起算日は退職の申し出をした日から)で足りるので、その規定よりも延長した1ヶ月などの記載は、無効となる可能性が高いです。

裁判例でも、「民法第627条の予告期間は、使用者のためにはこれを延長できないものと解するのが相当である。」と判断したものがあります(東京地裁昭和51年10月29日労判264号35頁、高野メリヤス事件)。

また、期間の定めのある雇用の場合、上記のとおり、原則、契約期間終了までは辞職できませんが、使用者が合意解約の申し入れとして届出を要求することについては問題ないと考えられます。

記載例
自己都合退職の手続(退職する14日前迄に届け出ること)

 

解雇の事由及び手続

解雇の事由(どのような場合に普通解雇や懲戒解雇になるか等)や手続(例えば、弁明の機会が与えられる場合はその旨)を記載してください。

なお、就業規則に記載されている場合は、該当条文を示すだけで足ります。

記載例
就業規則◯条〜◯条に定めるところによる。

解雇の種類について、詳しくはこちらをご覧ください。

法律上禁止されている解雇の事由について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

その他

その他の欄には、例えば、以下の事項について記載することが考えられます。

  • 試用期間(試用期間の長さ、試用期間の延長の有無、延長がされる事由、試用期間中の賃金等)
  • 社会保険(厚生年金、健康保険等)の加入状況や雇用保険の適用の有無
  • 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
  • 安全・衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰、制裁に関する事項
  • 休職制度

休職について、詳しくはこちらをご覧ください。

なお、これらの事項は、就業規則に詳細が書いてある場合は、単に表題だけ記載して、該当の就業規則の条文を明示するという記載方法もあり得ます。

 

就業規則を遵守させる文言

労働者に就業規則を遵守させることを確認させる注意書きなります。

 

疑義が生じた場合には労働法令に従う旨の文言

雇用契約書の中で解決できない問題等は、労働法令(労働基準法、労働契約法、その他)で判断するという注意書きです。

 

 

パートタイマーの雇用契約書

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パートタイマーの雇用契約書のPDF形式やWord形式のダウンロードは、こちらをご覧ください。

 

総論

パートタイマー(パートタイム労働者)とは、1週間の所定労働時間が、同じ事業所に雇用されているフルタイムの正社員と比べて短い労働者をいいます(法令上の名称は「短時間労働者」といいます。短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第2条1項)。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e−Gov法令検索

所定労働時間について、詳しくはこちらをご覧ください。

会社によっては、「パート」、「アルバイト」、「準社員」、「嘱託」等の名称を使用していることがあるかと思いますが、全て法律上の名称ではありません。

上記のパートタイマーの定義にあてはまれば、法律上の扱いは基本的に同じになります。

したがって、テンプレートの表題は、「パートタイマー雇用契約書」としていますが、会社が使用している名称に修正(例えば、「アルバイト雇用契約書」等)していただいても構いません。

 

雇用期間

無期雇用の場合は、テンプレートの「1 期間の定めなし」に◯をつけてください。

有期雇用の場合は、テンプレートの「2 年 月 日~ 年 月 日まで」に◯をつけ、空欄部分にいつからいつまでの雇用期間かを記載してください

 

有期雇用の場合の注意点

有期雇用の期間設定について、上限規制は、原則的に3年以下とされています(労働基準法14条1項柱書)。

例外的に、①専門的職種等、②満60歳以上の者との契約では、上限は5年とされています(労働基準法14条1項1号、同2号)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

①の専門職等には、以下が該当します。

  • 博士の学位を有する者
  • 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士、弁理士
  • システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
  • 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
  • 農林水産業・鉱工業・機械・電気・土木・建築の技術者、システムエンジニア、デザイナーであって、大学卒業後5年、短期大学・高等専門学校卒業後6年、高等学校卒業後7年以上の実務経験を有する者、またはシステムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタントであって、年収1057万円以上の者
  • 国、地方公共団体、公益法人等によって知識等が優れたものと認定されている者

参考:労働基準法第十四条第一項第一号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準 |厚生労働省

上限規制は上記のとおりですが、具体的な下限規制は法令上ありません。

ただし、労働契約法17条2項で、使用者は、「労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」と定められていることに注意が必要です。

参考:労働契約法|e−Gov法令検索

また、5年を超えて反復更新された有期雇用労働者へは、無期転換申込権が付与されることにも留意してください。

無期転換申込権について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

無期雇用と有期雇用の違い

無期雇用と有期雇用の違いは、使用者が契約を解除しようと考えたときの要件の厳しさです。

無期雇用の場合、使用者が一方的に契約を解除する手段としては、基本的に解雇になります。

日本の法制度上、解雇の有効性は非常に厳格に判断されます。

解雇について、詳しくはこちらをご覧ください。

これに対し、有期雇用の場合、あらかじめ決められた契約期間が終わるところで、それ以降に契約を延長しない、更新しないという雇い止めができます。

雇い止めは、法令で無制限にできないものの(労働契約法19条)、解雇と比較した場合は、有効性の要件はやや緩やかといえます。

参考:労働契約法|e−Gov法令検索

雇い止めの有効性判断について、詳しくはこちらをご覧ください。

勤務場所

本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

 

勤務時間等

本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

 

休日

本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

 

所定外労働

本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

 

休暇

本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

 

賃金

①基本給

本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

なお、パートタイマーの場合は、基本給の設定に関して、同一労働同一賃金の関係に注意してください。

同一労働同一賃金について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

②諸手当

本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

諸手当の設定についても、同一労働同一賃金の関係に注意してください。

 

③所定外労働等に対する割増率
④賃金締切日
⑤賃金支払日
⑥賃金の支払方法
⑦賃金支払時の控除

③〜⑦につきましては、本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

 

 

⑧昇給

短時間・有期雇用労働者については、昇給の有無を労働条件として明示時なければなりません(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条1項、同施行規則2条1項1号)。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e−Gov法令検索短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則|e−Gov法令検索

記載例については、本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

 

⑨賞与

短時間・有期雇用労働者については、賞与の有無を労働条件として明示時なければなりません(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条1項、同施行規則2条1項3号)。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e−Gov法令検索参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則|e−Gov法令検索

記載例については、本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

なお、同一労働同一賃金の関係で、正社員に賞与を支給し、パートタイマーや有期雇用の労働者には賞与を支給しないことが許されるかという問題があります(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第8条、同9条)。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e−Gov法令検索

この点について、事例判断ではありますが、賞与不支給の相違が不合理なものとはいえないとした最高裁判例があります(①最高裁平成30年6月1日民集72巻2号202頁、長澤運輸事件、②最高裁令和2年10月13日労判1229号77頁、学校法人大阪医科薬科大学事件)。

判例

①長澤運輸事件 

判例:最高裁平成30年6月1日民集72巻2号202頁|最高裁ホームページ

長澤運輸事件の解説について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

②学校法人大阪医科薬科大学事件

判例:令和2年10月13日労判1229号77頁|最高裁ホームページ

判断内容
  • 無期契約労働者とアルバイト職員の業務の内容は共通する部分はあるものの、上記無期契約労働者は、学内の英文学術誌の編集事務等、病理解剖に関する遺族等への対応や部門間の連携を要する業務又は毒劇物等の試薬の管理業務等にも従事する必要があり、両者の職務の内容に一定の相違があったこと
  • 無期契約労働者は就業規則上人事異動を命ぜられる可能性があったのに対し、アルバイト職員の人事異動は例外的かつ個別的な事情により行われており、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲に一定の相違があったこと
  • アルバイト職員について、無期契約労働者へ段階的に職種を変更するための試験による登用制度が設けられていたこと

等の事情から、無期契約労働者に賞与を支給し、アルバイト職員には賞与を支給しないとしても適法と判断しました。

法令の内容(上記第8条)や上記裁判例から、正社員とパートタイマーや有期雇用の労働者の間で、賞与の支給、不支給の差異を設けることが適法かどうかについては、以下の考慮要素で判断することが妥当と考えます。

 

業務内容等
実際の行う業務内容の違いはないか。責任の範囲に違いがないか。
→違いがあれば、適法に傾く事情といえる。
配転の有無
配転により、業務内容及び勤務地の変更の可能性の違いはないか。
→違いがあれば、適法に傾く事情といえる。
業務内容等
実際の行う業務内容の違いはないか。責任の範囲に違いがないか。
→違いがあれば、適法に傾く事情といえる。
その他の事情
正社員への登用試験の有無、労使交渉の経緯など。
⑩退職金

短時間・有期雇用労働者については、退職金の有無を労働条件として明示時なければなりません(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条1項、同施行規則2条1項2号)。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e−Gov法令検索

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則|e−Gov法令検索

記載例については、本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

なお、賞与と同様、退職金についても、同一労働同一賃金の関係で、正社員に退職金を支給し、パートタイマーや有期雇用の労働者には退職金を支給しないことが許されるかという問題があります。

この点について、事例判断ではありますが、退職金不支給の相違が不合理なものとはいえないとした最高裁判例があります(最高裁令和2年10月13日労判1229号90頁、メトロコマース事件)。

判例:令和2年10月13日労判1229号90頁|最高裁ホームページ

 

判断内容
  • 無期契約労働者とアルバイト職員の業務の内容は共通する部分はあるものの、上記無期契約労働者は、学内の英文学術誌の編集事務等、病理解剖に関する遺族等への対応や部門間の連携を要する業務又は毒劇物等の試薬の管理業務等にも従事する必要があり、両者の職務の内容に一定の相違があったこと
  • 無期契約労働者は就業規則上人事異動を命ぜられる可能性があったのに対し、アルバイト職員の人事異動は例外的かつ個別的な事情により行われており、両者の職務の内容及び配置の変更の範囲に一定の相違があったこと
  • アルバイト職員について、無期契約労働者へ段階的に職種を変更するための試験による登用制度が設けられていたこと

等の事情から、正社員に退職金を支給し、契約社員には退職金を支給しないとしても適法と判断しました。

上記判例から、退職金についても、賞与と同様、

  1. ① 業務内容に違いがあるか
  2. ② 配転の有無の違いがあるか
  3. ③ その他の事情

の考慮要素により、正社員とパートタイマー等の労働者の間で差異を設けることが適法か判断されることになります。

 

契約更新の有無

有期雇用契約の場合、その定められた期間が終了した後に契約を更新するかどうかについて記載してください。

記載例については、テンプレートにあるとおり、

  1. イ 自動的に更新する
  2. ロ 更新する場合がありえる
  3. ハ 更新しない

というものがあり、選択するものに○をつけてください。

「イ 自動的に更新する」を選択すると、実質的に無期雇用と同視され、雇い止めをしようと思っても難しくなる可能性が高くなるため、当該選択肢を選ぶかどうかは要検討です。

「ロ 更新する場合がありえる」については、雇用契約書作成時点で契約を更新するかどうかはっきりしない場合に選択するものです。多くの有期雇用契約では、この選択肢を取られていることが多いと思われます。

「ハ 更新しない」については、例えば、担当する業務がその雇用契約の期間終了と同時に無くなってしまうなど、更新しないことが明らかな場合に選択すべきです。

 

契約更新の判断基準

有期雇用契約の場合に、更新することがありえる場合は、更新の判断基準を明示しなければなりません(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項1号の2)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索参考:労働基準法施行規則|e−Gov法令検索

記載例としては、テンプレートにあるとおり、

  • 契約期間満了時の業務量
  • 従事している業務の進捗状況
  • 能力、業務成績、勤務態度
  • 会社の経営状況
  • その他(上記以外で判断要素があれば記載)

というような考慮要素が考えられます。

雇い止めについて、詳しくはこちらをご覧ください。

 

その他

本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

 

就業規則を遵守させる文言

労働者に就業規則を遵守させること確認させる注意書きなります。

なお、テンプレートは、パートタイマー用の就業規則がある場合を想定した文言になっています。

実際にパートタイマーに適用のある就業規則の名称に適宜文言を変更していただければと思います。

パートタイマーと就業規則の問題について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

自己都合退職の場合の届出

本解説ページの正社員の雇用契約書の部分をご参照ください。

 

短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

短時間・有期雇用労働者については、雇用管理の改善等に関して、相談を受け付ける窓口を設置して労働条件として明示しなければなりません(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条1項、同施行規則2条1項4号)。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e−Gov法令検索

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則|e−Gov法令検索

記載としては、部署、役職、担当者の氏名、連絡先等、適宜の記載方法で構いません。

記載例
短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口は、(総務部 部長)とする。

 

疑義が生じた場合には労働法令に従う旨の文言

雇用契約書の中で解決できない問題等は、労働法令(労働基準法、労働契約法、その他)で判断するという注意書きです。

 

 

雇用契約書を書く際の注意点

①労働基準法・労働協約・就業規則の内容と照らし合わせて記載すること

上記の「雇用契約書の法的効力」のところで解説したとおり、雇用契約書の記載事項につき、労働基準法・労働協約・就業規則を下回る内容である場合、その部分が無効になるため、注意が必要です。

なお、雇用契約書において、労働基準法・労働協約・就業規則よりも労働者に有利な労働条件の記載をすることは問題ありません。

 

②求人の内容・就職説明会・面接の内容と矛盾しないようにすること

労働関係のトラブルで多いのが、「こんな内容は聞いていなかった。」とか、「あの時はこう言われていたのに、実際の雇用契約書ではこうなっている。」というものです。

したがって、トラブルを防止するためにも、求人の内容・就職説明会・面接の内容と実際の労働条件が異ならないよう、十分注意する必要があります。

 

③雇用契約書の使い回しは避けること

雇用契約書は、定型的な部分も多いため、内容をしっかり検討しないまま、従前に使用した雇用契約書をそのまま使用していると思われるケースが見受けられます。

もっとも、労働関連法規は、常に改正がされていくものであり、従前の雇用契約書をそのまま使用することに問題が生じることがあります。

また、就業規則が途中で改訂されている場合は、改訂前の雇用契約書は見直す必要がありますので、この観点からも雇用契約書の使い回しは避けた方が良いです。

 

④賠償予定についての文言を入れないこと

使用者は、雇用契約を締結するにあたって、雇用契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を事前に定めたりすることは禁止されています(労働基準法16条)。

参考:労働基準法|e−Gov法令検索

したがって、雇用契約書には、労働者の不履行に対して違約金を定める文言等は記載しないようにしましょう。

労働基準法16条で禁止される例は、以下のようなものです。

労働基準法16条で禁止される例

【禁止例1】


労働者が業務上の過失につき、会社に損害を与えた場合は、労働者は会社に対して、損害の額にかかわらず、一律◯◯万円を賠償する。

 

【禁止例2】


労働者が無断欠勤、無断遅刻した場合は、1回につき◯◯万円を会社に支払うものとする。

なお、労働基準法16条は、あくまで違約金や損害賠償額の予定の合意を禁じているに過ぎません。

そのため、実際に生じた損害を労働者に請求することまでは禁じられていません。

雇用契約書は手書きで作成してもいい?

雇用契約書は、手書きで作成しても法的効力に問題はありません。

もっとも、字が読みにくいといった不都合を避けるという観点から、ワード等で作成した文書の方が最適かと思います。

 

 

雇用契約書の内容を途中で変更したい場合

雇用契約書の内容を途中で変更する必要性が出てくる場面があります。

例えば、勤務時間や賃金等の労働条件に変更がある場合です。

雇用契約書の内容を変更することについては、原則、使用者と労働者の合意があれば可能です(労働契約法8条)。

引用元:労働契約法|e−Gov法令検索

もっとも、労働者にとって不利益となる労働条件の場合(例えば、賃金の減額など)は、形式的に同意があったとしても、その同意が労働者の自由な意思に基づくものであることが必要と考えられています(最高裁昭和48年1月19民集27巻1号27頁、最高裁平成28年2月19日民集70巻2号123頁)。

参考判例
最高裁昭和48年1月19民集27巻1号27頁、シンガー・ソーイング・メシーン事件
最高裁平成28年2月19日民集70巻2号123頁、山梨県民信用組合事件

また、労働条件を変更した内容が就業規則を下回った場合は、無効になるので(労働契約法12条)、注意が必要です。

雇用契約書の内容を途中で変更する場合、

  1. ① 変更後の新しい雇用契約書を作成する
  2. ② 変更部分のみを抽出して覚書等を作成する

というような方法が考えられます。

 

 

雇用契約書に違反するとどうなる?

使用者側が違反した場合

違反の内容によって異なりますが、以下のものが想定されます。

  • 労働者から損害賠償請求を受ける
  • 罰金や懲役等の罰則が課せられる
  • 労働者が即時に雇用契約を解除することができる(労働基準法15条2項)

 

労働者側が違反した場合

違反の内容によって異なりますが、以下のものが想定されます。

  • 使用者から損害賠償請求を受ける
  • 昇給や昇格の判断の際に不利益に扱われる
  • 懲戒処分や解雇の対象になる

 

 

まとめ

以上のように、雇用契約書を作成するにあたっては、様々な事項に注意しなければなりません。

特に、労働関連法規を正しく理解していなければ、雇用契約の時点で既に違法行為を行ってしまうことになりかねません。

現代では、雇用契約書のテンプレートはインターネット等で検索するとすぐに手に入ります。

もっとも、テンプレートはあくまで参考にとどめ、個別事情に関してはしっかり吟味し、雇用契約書に反映させる必要があります。

企業にとって、雇用契約書の作成は日常的に行われているかもしれませんが、専門的な知識が要求されるものです。

雇用契約書の作成についてお困りの際は、労働分野を多く扱っている弁護士に相談されることをお勧めします。

 

 





  

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