雇用契約について弁護士が解説!契約する際のポイントは?

執筆者
弁護士 木曽賢也

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士

雇用契約とは

雇用契約とは、当事者の一方(労働者)が相手方(使用者)に対して労働に従事することを約束し、相手方(使用者)がこれに対してその報酬を与えることを約束する契約のことをいいます(民法623条)。

根拠条文

民法623条

(雇用)
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

引用元:民法|e-Gov法令検索

要するに、労働者は働くことを約束し、使用者は労働者の働きに対してお金を払うことを約束する契約ということです。

雇用契約は、お互い上記の「約束」をすれば成立するため、必ずしも書面で契約する必要はなく、口頭のみでも契約は成立します。

雇用契約と労働契約は何が違う?

労働契約とは、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを内容とする契約です(労働契約法6条)。

根拠条文

労働契約法6条

(労働契約の成立)

第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

引用元:労働契約法|e-Gov法令検索

労働契約についても、口頭で契約は成立します。

雇用契約と労働契約は、前者が民法に規定があり、後者が労働契約法に規定されているという違いはありますが、基本的な内容については同一のものと考えられています。

 

 

雇用契約を結ぶ際のポイント

雇用契約締結までの一般的流れは、以下のようなものです。

雇用契約締結までの一般的流れ

①募集

企業は、紹介等の採用方法でない限り、まずは募集することから始めます。

募集の方法としては、ハローワークやホームページなどを用いる手段があり、その企業に合った方法を選択していくことになります。

募集の方法は、各種法規制を遵守する限り、企業が自由に決定できます。

どのような方法を選択すべきかは、企業の予算、実績(過去にその手段でどれだけ人材を確保できたか)などを考慮して決めていくことになります。

なお、募集にあたっては、以下の労働条件を明示することが義務付けられています(職業安定法5条の3、職業安定法施行規則4条の2)。

参考:職業安定法|e-Gov法令検索

参考:職業安定法施行規則|e-Gov法令検索

募集の際に明示しなければならない労働条件
  • 業務内容
  • 契約期間
  • 試用期間
  • 就業場所
  • 就業時間
  • 休憩時間
  • 休日
  • 時間外労働
  • 賃金
  • 加入保険
  • 募集者の氏名又は名称
  • 派遣労働者として雇用する場合、その雇用形態
  • 就業の場所における受動喫煙を防止するための措置に関する事項

これらの条件を明示するにあたっては、労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現を用いる等その的確な表示に努めなければなりません(職業安定法42条)。

誤解の生じさせないような表現については、以下、業務内容の記載を参考にしてください。

業務内容の記載例
悪い例
一般事務
良い例
書類の整理、来客対応、電話受付、清掃業務等の一般事務

また、後々のトラブルを防止するためにも、募集の際の記載事項は、誇大なものにならないよう注意しましょう。

②採用選考

募集からエントリーがあれば、そこから採用試験を行って選考していくことになります。

選考方法は、書類審査、面接、筆記試験、適性検査などがあります。

注意点としては、例えば、面接の際に、尋ねてはいけない事項があります。

面接の際に尋ねてはいけない事項や、各選考方法の注意点等について、詳しくはこちらをご覧ください。

③雇用契約締結

採用選考で選抜した後は、その方と雇用契約を締結していくことになります。

なお、企業によっては、正式な雇用契約の前に、内定を出すというところもあるでしょう。

内定についての問題は、こちらをご覧ください。

合わせて読みたい
採用内定について

企業がスムーズに問題なく雇用契約締結まで進めるためには、①〜③までに必要な業務事項をできるだけマニュアル化し、効率化させることが必要です。

そして、そのマニュアル化したものを、採用活動が終わる度にブラッシュアップし、良かったものは引き継ぎ、悪かったものは改善していくことが重要です。

ここに注意!雇用契約で気を付けるべきこと

check!企業側が注意すべきこと

雇用契約の際、企業側で注意すべきことを雇用形態別に解説いたします。

正社員

労働条件の明示

使用者は、雇用契約を締結する上で、以下の労働条件を明示しなければなりません(労働基準法15条1項、労働基準法施行規則5条1項)。

明示すべき労働条件の内容
  1. ① 労働契約の期間
  2. ② 有期労働契約を更新する場合の基準
  3. ③ 就業の場所・従事する業務の内容
  4. ④ 始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項
  5. ⑤ 賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期に関する事項
  6. ⑥ 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
  7. ⑦ 昇給に関する事項
  8. ⑧ 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払の方法、支払の時期に関する事項
  9. ⑨ 臨時に支払われる賃金、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  10. ⑩ 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
  11. ⑪ 安全・衛生に関する事項
  12. ⑫ 職業訓練に関する事項
  13. ⑬ 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  14. ⑭ 表彰、制裁に関する事項
  15. ⑮ 休職に関する事項

上記のうち、⑦〜⑮の事項については、企業がその定めをする場合のみ、明示すべきとされています。

なお、上記のうち、①〜⑥までの事項については、原則、書面交付をすべきことが定められています(労働基準法施行規則5条4項本文、その裏返しとして⑦〜⑮の事項については、口頭で足ります)。

参考:労働基準法施行規則|e-Gov法令検索

もっとも、労働者が希望した場合は、書面交付ではなく、メールやFAXで明示することも可能です(労働基準法施行規則5条4項ただし書)。

労働条件の明示について、詳しくはこちらをご覧ください。

労働条件を明示するにあたっては、上記の明示義務の遵守や後々のトラブル防止の観点から、労働条件通知書または雇用契約書を作成すべきです。

正社員の労働条件通知書の書式については、こちらをご覧ください。

なお、労働条件明示義務に違反した場合は、30万円以下の罰金が課せられる可能性があります(労働基準法120条1号)。

また、仮に明示義務は果たしていたとしても、明示された事実と実際の労働条件が異なっていた場合は、労働者は即時に雇用契約を解除できるので(労働基準法15条2項)、企業としても虚偽の労働条件を雇用契約書等に記載しないよう注意してください。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

賠償予定の禁止

企業は、雇用契約を締結するにあたって、雇用契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を事前に定めたりすることは禁止されています(労働基準法16条)。

根拠条文

労働基準法16条

(賠償予定の禁止)
第十六条 使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

労働基準法16条で禁止される例としては、以下のようなものです。

労働基準法16条で禁止される例
例1
入社後、●ヶ月以内に退職した場合は、違約金●万円を支払え。
例2
無断欠席、遅刻をした場合は、●万円を支払え。
例3
会社に損害を与えた場合は、●万円を支払え。

労働基準法16条に違反した契約は無効であり、使用者は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性があります(労働基準法119条1号)。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

以上から、企業としては、雇用契約書等に賠償予定の文言が入っていないかチェックする必要があります。

なお、労働基準法16条は、あくまで違約金や損害賠償額の予定の合意を禁じているに過ぎないため、実際に生じた損害を労働者に請求することまでは禁じられていません。

パートタイム・アルバイト

労働条件の明示

労働条件の明示に関するルールは、正社員と基本的に同様です。

もっとも、パートタイム・アルバイトの場合は、正社員の場合の明示事項(①〜⑮)に加え、以下の事項についても明示しなければならないとされています(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第6条1項、同施行規則2条1項)。

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|e-Gov法令検索

参考:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則|e-Gov法令検索

原則として書面交付で明示
  1. ① 昇給の有無
  2. ② 退職手当の有無
  3. ③ 賞与の有無
  4. ④ 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口

なお、上記の①〜④の事項については、原則として書面交付で明示しますが、労働者が希望した場合は、メールやFAXで明示することも可能です(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則2条3項)。

上記の①〜④の事項の明示義務に違反した場合、10万円以下の過料の対象になりますので(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第31条)、注意が必要です。

パートタイムの労働条件通知書の書式については、こちらをご覧ください。

同一労働同一賃金の関係

働き方改革の一環として、パートタイムやアルバイトの方について、同一労働同一賃金の考え方が導入され、正社員との不合理な待遇差等は禁止されました。

パートタイムやアルバイトの雇用契約を締結する際には、同一労働同一賃金の規定を遵守するよう心掛ける必要があります。

同一労働同一賃金について、詳しくはこちらをご覧ください。

賠償予定の禁止

正社員の場合と同様、労働基準法16条の賠償予定の禁止は、パートタイムやアルバイトの労働者であっても適用されます。

業務委託の場合

そもそも、業務委託契約(法的性質としては、委任契約または準委任契約)とは、ある一定の業務を委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約です(民法643条、656条)。

参考:民法|e-Gov法令検索

雇用契約と業務委託契約の違いは、以下のとおりです。

 

雇用契約と業務委託契約の違い

有給休暇 残業代の支払い 社会保険(雇用保険・健康保険・厚生年金保険等)
雇用契約 必要 必要 原則必要(パートタイマー・アルバイトは一定の要件を満たした場合のみ)
業務委託契約 不要 不要 不要

業務委託契約は、労働基準法等の規制を受けない関係で、上記のとおり、有給休暇や残業代の支払いが不要となっています。

企業側が業務委託契約を締結する際には、以下の点に注意が必要です。

業務委託契約書の作成

業務委託契約は口頭でも成立しますが、後々のトラブル防止のため、業務委託契約書を作成しましょう。

特に、契約の根幹である、①業務の内容、②報酬に関する事項(額や支払時期等)、③契約期間については、少なくとも業務委託契約書に明記しましょう。

勤務場所や勤務時間を拘束できない

業務委託契約は、勤務場所や勤務時間を基本的に拘束できません。

勤務場所や勤務時間を拘束した場合、その他の事情によっては、実質的には雇用契約と判断されて、企業にとっては多額の残業代を支払うリスクなどがあります。

check!労働者側が注意すべきこと

以下では、雇用契約の際、労働者側で注意すべきことを解説いたします。

安易に雇用契約書にサインしない

雇用契約締結の際は、就職先が決まる喜びなどから、雇用契約書の内容を吟味せずにサインしてしまうことがあるかもしれません。

もっとも、雇用契約書は、雇用契約の内容を定める重要なものであるため、内容はしっかり確認し、不明な点はその場で確認して疑問点を解消してからサインするようにしましょう。

口頭で条件を言われた場合の対処

労働条件を口頭で言われた場合は、後に言った・言わないの水掛論にならないよう、書面を作成していただけないか打診してみましょう。

そもそも、原則、書面で交付しなければならない労働条件もあるため(上記の正社員やパートタイム・アルバイトの「労働条件の明示」をご参照ください)、全ての労働条件を口頭で済まそうとする使用者の対応は、法令に違反している可能性が高いです。

書面作成の打診が困難な場合は、せめて口頭の内容をメモしておくことをお勧めします。

まとめ

本ページでは、主に雇用契約について解説しました。

雇用契約時は、契約のスタート地点ですので、非常に重要な局面です。

労使間の法的な紛争が生じた時に、雇用契約の内容がどうなっているかというのは必ずと言っていいほどチェックされます。

適切な雇用契約を締結するためにも、契約の内容で迷われた場合は、労働問題に詳しい弁護士にご相談ください。

 

 





  

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