弁護士コラム

会社が雇い止めする際の注意点|有効無効の判断基準は?

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士

 

雇い止めとは?

2020年より、コロナ禍による業績悪化で有期労働契約の労働者の雇い止めを検討せざるを得ない企業も増えているのではないかと思います。

雇い止めとは、雇用契約の期間が決まっている労働者の雇用契約を更新せずに、期間満了で終了することです。

本来、期間を定めて雇用契約を締結しているため、期間が満了したのであれば雇用契約を終了することができるのが原則です。

しかし、一定期間雇用を継続したにも関わらず、突然、契約を更新されないとなれば、労働者は働き口を失うことになり、生活ができなくなる可能性があります。

こうした状況を踏まえて、一定の条件を満たす場合には、雇止めは無効とされ労働者との雇用契約を終了することができないこととなっています。

 

 

雇い止めの有効無効の判断基準ポイント

雇止めは、労働契約法19条によって規制されています。

労働契約法19条

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
一 当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。
二 当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

引用元:労働契約法

労働契約法19条では、当該労働者が、下記の2つのいずれかの条件に当てはまり、かつ、労働者が契約更新の申込みをした場合には、通常の解雇と同等に厳格な条件(客観的合理的な理由、社会通念上の相当性)が課されることになります。

  1. ① 有期労働契約が反復継続して更新されており、雇止めすることが実質的に解雇と社会通念上同視できること
  2. ② 労働者が更新されるものと期待することについて、合理的な理由があること

 

①について

①に当てはまるかどうかの考慮要素として、更新をされた回数も考慮要素となります。
しかし、正社員との業務内容や責任に違いがあるか、更新の手続きは適切にされているかなどの実体にも着目して判断されるため、更新回数が少ないからといって安心できるわけではありません。

②について

労働者に更新の期待が生じているかどうかは、以下の事情がポイントになります。

  • 更新の回数や雇用の通算期間
    その回数や期間が長いほど労働者の更新の期待は大きくなります。
  • 雇用期間の管理の状況
    契約の更新時期に、毎回更新の合意書や契約書を交わしているか否か、更新にあたって面談を実施しているかなどが考慮されます。
    更新の合意書や契約書を交わしておらず、更新の手続き自体が形骸化しているような場合には、労働者の更新の期待は大きくなります。
  • 雇用が臨時的であるか常用的であるか
    雇用の目的が臨時的に発生した仕事に従事してもらうためであれば、労働者としても長期間の雇用は期待していないと考えられます。
    他方で、仕事内容が常用的なものである場合には、労働者の雇用継続への期待は比較的大きくなります。
  • 使用者の言動
    会社側において、契約を更新することを匂わすようなことを労働者に言っている場合には、労働者の更新の期待は大きくなります。
    特に決裁権を持っている役職のある者の言動となれば、より更新の期待は高まるでしょう。

以上のような考慮要素を総合的に検討して、19条の適用があるかどうかが判断されます。

 

 

企業の注意ポイント

上記の考慮要素を踏まえて、企業としては以下の点に留意すべきです。

 

雇用期間の管理の徹底

有期労働者の雇用期間を正確に把握し、更新期間前に更新の合意書を交わす必要があります。

契約満了日の1ヶ月程度前に当該労働者と面談して、更新について協議し合意書を交わしましょう。

仮に、その時点で、次回の更新をしないことが分かっているのであれば、その旨説明して、合意書にも明記すべきでしょう。

 

安易な言動は慎む

更新しない可能性のある労働者に対しては、更新を匂わせるような言動は避けなければなりません。

有期労働者の管理職にも雇止めのリスクについて十分理解してもらい安易な言動をしないよう教育すべきです。

 

業務内容が限定できるのであれば限定する

有期労働者が行う業務が限定的なものである場合には、最初の雇用契約の段階から業務内容を特定しておくべきです。

当該業務がなくなった場合に、比較的雇止めがしやすくなります。

 

契約の更新あるいは通算期間の上限を示す

契約更新あるいは、通算期間の上限を示すことで、それ以上の更新はないということを有期労働者に理解してもらうことができます。

上限を示す場合には、後のトラブル防止のために雇用契約書に明記しておくべきです。

 

行政が示している雇止めに関する基準を守る

厚生労働省は、労働基準法14条2項に基づいて、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」を策定しています。

この基準は裁判でも参考にされるものなので十分留意する必要があります。

具体的な内容は以下の4点です。

契約締結時に、更新の有無と更新の判断基準を明示すること

更新する可能性がない場合には、明確に更新しない旨を契約書に明示すべきです。
また更新するかどうか分からない場合には、自動更新などにはせずに「更新する場合がある」といった記載にとどめるべきです。

3回以上更新されている労働者、1年を超えて継続して雇用されている労働者には、期間満了の30日前までに、更新しないことを予告すること

雇止めによるトラブルを防止するという観点からは、上記の更新回数や雇用期間を下回る場合にも1ヶ月前には更新しない旨を伝えることを検討すべきでしょう。
労働者としても次の就職先を探すために、なるべく早く更新の有無を知りたいはずです。余裕を持って労働者と協議することでトラブルを回避できることもあります。

雇止めの理由を明示すること

契約期間が満了するという理由以外の理由を示す必要があります。
更新の判断基準に沿って明示することが必要です。

契約期間について、契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続してこようしている有期労働者と契約を更新する場合は、労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めること

 

 

労働契約法19条に該当しても雇止めが認められる可能性はある

労働契約法19条に該当すれば、更新が拒絶できなくなるというわけではありません。

労働契約法19条に該当する場合には、解雇する場合と同様の厳格な条件を満たさなければ雇止めできないということです。

つまり、雇止めに客観的合理的理由があり、雇止めすることが社会通念上相当である場合には、労働者からの更新の申し出を拒絶して雇止めすることができます。

ただし、通常の解雇と同じレベルで厳格な審査がされるため、簡単に認められるわけではありません。

労働者の中に問題社員がいる場合には、注意指導を徹底し、注意指導したことがわかる証拠を書面で残しておくべきです。

そうした証拠を積み重ねることによって、労働契約法19条に該当する場合でも雇止めが認められる可能性が出てきます。

なお、当該従業員が犯罪行為を行ったような場合(会社のお金を横領したなど)には、問題なく雇止めも認められるでしょう。

雇止めをする予定がある場合には、なるべく早い段階で専門の弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

早い段階からご相談頂くことでとりうる選択肢も増える可能性があります。

 

 

無期転換ルールに注意

無期転換ルール

平成25年4月1日に労働契約法が改正され、労働者が同一の企業との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、労働者からの申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されることとなりました(労働契約法18条)。

したがって、労働者から無期転換の申込みがあった場合、申込み時の有期労働契約の期間が満了した翌日から無期労働契約に転換されます。

労働者からの申込みがあった場合には企業は拒否することができません。

無期に変更になった場合の労働条件については、特段の取り決めが無い限り、有期での労働条件をそのまま据え置いても問題は有りません。

変更されるには、あくまで有期の部分だけです。

 

無期転換ルールについて企業の対応ポイント

企業としては、こうした無期転換権を踏まえて、人事計画を立てる必要があります。

優秀な人材については、5年間を経過することで無期に転換することは企業としても望ましいことでしょう。

むしろ、優秀な人材に関しては5年を待たずして無期や正社員に転換することを検討すべきです。

他方で、業務自体が数年で無くなる可能性がある場合や、そもそも長く勤めてもらうことを想定していない、あるいは、働きぶり次第では雇止めをする可能性がある場合には、事前に対策を取る必要があります。

例えば、入社する段階で、通算で5年を超えて雇用契約を更新しないことを雇用契約書に明示することが考えられます。

そうした対策をとることなく、漫然と契約期間を更新して、5年を経過する直前に雇止めをした場合には、前記した労働契約法19条の規制に抵触し、解雇する場合と同等の厳格な法規制が適用される可能性があります。

 

 

まとめ

有期契約だから期間満了すれば当然に辞めさせることが出来るという考えは誤りです。

雇い止めをする際にも、違法な雇い止めとならないか十分に留意しなければなりません。

 


 
 


   
執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 法人分野:労務問題 個人分野:人身障害事件  

実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士。労務問題に注力。企業向けに働き方改革等のセミナー講演活動を行う。「働き方改革実現の労務管理」「Q&Aユニオン・合同労組への法的対応の実務」等の書籍を執筆。



  

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