始末書とは?書き方を例文で解説|無料テンプレート付

執筆者
弁護士 木曽賢也

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士

始末書とは?始末書(しまつしょ)とは、従業員が起こした不始末や不祥事について、その事実関係を明らかにし、反省、謝罪、再発防止のためにすべきことを記載した文書のことをいいます。

始末書については、法律上、決まった書き方があるわけではありません。

しかし、始末書は懲戒処分や解雇の問題にも影響するため、会社側、従業員側とも注意すべき文書と言えます。

ここでは、始末書の意味、書き方や注意点について、労働問題に注力する弁護士が解説していきます。

ぜひ参考になさってください。

始末書とは

始末書とは、従業員に対して、従業員の起こした不始末・不祥事(例えば、業務上のミスや就業規則違反等)について、その事実関係を明らかにし、反省、謝罪、再発防止のためにすべきことを記載した文書のことをいいます。

始末書を提出してもらう目的は、従業員の起こした不始末・不祥事について、原因を分析してもらい、二度と同じような事をしないようにするためです。

二度と同じような事をしないというのは、従業員にとっても会社にとってもプラスに働きます。

この始末書と似た文書として、「顛末書(てんまつしょ)」や「反省文」があります。

 

始末書と顛末書(てんまつしょ)の違い

顛末書(てんまつしょ)とは、従業員の起こした不始末・不祥事について、その事実関係を明らかにするものです。

顛末書(てんまつしょ)は、従業員の起こした不始末・不祥事の事実関係(事実の経過)を報告させることに主眼を置いたものになります。

始末書との大きな違いは、顛末書(てんまつしょ)では反省・謝罪・再発防止を誓約させることまでは不要であり、あくまで事実関係を記載するにとどまるものとなります。

 

始末書と反省文の違い

反省文は、文字通り、ある事柄(従業員の行った業務上のミスや就業規則違反等)について、反省していることを記載するものです。

反省文についても、ある程度の事実関係は記載します。

なぜなら、ある程度の事実関係がなければ、何の事について反省しているかわからないためです。

また、謝罪や再発防止のためにすべきことも、反省文に必須ではないものの、記載されていることが多いのが現状だと思います。

以上から、反省文は、始末書とほぼ違いはないと筆者は考えています。

 

始末書・顛末書(てんまつしょ)・反省文の違いのまとめ

それぞれの文書の違いについてまとめると、以下のようになります。

文書の種類 記載内容
顛末書(てんまつしょ) 事実関係
反省文 (事実関係)+反省+(謝罪)+(再発防止のためにすべきこと)
始末書 事実関係+反省+謝罪+再発防止のためにすべきこと

なお、会社の就業規則では、「顛末書(てんまつしょ)」という名称を使用しながら、実際に記載を求める内容は「始末書」と同じ意味だったりすることもあります。

そのため、当該会社では各文書の意味についてどのように定義されているか、就業規則等をチェックしてみてください。

 

 

始末書を提出させるべき代表例

始末書は、上記のとおり、従業員が業務上のミスや就業規則違反といった不始末や不祥事を起こした時に書かれることが一般的です。

以下、いくつか代表例をご紹介します。

 

正当な理由のない遅刻や欠勤を繰り返した場合

始業時刻が午前9時にもかかわらず、寝坊が原因で午前10時に出社をしてくるということを繰り返す場合など。

 

業務上のミスにより、所属の会社や取引先に損害を与えた場合

取引先に発行する請求書の桁を大きく間違え、そのミスが長年放置されたことにより、所属の会社に100万円の損害を与えた場合など。

 

同僚にセクハラやパワハラ等のハラスメント行為をした場合

上司の男性が、部下の女性に対して、職務中に業務とは関係のないところで執拗に身体に触れる、卑猥(ひわい)な言葉を浴びせるなどのセクハラ行為をした場合など。

 

会社の所有物などを窃盗・横領した場合

経理課に所属する者が、不正会計を行い、会社の口座から自己の口座に毎月10万円を巧妙に送金し続ける場合など。

※窃盗や横領については、悪質であるため懲戒解雇等の処分を検討する場合が多いです。

 

勤務成績が不良の場合

営業職で、会社の設定する毎月の契約件数のノルマを、他の社員は全員達成しているにもかかわらず、その社員だけ全く達成していない場合など。

 

業務妨害をした場合

過失で会社の生産機械を損壊し、会社の業務を停止させた場合など。

※意図的なケースについては悪質であるため、懲戒解雇等を検討するケースが多いと思われます。

 

業務命令に背いた場合

当日の業務は文書作成業務と指示されているにも関わらず、その指示を無視して勝手に前日に行っていた事務作業を継続したときなど。

 

就業規則や雇用契約書に記載されている会社のルールに違反した場合

就業規則で、勤務時間中の私物の携帯電話を使用することが禁止されているにも関わらず、何度も携帯電話も使用した場合など。

 

 

始末書のテンプレート

こちら始末書のテンプレートですので、事案に応じてご使用ください。

始末書のテンプレート

始末書のテンプレート(Word形式、PDF形式)を無料でダウンロードいただけます。

ダウンロードはからどうぞ

その他、労働関係の書式は以下をご覧ください。

あわせて読みたい
労務書式集

 

 

始末書の書き方|記載すべき事項と注意点

始末書の書き方|記載すべき事項と注意点

人は、時間が経過すればするほど、どんどん記憶が薄れていきます。

始末書は、事実関係の記憶や、反省の態度が風化する前に作成すべきです。

いつまでに作成しなければならないという決まりはなく、事案の内容や会社の考え方にもよりますが、事態が起きてからなるべく早く作成すべきです。

以下では、始末書の書き方について記載すべき事項と注意点を踏まえてご紹介します。

①タイトルは就業規則等の名称に合わせる

①タイトルは就業規則等の名称に合わせる

タイトルは、シンプルに「始末書」で良いかと思います。

ただし、その会社の就業規則等で使用されている名称に統一した方が無難です。

例えば、「顛末書(てんまつしょ)」や「反省文」という名称が用いられているのであれば、その名称を使用した方が良いです。

 

②宛名は提出先の会社名と代表者

②宛名は提出先の会社名と代表者

始末書は従業員が会社に提出するものなので、提出先の会社名を記入します。

会社名だけでなく、代表者(代表取締役等)の肩書と名前もセットで書くのが一般的です。

 

③作成日付

③作成日付

従業員が、始末書を作成した日付を記入します。

西暦(例:2023年)でも、和暦(例:令和5年)でもどちらでも構いません。

 

④作成者の所属と氏名

④作成者の所属と氏名

始末書を作成した従業員の所属している部署名を記載します。

所属の部署名の例としては、「営業管理部」、「経理部」、「広報部」等です。

部署などを設けていないような会社では、その作成した従業員の住所などを記載するなどの方法も考えられます。

氏名の欄には、始末書を作成した従業員の氏名(フルネーム)を記載します。

そして、氏名の横には押印するのが無難です。

 

⑤本文冒頭に反省と謝罪を明記

⑤本文冒頭に反省と謝罪を明記

始末書は、上記で解説したとおり、事実関係+反省+謝罪+再発防止のためにすべきことを記載するものでした。

そのため、本文冒頭では、反省と謝罪をしていることを明記した方が良いかと思います。

テンプレートでは、「私は、下記のとおり、貴社の就業規則に違反する行為をしてしまい、貴社に多大なご迷惑をおかけしてしまいました。当該行為について、深く反省し、心からお詫び申し上げます。」という内容で記載しております。

 

⑥問題行為を行った日付

⑥問題行為を行った日付

従業員の問題行為を行った日付を記載します。

 

⑦問題行為を行った場所

⑦問題行為を行った場所

従業員の問題行為を行った場所を記載します。

 

⑧不始末・不祥事等の事実と原因を具体的に記載

⑧不始末・不祥事等の事実と原因を具体的に記載

従業員が行った問題行動の内容とその原因を記載します。

事実関係を記載する際は、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)を意識して、できるだけ詳細に書かれていることが理想です。

 

⑨違反した就業規則

⑨違反した就業規則

従業員の問題行動が会社の就業規則のどの条文に違反したか記載します。

複数の条文に該当する場合は、その該当する条文を全て記載します。

 

⑩再発防止に向けた具体策

⑩再発防止に向けた具体策

従業員の起こした問題行動について、二度と同じ行動をしないためにどのように対策していくかを記載します。

 

 

始末書の書き方|例文

上で解説した始末書の書き方のうち、「不始末・不祥事等の内容及び原因」及び「再発防止に向けた具体策」については、どのように書くべきか迷われると思います。

ここでは、よくある4つのケースについて、例文を紹介します。

遅刻したときの例文

【 内容 】

私は、◯年◯月◯日の勤務において、始業時刻が9時であるにもかかわらず、9時45分に出社し、45分間遅刻してしまいました。

【 原因 】

前日、夜更かしをしてしまい、睡眠時間が不足し、朝寝坊をしてしまったのが原因です。

【再発防止に向けた具体策】

翌日勤務の場合は夜更かしなどを絶対せず、必要な睡眠時間を確保できるように心がけます。

 

備品を紛失したときの例文

【 内容 】

私は、◯年◯月◯日◯時頃、◯◯付近において、自身の財布に入れていた会社のセキュリティカードを財布ごと紛失してしまいました。

【 原因 】

当日、居酒屋で知人らと飲酒し、酔っ払ってしまい、財布を路上に落としてしまったのが原因です。

【再発防止に向けた具体策】

今後は飲酒する際、適量を心がけ、飲みすぎないようにいたします。

また、飲酒が予想される場合、会社のセキュリティカードなどの貴重なものを持ち歩かないようにいたします。

 

会社自動車を破損したときの例文

【 内容 】

私は、◯年◯月◯日◯時頃、◯◯路上付近において、会社の自動車を運転中、ハンドル操作を誤って同車左前部のバンパーをガードレールに接触させ、破損させてしまいました。

【 原因 】

自動車を運転中に、スマートフォンの着信音が鳴り、これに気を取られてスマートフォンを操作しながら脇見運転をしてしまったのが原因です。

【再発防止に向けた具体策】

今後は自動車を運転するときはスマートフォンの電源を切るようにいたします。

また、交通事故の危険性を再認識し、自動車を運転する際は運転に集中するように気をつけます。

 

仕事のミスの例文

【 内容 】

私は、◯社に対して、◯年◯月◯日までに◯◯製品を納品すべきところ、これを失念し、会社に対し、◯円の損害を生じさせました。

【 原因 】

重要な取引であったにも関わらず、気の緩みから業務を失念してしまい、期限に間に合わせることができませんでした。

また、タスク管理に関する社内規定を守っていなかったのが原因です。

【再発防止に向けた具体策】

タスク管理はもとより、社内規程を確実に確認し、実行するようにいたします。

また、自身のミスが会社に対して与える影響について再認識し、今後このようなことがないように気を引き締めます。

 

 

始末書の提出依頼〜受領後の対応までの流れ

始末書の提出〜受領後の対応について、特に法律上の定めはありません。

しかし、通常、以下の流れで実施することが多いです。

始末書の提出依頼〜受領後の対応までの流れ

①事実関係の確認

まずは始末書を作成するきっかけとなった事実関係を正確に把握する必要があります。

悪質な場合だと、始末書ではなく、他の重い懲戒処分を検討することになります。

事実関係の確認方法としては、従業員本人や関係者などからのヒアリングを行うとよいでしょう。

 

②始末書の書式を交付

始末書に法定の書式はありませんが、会社内で定形の書式があれば、それを従業員に渡してあげたほうが手続きがスムーズにいきます。

前記に掲載している書式を活用されてください。

 

③始末書を受領

従業員が始末書を作成したら、提出してもらって受領しましょう。

その際、不備な点があれば、修正してもらうなどして後々トラブルにならないようにしましょう

 

④フォロー・監督指導等

始末書作成後、根本的な問題点が除去・改善されたか等の確認をし、状況に応じた適切なマネジメントが必要となります。

もし、改善されない場合、その他の懲戒処分や教育訓練を検討することになります。

 

 

始末書による効果

始末書による効果としては以下のものが考えられます。

始末書が必要な理由

 

同種行為を繰り返させない

問題行動があったとき、それを文書化することで本人の反省が深まり、今後同じ行動を繰り返すことを防止できます。

始末書が必要な最も大きな理由と考えられます。

 

組織の秩序を保つ

健全な会社組織は信賞必罰を徹底します。

NGな行動は罰することで、組織の秩序を保ち、会社は成長発展していきます。

 

退職勧奨に効果的

問題行動が繰り返される場合、懲戒解雇を検討することとなります。

しかし、懲戒解雇は要件が厳しいため、無効となってしまうリスクがあります。

そのため、懲戒解雇の前に、退職勧奨を行うことがあります。

始末書を何度も作成していると、退職勧奨をする際に、従業員側が説得に応じやすくなる傾向があります。

問題行動を繰り返していることの自覚があるからです。

 

解雇時の立証に役立つ

従業員が何度も問題行動を繰り返し、退職勧奨にも応じない場合、やむを得ず懲戒解雇等の処分を検討することになります。

解雇要件として、「社会通念上の相当性」というものがあります(労働契約法16条)。

参考:労働契約法|e-GOV法令検索

これは、解雇が最終的な手段であることを意味します。

解雇された従業員が在職中なんども始末書を書いていたという事実があると、この「社会通念上の相当性」という要件を満たす可能性が出てきます。

 

 

始末書を書くとどうなる?処分が与える影響

始末書は、会社の業務命令として提出を求められる場合と、懲戒処分の中の「譴責(けんせき)処分」として提出を求められる場合とがあります。

事案にもよりますが、特に後者の懲戒処分として始末書を提出している場合は、以下のような影響が考えられます。

 

昇給や昇格への影響

ほとんどの会社では、昇給(給料が上がること)や昇格(役職が上がること)をさせるかどうかにあたって、それまでの勤務態度、勤務成績を考慮して判断していると思います。

始末書を提出するような不始末を行っている場合は、昇給や昇格させるかどうかの判断にあたってはマイナスに働く可能性があります。

 

賞与(ボーナス)への影響

賞与(ボーナス)についても、勤務態度や勤務成績が考慮されて、支給の有無や額が決定されることが多いです。

そのため、始末書を提出している人とそうでない人を比べた時に、前者の人の方が賞与(ボーナス)が少ないなどの不利益は十分あり得ます。

 

退職金への影響

退職金の支給については、「退職金規程」などの会社が定めたルールに従って支給されます。

その退職金規程などで、懲戒処分歴があった場合に退職金が減額されることが定められているケースでは、減額の不利益があり得ます。

 

転職への影響

転職時の面接において、懲戒処分歴を聞かれることがあります。

その際、基本的には真実を話さなければいけません(嘘をつくと経歴詐称になってしまいます)。

始末書を書くという「譴責(けんせき)」処分も、懲戒処分歴であることから、採用にあたって不利に扱われる可能性があります。

 

他の重い懲戒処分の可能性

始末書を提出しても、何度も同じ行為を繰り返してしまい、その度に始末書を提出している場合などは、他の重い懲戒処分(減給・降格・出勤停止・懲戒解雇)が課せられる可能性があります。

 

 

会社が社員に始末書を書かせる場合の注意点

会社が始末書を従業員に提出させることができる根拠は、主に以下の2つになります。

①業務命令として提出させる

②懲戒処分の譴責(けんせき)処分として提出させる

上記2つの根拠ごとに注意点が微妙に異なってきます。

始末書を提出させる根拠 注意点
①業務命令
  • 従業員が行った不始末・不祥事の存在を確認すること
②懲戒処分(譴責処分)
  • 従業員が行った不始末・不祥事の存在を確認すること
  • 就業規則に懲戒処分の根拠が規定されていること

 

①業務命令として提出させる場合

従業員が行った不始末・不祥事の存在を確認すること

当たり前と思われるかもしれませんが、前提となる従業員の不始末・不祥事が実際に存在する必要があります。

想定されることとしては、「やった、やってない」の水掛け論になることです。

会社は、単なる噂レベルの事柄について、従業員に始末書を書かせることはあってはなりません。

そうならないためにも、会社としては事案に応じて、本人への事情聴取、第三者や利害関係人への事情聴取、客観的証拠(書面、メール、映像等)の調査は必要になってくるでしょう。

 

②懲戒処分の譴責(けんせき)処分として提出させる場合

従業員が行った不始末・不祥事の存在を確認すること

業務命令として提出させる場合と同様、懲戒処分の譴責(けんせき)処分として提出させる場合も、会社としては、上記と同様の手段で従業員が行った不始末・不祥事の存在を確認することが必要となってきます。

 

 

就業規則に懲戒処分の根拠が規定されていること

懲戒処分を行う場合は、その根拠が就業規則に記載されている必要があります。

したがって、始末書を提出させることができる内容の処分(多くは、「譴責処分」となります。ただし、会社によっては、「戒告」などの名称で記載されていることもあります。)が記載されていないといけません。

仮に、就業規則に規定されていないが、従業員が不始末を起こしたことが明らかな場合は、上記のとおり業務命令として始末書を提出させるか、もしくは、始末書ではなく、「指導書」や「注意書」といった類の書面を当該従業員に交付するという手段が良いかと思います。

「指導書」や「注意書」の体裁等については、以下をご覧ください。

 

始末書の提出を強制できない

始末書は、あくまで自主的に書いてもらうものであるため、従業員に強制的に書かせることはできません

また、会社が始末書の内容を全て記載して、従業員から署名・押印だけもらうという方法も、自主的に書いていないという点で好ましくないです。

もっとも、従業員が始末書を書かない時は、何かしらの言い分やそれなりの理由があるはずです。

会社の対応としては、その言い分や理由はしっかり聴取して、記録に残しておくと良いです。

事情聴取を行う場合の記載例については以下をご参考にされてください。

なお、始末書提出を拒否する従業員に新たな懲戒処分を行えるかどうかについて、考え方が分かれています。

以下、裁判例を紹介します。

判例 懲戒処分を有効とした裁判例

エスエス製薬事件〜東京地判昭42.11.15労民18巻6号1136頁〜

【事案】

ある従業員が無許可で職場を離れ外出した。

会社から譴責(けんせき)処分として始末書の提出を求められるも、提出せず。

会社は昇級停止と出勤停止の懲戒処分を行った。

【判断】

始末書の提出を命じられた以上は、始末書の提出義務はあるとして、昇級停止と出勤停止の懲戒処分を有効と判断しました。

参考:東京地判昭42.11.15労民18巻6号1136頁

 

判例 懲戒処分を無効とした裁判例

福知山信用金庫事件〜大阪高判昭53.10.27労判314号65頁

【事案】

会社が有罪判決を受けた従業員を解雇としたところ、別の従業員が就業時間中に抗議した。

会社は、抗議した従業員を謹慎処分としたが、抗議した従業員はこれに従わなかった。

会社は、始末書(誓約書)の提出を求めたが、これに従わなかったため、抗議した従業員も解雇した。

【判断】

始末書(誓約書)の提出の強制は、個人の良心の自由に反するとして、会社の行った解雇を無効と判断しました。

参考:大阪高判昭53.10.27労判314号65頁

このように、始末書の提出を拒否した従業員に対して、新たな懲戒処分ができるかどうかは、ケースバイケースとなります

詳しくは、労働分野を専門とする弁護士にご相談いただければと思います。

問題社員への対応については、以下をご覧ください。

 

 

始末書についてのよくあるQ&A

私生活上の不始末・不祥事について始末書の記載を要求することはできる?

始末書は、原則として、会社内や業務に関連する事柄についてしか要求できません

なぜなら、会社と従業員は、あくまで労働契約(雇用契約)の中でしか利害関係を持っておらず、会社が従業員の私生活に関してあれこれ言える立場にないからです。

もっとも、従業員の私生活上の行動であっても、会社の事業活動に直接影響を与えるものや、会社の名誉を毀損(きそん)する行為対しては、始末書を記載することを要求できることがあります。

以下、具体例です。

具体例

① 飲酒運転

トラックドライバーの方が、プライベートで飲酒運転をして検挙され、免許停止になって会社の業務を行えなくなった場合。

 

② 社内不倫

A男は、同じ職場のB女と結婚していたが、同じ職場のC女と肉体関係を持ち、C女を妊娠させた。この事を知った周りの従業員が、A男やC女へ信頼を失い、A男やC女と仕事をしたくない人が多数現れ、A男やC女が社内の秩序を乱した場合。

 

③ 会社の名誉を毀損するSNS投稿

Twitterやインスタグラムなどで、所属する会社への誹謗中傷を記載した投稿をした場合。

 

 

 

まとめ

始末書は、それを書かせたことによって即座に従業員への大きな不利益がないことから、安易に書かせがちかもしれません。

しかし、上記で説明させていただいたとおり、注意点はいくつか存在するため、それらを遵守する必要はあります。

始末書は、本来、従業員に行動を改善してもらうことに主眼を置いており、その業員にとっても会社にとっても長い目で見てプラスになるものでなければなりません

意味のある始末書にするためにも、始末書に関連する事項で悩みが生じた場合は、労働分野を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。

 

 





  

0120-783-645
365日24時間電話予約受付(フリーダイヤル)

WEB予約はこちら