セクハラ対応のポイントとは?【企業側弁護士が徹底解説】

掲載日:2016年10月14日|最終更新日:2019年9月3日

  • 「セクハラの被害者にどう対応すればいいですか?」
  • 「セクハラの加害者の処分の仕方を教えて下さい」
  • 「会社が賠償請求される可能性は?」

会社社長

デイライト法律事務所の労働事件チームには、このようなセクハラに関する企業や社労士からのご相談が多く寄せられています。

セクハラ問題は、通常の労働問題と異なり、被害者と加害者がいるため、慎重かつ適切な対応が重要となります。

セクハラへの対応のポイントや留意点について、企業側弁護士が詳しく解説しますので、参考にされてください。

 

セクハラとは

セクハラとは、セクシュアル・ハラスメントの略語であり、簡単に言えば、「性的嫌がらせ」といった意味で広く使われていますが、使う人によってそのニュアンスは様々です。

悩む女性のイメージ画像法律では、職場における「セクハラ」について、
「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」と規定しています(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律第11条)。

例えば、上司が部下の女性従業員に対して、「肩をもんで上げようか」などと言って肩をもんだ場合、それがたちまちセクハラになるわけではありませんが、当該従業員が抗議を行ったことに腹を立てて配転を命じたり、または、繰り返して当該従業員の就業環境が害された場合、セクハラになり得るでしょう。

 

 

セクハラは犯罪か

セクハラ=犯罪であると誤解されている方は非常に多くいます。

しかし、セクハラを犯罪として直接罰する法律はありません。

新聞等で問題となるセクハラは、セクハラの中でも特に悪質なものであり、これについては、強姦罪(強制性交等罪)(刑法177条)、強制わいせつ罪(刑法第176)として刑法により処罰されます。

また、例えばそれが誹謗中傷であった場合は名誉毀損罪(刑法第230条)や侮辱罪(第231条)として、わいせつな画像を常時パソコンに表示した場合は、わいせつ物陳列罪(第175条)として刑法に抵触することになります。

一般に「セクハラ裁判」と言われているのは、民事訴訟により加害者等に対して損害賠償請求を求めているものであり、加害者に対しては、不法行為による損害賠償請求(民法709条)や精神的損害による慰謝料請求(民法710条)、また事業主等に対しては、債務不履行による損害賠償請求(民法415条)、使用者責任に基づく損害賠償請求(民法715条)を行うものが大半となっています。

 

 

セクハラの苦情が出た場合

従業員からセクハラを受けているとの苦情があった場合、対応に困ってしまう企業が少なくありません。

もし、セクハラが実際に起こってしまった場合には、最大限の配慮をもって問題に対処する必要があります。

配慮を怠った不適切な対応を行ってしまった場合、会社が訴えられる可能性も十分に考えられます。

例えば、セクハラを受けているという女性社員の申告にもとづき、セクハラ行為をしたとされる男性社員の事情をよく聞かずに解雇した場合には、「解雇権の濫用」を理由として裁判所に訴訟等を提起される場合が多々あります。

この場合、解雇は無効と判断され、男性社員に対して多額の損害賠償や解雇期間中の賃金を支払わなければならなくなります。

他方で、女性社員がセクハラを申告したにもかかわらず、セクハラに当たるほどのものではないとして、何ら適切な処置を講じなかった場合にも、会社は損害賠償責任等を負う可能性があります。

このような事態を避けるためには、セクハラの申告を受けた時点で早急に弁護士に相談し、事実関係の確認と適切な処置を行うための指示を仰ぐのが賢明でしょう。

 

 

セクハラが発生した場合の会社の責任

民事上の責任

債務不履行責任

会社は、労働者と雇用契約を締結しています。

この雇用契約上の付随義務として、会社は労働者に対して、働きやすい職場環境を整備する義務(職場環境配慮義務)があると考えられています。

セクハラが発生すると、会社の職場環境配慮義務の違反の有無が問題となります。

そして、この義務に違反したと評価できる場合、会社はセクハラ被害者に対して、債務不履行責任として、損害を賠償する義務があります。

使用者責任

民法は、会社などの使用者に関して、被用者(労働者)が第三者に損害を与えた場合の賠償義務を規定しています(民法715条1項)。

これを使用者責任といいます。

(使用者等の責任)
第715条 ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

 

事業の執行について

使用者責任は、事業性を要件としています。

したがって、労働者が勤務時間外に、会社の事業と全く関係なく、第三者に損害を与えたような場合、責任を負う必要はありません。

例えば、休日、労働者が自分の車で交通事故にあって第三者に怪我を負わせたような場合、会社は責任を取る必要などありません。

セクハラの場合、その行為自体は不法行為であって、業務行為ではありません。

したがって、事業性の要件を満たさないため、使用者責任は発生しないようにも思えます。

しかし、裁判では、従業員がセクハラを行った場合、事業性が否定されるケースはあまりなく、ほとんどの場合、使用者責任が認められる傾向にあります。

例えば、勤務時間外の懇親会でセクハラが発生したような場合でも、事業性が肯定された裁判例があります(大阪地判平10.12.21など)。

免責が認められる可能性

民法715条但書は、「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは」使用者責任を負わないと規定します。

しかし、実務上、この免責が認められる可能性は決して高くないのが現状です。

債務不履行責任との関係

債務不履行も、使用者責任も、法律構成は異なりますが、金銭賠償をしなければならない点は同じです。

法律構成が異なるため、一方が否定されて、一方が肯定される可能性もあります。

そのため、実務上は、債務不履行責任と使用者責任の2つで責任追及されることが多い傾向です。

 

セクハラの刑事責任

上記述したとおり、セクハラ=犯罪というわけでありません。

しかし、セクハラの態様が悪質な場合、直接の加害者には犯罪が成立して刑事罰を受ける可能性があります。

セクハラ行為で犯罪が成立する事案として、典型的なものをご紹介します。

強制わいせつ罪

強制わいせつとは、①13歳以上の男女に対し、相手方の反抗を著しく困難にさせる程度の暴行または脅迫を用いて、相手の身体に直接触れ、または衣服の上から触れること及び、②13歳未満の男女に対し、相手の身体に直接触れ、または衣服の上から触れることをいいます。

強制わいせつの刑罰(法定刑)は、6月以上10年以下の懲役となっています(刑法176条)。

強姦罪(強制性交等罪)

強姦(現在の正式名称は「強制性交等罪」、以下同じ。)とは、①反抗を著しく困難にするような暴行または脅迫を用いて、無理やり13歳以上の者と性交等をすること、及び②13歳未満の者と性交等をすることをいいます。

性交等とは、性交、肛門性交または口腔性交を指します。性別を問わず、全ての方が加害者となりえますし、被害者ともなりえます。

強姦の刑罰(法定刑)は、5年以上の懲役となっています(刑法177条)。

刑法は、懲役について長期を20年以下と規定しているので、強姦の法定刑は5年以上20年以下となります(ただし、2件ある場合は30年以下)。

このように、強姦は最短でも5年以上の懲役となっており、セクハラ関連の犯罪としては非常に重い刑罰となっています。

 

行政処分

注意上述したとおり、事業主にはセクハラ防止措置を講じる義務があります。

この義務に違反した場合、企業名の公表(均等法30条)、過料の制裁(均等法33条)に処せられる可能性があります。

 

 

セクハラ対策は義務です!

平成11年度の改正男女雇用機会均等法によって、事業主にはセクハラ防止措置を講じる義務が課せられました。

防止措置とは、労働者からの相談に応じる体制の整備、適切に対応する体制の整備、その他の必要な措置をいい、具体的には以下のようなものが考えられます。

①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

  1. 職場におけるセクハラの内容・職場におけるセクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
  2. セクハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。

当法律事務所は、ホームページにセクハラ防止計画や周知文書のサンプルを掲載しています。

無料サンプルのダウンロードはこちらからどうぞ。

②相談(苦情含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

  1. 相談窓口をあらかじめ定めること。
  2. 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また広く相談に対応すること。

③事後の迅速かつ適切な対応

  1. 事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
  2. 事実確認ができた場合は、行為者及び被害者に対する措置を適正に行うこと。
  3. 再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も同様)

 

上記①~③までの措置と併せて講ずべき措置
  1. 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
  2. 相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取り扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。

指針の全文は以下のリンクをご覧ください。

上記防止措置は、企業の規模や職場の状況の如何を問わず、必ず講じなければなりません。

これらは、安心して仕事に取り組める環境を整え、生産性を向上させるためにも重要です。

もし、適切な防止措置を講じておらず、是正措置を受けても改善が見られない場合には、厚生労働大臣により企業名を公表される場合もありますので、注意が必要です。

 

 

セクハラの加害者の処分

違反セクハラは職場の秩序を乱す悪質な非違行為です。

信賞必罰は、企業が持続的に成長するための生命線です。

したがって、セクハラが発覚した場合、会社は加害者への懲戒処分を検討することとなります。

しかし、懲戒処分は労働者に対する不利益行為ですので、対応を誤ると加害者から会社が訴えられる等のリスクがあります。

そこで、ここではセクハラ加害者の処分の5つのポイントについて、解説します。

POINT①状況を正確に把握する

セクハラの懲戒処分は、労働者の具体的なセクハラ行為に対して課すものです。

したがって、懲戒処分の前に、まずは事実関係を正確に押さえることが必要です。

ここがあやふやだと、後々、非違行為の有無について争いとなり、懲戒処分が無効と判断される可能性があります。

事実関係の把握の仕方としては、関係者から充分にヒアリングすることが重要です。

ヒアリングの順番としては、一般的には被害者→目撃者等の第三者→加害者がよいかと思われます。

ヒアリングの内容については、事実経過のほか、セクハラの動機、その方が受けた影響、その後の対応、助言内容等についても行うと良いでしょう。

また、ヒアリングの結果については、事情聴取書などの形で記録しておくと、後々のトラブルを防止できます。

セクハラの事情聴取書については、サンプルをご紹介しています。

無料ダウンロードはこちらからどうぞ。

POINT②客観証拠を押さえる

懲戒処分の後、加害者側が処分の無効を求めて裁判を起こすと、会社側でセクハラの事実について立証しなければならなくなります。

そのため、早期に立証できる証拠資料を準備しておくことがトラブル防止のポイントとなります。

①の事情聴取書は、関係者の言い分の記録に過ぎず、裁判では信用性が争われ、証拠価値が認められない可能性があります。

そのため、可能であれば、客観証拠を押さえておくべきです。

客観証拠とは、事情聴取書、証言、陳述書などのように、後から作成が容易な資料(これを主観証拠といいます。)ではなく、写真、録音データ、画像データなどのような信用性が高い証拠のことをいいます。

セクハラの場合、密室やプライベートな場で行われることが多いため、このような客観証拠がない場合もありますが、可能な限り検討して、もし、証拠があれば保全しておくべきです。

POINT③適切な処分を検討する

セクハラの事実関係と証拠を押さえた後は、懲戒処分の種類を検討します。

管理職一般的な会社の就業規則には、譴責・戒告や始末書、減給、出勤停止、降格、懲戒解雇などの懲戒処分があります。

これらの中から、当該事案に応じた適切な処分を検討することがポイントとなります。

なぜならば、問題となるセクハラ行為の内容に照らして重すぎる場合は後々訴訟等のリスクがあります。

また、逆に軽すぎる場合は懲戒処分の目的を達することができません。

なお、どの程度の処分が妥当かについては、労働問題に詳しい弁護士などに相談されると相場がわかってよいかと思われます。

POINT④適正な手続を履践する

懲戒処分は、労働者にとって不利益な行為なので、処分を出すまでの手続について不備があると、後々訴訟を起こされて無効と判断される可能性があります。

したがって、適正な手続を履践することが重要となります。

適正な手続とは、就業規則に定める服務規定を遵守して処分を行うということです。

例えば、懲戒委員会の設置が義務付けられている場合、これを設置して懲戒処分を検討しなければなりません。

また、懲戒処分については、口頭ではなく、書面等で根拠を示して通知することが望ましいと思われます。

当事務所では、懲戒処分の書面について、サンプルをご紹介しています。無料ダウンロードはこちらからどうぞ。

POINT⑤2次被害を防止する

リストラセクハラは、被害者がいる点で、他の問題社員対応とは異なった配慮が必要とされます。

調査や懲戒処分の過程で、被害者の実名や被害内容を他の従業員に不用意に公開すると、被害者が職場に居づらくなることがあります。

また、セクハラの件が他の従業員間で話題になったりすると、さらに傷ついてしまう可能性もあります。

他方で、同種行為の再発を防止したり、被害者の名誉回復のためには、ある程度の情報を知らせる必要もあります。

どの程度の情報を知らせるかはケース・バイ・ケースで一概には言えませんが、被害者の心情に配慮し、被害者と協議しながら実施していくべきでしょう。

 

 

セクハラ加害者に謝罪をさせることはできる?

会社の担当者の方から、加害者から被害者に対して謝罪を求めることはできるか、というご相談を受けます。

法的な視点からは、強制にわたらなければ、加害者に任意に謝罪をしてもらっても違法とはなりません。

加害者自身、被害者に謝罪したいと述べているケースは多く、このような場合に謝罪することで、平和的に解決できる可能性もあります。

もっとも、被害者としては、加害者との接触を望んでいない場合もあります。

加害者に対して恐怖心を抱いている被害者は決して少なくありません。

このような場合、被害者の心情を第一に考えるべきであり、加害者が希望していても直接の謝罪は避けるべきでしょう。

 

 

セクハラを相談されたら

上記のとおり、セクハラの相談に応じ、適切に対応するのは企業の責務です。

しかし、中小企業の多くは、法務部などなく、セクハラなどの法的問題に対して、相談できる人材も体制の整っていないのが現状です。

そこで、企業の方に是非オススメしたいのは、弁護士(法律事務所)をセクハラ等の相談窓口として定め、社員の方々に周知しておくという方法です。

顧問契約を締結した法律事務所を外部の相談窓口とすることで、相談に応じるための体制を構築でき、かつ、専門家が対応するので、適切な解決が期待できます。

この外部相談窓口について、くわしくはこちらからどうぞ。

 

 

まとめ

以上のとおり、企業にはセクハラを防止する措置を講じることと、セクハラの申告があった場合には、迅速かつ適切に対処することが求められます。

これらを怠ってセクハラ問題に関する訴訟を提起されてしまった場合は、会社の怠慢な対応が世間に公表されることになり、内外ともに会社の信用を失うことにもなりかねません。

「セクハラかどうか」「どう対処すべきか」といった判断が難しい場合には、早めに弁護士に相談し、具体的な事案に即したアドバイスをしたがって対処することが重要であるといえます。

後で取り返しのつかないことにならないためにも、問題の種が小さいうちに弁護士に相談しましょう。

デイライトの労働事件チームは、企業側の労働事件に注力した弁護士や社労士で構成されるプロフェッショナル集団であり、全国の企業や社労士から多くの相談を受けております。

セクハラ等の労働問題については、お気軽にご相談ください。

ご相談の流れはこちらをご覧ください。

セクハラ関連の書式を掲載しています。ダウンロードはこちらからどうぞ。

 

 



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