外国人労働者の退職をめぐる対応

掲載日:2020年1月24日|最終更新日:2020年1月24日

退職の種類

外国人労働者にも労働法令が適用になりますので、日本人と同じく退職手続には以下のものが挙げられます。

  • 当然退職(労働者の死亡や一定期間の音信不通、休職期間の満了など、就業規則で記載した事項が発生した場合)
  • 自主退職(労働者が辞表を提出し、企業がこれを受理することで成立)
  • 定年退職
  • 雇止め(有期契約の場合)
  • 解雇(普通解雇、懲戒解雇)

このうち、定年退職については、外国人労働者では現時点でそれほど多くはないでしょう。

身分に基づく在留資格で日本に長年住んでいる労働者であれば定年年齢に達しているということもあるでしょうが、いわゆる就労ビザや技能実習生、留学生アルバイトでは適用になることはほとんどありません。

外国人が死亡するということもそれほど多くないので、当然退職も数はそれほど多くないとも思われますが、外国人の場合、日本人に比べて連絡が取れなくなってしまうという音信不通は起こりやすいでしょう。

死亡以外の当然退職は就業規則や雇用契約書で条件を定めておかなければ成立しませんので注意が必要です。

 

 

休職への対応

無断欠勤今後外国人でも正社員採用が増えていくにつれて、メンタルヘルスの問題により休職者が増えてくることが予想されます。

日本人では、うつ病といった精神的な原因での労災申請が増加しており、ストレスチェックが企業に義務化されるなど問題意識が高まってきています。

今までは休職に関する規定を整備していない企業でも問題が生じていなかったかもしれませんが、休職期間を設けるかどうか、設けるとして休職期間をどの程度認めるのか、休職期間が満了した場合の処遇について、検討していくことが求められます。

 

 

雇止めへの対応

有期雇用契約の場合には、契約期間を満了し、次の契約を締結しない場合、雇止めとなります。

この雇止めには労働契約法19条の適用があります。

労働契約法19条では、
①当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められる場合、②当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる場合には、雇止めに客観的合理性と社会通念上の相当性がなければ、雇止めは認められず無効になるというものです。

具体的にどの程度の期間の更新があれば、労働契約法19条に該当するかについて明記はありませんが、労働契約法の改正により5年を超える有期契約労働者には雇用期間の定めを無期契約に変更することができる無期転換権が認められています(労働契約法18条)。

この規定からすれば、契約期間が5年間を迎えると雇止めは難しくなってくるでしょう。

安易な更新は繰り返さないということが重要です。

また、更新を当然のように伝えることは、更新されるものと期待してしまうことにつながってしまい、労働契約法19条2号(上記②)の適用を受けることになるばかりでなく、そもそも外国人労働者と退職を巡ってトラブルになるリスクが高まってしまいます。

外国人のモチベーションを保つためにも、更新は当該外国人の勤務態度や勤務成績次第であると伝えておくのがよいでしょう。

 

 

解雇への対応

有期雇用契約の場合の解雇については、その期間の雇用を前提に契約している以上、「やむを得ない事由」が必要とされており、無期契約の正社員に比べて解雇は難しいことを心得ておく必要があります。

また、正社員の解雇については、労働契約法16条がルールを定めています。

すなわち、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」とされており、客観的合理性と社会通念上の相当性が必要になります。

具体的にどのような場合に解雇が認められるかについては、過去の裁判例を参考にして検討していくことが有益ですが、外国人労働者の解雇が裁判で争われた事例はそれほど数が多くありません。

その中でも比較的近年、解雇が有効と認められたのは東京地判平成25年1月18日です。

判例 東京地判平成25年1月18日(解雇が有効とされた裁判例)

裁判例この事案は、イラン人の外国人がホテル業を営む企業から通知された懲戒解雇は無効であると主張した事案です。

この裁判で、企業はこのイラン人が、上司の一人が「麻薬をしているので会社を辞めさせろ」、もう一人も「責任者としてふさわしくないので辞めさせろ」と何度も企業に申し出たが、上司が麻薬をしているというのは全くの虚偽であり、企業はこの上司のもとで引き続き就労するようにイラン人と話し合いを重ねたものの、最終的にイラン人が受け入れなかったので懲戒解雇をしたとして、解雇は有効であると主張しました。

裁判所は懲戒解雇については言及せず、会社の意思表示として普通解雇の意思も含まれており、そもそも虚偽の主張に基づいて就労を拒否していること、何度も話合いをしたことを認定して、解雇は有効であると判断しました。

 

他方で、解雇が無効であると判断した裁判例としてスカイマーク事件(東京地判平成24年11月14日)があります。

判例 スカイマーク事件(解雇が無効とされた裁判例)

裁判例のイメージイラストオーストラリア国籍を有するパイロットが、国内線のフライトに機長として搭乗する予定となっていたところ、空港に向かうバスの中で風邪をひいて声がかすれていたチーフ・パーサー(客室乗務員)に対して、業務を他の者に変わるよう指示し、代わりを待っていたところ、会社からそのまま搭乗してフライトするように命令されたことを拒否し、この時の出来事を理由に解雇されたという事案です。

東京地裁は、「機長は、自らの搭乗する航空機の運航の安全に関する最終的な判断権限のほか、客室乗務員を含む乗務員に対する指揮監督権限を有しているということができるから、乗務員の急病等の緊急時における当該従業員の搭乗の可否等に関する機長の判断は、当該判断が一見して不合理であると認められるなどの特段の事情のない限り、最大限尊重されるべきものであると解すべきである」と判断し、実際にチーフ・パーサーの声があまり出ず、咳き込んでいた状況から、機長の判断は不合理とはいえず、フライトを強行しようとした会社の命令に反しても、これを理由に解雇することは客観的合理性が認められないと結論づけました。

【東京地判平成24年11月14日】

両者の裁判例は、どちらも会社の命令に従わなかったという職務遵守違反の事例ですが、解雇が有効とされた事例は外国人労働者に業務命令に従わないことについて合理的な理由がなかったのに対し、スカイマーク事件では、客室乗務員を確保できないことが安全運転に支障をきたすと判断した機長に業務命令を拒否する合理性が認められたという違いがあります。

また、解雇が有効とされた事例は、その後何度も外国人労働者と会社で話し合いをして職場に戻るように伝えていたのに対し、後者の事例では、そういったやりとりがないまま解雇に至っているという点も相違があります。

こうした裁判例を分析していくと、会社の業務命令に従わないという理由から直ちに外国人労働者を解雇することはできず、業務命令に従わないことに従業員側に合理的な理由がないこと、業務命令に従うように話合いをするなど、解雇以外の方法がとれないかを施行した上で解雇に踏み切らなければなりません。

退職届のイメージ画像解雇はこうした裁判リスクが高いので、まずは退職勧奨による方法で自主退職を促すことが得策です。

このとき、「やめろ」は解雇の意思表示となりかねないので避け、「辞めた方がよいのではないか」、「他の仕事についたらどうか」といった話をしなければなりません。

外国人の場合、言葉の理解が難しいこともあるので、信頼できる通訳を利用するなどして、誤解のないように十分な準備を行っておく必要があります。

専門家である弁護士にも相談してから進めなければなりません。

また、条件面を工夫することも検討しなければなりません。

例えば、退職金は本来でない場合であれば、基本給の数か月分と母国までの旅費を支給するといった条件を提示してあげることで、退職した方がプラスになるという風に外国人に感じてもらうことが大切になってきます。

 

 

まとめ

弁護士イメージ画像外国人の退職問題については、日本人の場合と同じく慎重な対応が求められます。

トラブルが表面化してしまってから専門家に相談しても手遅れとなってしまうこともあるため、トラブルになる前の段階から、顧問弁護士を活用して相談するなどして、予防しておくことが大切です。

デイライト法律事務所の外国人雇用チームでは、外国人の採用に対するアドバイスや雇用契約書の作成、チェック、日頃の労務管理に対するご相談に対応するとともに、退職時に万が一トラブルとなった場合には、企業の代理人として交渉や裁判対応を行っております。

外国人の労務問題でお困りの方は、専門の弁護士にご相談ください。

 

 





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