2019年の入管法改正が実務に与える影響

掲載日:2020年1月24日|最終更新日:2020年1月24日

平成30年の臨時国会で成立した改正入管法は2019年4月1日施行されました。

そこで、今回の改正が企業に対してどのような影響を与えるのかについて検討していきます。

改正入管法が企業にあたえる影響は?

裁判や弁護士今回の改正の目的は、新しい在留資格となる「特定技能」という資格を設けることにあります。

この特定技能の新設の背景には、近年問題となっている人手不足が大きく影響しています。

すなわち、日本の少子高齢化による労働人口の減少という傾向は改善の目処が立っていません。

この人手不足の影響は、特に中小企業を中心に軽視できないものとなってきており、「人手不足倒産」という言葉も耳にするようになっています。

この点、すでに25万7788人もの技能実習生が日本全国の企業で就労しており、この技能実習制度が人手不足対策ではないかという疑問も出てくることと思います。

確かに、技能実習生を受け入れている企業のお話をうかがうと、日本人だけでは人手が集まらず、人手不足を解消することができないため、技能実習生を毎年受け入れているという声をよく聞きます。

その意味では、技能実習制度が人手不足対策の一つとなっている現実は否定し難いところです。

ところが、この技能実習の制度目的は、あくまで日本が先進国としての役割を果たすために、日本の技術を発展途上国の国々に移転することにあります。

技能実習法1条には、人手不足対策という言葉はどこにも入っていません。

このように、技能実習生を受け入れる企業の本音と技能実習法の建前にギャップがある状況が続いていたといえます。

また、技能実習は最終的には発展途上国の技術移転が目的のため、元々は3年間が上限でした。

これが、平成29年11月に技能実習法が改正されたことで、技能実習3号が新設されたため、5年間に延長されました。

延長されたものの、5年間経過すれば、当該外国人は帰国する他に選択肢がない状態でした。

そこで、企業としても、受け入れた技能実習生が毎年何人ほど技能実習を修了するかを見通して、その人数を新たに技能実習生として受け入れるということを考えなければならなかったわけです。

今回の入管法改正は、こうした技能実習制度のみを前提とした企業の外国人雇用を見直すきっかけになるといえます。

すなわち、人手不足が深刻として、特定技能の対象業種とされた14の業種では、これまでの技能実習の後にさらに最大5年間、同じ外国人を雇用することができるわけです。

企業としては、一人の外国人の雇用スパンをこれまでの5年間から最大10年間という倍の期間で見ることができるわけです。

したがって、自ずと企業の外国人労働者に対する人事戦略に大きな影響を与えることになると想像できます。

せっかくコストをかけて技術やノウハウを指導してきた外国人をみすみす母国に帰して、新しい技能実習生を受け入れるよりは、企業の文化や日本の生活に慣れた外国人をそのまま雇用したいと考える企業の方が多いはずです。

このように外国人を人財として捉えるための選択肢が増えたということが、企業にとっての主な影響です。

 

特定技能の資格取得

特定技能は、技能実習からの移行だけでなく、それぞれの業種で整備される試験に合格することによっても取得することができます。

そのため、これまでに技能実習を修了してすでに母国に帰国してしまった外国人に試験を受けてもらい、日本に呼び戻すことも制度上は可能です。

しかしながら、法改正がなされる直前である平成30年(2018年)に帰国したばかりの外国人ならともかく、帰国してすでに一定期間経過している外国人に試験を受けてもらい、合格して日本に戻ってきてもらうというのは困難でしょう。

また、整備される資格試験も改正入管法施行後の2019年4月1日以降順次対応することとなっており、中身が明らかになっていない部分も多くあります。

こうした状況を踏まえると、特定技能の多くは、現在受け入れている技能実習生の実習期間満了に伴う移行になると予想されます。

政府は、今回の特定技能の在留資格による外国人労働者の受入人数は向こう5年間で34万5150人を見込んでいます。

つまり、現在の技能実習生の数以上の外国人労働者の受入れを念頭においているわけです。

これだけの外国人労働者を5年間という短期間に受け入れる見込みを立てているわけですから、外国人労働者の採用マーケットが今後急速に進むことも予想されます。

 

 

特定技能の中途採用

今回の特定技能では、技能実習と異なり、外国人の側で転職することが認められています。

すなわち、外国人労働者の方が、雇用契約を締結している企業を自ら退職して、他の企業へと就職することが可能なのです。

そのため、特定技能の在留資格をもった外国人向けの求人媒体や企業とのマッチングをサポートするサービスが普及する可能性も十分にあります。

技能実習生を受け入れるのではなく、いわば特定技能の中途採用市場に参入する企業も出てくるかもしれません。

もっとも、あらゆる企業が特定技能の在留資格をもつ外国人労働者を雇用することができるわけではなく、受け入れる企業の側にも要件があります。

その要件の一つとして、企業は労働法令を遵守していなければなりません。

そのため、日本人以上に労働条件のマネジメントが必要になります。

技能実習を受け入れている企業の労働法令違反による認定取消しが2018年12月以降、複数なされていますが、認定取消しを受けた企業は今後5年間、特定技能の外国人労働者を採用することができません。

したがって、企業としては、そのような事態に至らないように労務管理を行わなければなりません。

詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

また、人財戦略としての外国人労働者という観点だけでなく、企業にとって、新たなビジネスチャンスも生み出すかもしれません。

先ほどの求人媒体やマッチングサービスといったものをはじめ、外国人向けの賃貸マンションを多く取り扱う不動産仲介会社や外国人料理店、外国人向けの食材を多く取り揃えたスーパーのように、外国人向けのサービスにポジショニングする企業が出てくる可能性もあります。

特に、外国人にとって、住宅を借りるのに、保証人の問題や敷金、礼金といった初期費用の問題が生じやすいため、その問題をクリアできる物件を数多く取り扱っているというのは、他の不動産仲介会社との差別化要因になるでしょう。

 

 

まとめ

弁護士西村裕一外国人労働者の採用を検討している場合には、専門家である弁護士に相談しながら進めることでリスクやトラブルを回避することができます。

疑問やお悩みをお持ちの企業はまずは専門家にご相談することをオススメいたします。

ご相談は流れはこちらをご覧ください。

 





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