管理職も働き方改革が必要!?【弁護士が解説】 

執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士

  • 管理職であっても勤務時間を管理しなければなりませんか?
  • 管理職も働き方改革の対象となりますか?
  • 管理監督者とはどういう意味ですか?

デイライト法律事務所の労働事件チームには、このような管理職の労働問題に関するご相談が多く寄せられています。

管理職の働き方改革の必要性について、労働事件に精通した弁護士が解説しますので、ご参考にされてください。

管理監督者の労働時間の把握義務

法改正による労働時間の把握義務

雇用形態

従来、管理監督者の労働時間については、把握は義務化されていませんでした。

しかし、2018年6月、長時間労働の是正などを目的とした働き方改革関連法案が成立しました。

これまで、特別条項付きの36協定を締結することで、実質制限なく時間外労働を行うことができましたが、同法案により、2019年4月から、単月では100時間未満、2〜6ヶ月の月平均では80時間未満、月45時間を超える時間外労働は年6回までという規制がなされるようになりました。

こうした長時間労働規制の流れを汲むように、厚生労働省は、労働安全衛生法の省令を改正し、2019年4月から管理監督者(労基法41条2号)について、労働時間を把握することを企業に義務付けました。

そのため、経営者の方や人事労務担当者の皆様は注意が必要です。

管理監督者とは?

労働問題労基法上の管理監督者とは、労働条件の決定やその他の労務管理について経営者と一体的立場に立つ者のことをいいます。

こうした従業員は、自ら労働時間について裁量権があり、地位に応じた相当の報酬を受けることになるため、労働時間の規制を及ぼすことが不適当と考えられています。

したがって、管理監督者は法定労働時間や休日労働、割増賃金などの規制の適用を受けません。

管理監督者については、具体的に、どのような労働者が該当するかが実務上問題となります。

管理監督者の具体例について、くわしくはこちらのページで解説しておりますので、ご参考にされてください。

 

管理監督者の労働時間の把握が必要に

時計管理監督者は、このような立場にあるため、労働時間を把握することは義務付けられてはいませんでした。

しかし、管理監督者であるからといって、長時間労働が正当化されるというわけではなく、労働者全体について労働時間の適正化を図る必要があります。

また、働き方改革関連法案の成立により、一般の労働者の長時間労働に制限がかかったことから、そのしわ寄せが管理監督者にくる可能性があります。

こうした事情を踏まえて、厚生労働省は管理監督者の労働時間の把握を義務化することを決定したと思われます。

 

客観的記録で労働時間の把握を

企業は、労働者名簿、賃金台帳だけでなく、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類を3年間保存しなければなりません(労基法109条)が、厚生労働省は、この保存義務の対象に管理監督者も含めるよう労働安全衛生法の省令を改正します。

この改正により、企業は管理監督者の労働時間を把握することが義務付けられることになるのです。

タイムカード労働

厚生労働省作成のガイドラインでは、企業は、労働時間を適正に把握するため、労働者の労働日ごとの始業・ 終業時刻を確認し記録しなければならず、その確認方法としては、使用者自らが労働者の始業・終業時刻を確認する方法、あるいは、タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し記録することが求められます。

自己申告制による場合には、適正に申告を行うことを労働者に対して十分に説明をして、必要に応じて、労働者の申告している労働時間が実際の労働時間と整合しているか調査を実施するなどして、労働時間が適正な申告がなされているかを確認すること等が求めれらます。

2019年4月以降は、企業はこうした労働時間の把握を管理監督者に対しても実施していかなければなりません。

 

管理職も働き方改革が必要?

働き方改革に対しては、役職がない従業員を前提に対策を取っている企業が多く見受けられます。

しかし、管理職であっても、以下の理由から、働き方改革を進めていく必要があると思われます。

生産性の向上

働き方改革の本来の目的は、「長時間労働の是正」ではありません。

日本は、欧米の先進国と比較すると、生産性が低いという問題があります。

働き方改革の主目的は、この生産性を向上させて、国際的な競争力を増大させようというものです。

生産性を向上させるためには、不必要な労働を削減し、労働のパフォーマンスをアップすることがポイントとなります。

管理職となると、業務が複雑で、かつ、責任も重いため、そう簡単には労働時間を削減できないかもしれません。

しかし、企業は、管理職も含めて、「全社員の生産性を向上させる」というスタンスをもち、創意工夫により、改革を実行していくべきです。

 

従業員満足度の向上

近年、顧客満足度だけではなく、従業員満足度の高さが注目を集めています。

従業員満足度が高い会社は、離職率の低下をもたらすだけではなく、優秀な人財の獲得にもつながります。

また、優秀な人財がいれば、企業の業績もアップするはずです。

企業が管理職の働き方改革を推進すると、管理職だけではなく、非管理職の従業員の満足度も向上すると思われます。

例えば、非管理職は早い時間に帰社できるのに、管理職は深夜まで残業している状況をイメージしましょう。

このような会社では、非管理職の社員は、「将来、管理職に昇進したい」というモチベーションはもちにくいのではないかと思われます。

 

残業代請求のリスク

残業する社員多くの会社において、管理職は長時間労働の傾向にあります。

例えば、残業時間が1か月で100時間を超えている管理職はめずらしくありません。

また、管理職は、一般的に給与が高いことから、時間外労働手当を算出するときの基礎単価も高額になります。

そのため、管理職から残業代を請求されると、高額化する傾向です。

このような管理職からの残業代請求に対しては、労働基準法第41条の「監督若しくは管理の地位にある者」に該当することから残業代を支払わなくていい、と考えている企業が多く存在します。

しかし、同法の管理監督者とは「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」をいい、裁判例では、厳格に解釈されています。

したがって、管理監督者に該当すると判断されない可能性が高いと思われます。

このような状況のため、管理職が長時間労働の傾向にある企業は、残業代請求のリスクがあると考えられます。

 

 

まとめ

向上以上、管理職の働き方改革について、詳しく説明しましたがいかがだったでしょうか?

管理職の働き方改革を推進するためには、まず、実態としてどの程度の労働時間を行っているのかを適切に把握する必要があります。

そして、長時間労働が美徳であるという考えを捨てて、「生産性を重視する」という組織文化へと変革すべきです。

しかし、具体的にどのような改革を行っていくべきかは、専門家でなければ判断が難しい場合があります。

また、働き方改革においては、労働法令に抵触しないように注意しなければなりません。

そのため、働き方改革の具体的な方法等については、労働問題に精通した弁護士へ相談されることをお勧めいたします。

弁護士鈴木啓太デイライト法律事務所には、企業の労働問題を専門に扱う労働事件チームがあり、企業をサポートしています。

まずは当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。

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執筆者
弁護士 鈴木啓太

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 法人分野:労務問題 個人分野:人身障害事件  

実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士。労務問題に注力。企業向けに働き方改革等のセミナー講演活動を行う。「働き方改革実現の労務管理」「Q&Aユニオン・合同労組への法的対応の実務」等の書籍を執筆。





  

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