弁護士コラム

女性が活躍できる労務管理


不景気のイメージ画像日本は、人口減少が加速しています。

総務省が公表しているデータによると、日本の人口は、2030年の1億1,662万人を経て、2048年には1億人を割って9,913万人となり、2060年には8,674万人になるものと見込まれています。

また、生産年齢人口(15~64歳の人口)は2010年の63.8%から減少を続け、2017年には60%台を割った後、2060年年には50.9%にまで落ち込むと予想されています。

労働力の減少は、日本経済の縮小をもたらします。

今後、日本が成長を続け、豊かな社会を保つには、ヒトを含めた資源を有効活用し、かつ、今まで以上の効率性が必須です。

そのためには、女性や高齢者の活躍、AI(人工知能)の有効利用、経済のグローバル化など、様々な取り組みが必要です。

女性や高齢者に活躍してもらうためには、そのための社会基盤(定年年齢の引き上げや税制などの政策)の構築が必要不可欠です。

しかし、国まかせではいけません。

企業が限られた労働力を獲得し、成長を続けるためには、経営戦略と一貫した人材戦略や人材マネジメント・システムを構築して、優秀な人材を採用し、効果的に育成していかなければなりません。

そのために、経営幹部には、労働法令、マネジメントに関する知識が必要です。

今回のコラムでは、女性活躍の基盤となる、労務管理のあり方について、ご紹介いたします。

 

育児休業

ikujikaji.gif女性にとって、最大の悩みは、出産・育児と仕事の両立です。

特に、乳幼児の監護は、昼夜を問わず、四六時中、子どもへの授乳や排泄物の処理をするなど大変です。

そのため、法律では、一定の要件のもとに、1歳未満の子を養育するための休業が認められています。

また、平成28年3月、⾮正規雇⽤労働者の育児休業の取得促進や妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益取扱い等の防止を図るために、法改正が行われ、育児と仕事の両立の支援が見直されました。

改正後の育児休業についての概要はこちらをごらんください。

使用者は、この育児休業法を十分に理解し、法律の定めに従って、労働者から申請があれば、育児休業を取得させなければなりません。

これは、当然のことですが、大企業、中小企業を問わず、育児休業を制限するなど、違法な労務管理が行われていることがしばしばあります。

まずはこの育児休業法を遵守することが最低限必要です。

 

 

法定を超えた育児休業

098426.jpg法定の育児休業は、あくまで最低限のものです。

実際に、女性が育児のストレスに悩まずに、十分に稼働するためには、法定の育児休業では到底たりません。

そこで、法定の育児休業を超えたサポートを行うことが企業には期待されています。

例えば、育児休業の期間は、原則として子が1歳未満の間です(保育所に入所できないなどの理由がある場合1年6か月まで)。

しかし、子どもの発育状況によっては1年での職場復帰が難しいこともあります。

そこで、育児休業期間を伸長して、1年半や2年間まで認めるなどの取り組みも検討してはいいのではないかと思います(実際に、育児休業期間を伸長している先進的な企業も存在します。)。

 

【その他法定を超えた取り組みの例】

法定を超えた時短勤務(※)

法律上は、満3歳になる前の子供を育てている労働者が対象ですが、これを例えば小学校3年生までとするなど。

※時短勤務とは、就業時間を原則1日6時間とするものです。

子の看護休暇

法律上、小学校就学するまでの子を養育する労働者は、1年に5日まで、病気・けがをした子の看護又は子に予防接種・健康診断を受けさせるために、休暇が取得できます。

これを例えば、小学校3年生まで伸長するなどの取り組みが考えられます。

 

 

出産・育児を理由とする不利益取扱いの禁止

以下のような事由を原因として、不利益に取り扱うことは違法です。

069971.jpg妊娠中・産後の⼥性労働者の
・妊娠、出産 ・妊婦検診などの⺟性健康管理措置
・産前・産後休業
・軽易な業務への転換
・つわり、切迫流産などで仕事ができない、労働能率が低下した
・育児時間
・時間外労働、休日労働、深夜残業をしない子どもを持つ労働者
・介護をしている労働者の
・育児休業、介護休業
・育児のための所定労働時間の短縮措置(短時間勤務) 介護のための所定労働時間の短縮措置等
・子の看護休暇、介護休暇
・時間外労働、深夜残業をしない ※

不利益取扱いとは、解雇、雇止め、契約更新回数の引き下げ、降格、減給、賞与等における不利益な算定、不利益な配置変更、昇進・昇格の⼈事考課で不利益な評価を⾏うことなどをいいます。また、改正法によって、事業主は、上司・同僚が職場において、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする就業環境を害する⾏為をすることがないよう防止措置を講じなければならなりません。今後、事業主は、労働者への周知・啓発、相談体制の整備等を積極的に実施していくべきです。

 

 

復職しやすい体制の整備

育児休業を取得した従業員は、職場復帰しにくいなどと感じることが多々あります。

そこで、職場復帰をサポートするために、次のような取り組みが考えられます。

 

社内SNSの利用

会社によっては、社内で従業員交流サイトを独自に構築しているケースがあります。

また、きちんとしたサイトを構築しなくても、フェイスブックのグループ機能や、googleプラスなどのSNSを利用すれば、社員が気軽に投稿できる掲示板を作成することが可能です。

このようなSNSを利用して休業中を含めた従業員同士が交流することで、職場を離れていても復帰しやすい雰囲気を醸成することが期待できます。

 

オリエンテーション

出産・育児休業を取得した社員に復職時のオリエンテーションを実施し、育児をしながら勤務する上でのポイントを紹介したり、グループ内のロールモデルを紹介したりする取り組みもあります。

 

 

時間単位の有給休暇

育児休業は、基本的には無給であること(ノーワーク・ノーペイの原則。雇用保険の給付はあります。)、取得には上記に上げた一定の要件が必要であること等の理由により、子育てを行っている女性には十分な制度とはいえません。

平成22年に施行された、時間単位の有給休暇制度を利用する方法が考えられます。

これは、年次有給休暇を時間単位で付与できるという制度です。

これまでも、半日単位の有給休暇は可能でしたが、より柔軟に有給休暇を取得しやすくなります。

472385.jpg例えば、子どもを病院に連れていくため、午前9時から午前10時までの1時間を有給休暇で取得するなどです。

より子どもを持つ女性が働きやすくなる制度といえます。

また、子育て女性にかぎらず、年次有給休暇の消化を推進するというメリットもあります。

なお、導入には労使協定の締結が必要となります。

この制度についてくわしくはこちらをごらんください。

 

 

企業内保育所の設置

542152.jpg現在、日本でも働く女性を積極的に企業が採用していく動きがありますが、その中でも子育て中の女性にとって保育問題は大変な課題のひとつです。

近年では、政府による助成金の支給等の施策により、企業内で保育所をつくる取組みが広がっています。助成金を利用することで、経営的には赤字とならずに、企業価値を高める効果が期待できます。

今月、政府は、先月までに助成先に38都道府県の150保育所(利用定員3887人分)が決まったと発表しました。都市部では、場所の確保等に困難がともないますが、今後も企業内保育所は増加していくことが予想されます。

なお、制度や助成金の内容について、くわしくは当事務所までご相談ください。

 

 

男女差のない労働条件(昇進、給与、転勤)

雇用機会均等法は、配置(業務の配分及び権限の付与を含む)・昇進・降格・教育訓練、一定範囲の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由とする差別を禁止しています。

 

 

女性役員等の積極登用

528546.jpg雇用機会均等法が定める男女差別の禁止は当然守らなければなりませんが、近年では、女性がもつ能力を重視し、役員や幹部社員への積極的な登用を行なう企業が見られます。

また、これらの先進的な企業では、優秀な女性社員が素晴らしい業績を出しています。

しかし、多くの企業では、女性の力は軽視されがちです。

企業は、「女性に重要な仕事はまかせられない」という、日本的な固定観念は捨てて、女性社員の能力を客観的に判断すべきです。

むしろ、男性よりも、創造力、リーダーシップ、マネジメント能力等に優れた女性社員はたくさんいます。

このような社員を採用、育成して、積極的に幹部等へ登用することはその企業の成長に寄与するはずです。

そのために、女性社員の意識改革や、キャリア開発支援プログラム、キャリア相談室の設置などは有用です。

 

 

その他の取り組み

その他、企業独自での取り組みの例をご紹介します。

・ベビーシッター利用料補助(チケット制)
・パート社員のステップアップ選択制度の運用 ・終業時刻にチャイムを鳴らして帰宅を促す。
・子連れ出勤の許容
・在宅勤務制度の導入(週 1 回など。取得事由を育児に限定するなど。)
・社内にママ友の会など、子育て世代の交流の場をつくる。

 

 

経営トップの方針

弁護士宮﨑晃画像上記のとおり、女性が働きやすい、活躍できる労務管理について、様々な施策を紹介しました。

しかし、最も大切なことは、経営トップの自覚です。

女性の力を活用することが、自社のみならず、日本社会にとってプラスになること、また、その社員の人生を幸福にできることを他のどの社員よりも深く自覚しなければなりません。

そして、経営トップは、会社として、女性が働きやすい、活躍できる職場を目指すことを全社員に周知徹底すべきです。

また、そのための具体的な取り組みについて、経営戦略等のアクション・プランに落とし込み、確実に実行していくことが大切です。

 

 


この記事を書いた人

弁護士 宮崎晃

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