優秀な人材とは?特徴や見分け方について解説
優秀な人材とは、その組織の理念や目的を達成するために貢献してくれる人物と言えます。
優秀な人材は、企業にとって、人「財」となります。
多くの企業は、人財を確保すべく、努力されていると思います。
しかし、優秀な人材を採用することは容易ではありません。
採用活動においては、求人の出し方や選考基準、労働条件の明示など、法的な側面にも十分な配慮が求められます。
ここでは、優秀な人材の特徴や見分け方について解説していきます。ぜひ参考になさってください。
目次
優秀な人材とは
優秀な人材とは、その組織の理念や目的を達成するために貢献してくれる人物と言えます。
会社など、すべての組織には活動する理由があります。
その理由のことを、「理念」「目的」「使命」などといいます。
組織のゴールと言ってもいいでしょう。
例えば、Googleのゴールは、「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにする」です。
組織が人材を採用するのは、ゴールを達成したいからです。
したがって、優秀な人材とは、そのゴールを達成できるように尽力してくれる人物のはずです。
優秀な人材だとすぐわかる共通点
組織が目指すゴールはその組織によって異なります。
例えば、Googleのゴールと、病院、法律事務所、建設会社、学校、自衛隊、介護事業所などで、まったく異なります。
したがって、優秀な人材かどうかは、厳密にはその組織によって異なります。
ただ、一般的な傾向として、次のような特徴がある人材は、ほとんどの組織で優秀な人材にあてはまるでしょう。
計画力と実行力がある
会社が立てた目標を実現するためには、具体的な道筋を計画できる能力が必要です。
また、計画するだけでなく、それを実行できるかが問われます。
良好な人間関係の構築
組織である以上、同僚、上司、部下などとのコミュニケーションが必要となります。
また、顧客や取引先などのステークホルダーとの関係性を築くことも重要です。
前向きで努力を怠らない
仕事で多少のミスや失敗をしても、必要以上にへこまず、ポジティブでなければなりません。
また、スキルアップのために、向上心を持って努力していくことも重要です。
会社の利益や将来を考えて行動ができる
組織のメンバーである以上、重要な場面では「個」ではなく「全体」のために考えて、行動しなければなりません。
もちろん、個人的な利害(例えば、昇給や賞与など)もモチベーションのために重要ですが、「個」を「全体」よりも重視するようになると、組織全体に悪影響が出るでしょう。
優秀な人材の求人ポイント
まずは自社にとって必要な人財を考える
人材が重要だとしても、その中身を検討せずに採用活動を行うのはナンセンスです。
企業は、採用のために活動しているわけではありません。
企業にはその存在目的があります。
存在目的のことを、企業理念といったり、ミッションといったりすることもあります。
呼び方はどうでもいいのですが、結局、企業は何のために活動するのか、これを言語化して明確にすることが重要です。
企業理念は企業活動の礎であり、これによって、企業のビジョンや経営戦略は異なってきます。
ビジョンとは、企業理念を達成するための具体的な数値目標と考えてください。
また、経営戦略とは企業理念やビジョンを実現するための打ち手です。
経営戦略の策定には、企業理念だけではなく、環境(顧客、自社、競合)を分析して立案します。
経営戦略を策定する中で、自社にとって必要な人財は何なのかが明確になるはずです。
大企業の場合、部門によってビジネスの特徴が異なるため、必要な人財についても異なる可能性があります。
自社にとって必要な人財が明確になれば、その人財を充足するための人材戦略を検討します。
人材戦略は、言い換えれば人事システムです。
これは、大別すると、採用→配置→評価→報酬→育成のサイクルとなります。
上記のうちで、最も重要なのは、入り口の「採用」だと考えています。
なぜならば、優秀な人材であれば、教育訓練にそれほど経営資源を投下する必要がなく、自ずから人財となる可能性があるからです。
ここでは、上記のうち、最も重要な採用について解説します。
有効な求人媒体の選択
求人媒体には、公的なものとして、ハローワークがあります。
これは無料で利用できます。
ただし、労働関係法令に違反しないように、求人の掲載内容について細かい行政指導があります。
その他、リクルートなどの民間会社の有料求人媒体があります。
これらの求人媒体は、インターネットのオンライン情報や求人誌の紙媒体があります。
また、業種によってはその業種に特化した求人媒体もあります。
さらに、ヘッドハンティング、知人の紹介なども求人媒体といえるでしょう。
これらの多様な求人媒体の中から、自社が必要とする人材を獲得するためには、どの求人媒体が最も有効かを選択します。
例えば、ハローワークだけで十分な企業や、ハローワークではまったく採用できない企業もあると思います。
有料求人媒体を利用する場合、自社が獲得したい人材が最も閲覧する可能性が高い媒体を選択します。
求人情報の掲載に要注意
求人媒体が確定したら、次に、求人情報を掲載しますが、ここでは以下の点に注意しましょう。
事実と異なる記載
例えば、「基本給月額20万円、賞与支給」という求人情報を掲載しているのに、採用後、実際には「基本給を16万円しか支給しない」「賞与を支給しない」などはわかりやすい問題例です。
特に、賃金は労働者が生活するための重要な労働条件です。
期待して入社したのに実際は待遇が悪いという状況は、後日労使紛争が起きやすいパターンですので注意しましょう。
また、賃金以外にも、「転勤なし」「残業なし」「職種変更なし」などと求人情報に掲載しておいて、採用後は転勤、残業、職種変更を命じたりする場合も問題となり得ます。
これらの労働条件をめぐるトラブルは、後日、裁判になったり、労基署から調査が入ったり、ユニオンから団体交渉を申し入れられたりする可能性があります。
企業の中には、少しでも良い人材を獲得するために、待遇をよく見せたいと考える事業所もあるかもしれません。
しかし、トラブルを防止するために、重要なことは採用する労働者に待遇についての実際と異なる期待を抱かせないことです。
そのため、企業は、「求人情報には最低限の労働条件を掲載する」というスタンスを持つべきです。
そうすると、採用後、労働者は「期待以上の待遇だった」と思ってもらえるため、トラブルの発生確率が激減します。また、従業員満足度もアップするためモチベーションが上がるでしょう。
条件を絞りすぎない
優秀な人材は会社にとって生命線となります。
そのため、採用する側としては、高い条件を設定したくなるでしょう。
しかし、入口の条件を絞りすぎると、本当はその会社にとって優秀な人材であるのに、母集団に加わらないリスクがあります。
そのため、求人情報の条件は絞りすぎず、会社にとって、最も重要だと考えるものに限定することをお勧めいたします。
迅速な対応
上で解説したような、優秀な人材の特徴に該当する人物は、他の企業も欲しがるでしょう。
そのため、エントリーがあったら迅速に対応することがポイントとなります。
これは、「焦ってすぐに採用する」ということではありません。
例えば、エントリーがあったら、できるだけ早く面接を調整する、などの対応のスピードを早めることが重要です。
契約社員について
日本では、正社員として採用すると、解雇はよほどのことがないとできません。すなわち、労働契約法16条は、解雇について、客観的合理性、社会通念上の相当性という要件を求めています。この要件を充足するのは、よほどの事情が必要です。
しかし、企業はいつも業績が良いとは限りません。業績が悪化すれば、一定数の従業員を解雇せざるを得なくなります。
そのため、企業としては、いざというとき、ある程度余剰人員を切りやすいようにしておきたいと考えるのは当然です。
このような企業のニーズに適合するのは契約社員です。
すなわち、契約期間に定めのある雇用形態(例えば、「契約期間6か月:更新有り」など)として、労働者を採用すれば、もし、業績が悪化した場合、更新しない(いわゆる「雇止め」)にすることで、労働力をある程度調整できます(ただし、後述するように、無期転換申込権には注意が必要です。)。
ただ、ここで注意しなければならいのは、契約社員として採用するのであれば、その旨労働条件通知書等できちんと明示しなければならないということです(この点については後記において詳述します。)。
また、フルタイム労働者については、契約社員という条件では、なかなか優秀な人材は集まらないということです。
もっとも、専門性が高い職務の場合に、双方ミスマッチがないかを確認するためであれば、この契約社員という雇用形態は、むしろ無期雇用よりも望ましい場合があります。
採用される側にとっても、離職する際、「自主退職」よりも「契約期間満了」の方が再就職等に有利になる可能性があるからです。
また、求める人材がパートタイマーであれば、契約社員の募集でも、更新可能性があることを明示すれば、優秀な人材が集まる可能性は十分にあると考えます。
企業としては、契約社員として採用するか、正社員として採用するか、十分に検討して求人を掲載すべきです。
優秀な人材を見分けるポイント!
ここでは、優秀な人材を見分けるポイントについて、ご紹介します。
人間性を注視する
上で解説したような、優秀な人材の特徴は、いずれもその人の人間性に関係するものです。
したがって、学歴や職歴よりも、最も重要なのはその人の人間性と言えるでしょう。
求職者の人間性が自社の組織文化と合っているか、という点に着目されるとよいでしょう。
インターンシップの導入
求職者の人間性を知るために、インターンシップは極めて重要です。
短期間でも一緒に働くことで、その人の人間性を知ることができます。
また、求職者にとっても、職場の雰囲気がよくわかります。
そのため、双方ともミスマッチを防ぐことができるでしょう。
エピソードの信憑性
採用面接のときなどに、求職者は学生時代や前職の成果(エピソード)をアピールしてきます。
このとき、そのエピソードが虚偽ではなく、事実がどうかの見極めが必要です。
エピソードの信憑性については、その裏付けとなる資料があるかどうかを確認します。
その裏付けがなければ、エピソード自体の具体性を検証しましょう。
事実の話は具体性があるためです。
将来のビジョン
求職者が前向きで努力を怠らないか、会社の将来を考えて行動できるか、といった点を評価するために、面接の際に、将来のビジョンを訪ねてみるとよいでしょう。
優秀な人材が転職する理由
せっかく優秀な人材を獲得できても、転職してしまうことがあります。
ここでは、転職する理由として考えられるものをピックアップします。
仕事量が多くなっている
業務量があまりにも多いと、優秀な人材とはいえ疲労がたまります。
特に、メンタル面で不調となると、離職しやすくなるでしょう。
もっと裁量権を持って働きたい
優秀な人材は平均的な社員と比較して、上司から指示されるよりも自律的に働きたいと考えます。
特に、仕事のやり方に対する自由度が乏しいと、不満が大きくなり、離職に繋がります。
評価や報酬への不満
企業では社員の勤務評定とそれに応じた適切な待遇の付与が重要です。
会社の評価が自己評価とかけ離れていると、正当に評価されていないと感じ、離職しやすくなります。
よりスキルアップしたいため
現在の職務内容に物足りなさを感じると、スキルアップのために転職することが考えられます。
会社の将来性に不安がある
会社が成長していない、経営トップや上司の能力が低い、などと感じると、将来性が高い企業への転職が考えられます。
優秀な人材の転職を防ぐには?
仕事量や内容について話し合う
転職を防ぐには、現在の問題点を把握する必要があります。
上司は適宜面接し、社員の業務の状況や考えを知るようにしましょう。
裁量権を適切に付与
社員が優秀で、かつ、ある程度の経験年数があれば、それにふさわしい裁量を付与すべきです。
長年貢献してくれている社員には、仕事のやり方だけでなく、役職を与えるなどして人事権や予算の支出権限を付与してもよいでしょう。
評価基準を明確化
社員が上司の評価に不満を持つ原因の一つは評価基準が不明確であるということが考えられます。
会社は適切な評価基準を策定し、かつ、その評価基準を被評価者に事前に開示しておくべきです。
報酬の見直し
優秀な人材ほど会社に対する貢献度が高いです。
年功序列ではなく、貢献度に応じた適切な待遇を付与できるよう、報酬の見直しを適宜実施しましょう。
優秀な人材でよくあるQA
ここでは、優秀な人材の採用に悩む企業のよくあるご質問を紹介します。
絶対に採用してはいけない人材とは?

モンスター社員と言っても、様々なタイプがいますが、筆者の考えとしては、他の従業員に対してハラスメントを行うタイプは絶対に採用すべきではありません。
まとめ
以上、優秀な人材について、特徴、採用のポイント、転職防止などを解説しましたが、いかがだったでしょうか。
人手不足が加速する中、企業が持続的に成長するために、優秀な人材の獲得は今まで以上に重要となっています。
優秀な人材の獲得や育成でお悩みの企業の方は、労務問題にくわしい専門家にご相談の上、人事戦略を立てていくことをお勧めいたします。
当事務所では、人材採用の他、各種労務問題に苦しむ企業様を強力にサポートしています。
労務問題については、当事務所までお気軽にご相談ください。

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士
所属 / 福岡県弁護士会
保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者
専門領域 / 法人分野:労務問題、外国人雇用トラブル、景品表示法問題 注力業種:小売業関連 個人分野:交通事故問題
実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士であり、北九州オフィスの所長を務める。労働問題を中心に、多くの企業の顧問弁護士としてビジネスのサポートを行っている。労働問題以外には、商標や景表法をめぐる問題や顧客のクレーム対応に積極的に取り組んでいる。

採用についてもっとお知りになりたい方はこちら