セクハラの処分について|処分の基準や対応方法について弁護士が解説

執筆者
弁護士 竹下龍之介

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士


セクハラ行為とは

セクハラの定義(セクハラ防止指針)

セクハラ(セクシャルハラスメント)とは、一般的には、相手方の意に反する性的言動のこととされています。

どのような行為がセクハラにあたるのか

セクハラ行為には、3段階のレベルがあるとされています。

セクハラ3段階

レベル3刑事上のわいせつ罪にあたる行為

相手の意思に反して性行為を行うこと。

性行為とは、性交渉に限らず、陰部や乳房を弄ぶ行為やキスをする行為等を含みます。

レベル2民事上の不法行為にあたる行為

宴会の席上で押し倒す行為や、衣服の上からお尻を触る等の行為

現実的に刑事上は処罰するのが難しい行為が、該当します。

レベル1セクハラ指針に該当する行為

性的な冗談を言う、執拗に食事に誘う、不必要に身体を触る、お酒の席でお酌を強要する、「おばさん」等と呼ぶ等が該当します。

セクハラ行為で会社が負う責任とは?

セクハラ指針における措置義務の内容

セクハラに関するガイドラインは、会社に対して、次の10の措置を求めています。

必要な措置 具体例
事業主の方針等の明確化・周知・啓発
  1. ① 会社のセクハラに対する方針を文書化して周知
  2. ② セクハラ行為者に対し厳正に対処する旨の周知
相談体制の整備
  1. ③ 相談窓口の設定
  2. ④ 窓口担当者の教育・研修
事後の迅速・適切な対応
  1. ⑤ 事実関係を迅速・正確に把握
  2. ⑥ 速やかな被害者に対する配慮の措置
  3. ⑦ 行為者に対する適正な措置
  4. ⑧ 再発防止措置
その他
  1. ⑨ プライバシー保護のための措置
  2. ⑩ 相談したこと・協力したことをもって不利益な取り扱いをしてはならない旨の周知

会社が負う責任

仮に、社内でセクハラ問題が生じたとしましょう。

被害者は、会社に対し、不法行為責任(民法715条の使用者責任)、債務不履行(安全配慮義務違反・民法415条)等を根拠に、民事上の損害賠償請求を行う可能性があります。

均等法やセクハラ指針が要請する上記の10項目の措置を会社がとっていない場合、裁判所によって義務違反が認定され、会社の責任が認められてしまう可能性が高まります。

その意味で、均等法の要請に従い、10項目の措置をとることは非常に大切です。

なお、10項目の措置をとってさえいれば会社の責任が認められないというわけではありません。10項目の措置すらとっていないと、会社としては戦えないという程度で理解されておくのが良いでしょう。

不法行為

 

 

セクハラ行為の処分で多いもの

セクハラ行為の3段階

セクハラ行為には、3段階のレベルがあるとされています。

セクハラ行為には,3段階のレベルがある

レベル3刑事上のわいせつ罪にあたる行為

最も強度のレベルが、刑事上のわいせつ罪にあたる行為です。

具体例

例えば、女子社員に対し、その意思に反して性行為を行えば、強制わいせつ罪(刑法176条)、強制性交罪(刑法177条)等になります。

性行為とは、性交渉に限らず、陰部や乳房を弄ぶ行為やキスをする行為等を含みます。

加害者は、①刑事上の責任、②民事上の責任、③会社内での責任を負うことになります。

例えば、強制わいせつ罪は、刑法で、6ヶ月以上10年以下の懲役と規定されています。

また、意に反した性行為は、被害者の性的自由を侵害することになるため、民事上の不法行為(民法709条)が成立し、加害者はその損害を賠償しなければなりません。

さらに、会社は、企業秩序を維持するために、加害者に対し、懲戒処分を行うことができます。

参考:刑法 | e-Gov法令検索民法 | e-Gov法令検索

レベル2民事上の不法行為にあたる行為

次のレベルが、民事上の不法行為にあたる行為です。

刑事上のわいせつ罪に該当するほどの強度の行為ではなくとも、民事上の不法行為に該当すれば損害賠償の対象になります。

具体例

例えば、宴会の席上で押し倒す行為や、衣服の上からお尻を触る等の行為で、(講学上、強制わいせつ罪に該当するかは別として)現実的に刑事上は処罰するのが難しい行為が、このレベルに該当します。

加害者は、②民事上の責任(損賠賠償)、及び、③会社内での責任(懲戒処分)を負うことになります。

レベル1セクハラ指針に該当する行為

その次のレベルが、均等法の要請を受け定められたセクハラ指針に該当する行為になります。

具体例

例えば、性的な冗談を言う、執拗に食事に誘う、不必要に身体を触る、お酒の席でお酌を強要する、「おばさん」等と呼ぶ等が該当します。

加害者は、③会社内での責任(懲戒処分)を負うことになります。

セクハラ行為で行われる懲戒処分で多いもの

会社は、セクハラ行為の加害者に対し、会社内で責任をとらせるべく、懲戒処分を行うことができます。例えば、懲戒解雇、普通解雇、降格、出勤停止、減給、譴責、戒告等がありえます。

ただし、その程度に応じて適切な懲戒処分しか行なえませんので、安易に解雇等の厳しい処分をすると、処分が無効となり、かえって会社にダメージになることがあるので注意してください。

現に、男性上司が飲み会の席で女性の部下の手を握る、肩を抱く等の行為を行った行為をセクハラに該当するとはしつつも、本件の行為は強制わいせつ罪にあたるような行為とは一線を画するとして、懲戒解雇を無効とした裁判例(東京地裁平成21年4月24日判決)もあります。

上記のとおり、セクハラに対する懲戒処分は様々なものがありますが、ここではセクハラに対して、適用される可能性が高い懲戒処分について、ご紹介します。

 

出勤停止
出勤停止とは、会社が処罰として従業員の出勤を一定の日数にわたり停止するものです。
出金を停止された従業員は働くことができず、その間の給料ももらえません。
減給処分
減給とは、会社が処罰として従業員の給料を一定の期間だけ減らすことです。
例えば、「2か月間・10分の1減給」という形になります。
降格処分
降格とは、会社が処罰として従業員の社内上の地位を下げるものです。
例えば、課長から係長に降格する、などです。
懲戒解雇
(懲戒処分を変更:懲戒処分は処分全般を指すため適さないと判断)
懲戒解雇とは、会社が 処罰として強制的に従業員を解雇するものです。
懲戒解雇の処分を受けた従業員には、退職金を支給しないのが一般的です。
懲戒解雇は、懲戒処分の中でもっとも重いものといえます。
その他の懲戒処分

上記の他にも、セクハラの程度によっては他の軽い処分の可能性もあります。

事案に応じて、適切な処分を行うように注意してください。

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懲戒処分の種類

では、セクハラに対する処分の内容はどうやって決めれば良いのでしょうか。

 

 

処分の内容はどうやって決める?セクハラ行為の基準

会社が行う懲戒処分の内容についても、セクハラ行為の3段階を意識すべきです。

つまり、加害行為のレベルが強度であるほど、重い懲戒処分を選択することが可能です。

刑事上の強制わいせつ罪等

刑事上の強制わいせつ罪等にあたる行為であれば、刑法上の犯罪行為ですし、それが会社内で行われたことに鑑み、加害者を解雇することは有効になるでしょう。

懲戒解雇又は普通解雇の選択は、懲戒解雇の方が重い処分となるため、その行為の程度や内容、反省の有無等で判断することになるでしょう。

民事上の不法行為

民事上の不法行為に該当する行為については、1回目の行為で、即、解雇を選択することは原則としては難しいです。

降格、出勤停止のような、労働契約の存続を前提とした処分を選択することになります。

もっとも、1回目の行為であり、法的に争われると解雇は無効になる可能性が極めて髙いとはいえ、労働契約が存続すると、会社にとっても加害者にとっても好ましくないこともあります。

例えば、加害者の存在により会社内の雰囲気は悪化しますし、加害者も気まずいでしょう。

そのような場合は、会社は、加害者に対し、退職勧奨を行ない、加害者がそれに応じるということは珍しくありません。

なお、1回目の行為ではなく、2回目、3回目の行為ということであれば、解雇も有効になる可能性が髙いです。

セクハラ指針に該当する行為

均等法の要請を受けたセクハラ指針に該当する行為については、特に1回目の行為については、比較的軽い、戒告や譴責等の懲戒処分を行うのが穏当です。

内容によっては、懲戒処分に至らない、注意・指導にとどめておいた方が良いこともあるでしょう。

例えば、女子社員が「男性社員からしつこく食事に誘われた」と訴えてきた場合、その事実があれば、セクハラ指針でいうところの性的な言動には該当するかもしれません。

しかし、それをもって、すぐに懲戒処分というのは重きに失します。

まずは、注意・指導を行ない、それでも改善されない場合に、懲戒処分を行うというのが正しい対応でしょう。

また、この類型のセクハラ行為を処分する場合、会社内で予防のための研修等を行っていたかは重要です。

研修等を行っていたにも関わらず、セクハラ行為がなされたのであれば、懲戒処分も有効になりやすいといえます。


人事院通達(平成12年3月31日職職ー68)

処分の種類・程度の検討に関しては、以下の人事院通達も参考になります。

アがレベル3相当、イがレベル2相当、ウがレベル1相当に該当すると解されます。

参考 人事院通達

(14) セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)

ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。

イレベル3刑事上のわいせつ罪にあたる行為レベル3刑事上のわいせつ罪にあたる行為の上で、わいせつな言辞、性的な内容の電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ストレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停職とする。

ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動を行った職員は、減給又は戒告とする。

引用元:懲戒処分の指針について|人事院

考慮要素

以上が大まかな処分の内容ですが、処分選択に際しては、以下の要素を考慮して決めたということを議事録等で説明できるようにしておくと、仮に、行為者が懲戒処分の効力を争ってきた場合に、会社としての処分の適法性を主張できるでしょう。

  • 行為態様
  • 被害者の精神的・肉体的苦痛の程度
  • 被害者と行為者の力関係
  • 行為者の反省の程度
  • 行為者への注意指導の有無・回数
  • 行為者の懲戒歴
  • ハラスメントに関する社内での取り組み
  • 会社の評判への影響

 

 

セクハラが起こった際の会社側の正しい対応方法

では、実際にセクハラの訴えが会社内でなされたとして、会社はどのような対応をとるのが正しいのでしょうか。

以下、対応のフローチャートをもとに解説いたします。

セクハラが起こった際の会社側の正しい対応方法

セクハラの探知

セクハラは、その多くが、通報や苦情が窓口等に寄せられることから会社に探知されます。

また、被害者が労働局等の公的機関に相談したことにより、公的機関から会社に対し、電話等の連絡があることもあります。

迅速かつ適切な防止措置の実施

均等法及びそれを受けたセクハラ指針は、会社に対し、次の3つの防止措置を講じることを求めています(前述の「セクハラ指針における措置義務の内容」参照)。

  1. ① 事実関係の迅速かつ正確な把握
  2. ② 事実が確認できた場合には行為者及び被害者に対し適切な措置をとる
  3. ③ 再発防止策を実施する

これらの措置を実施しない場合、労働契約の付随義務である安全配慮義務違反として、債務不履行責任や不法行為責任が生じ、損害賠償の対象になります。

以下では、これらの防止措置について、詳しく解説します。

事実関係の迅速かつ正確な把握

隔離

まず、大切なことは、被害者と行為者の物理的な隔離です。

一時的に別の部署で働かせることが可能であればそうすべきですし、それが難しいのであれば、行為者に自宅待機命令を出すことになります。

なお、ここでいう自宅待機命令は、懲戒処分としての自宅待機ではありません。

あくまでも調査のための業務命令としての自宅待機ですので、会社は、行為者に対し、給与を支払う必要があります。

中立な調査担当者

法務が行う、人事が行う等、会社ごとのルールで構いませんが、中立な立場であることが重要です。

また、調査担当者の選任は、画一的な対応ではなく、問題の深刻度において柔軟に選択すべきです。

特に中小企業の場合、全ての社員に一定のつながりがあるため、完全に中立な調査担当者を選ぶことが難しいこともあるでしょう。

例えば、中小企業の会社の飲み会の席で起きたセクハラ事案の場合、調査担当者が、行為者とも被害者とも普段から一定のつながりがあるがゆえに、余談(例えば、行為者の普段の飲み方、被害者の普段の飲み方、双方のキャラクター等)に引っ張られ、誤った事実認定をしていまうことも大いに起こり得ます。

その結果、会社が損害賠償等で大きなダメージを負うこともあり得ます。

したがって、誤った事実認定になる可能性がある事案の場合は、外部の弁護士等に調査を委託することを考えるべきです。

会社の内部で調査するよりも、外部の弁護士等の専門家によって調査を行う方が中立性の観点で問題は少ないというのは言うまでもありません。

また、メディア報道される等で、問題が大きく、それゆえ高度の中立性が要求される場面では、顧問弁護士以外の外部の弁護士に調査及び事実認定を依頼することも考えるべきです。

事情聴取

プライバシー保護

セクハラの場合、被害者は、第三者に知られることをできる限り避けたいと希望していることが通常です。

セクハラ指針は「職場におけるセクシャルハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は、当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該セクシャルハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。」と定めています。

事実認定のための事情聴取においても、プライバシー保護の配慮は重要です。

事情聴取においては、被害者→関係者→行為者の順にヒアリングするのが一般的ですが、関係者の範囲は、事実認定のために必要かつ相当な範囲に絞らなければ、多くの社員が事実を知ってしまうことになり、被害者が二次被害に合うこともあり得ます。

被害者の二次被害を防ぐために、関係者にヒアリングを行う際は、守秘義務を負わせることも重要です。

飲み会の席で起きたセクハラ事案を例にとると、飲み会参加者が関係者ということになります。

しかし、必ずしも全員の参加者に詳細をヒアリングすることは必要でないケースもあるでしょう。

関係者へのヒアリングは、一通りの証拠収集やヒアリングを終えた後に、追加調査が必要と判断された場合に絞っても良いでしょう。

その意味では、前述のヒアリングの順序は適宜組み替えて構いません。

事情聴取の方法

事情聴取は、複数人で実施し、録音したうえで、反訳や事情聴取書等を作成して、記録化しましょう。

行為者が、事後的に懲戒処分を不服として争ってくることもあり得るため、証拠化は、会社としての懲戒処分の適法性を基礎づけることになります。

また、被害者の事情聴取書等の内容は、作成後には被害者に確認してもらいましょう。

そのような丁寧な事実認定作業を行ったことは、会社が選択した懲戒処分を有効とするのに役立ちます。

なお、当事務所は、事情聴取書のサンプル・雛形をホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。ぜひ参考にされてください。

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客観証拠の重要性

調査担当者は、事情聴取に先立ち、被害者から、できるだけ客観証拠の提出をお願いしましょう。

メール、LINE等でのやりとり、録音や録画データ等がそれにあたります。

客観証拠から、セクハラが認定できる場合には、それについて、行為者にヒアリングし、弁明の機会を与え、最終的な認定を行ないます。

他方、客観証拠から、セクハラの認定が難しい場合には、必要かつ相当な範囲で目撃者等のヒアリングを行ない、行為者の言い分も聞いたうえで、事実認定を行ないましょう。

証拠として何が必要となるかは具体的な状況によって異なります。

できるだけセクハラに詳しい弁護士にご相談の上、助言を得ると良いでしょう。

事実認定

証拠収集及び事情聴取を経て、事実認定を行うわけですが、調査担当者は、相談者の申告をうのみにし、不十分な証拠関係でセクハラを認定してはなりません。

他方、行為者が否認したからといって、ハラスメント行為がないと判断することも不適切です。

相談者と行為者の関係、両者の行為前後の対応、メール等の客観証拠の分析や中立的立場にある者の事情聴取など必要と考えられる策を尽くし、それを議事録等の記録に残したうえで、慎重に事実認定を行ないましょう。

なお、当事務所は、議事録のサンプル・雛形をホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。ぜひ参考にされてください。

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議事録

行為者及び被害者への適切な措置

行為者等

行為者には、就業規則にもとづき、懲戒処分を行うことになります。懲戒処分の選択及び考慮要素については、前述のとおりです。

また、行為者のセクハラを認識し、又は認識すべき立場にあった上司が、適切な報告や調査をしなかった場合等には、その上司への懲戒処分を検討すべき場合もあります。

被害者

被害程度が大きく就労困難な場合の対応

被害者については、ハラスメント行為の認定の有無を問わず、申告後に不利益が生じていないかを確認するとともに、体調や精神面で不調が疑われる場合には、必要に応じて、業務を軽減する、医師の受診をすすめる、有給を利用した休養をとれるようにする等の配慮を行ない、働くのが難しい場合には、休職命令を検討する必要があります。

一般に、休職とは、業務外の傷病が対象とされていますが、業務との因果関係の判断は容易ではありませんので、まずは就業規則にもとづき、休職命令を出すケースが多いです。

就業規則上、休職期間満了後自然退職と定められていたとしても、業務上の傷病(業務と因果関係がある傷病)であれば、解雇と評価され、その解雇は無効になります(労基法19条)。

調査結果の報告

調査結果の報告については、調査結果及び判断過程について説明します。

被害者には文書で報告する必要はなく、口頭で足ります。

参考判例

この点が争われた裁判例(東京地判平成26年7月31日)も、被害者の求めにも関わらず文書での報告をしなかった点は、プライバシー保護の観点から合理性があるとして、口頭での報告で足りるものとしています。

調査結果には第三者のプライバシー情報も含まれていることが多く、その箇所は適宜、概略で構いません。

例えば、報告時に、目撃証言者の個人名を出すのではなく、「目撃者Aさんによると~」と抽象化することは問題ありません。

セクハラが認定できなかった場合

セクハラが認定できなかった場合、セクハラ申告者と行為者と疑われた者の関係は気まずいものになりますし、調査そのものが行為者と疑われた者に大きな心理的負荷を与えます。

そのため、行為者と疑われた者とハラスメント申告者の働く場所を分離する又はそれが難しい場合も、両者の業務上の関わりをなくす等の配慮は不可欠です。

行為者と疑われた者から、異動等の希望が出た場合には、会社としても前向きに考えるべきです。

参考判例

会社が体制変更への配慮をしなかったとして、行為者と疑われた者への損害賠償が命じられた裁判例(東京地判平成27年3月27日)もあります。

再発防止策

再発防止策を速やかにとることによって、会社が負う損賠賠償の額の減額や免責につながることがありますので、再発防止策をとることは重要です。

なお、調査の結果、セクハラが認定できなかったとしても、疑いが生じる以上は職務環境に何らかの問題があったことが推認されるため、セクハラが認定されなかった場合も再発防止策を講じましょう。

再発防止策としては、以下があげられます。

社内研修による意識改革

ハラスメント防止をテーマとする社内研修を定期的に開催し、社員の意識を高めましょう。

出席者やテーマは記録に残しておきましょう。

例えば、ハラスメント研修を社内で実施し、行為者も出席していたにもかかわらず、セクハラを行為を行ったという事実があれば、懲戒処分の有効性を基礎づける事実になります。

通報・相談窓口の充実

相談窓口を設置し、それを社員に周知しましょう。

また、相談窓口担当者の研修やマニュアルの作成も、事後的対応に不備がないことを示せるため、会社の責任を軽減するのにつながります。

ハラスメントに関する就業規則等の規程の整備

すでに行っている場合には良いのですが、仮にハラスメントに関する就業規則等の整備を行っていないのであれば、整備を行ないましょう。

モデル文例としては、厚労省が、以下のようにあげていますが、就業規則そのものに盛り込むのではなく、別途、ハラスメント防止規程を設ける会社も多いです。(この場合には、別途、就業規則に委任規程が必要になります。)

具体例

第○条(セクシャルハラスメントの禁止)
性的言動により、他の労働者に不利益や不快感を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。

より詳細なモデル文例としては、こちらをご参照ください。

 

 

よくある質問

加害者(と疑われる者)がセクハラ行為を認めていない場合はどう対処すべきですか?

前述の手順に沿って、証拠の収集及び事情聴取を行った結果、セクハラ行為が事実認定できる場合には、懲戒処分を行って構いません。

もっとも、加害者は、否認している以上、懲戒処分を行うと処分の効力を巡り、紛争になる可能性があります。

そのため、適正手続の遵守がとても重要です。

具体的には、加害者に十分に弁明の機会を与えるようにしましょう。

また、紛争になると、会社は、懲戒処分の有効性を具体的に、主張立証する必要があることから、どのような証拠及び事情からセクハラ行為を認定したのかという判断過程を、逐一、議事録等で残しておくべきです。

他方、証拠の収集及び事情聴取の結果、セクハラ行為が認定できなかったというのであれば、懲戒処分を行うことはできません。

その場合は、申告者に対して、行為が認定できなかった理由を説明するとともに、加害者と疑われた者に対する配慮も必要になります。前述の「セクハラが認定できなかった場合」も合わせてご参照ください。

 

会社がセクハラした相手を処分してくれない場合は?

例えば、弁護士を代理人としたうえで、会社に働きかけを行うというのも一つの方法です。

もっとも、レベル2以上の強度のセクハラであれば、合わせて損害賠償も請求できますが、レベル1程度の比較的軽度のセクハラであれば、損害賠償は難しいため、弁護士費用がネックになることもあるかと思います。

その場合には、労働基準監督署に相談し、会社に注意をしてもらうことが考えられます。

 

 

まとめ

以上、セクハラの定義、レベル別の法的な責任、実際にセクハラが起きた場合の対応方法等を解説いたしました。

均等法(及びセクハラ指針)の要請に従い、研修等で社員の知見を深め予防するとともに、実際にセクハラが生じた場合には、会社として手順を踏み、適切な対応をとることが重要です。

自社のセクハラ対策が十分であるか、本記事を参考に、今一度見直されてみてください。

 

 

 

 

   
執筆者
弁護士 竹下龍之介

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士

専門領域 / 法人分野:労務問題(特にハラスメント対応) 個人分野:離婚問題  

実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所の弁護士。労務問題、特にハラスメント(セクシャル・ハラスメント、パワー・ハラスメント)の問題に注力している。企業向けにハラスメントの出張研修も実施している。『Q&Aユニオン・合同労組への法的対応の実務』等専門書の執筆実績多数。





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