パワハラとは?定義や法律について弁護士が解説

執筆者
弁護士 木曽賢也

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士

パワハラとは、パワーハラスメントの略で、職場において立場を利用した業務上不必要な言動で、受け手に身体的・精神的苦痛などを与えるもののことをいいます(筆者の定義)。

パワハラは、弁護士へのご相談も多い分野の一つで、注目度も高い問題です。

もっとも、パワハラという言葉は知っていても、その詳細な意味内容やそもそもパワハラにあたるかどうかについてどのように考えたらよいかはとても難解です。

本記事では、パワハラ全般について、労働問題を多く扱う弁護士が詳しく解説いたします。

パワハラとは?

パワハラの定義

パワハラとは、パワーハラスメントの略で、職場において立場を利用した業務上不必要な言動で、受け手に身体的・精神的苦痛などを与えるもののことをいいます(筆者の定義)。

なお、パワハラ防止法(正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」)30条の2第1項及び厚生労働省の指針では、パワハラについては、以下のように定義付けしています。

パワハラ防止法30条の2第1項及び厚生労働省の指針のパワハラの定義
  1. ① 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、
  2. ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
  3. ③ 労働者の就業環境が害されるもの

※①から③までの要素を全て満たすものことが必要

引用元:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律|e−Gov法令検索

引用元:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】|厚生労働省

 

パワーハラスメント

パワハラは、上記でも説明したとおり、パワーハラスメントの略です。

パワーハラスメント(Power Harassment)は、Power(力、権力)とHarassment(嫌がらせ)を合わせて作られた和製英語になります。

 

パワハラと他のハラスメントとの違い

パワハラとよく比較される代表的なハラスメントは、セクハラとマタハラです。

セクハラとは、セクシュアルハラスメントの略で、職場において行われる相手方の気持ちを無視した性的な発言や性的な行動をいいます。

マタハラとは、出産、妊娠、育児等の制度利用を理由とした事業主による不利益な取扱いや嫌がらせのことです。

 

パワハラとモラハラとの違い

パワハラとよく似た概念として、モラハラというものがあります。

モラハラとは、モラルハラスメントの略称で、言葉や態度による精神的暴力のことをいいます。

以下は、パワハラとモラハラの共通点と違いです。

パワハラとモラハラの比較
共通点 異なる点
  • 言葉や態度による精神的苦痛を与える行為である点
  • 仲間外れにする行為
  • プライベートに過度に立ち入る行為
  • パワハラは職場に関するものに限定されるが、モラハラは家庭内でも起きうる
  • パワハラには身体的暴力も含まれるが、モラハラは身体的暴力は含まない
  • パワハラは上下関係を前提に行われるが、モラハラは上下関係を前提としない(ただし、下記で解説する「逆パワハラ」という言葉もあり、筆者は大きな差異はないと考えている)

 

パワハラの6類型と具体例

パワハラには、以下の6類型があるといわれています。

類型 具体例 該当しない例
身体的な攻撃
(暴行・傷害)
  • 殴る、蹴るなどの暴行
  • 髪を引っ張る
  • 相手に向かって物を投げる
  • 体に軽く触れる(セクハラの問題)
  • 私的な喧嘩
精神的な攻撃
(侮辱・暴言・脅迫・名誉毀損)
  • 複数の人がいる前で大声で怒鳴る
  • 「お前は新入社員以下だ」や「〜大学を卒業しているのにそんなこともできないのか」などと言う
  • 業務上の適正な範囲で厳しく指導する
  • 氏名等を伏せた上での懲戒処分の内部公表
人間関係の切り離し
(隔離・仲間はずれ・無視)
  • 合理的な理由もないにもかかわらず、話しかけられても無視をする
  • 業務上の必要性がないにもかかわらず、個室で一人で仕事をさせる
  • 仕事中に私語や同僚の悪口ばかり言ってくる人の話に耳を傾けない
  • 感染症対策や懲戒処分を理由として別室で一人で仕事をしてもらう
過大な要求
(業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことを強制する等)
  • 同レベルの能力の社員では処理することが不可能な仕事の量を与える
  • あり得ない営業ノルマを課す
  • 同レベルの能力の社員と同等の仕事の量を与える
  • 従業員が自ら申し出た分の仕事の量を与える
過小な要求

(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事しか与えない等)

  • 専門職の資格者に対して、事務作業ばかりやらせる
  • 簡単な仕事のみを与え、その社員が仕事を終わらせたとしてもそれ以上の仕事を何も与えず暇をさせる
  • 従業員の健康状態等を考慮し、仕事をセーブしてもらう
  • 能力に見合った仕事がその時に会社として用意できない場合に、現状で会社が用意できる仕事をしてもらう
個の侵害

(私的なことに過度に立ち入る)

  • プライベートな話を何度も聞く
  • つきまとう
  • 管理上の問題で最低限の個人情報(電話番号、住所等)を聞く
  • 相手方から頼まれて、飲み会の帰りに自宅まで送る

 

身体的な攻撃(暴行・傷害)

身体的な攻撃は、パワハラの典型例です。

暴行とは、怪我をしない程度の暴力です。

傷害とは、暴力の結果として怪我をした場合です。

どんな理由があろうとも、身体に対する攻撃は許されません。

ちなみに、身体的攻撃は、暴行罪(刑法208条)や傷害罪(刑法204条)に該当し、加害者は刑罰を受けることもあります。

参考:刑法|e−Gov法令検索

 

精神的な攻撃(侮辱・暴言・脅迫・名誉毀損)

言葉の暴力も、従業員の精神的苦痛を与えるものとしてパワハラに該当する可能性があります。

特に、従業員の人格的な非難をするような言葉は、業務上の必要な叱責とはいえないので、パワハラに該当します。

ひどい態様の場合は、ケースによって侮辱罪(刑法231条)、脅迫罪(刑法222条)、名誉毀損(刑法230条)などに該当し、加害者は刑罰を受けることもあります。

参考:刑法|e−Gov法令検索

人間関係の切り離し(隔離・仲間はずれ・無視)

特段の理由もなく、その従業員だけを孤立させるような行為も、この人間関係の切り離しとしてパワハラに該当する可能性があります。

 

過大な要求(業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことを強制する等)

業務上明らかに不要なことを押し付けることは、過大な要求としてパワハラに該当します。

例えば、仕事中にミスが起こった場合に、上司に対して毎回土下座をさせるなどです。

また、客観的にみて、およそ遂行不可能な量の仕事を強制することなどもこの類型に該当します。

例えば、過労死をするレベルで連日にわたって残業をしているにもかかわらず、どんどん新たな仕事を与えるなどです。

 

過小な要求(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事しか与えない等)

合理的な理由がないにもかかわらず、その人の能力等とかけ離れて簡易な業務ばかり任せ続けることもパワハラに該当します。

 

個の侵害(私的なことに過度に立ち入る)

職場はあくまで「職場」に過ぎないため、会社の上司等がプライベートなことに過度に立ち入るべきではありません。

そして、過度なプライベートへの介入は、パワハラに該当します。

ただし、世間話程度でプライベートの話題になることも多いかと思います。

プライベートの話題を聞くことが全てパワハラになるわけではなく、お互いのこれまでの関係性や、軽く一回聞いただけなのか何回もしつこく聞いているか等の事情によって、パワハラ該当性は判断されることになります。

 

 

パワハラのグレーゾーンの事例

パワハラにあたるかどうかの微妙なケース、いわゆるグレーゾーンの事例があります。

よく問題となるのが、業務上の指導の範囲内といえるか、業務上の指導を超えた行き過ぎたものといえるかという点です。

パワハラにあたるかどうかは、以下で解説する「パワハラの基準」を理解した上で個別具体的に考察する必要があります。

 

パワハラの基準とは

どのような行為がパワハラとなるかについて、明確な基準は存在しません。

この点について、厚生労働省では、パワハラとなるかどうかの考慮要素が示されています。

パワハラの考慮要素
  1. ① 当該言動の目的
  2. ② 当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況
  3. ③ 業種・業態
  4. ④ 業務の内容・性質
  5. ⑤ 当該言動の態様・頻度・継続性
  6. ⑥ 労働者の属性や心身の状況
  7. ⑦ 行為者との関係性

参考:事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して 雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)【令和2年6月1日適用】|厚生労働省

 

①当該言動の目的

なぜその言動をしたかという目的に着目します。

パワハラとなりやすい目的の例
気に食わない等の嫌がらせ目的
パワハラとはなりにくい目的の例
ミスに対して注意して改善してもらうため

 

②当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況

なぜその言動が行われたかという経緯を検討します。

ある従業員の問題行動がひどいものと評価できる場合は、その問題行動を注意する範囲においては、パワハラになりにくいといえます。

問題行動とは、例えば、不正行為、無断欠勤や無断遅刻が多い、締め切りも全く守らず顧客に迷惑をかけるなどです。

 

③業種・業態

業種・業態によって、時には厳しい指導がなされるべきです。

そのため、業種・業態もパワハラ該当性の判断要素になります。

例えば、病院であれば、一つのミスで患者の生命を左右することもあるので、ミスの内容によってはある程度の厳しい指導もパワハラとならない可能性があります。

 

④業務の内容・性質

上記③と似ていますが、実際その方が担当していた業務がどういった内容だったということも、厳しい指導が許されるかを判断するための要素となります。

 

⑤当該言動の態様・頻度・継続性

その言動の内容や回数などにも着目します。

言動の内容については、指導の範囲を超えて、人格的非難をしているといえる場合には、パワハラになり得るものとなります。

具体例 人格的非難の例

  • 「お前は頭が悪くてクズだ!」
  • 「君なんて何もできないアホ野郎だ、採用したのが間違いだった。」

これらの言動は、業務改善を目指すための言動とはいえず、その人の人格を否定するものです。

加えて、言動が何度も繰り返し行われている場合などには、一回きりなど数少ない場合と比較して、パワハラとなりやすいといえます。

 

⑥労働者の属性や心身の状況

当該従業員の状況等も加味すべきです。

例えば、新人で経験が浅いにもかかわらず、ベテラン社員と同等の結果を求めるために行き過ぎた指導があれば、パワハラになりやすいです。

また、心身の病気を抱えている従業員に全く配慮しない言動などもパワハラとなりやすいです。

 

⑦行為者との関係性

当事者同士の関係性がどうだったかという点も考慮要素の一つです。

例えば、当事者同士が常に良好な関係性を保っていた場合は、他の事情にもよりますが、パワハラが成立しにくいと考えられます。

 

ワンポイントアドバイス!〜パワハラ行為の立証について〜

上記のパワハラにあたるかどうかの考慮要素は、パワハラの事実があることが確定した状態であてはめて考えるものです。

もっとも、実際の裁判などでは、そもそも問題となっている行為の事実があるかどうかという点も争点になります(事実認定の問題)。

主に会社側の代理人として活動している筆者の経験上も、従業員側にパワハラの証拠が乏しい事案では、裁判所はパワハラの事実認定につき従業員側に厳しく認定している印象です。

争点となる例としては、例えば、被害者は、「お前は仕事のできないダメ人間だ!」と大声で怒鳴られたと主張しているが、加害者はそんな発言は一切していないと主張しているなどの状況です。

言った言わない、やったやらないの争いになった場合、その事実があったかどうかを確定しなければなりません。

事実があるかどうか確定するためには、まずは客観的な証拠が必要です。

客観的な証拠とは、録音、写真・動画、文書、メールなどです。

第三者の目撃証言も証拠となりえます。

上記の証拠が乏しい場合は、被害者本人の供述で立証されることになります。

ただし、一般論として、供述証拠のみの場合は、パワハラの立証は簡単ではありません。

供述証拠のみが証拠の場合は、裁判所等において、供述内容と他の客観的証拠と整合しているか、供述内容が一貫しているか、供述内容に合理性があって具体的といえるか等を考慮して供述証拠の信用性を判断されることになります。

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なお、パワハラにあたるかどうかは、裁判例をもとに判断することも有用です。

 

 

パワハラ加害者の特徴とは?

パワハラの加害者には、以下のような特徴があるといえます。

精神的に余裕がない

自身の仕事の忙しさやプライベートに悩みを抱えている人は、他人に対して八つ当たりをしてしまうこともしばしばあるかと思います。

そのような精神的に余裕のない方がパワハラの加害者になってしまう傾向があります。

パワハラをしている自覚がない

パワハラの加害者は、自らがパワハラをしている自覚がないということがよくあります。

その理由は色々ありますが、例えば、

  • 誰も注意しないから問題ない行為だと思い込んでいる
  • 元々人に強く当たったりする性格でパワハラ気質がある
  • これまでパワハラ的な行為のおかげで部下が成長したと思い込んでいる(過去の成功体験)

などがあると考えられます。

 

繰り返し行ってしまう

パワハラをしているということの自覚がないと、繰り返しパワハラ行為を行ってしまうということもあります。

裁判などで問題になるパワハラも、一回きりというのはむしろ稀であり、継続的に行われていることが多いといえます。

 

 

パワハラ防止法について

パワハラに関連する法律はいくつかありますが、代表的なのは、パワハラ防止法です。

パワハラ防止法とは?

パワハラ対策を会社に義務付ける法律として、パワハラ防止法というものがあります。

パワハラ防止法は俗称で、正式名称は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」です。

パワハラ防止法は、大企業向けには2020年6月から、中小企業向けには2022年4月からそれぞれ施行されています。

パワハラ防止法の有名な条文は、30条の2第1項〜第3項です。

パワハラ防止法30条の2第1項〜第3項

(雇用管理上の措置等)

第三十条の二 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

2 事業主は、労働者が前項の相談を行つたこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

3 厚生労働大臣は、前二項の規定に基づき事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。

※第4項〜第6項は省略

引用元:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律|e−Gov法令検索

 

パワハラ被害の実態

パワハラ事案は、近年、増加傾向にあります。

2021年(令和3年)度の労働局及び労働基準監督署に設置されている総合労働相談コーナーへの「いじめ・嫌がらせ」の相談は、8万6034件もあります。

2012年(平成24年)度の「いじめ・嫌がらせ」の相談は、5万1670件ですので、約10年で3万件以上増加していることになります。

参考:令和3年度個別労働紛争解決制度の施行状況|厚生労働省

上記の傾向から、パワハラは今後も相談件数の多い分野であることが予想され、各人が理解を深めないといけないと筆者は考えています。

 

会社が実施しなければならない4つの対策

パワハラ防止法及び厚生労働省の指針において、会社がパワハラ対策として行わなければならないとされているのは、以下の4つです。

  1. (1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
  2. (2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備
  3. (3)職場におけるパワー・ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
  4. (4)上記(1)〜(3)までの措置と併せて講ずべき措置

 

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

パワハラを行ってはならない旨などを社内向けのメッセージ等で周知する必要があります。

また、パワハラを行ったものに対して、厳正に対処する旨を就業規則等に記載する必要があります。

 

(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するための必要な体制の整備

パワハラに関する相談窓口を設置する必要があります。

パワハラ相談窓口は、会社内部に設置しても良いですし、会社の外部(例:弁護士)に窓口を設置しても良いです。

 

(3)職場におけるパワー・ハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応

事実関係を正確に把握して、加害者と被害者を引き離す配置転換等の対応が求められます。

また、再発防止に向けた何らかの措置を講じなければいけません。

 

(4)上記(1)〜(3)までの措置と併せて講ずべき措置

被害者や加害者のプライバシーを保護するための措置を講じ、従業員に周知する等がこの「併せて講ずべき措置」となります。

 

パワハラ研修について

会社がパワハラを防止する対策として有効なのが、社内でパワハラ研修を行って、パワハラについての理解を深めてもらうことです。

パワハラ研修では、どういった行為がパワハラにあたるのか、パワハラにあたらないためにはどのようなことに気をつけなければならないか等のテーマを取り上げるべきでしょう。

必要に応じて、事例形式などを用いたグループディスカッションなどを行い、社員ひとり一人に考えてもらう機会を作るのも良いでしょう。

もっとも、研修を主催する方もパワハラについて深い理解がなければ研修は意味のないものになってしまいます。

そこで、より意味のあるパワハラ研修にすべく、研修の主催者を外部の専門家である弁護士に委託するのが良いと考えます。

 

パワハラ加害者への対応法

パワハラ加害者への対応法として、まずは加害者へ事情聴取を行います。

事情聴取をする際は、下記に掲載されている「ハラスメント事情聴取書」を参考にしてください。

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その他の証拠状況と照らし合わせて、パワハラの事実が認定できる場合、配置転換等で被害者と引き離すことを検討しましょう。

また、行為が悪質の場合は、懲戒処分も検討すべきです。

ただし、安易な懲戒解雇などは無効になるリスクがあるので避けてください。

その事案で懲戒解雇などの懲戒処分が妥当かどうかは、弁護士に確認すべきでしょう。

 

 

パワハラ被害者から相談を受けたら

会社の上司や同僚が被害者からパワハラの相談を受けた場合は、以下のような対応が考えられます。

相談を受けた方が会社のパワハラ相談窓口の担当者ではない場合

パワハラ相談窓口の担当者ではない方は、被害者に対して、適切な相談先(会社のパワハラ相談窓口、労働局・労働基準監督署、弁護士)に相談するように促してください。

パワハラ相談窓口の担当者ではない方は、善意で自ら全て対応しようとすると、逆に被害者を苦しめる結果にもなりかねませんので、適切な相談先を紹介してあげてください。

 

相談を受けた方が会社のパワハラ相談窓口の担当者の場合
  • 1
    パワハラ関連の社内規程(就業規則等)を確認
  • 2
    被害者からの事情聴取
  • 3
    加害者や関係者への事情聴取・必要な調査(証拠の精査)
  • 4
    再発防止に向けた取り組み

まずは、その会社の就業規則等(パワハラ関連規程)を確認して、会社での手続きを確認しましょう。

そして、就業規則等に記載されている手続きに則ってしっかり被害者から事情聴取をしてください。

事情聴取をする際は、下記に掲載されている「ハラスメント事情聴取書」を参考にしてください。

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さらに、加害者や関係者に事情聴取することも検討します。

もっとも、加害者や関係者に事情聴取する前に、プライバシーへの配慮のため、どこまでの範囲の人にどのような内容を聞いてよいか被害者に確認するようにしましょう。

また、事情聴取だけでなく、その他必要な調査(証拠の精査)もしましょう。

必要な調査の例としては、メール、録音、防犯カメラ等の確認です。

調査の結果、パワハラの事実が認定できる場合は、上記の「パワハラ加害者への対応法」で解説したとおり、加害者への処分等を検討していくことになります。

最後に、再発防止に向けた具体策も検討し、実行します。

 

 

パワハラ問題の5つのポイント

パワハラ問題の5つのポイント

社内規程を整備する

パワハラについての社内規程、つまり就業規則のハラスメント関連規程をしっかり作成することが重要です。

就業規則では、どういった行為がパワハラにあたるか、パワハラ行為があった場合の手続等を記載します。

就業規則は会社の重要な書類ですので、作成する際は弁護士にチェックしてもらってください。

 

経営トップから方針を伝える

経営トップである社長から、パワハラを許さない、パワハラをしたものには厳正な処分が下される旨の明確な方針を社員に伝えることも重要です。

方針を伝える方法は、社内報、一斉メール、社内ポータルサイト、掲示板等の形に残るものにしましょう。

 

社内研修を実施する

上記でも解説したとおり、パワハラに関する社内研修を実施することもパワハラ対策の一つです。

特に従業員の入退社が多い会社では、定期的に社内研修を実施するのが理想です。

 

法律事務所を外部相談窓口として設置する

パワハラ被害者の立場になって考えた時に、相談窓口が社内に設置されていても、内部の人間であることから相談を躊躇(ちゅうちょ)することもあるかと思います。

また、専門家でなければ、パワハラ相談をされた後の適切な対応も難しいでしょう。

そこで、顧問弁護士が所属する法律事務所を、外部の相談窓口として設置することも必要だと考えています。

パワハラの被害者にとっても、専門家である弁護士に相談できることは安心だと思います。

 

パワハラにくわしい弁護士へ相談する

従業員からパワハラを主張された場合は、いち早くパワハラに詳しい弁護士に相談してください。

パワハラ問題に詳しい弁護士に相談すれば、裁判上での見通しを前提に、今後どのように動けば良いか適切なアドバイスがもらえると思います。

また、弁護士に相談すれば、会社の状況に応じた対策の提案がされることを期待できます。

加えて、弁護士に依頼すれば、相手方(相手方本人、ユニオン、相手方代理人弁護士等)とのやりとりを全て任せることができるため、精神的苦痛を和らげることが可能となります。

その弁護士がパワハラに詳しいかどうかについては、ホームページ上の弁護士紹介の記載を参考に、普段どのような業務を扱っているか確認して判断するのが一つの方法です。

 

 

パワハラについてのQ&A

パワハラ上司にどのように対処する?

被害者がパワハラ上司にどのように対処するかについては、以下の方法が考えられます。

①パワハラをやめるように意思表示をする

上司との関係性や行為内容によっては、上司に言いにくい場面があるかと思いますが、できることならパワハラ上司に対して直接行為をやめるように言うことも時には必要です。

パワハラ上司は、自分の行為がパワハラに該当することを自覚していない可能性があり、被害者が直接意思表示することで、これまでの行動を見つめ直してもらうことが一応期待できます。

 

②パワハラ相談窓口に相談する

会社のパワハラ相談窓口に相談し、会社として適切な対処をお願いするという方法もあります。

被害者としても、第三者に相談することで安心感を得られると思います。

 

③従業員(労働者)側の案件を多く扱う弁護士に相談する

やはり、一番の対策は従業員(労働者)側の案件を多く扱う弁護士に相談することです。

弁護士に相談すれば、法律に基づいた適切なアドバイスを受けられることが期待できます。

 

パワハラ上司を訴えることができる?

被害者は、パワハラ上司に対して裁判所に訴えることができます。

具体的には、不法行為(民法709条)に基づく損害賠償請求で金銭的な請求をすることが考えられます。

参考:民法|e−Gov法令検索

 

逆パワハラとは?

逆パワハラとは、部下から上司へのパワハラ行為をいいます。

パワハラは、職場において立場を利用してなされるものなので、典型的には上司から部下に対して行われるものです。

もっとも、状況によっては、部下の方がある側面では上司よりも優越的な地位にある場合もあり、部下の上司に対する行為がパワハラとなることもあり得ます。

 

 

まとめ

上記のとおり、一口にパワハラといっても、おさえておくべき知識やポイントは多くあります。

パワハラは日常用語ではありますが、実は奥が深く、専門的な領域です。

パワハラ問題でお困りの際は、労働問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

デイライト法律事務所には、労働問題に特化した専門チームがあります。

ご相談については、各種オンライン(Zoom、GoogleMeet等)を用いることも可能であり、全国的に対応しております。

ぜひ一度ご相談ください。

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