有期雇用労働者特別措置法とは?無期転換ルールの例外を解説
有期雇用労働者特別措置法は、「無期転換ルール」の例外として、高齢者など一部の有期雇用労働者に適用される特例制度です。
本来、有期契約が5年を超えて繰り返された場合、労働者からの申込みにより「無期雇用」に転換されるルール(=無期転換ルール)が適用されます。
しかし、この特別措置法により、一定の条件を満たせば、5年を超えても無期転換ルールの適用を受けずに契約を継続することが可能になります。
本記事では、この制度の内容や対象となる労働者、企業が活用する際の手続きや注意点を、実務に沿ってわかりやすく解説します。
目次
有期雇用労働者特別措置法とは?
「有期雇用労働者特別措置法とは、正式名称を「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法」といい、2015年4月1日から施行されている法律です。
参考:専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法|e-Gov法令検索
無期転換ルールの例外となる特例制度
有期雇用労働者特別措置法は、労働契約法に定められている無期転換ルールに対し、一定の条件の下、適用が除外される例外を定めるものです。
無期転換ルールとは?
無期転換ルールとは、通算契約期間が5年を超える有期雇用労働者が、次回の更新時に無期雇用契約に変更することができる無期転換権を取得することです。
無期転換ルールは、労働契約法18条1項に定められています。
無期転換ルールの特例が使える労働者とは?
無期転換ルールの特例が使える労働者は、以下の2つの分類の方です。
高度な専門性と高収入がある労働者
一定の期間内に完了する業務(プロジェクト)に従事する高収入かつ高度な専門的知識等を有する有期契約労働者が対象となります。
収入要件としては、年収1075万円以上の方が対象です。
また、高度な専門的知識を有する労働者としては、以下の職種等が対象です。
- ① 博士の学位を有する者
- ② 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
- ③ ITストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
- ④ 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
- ⑤ 大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニア・デザイナー
- ⑥ システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
- ⑦ 国等によって知識が優れたものであると認定され、上記①〜⑥までに掲げる者に準ずるものとして厚生労働省労働基準局長が認める者
定年(60歳以上に限る)後に再雇用された高齢者
定年後に同一の事業主またはこの事業主と一体となって高齢者の雇用の機会を確保する事業主(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律における「特殊関係事業主」)に引き続いて雇用される高齢者も対象となります。
特例が適用されるとどうなる?
高度な専門性と高収入がある労働者
企業内の期間限定プロジェクトが完了するまでの期間は無期転換申込権が発生しないこととなります(ただし、上限は10年です。)。
定年(60歳以上に限る)後に再雇用された高齢者
定年後に再雇用された高齢者については、無期転換ルールそのものが適用されません。
つまり、定年後に再雇用されている期間中は、有期契約を何度更新しても、無期転換申込権が発生しないことになります。
特例を受けるために必要な手続きとは?|企業側の対応ポイント
有期雇用労働者特別措置法の特例を受けるには、企業(事業主)が厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。
そのためには、以下のステップに沿って対応することが求められます。
① 計画書の作成と申請
まず、事業主は、対象労働者の特性に応じた適切な雇用管理に関する計画を作成し、厚生労働大臣に計画書を提出して申請します。
高度専門職(第一種計画)の場合
以下の内容を計画に盛り込む必要があります。
- 業務の内容と、その開始日・完了日
- 自主的な能力開発を支援するための有給休暇の付与(※年次有給休暇とは別であることに注意)
高齢者(第二種計画)の場合
以下の内容を計画に盛り込む必要があります。
- 配置・職務内容・職場環境などに対する配慮事項
- 高齢者が安心して働けるための雇用管理措置の内容
② 厚生労働大臣の認定
提出された計画が、厚生労働省の基本方針(対象労働者に応じた雇用管理措置)に適合していると認められた場合、認定されます。
認定には、第一種・第二種それぞれの対象者ごとに異なる基準があります。
詳細な記載例や様式は、厚労省・各地方労働局のウェブサイトでも確認できます。
③ 有期契約の締結・更新時の注意点
認定を受けた後、事業主が対象労働者と有期労働契約を締結または更新する際には、以下の内容を書面で明示する必要があります。
- 無期転換申込権が発生しないこと
- 特例の対象となる業務内容(※高度専門職の場合)
- 契約期間などの労働条件
有期雇用労働者特別措置法に対応するための契約書・就業規則の書き方
有期雇用労働者特別措置法に対応するための契約書・就業規則の記載例は以下のようなものが考えられます。
雇用契約書の記載例
就業規則の記載例(定年(60歳以上に限る)後に再雇用された高齢者)
2 前項の通算契約期間は、平成25年4月1日以降に開始する有期労働契約の契約期間を通算するものとし、現在締結している有期労働契約については、その末日までの期間とする。ただし、労働契約が締結されていない期間が連続して6ヶ月以上ある社員については、それ以前の契約期間は通算契約期間に含めない。
3 この規則に定める労働条件は、第1項の規定により期間の定めのない労働契約での雇用に転換した後も引き続き適用する。ただし、無期労働契約へ転換した従業員に係る定年は、満○歳とし、定年に達した日の属する月の末日をもって退職とする。
有期雇用特別措置法に関するよくあるQ&A
有期雇用特別措置法はパートにも適用されますか?

有期雇用特別措置法は、上述のとおり、①高度な専門性と高収入がある労働者と、②定年後に再雇用された高齢者を対象としています。
この対象者に該当すれば、雇用の名目が「パート」であったとしても、有期雇用特別措置法は適用されることになります。
まとめ
有期雇用特別措置法は、正しく理解して適切な手続きを踏まなければ、会社は労働者から予期せぬ無期転換権を行使されてしまう可能性があります。
しかし、少しマイナーな法律ゆえ、そもそもこの法律の存在を知らないという経営者も多いかと思います。
本法律を踏まえた適切な雇用管理は、企業の人員計画にも良い影響をもたらすことが期待されます。
有期雇用特別措置法の内容を踏まえた制度設計は、労働問題に詳しい弁護士に相談して行うべきものと考えています。
デイライト法律事務所には、労働問題に特化した労働事件チームがあります。
雇用問題でお困りの際は、お気軽に弊所にご相談ください。
