残業代の計算|パターン別計算方法を弁護士が解説【自動計算機付】

執筆者
弁護士 木曽賢也

所属 / 福岡県弁護士会

保有資格 / 弁護士・3級ファイナンシャルプランニング技能士


残業代とは

残業代とは、残業が行われた場合に発生する賃金のことを指します。

残業の中には、法定内残業、法定外残業(時間外労働)等があり、それぞれで残業代の計算方法は異なってきます。

なお、残業代という言葉は、法律上の用語ではありません。

法律上の用語(労基法)では、割増賃金などと表現されています。

 

 

残業代の計算ツール

このウェブサイトをご覧になられている方の中には、残業代がいくらになるかを早く知りたいという方もいらっしゃるかと思います。

残業代の概算額を知りたいという方は、この自動計算ツールをご活用ください。

 

 


https://www.fukuoka-roumu.jp/zangyoudai/

 
 

残業代の計算方法

残業代の基本的な仕組み

残業代の計算方法を理解する上で、まず把握しておかなければならないことは、「労働時間」の考え方です。

労働時間には、大きく分けて以下の2つがあります。

所定労働時間

労働契約上、労働義務を負う時間をいいます。

会社は通常、就業規則等で始業時刻、終業時刻、休憩時間を定めています。

この始業時刻から終業時刻までの時間から、休憩時間を差し引いた時間が所定労働時間です。

 

具体例

A会社の始業時刻は9時、終業時刻は17時、休憩時間は1時間だったとします。

8時間(9時〜17時)−  1時間(休憩時間)= 7時間

A会社の所定労働時間は、7時間
となります。

 

法定労働時間

労基法上、定められた労働時間のことをいいます。

1週間の法定労働時間は40時間、1日の法定労働時間は8時間です(労基法32条1項、2項)。

引用元:e-Gov|労働基準法32条

 

所定労働時間を超え、法定労働時間を超えない場合

所定労働時間を超え、法定労働時間を超えない場合にも、原則として残業代は発生します。

このような場合を、法定内残業といいます。

法定内残業の場合は、基本的に以下で述べるような割増率を乗じる必要はありません(ただし、会社によっては就業規則や賃金規定で法定内残業の割増率を定めている所もあるので、注意が必要です。ご判断が難しい場合、労働専門の弁護士にご相談されてください。)。

法定内残業の残業代の計算方法は、

1時間あたりの賃金額 × 法定内残業の時間数

となります。

 

具体例

上記のA会社(始業時刻は9時、終業時刻は17時、休憩時間は1時間で所定労働時間が7時間)で、ある日に18時まで(実労働時間としては8時間)働いた労働者がいたとします。

この労働者の1時間あたりの賃金額が1500円だった場合、

1500円 × 1時間 = 1500円

となります。

つまり、この場合は、1500円を残業代として支払えば良いということになります。

法定労働時間を超える場合

法定労働時間を超える場合の残業のことを、法定外残業(時間外労働)といいます。

法定外残業の残業代の計算方法は、

1時間あたりの賃金額 × 法定外残業の時間数 × 残業の種類に応じた割増率

となります。

残業代の割増率とは?

残業代の割増率は、残業の種類によって異なります。

割増率
  • 法定外残業:125%
  • 深夜労働:125%
  • 法定休日労働:135%
  • 法定外残業+深夜労働:150%
  • 1ヶ月の合計が60時間を超えた法定外残業:60時間を超えた部分につき150%割増

残業の種類とは?


以下では、残業の種類と割増率の関係をまとめています(労基法37条)。

残業の種類

残業の内容

割増率

法定外残業

法定労働時間を超える場合 125%

深夜労働

午後10時から午前5時までの間に働く場合 125%

法定休日労働

労基法上の法定休日に働く場合 135%

法定外残業+深夜労働

法定労働時間を超え、
かつ午後10時から午前5時までの間の労働である場合
150%

1ヶ月の合計が60時間を超えた法定外残業

1ヶ月の法定外残業の合計が60時間を超えた場合 60時間を超えた部分につき150%
(60時間までは通常の法定外残業の割増率である125%でOK)

引用元:e-Gov|労働基準法37条

 

残業代の計算式

上記で述べたとおり、法定外残業の残業代の計算式は、

1時間あたりの賃金額 × 法定外残業の時間数 × 残業

の種類に応じた割増率となります。

この中で、「1時間あたりの賃金額」は、給与形態によって計算方法が異なってきます。

月給の残業代の計算

1時間あたりの賃金額


多くの会社では、月によって所定労働時間数が異なります。

この場合、次の計算式により、1年間における1ヶ月平均所定労働時間数を算出します。


以下、具体例を用いて1時間あたりの賃金額を算出します。

具体例

  • 月給30万円(※除外賃金を除く)
  • 365日の年
  • 週休2日制(土日)で1年間の所定休日日数が125日(土日、土日と重複のない祝日・年末年始休暇・夏季休暇)
  • 1日の所定労働時間が8時間
  • ある労働者が法定外残業を2時間したとする

この場合の、1年間における1ヶ月平均所定労働時間数は、

(365日 − 125日) × 8時間 ÷ 12 = 160時間

となります。
そして、この場合の1時間あたりの賃金額は、

30万円 ÷ 160時間 = 1875円

となります。
これに、法定外残業の割増率を乗じます。

1875円 × 2時間 × 1.25 ≒ 4688円

以上から、4688円が2時間分の法定外残業の残業代となります。

除外賃金について

賃金は、通常、基本給+◯◯手当といった構成が多いかと思います。

その全てが残業代の計算の基礎となるかというと、そういうわけでもありません。

基本給は原則的に残業代の計算の基礎となるとしても、◯◯手当の中には、残業代の計算の基礎とならないものもあります。

この残業代の計算の基礎とならない賃金のことを、除外賃金といいます。

例えば、法律上定められている除外賃金については、以下のようなものがあります(労基法37条5項、労基則21条)。

除外賃金
  • ①家族手当
  • ②通勤手当
  • ③別居手当
  • ④子女教育手当
  • ⑤住居手当
  • ⑥臨時に支払われた賃金
  • ⑦1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

上記については、手当の名目でなく、実質的に判断されます。

残業代の「1時間あたりの賃金額」を算出する際は、上記の除外賃金を除いて計算します。

引用元:労働基準法37条

時給の残業代の計算

時給の場合は、1時間あたりの賃金額が、そのまま計算の基礎となります。

つまり、時給1000円の場合、

1000円 × 法定外残業の時間数 × 残業の種類に応じた割増率

で計算します。

日給の残業代の計算

まず、「1時間あたりの賃金額」を下記の計算式により、算出します。

日によって所定労働時間数が異なる場合は、「1週間における1日平均所定労働時間数」を下記の計算式により、算出します。

それでは具体例を見てみましょう。

具体例

  • 日給1万円(除外賃金を除く)
  • 週5日勤務
  • 所定労働時間が月曜日〜水曜日が8時間、木曜日6時間、金曜日5時間
  • ある労働者が法定外残業を2時間したとする

35時間(1週間の所定労働時間数の合計)÷ 5日(1週間の所定労働日数)= 7時間(1週間における1日平均所定労働時間数)

1万円(日給)÷ 7時間(1週間における1日平均所定労働時間数)≒ 1429円(1時間あたりの賃金額)

これに、法定外残業の割増率を乗じます。

1429円 × 2時間 × 1.25 ≒ 3573円

以上から、3573円が2時間分の法定外残業の残業代となります。

年俸の残業代の計算

年俸の残業代の計算も、まずは1時間あたりの賃金額を算出して計算します。

1時間あたりの賃金額は、以下の式より算出します。

年間所定労働時間数は、以下の計算式より算出します。

それでは、具体例を見てみましょう。

具体例

  • 年俸額500万円(除外賃金を除く)
  • 366日の年(閏年)
  • 週休2日制(土日)で1年間の所定休日日数が123日(土日、土日と重複のない祝日・年末年始休暇・夏季休暇)
  • 1日所定労働時間数が8時間
  • ある労働者が法定外残業を2時間したとする

(366日 − 123日)× 8時間 = 1944時間(年間所定労働時間数)

500万円(年俸額)÷ 1944時間 ≒ 2572円(1時間あたりの賃金額)

これに、法定外残業の割増率を乗じます。

2572円 × 2時間 × 1.25 = 6430円

以上から、6430円が2時間分の法定外残業の残業代となります。

 

 

勤務状況別の残業代の計算

固定残業代の計算方法

固定残業代とは、法定外残業、休日労働、深夜労働に対する各残業代として支払われる、あらかじめ定められた一定の金額のことです。

固定残業代の場合も、基本的な考え方は、上記のように以下の計算式で算出します。

もっとも、固定残業代には、考慮すべき注意点があります。

合わせて読みたい
「固定残業代」って何?

変形労働時間制の残業の計算

変形労働時間制とは、一定の期間(1ヶ月単位【労基法32条の2】、1年単位【労基法32条の4】、1ヶ月単位【労基法32条の5】の3種類がある。)につき、1週間あたりの平均所定労働時間が法定労働時間を超えない範囲で、1週または1日の法定労働時間を超えて労働させることができる制度のことです。

変形労働時間制を採用している場合に、残業代が発生するケースについては、こちらで詳しく解説しています。

変形労働時間制の場合に残業代の発生するケースについての残業代の計算方法についても以下の方法で計算します。

法定内残業
1時間あたりの賃金額 × 法定内残業の時間数
法定外残業
1時間あたりの賃金額 × 法定外残業の時間数 × 残業の種類に応じた割増率

また、「1時間あたりの賃金額」の計算方法も、上記の給与形態(月給制や時給制など)に応じて計算することに変わりはありません。

なお、変形労働時間制の場合も、休日労働または深夜労働の割増賃金請求に関しては、使用者は、労基法37条の規定どおりに割増賃金の支払義務を負うことに注意が必要です。

以下、1ヶ月単位の変形労働時間制を例に具体的な計算方法をご紹介します。

 

具体例 変形労働時間制の残業の場合

  • 1時間あたりの賃金額1500円(除外賃金を除く)
  • 土日休みの週休2日制
  • 1ヶ月単位の変形労働時間制
  • 1ヶ月が28日間となる日曜始まりの月の所定労働時間の合計が155時間(下記表参照)
月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 合計
1週目 7時間 10時間 8時間 8時間 8時間 41時間
2週目 8時間 7時間 9時間 8時間 8時間 40時間
3週目 10時間 6時間 8時間 6時間 6時間 36時間
4週目 8時間 8時間 7時間 9時間 6時間 38時間

 

ある労働者の実際の労働時間(実労働時間)が下表の時間になったとします。

月曜日 火曜日 水曜日 木曜日 金曜日 合計
1週目 7時間 10時間 8時間 8時間 8時間 41時間
2週目 8時間 7時間 9時間 8時間 8時間 40時間
3週目 10時間 7時間 8時間 6時間 6時間 37時間
4週目 10時間 8時間 7時間 9時間 6時間 40時間

1週目と2週目は特に残業がありません。

3週目の火曜日に、1時間の残業があります。

もっとも、この残業は、法定労働時間(8時間)の範囲内なので、法定内残業となります。

他方、4週目の月曜日の2時間の残業は、所定労働時間が法定労働時間の8時間であるため、法定外残業となります。

この場合の残業代の計算は、次のように計算します。

(①法定内残業)
1500円 × 1時間 = 1500円

(②法定外残業)
1500円 × 2時間 × 1.25 = 3750円

(残業代合計① + ②)
1500円 + 3750円 = 5250円

引用元:e-Gov|労働基準法32条/労働基準法37条

フレックスタイム制の残業代の計算


フレックスタイム制(労基法32条の3)とは、1日の労働時間の長さを固定せずに、1ヶ月などの単位期間(最大3ヶ月)の中で総労働時間を定めておき、労働者はその総労働時間の範囲で各労働日の労働時間を自分で決めるという制度です。


フレックスタイム制の下で、法定外残業(割増賃金が発生する)となるのは、清算期間内における実労働時間が、清算期間における法定労働時間を超えた場合です(通達昭和63・1・1基発1号、平成11・3・31基発168号)。

フレックスタイム制の「法定外残業の時間数」は、次のように計算します。

(1)清算期間が1ヶ月以内の場合

(2)清算期間が1ヶ月を超え3ヶ月以内の場合

次の①と②の合計が法定外残業の時間数となります。

①清算期間を1ヶ月ごとに区分した各期間における実労働時間のうち、各期間を平均し、1週間あたり50時間を超えて労働させた時間を次の式により算出します。

(清算期間を1ヶ月ごとに区分した期間における実労働時間数)−[50 ×(清算期間を1ヶ月ごとに区分した期間における暦日数 ÷ 7)]

②清算期間における総労働時間のうち、当該清算期間の法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間を算出します。

このとき、①で算出した法定外残業時間は除きます。

以下、(1)清算期間が1ヶ月以内の場合の具体例を紹介いたします。

 

具体例 清算期間が1ヶ月以内の場合

  • 1時間あたりの賃金額が1600円(除外賃金を除く)
  • 清算期間が30日間
  • 清算期間における実労働時間数175時間

上記(1)の計算式に当てはめると、

175時間 −[40時間 ×(30日 ÷ 7)]= 3.6時間

以上より、3.6時間が法定外残業の時間数となります。

あとは、法定外残業の残業代の計算式に当てはめます。

1600円 × 3.6時間 × 1.25 = 7200円

以上から、このケースでの法定外残業の残業代は、7200円となります。

なお、フレックスタイム制の場合も、休日労働または深夜労働の割増賃金請求に関しては、使用者は、労基法37条の規定どおりに割増賃金の支払義務を負うことに注意が必要です。

裁量労働制の残業代の計算


裁量労働制とは、一定の業務の遂行方法や時間配分について労働者の裁量に委ね、労働時間については、あらかじめ定めた労働時間を労働したとみなす制度のことです。

裁量労働制は、対象業務によって、専門業務型裁量労働制(労基法38条の3)、企画業務型裁量労働制(労基法38条の4)があります。

裁量労働制(専門業務型裁量労働制、企画業務型裁量労働制どちらについても)では、あらかじめ定められた「みなし労働時間」分だけ労働したとみなされるため、実労働時間の多寡は問題になりません。

このことから、基本的に残業代は発生しません

もっとも、裁量労働制の場合でも、以下の場合は残業代が発生します。

(1)みなし労働時間が法定労働時間を超えていた場合

例えば、1日のみなし労働時間が9時間とされていた場合、法定労働時間は1日8時間ですから、法定外残業として残業代が発生します。

この場合の「1時間あたりの賃金額」は、月額賃金を、当該月のみなし労働時間数で除して算出します。

また、割増率に関しては、あらかじめ法定労働時間を超えたみなし労働時間数を定めていることからすれば、125%ではなく、25%で足りると考えられています(100%部分は、元々の賃金に含まれていると考えられているということ)。

(2)深夜労働

裁量労働制の場合も、深夜労働の場合は、割増賃金が発生します。

割増率に関しては、25%です。

(3)休日労働

裁量労働制の場合も、休日労働の場合は、割増賃金が発生します。

割増率に関しては、135%です。

 

具体例 みなし労働時間が法定労働時間を超えていた場合の残業代の具体例

  • 月給50万円(除外賃金を除く)
  • みなし労働時間1日9時間
  • 当該月のみなし労働時間が180時間

計算式は以下の通りとなります。

50万円 ÷ 180時間 ≒ 2778円

2778円 × 1時間 × 0.25 ≒ 695円

以上から、このケースの1日あたりの法定外残業の残業代としては695円となります。

引用元:e-Gov|労働基準法38条

管理職の残業の計算

管理職の方は、法律上の「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」(労基法41条2号、略称として管理監督者と呼ばれている。)にあたれば、法定外残業及び法定休日労働の残業代は発生しません。

引用元:e-Gov|労働基準法41条

一般的に、管理職といえば、係長、課長、部長などを思い浮かべる方が多いでしょう。

しかし、労基法上の「管理監督者」は、判例上、厳格に解釈されています。

そして、実際に管理監督者に該当するケースは少ないため、未払い残業代を請求されると支払い義務が認められるリスクがあります。

また、管理職の方が、法律上の管理監督者にあたるとしても、深夜労働の割増賃金は基本的に発生します

以下、具体例を見てみましょう。

 

具体例 管理職の深夜労働の割増賃金

  • 1時間あたりの賃金額3000円
  • ある日の実労働が14時〜23時まで(実労働時間9時間)

この場合は、深夜労働分(22時〜23時の1時間)の割増賃金しか発生しませんので、以下の計算式により算出します。

3000円 × 1時間 × 0.25 = 750円

このケースでは、1時間分の深夜労働の割増賃金は750円となります。

 

 

従業員から残業代を請求されたときの対処方法

従業員の方から残業代を請求されたときの対処方法については、こちらで詳しく解説しているので、ご参照ください。

まとめ

以上のとおり、残業代の計算は、残業の種類や勤務形態によって異なり、複雑なものです。

また、残業代は計算式だけを理解しておけばよいというものではありません。

例えば、実労働時間をどのように認定するか、残業代の基礎となる賃金はどれか(除外賃金の問題)など、様々な考慮要素を加味しなければなりません。

残業代の計算等でお困りの方は、弁護士に相談することをおすすめします。

   



  

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