弁護士コラム

「固定残業代」って何?


「固定残業代」って何?

労働者が時間外・休日労働(残業)をした場合、使用者は労働者に対し、残業代として、通常の労働時間または労働日の賃金の計算額に一定の割増率を乗じた割増賃金を支払わなければなりません。

現行法上、残業代の割増率は、以下のようになっています。

①1か月の合計が60時間までの時間外労働については2割5分以上②午後10時から午後5時までの深夜労働については2割5分以上

③1か月の合計が60時間を超えた時間外労働が行われた場合の60時間を超えた部分については5割以上
(ただし、中小企業は平成31年3月まで2割5分以上)

④休日労働については3割5分以上

固定残業代について

残業のイメージ画像

割増賃金の規定が義務化しているのは、時間外・休日・深夜労働に対し前述の割増率の基準を満たす一定額以上の割増賃金(残業代)を支払うことですので、そのような額の割増賃金が支払われる限りは、この割増率の計算方法をそのまま用いる必要はありません。

すなわち、残業代として法所定の割増賃金の代わりに一定額の「残業手当」を支払うことも、法所定の計算による割増賃金額を下回らない限り適法なものとして許容されることとなります。これが、いわゆる「固定残業代」というものです。

 

固定残業代を支払う場合に注意すること

残業代を固定額で支払うことで、一見、勤務時間をタイムカード等で記録した上で残業時間の計算をするというような労務管理をせずに済むように思えますが、これは間違いです。固定残業代を支払う場合であっても、時間管理等の労務管理は必要となりますし、この残業代の支払方法をとる場合には種々の手続が必要となります。

固定残業代を導入するにあたって

企業が適法に固定残業代を導入するためには、その就業規則、賃金規定、労働契約等において、明確にこれを定めることが必要になります。

具体的には、残業代の基礎となる賃金部分と固定残業代として支給される金額をそれぞれ明示し、その固定残業代の金額が何時間分の残業代に相当するのかを明確にしなければなりません。

そうでないと、後々紛争になった場合、残業代を「手当」として支払っているという主張自体が認められない結果となります。

労働時間管理の必要性

固定の残業代を「手当」として支払う場合でも、労働者の残業時間についての労務管理は必要となります。安全配慮義務に基づく点を除いて残業代のみに視点をおいたとしても、固定残業代はあくまで、その固定残業代の金額が、時間外労働における法定の賃金割割増率によって計算された割増賃金を上回っていることが前提となります。

すなわち、実際の残業時間に対応する法定の賃金割増率で計算された残業代が、固定残業代として支払われている金額を下回った場合、この差額が未払残業代として扱われ、労働者に対して支払わなければならない賃金ということになります。

したがって、固定残業代を導入する場合であっても、労働者の勤務時間に関する労務管理は必須となります。

 

固定残業代を導入するにあたって

 

固定残業代は、毎月一定額を残業代として支払うことから簡便な支払方法となるため、導入することを希望する経営者の方もいらっしゃるかと思います。もっとも、導入するにあたっては、種々の手続が必要になり、注意すべき点を怠った場合のリスクが存在しますので、事前に弁護士にご相談されることをお勧めします。


この記事を書いた人

弁護士 勝木萌

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