申告監督の流れと、労基署の調査の件数の状況を教えて下さい。


労基署対応についてよくある相談Q&A

質問申告監督はどのような流れで進んでいくのでしょうか?また、労基署の調査の件数などはどういった状況でしょうか?

 

Answer

弁護士鈴木啓太イラスト申告監督は、事前通知のある事案の場合、臨検の理由が具体的に記載された通知書が届いて、調査が開始されます。

申告監督は年間3万件を超えており、商業や接客娯楽業に対する調査が多いのが特徴です。

 

申告監督の流れ

パソコン申告監督は、労働者が労基署に所在する総合労働相談コーナーへ相談したり、申告することで、労基署が実際に事業場の調査を行うかどうか決定します。

調査することが決まれば、定期監督の場合と同じく調査方法を検討します。

そして、抜き打ち調査の場合には、事業場への事前の連絡はありませんが、事前通知を行う場合には、下図のような書面が担当する労働基準監督官によって作成され、送付されます

この書面では、定期監督と異なり、臨検の理由が記載されることが多いです。ここに具体的な労働者の氏名が記載されている場合には、当該労働者が申告を行ったと把握することができます。

もっとも、労基署への申告は、匿名や第三者(労働者の家族など)でも可能とされており、労働者が自ら申告した事実を事業場へ伝えないでほしいと申し出ている場合には、具体的な氏名は記載されずに作成されます。

申告監督の通知書

平成○年○月○日

(株)○○

代表取締役 殿

○○労働基準監督署長

 

臨 検 通 知

下記のとおり貴事業場を臨検することになりましたので、通知いたします。

1 日時 平成○年○月○日(○)午前○時〜(所要時間約90分)

2 場所 貴事業場

3 担当者 労働基準監督官○○

4 臨検の理由

貴事業場の労働者○○氏から、労働基準法違反にかかる申告がなされたため

5 確認事項

賃金の支払状況について

6 ご準備いただくもの

(1)雇用契約書及び労働条件通知書

(2)賃金台帳、労働者に交付した給与明細書

(3)タイムカードといった労働時間に関する資料

(4)就業規則、給与規定

(5)時間外労働、休日労働に関する労使協定届

なお、調査状況によっては、上記以外にも資料の提出を求める場合もあります。

 

 

申告監督の実施状況

解説する弁護士のイメージイラスト申告監督の総数は、下図のとおり毎年3万件を超えています。そのうち、4000件ほどは前年の積み残しとなっているため、新規受理件数は2万6000件ほどです。平成26年と平成27年の2年間を見ると、微減といった傾向です。

実際に申告のあった事業場を対象に申告監督を実施した割合は、70.7%(平成26年)73.4%(平成27年)となっており、申告があった7割強の事業場に調査を行っている状況です。

申告監督の実施状況(平成26年、平成27年)

平成26年

総数 3万1709件
前年からの繰越し 4620件
新規受理 2万7089件
処理完了件数 2万7580件

平成27年

総数 3万399件
前年からの繰越し 4119件
新規受理 2万6280件
処理完了件数 2万6308件

 

解説する弁護士のイメージイラストまた、申告されている内容としては、賃金不払が毎年最も多く、次いで解雇をはじめとする雇用問題が続きます(下図参照)。賃金不払は新規受理件数の80%以上となっています。

申告監督の対象となっている業種は定期監督と異なり、建設業や製造業よりも商業や接客娯楽業の件数が多くなっています

申告の内容(平成26年、平成27年)

平成26年

賃金不払 2万3022件(85.0%)
解雇 4239件(15.6%)

平成27年

賃金不払 2万2364件(85.1%)
解雇 4017件(15.3%)

※割合は新規受理件数に占めるもの、1件の申告で複数の項目を含むものがあるため、100%を超えている。

 

申告監督の対象業種(平成26年、平成27年)

平成26年

商業 4056件(18.1%)
接客娯楽業 3531件(15.7%)
建設業 3440件(15.3%)
その他の事業 2857件(12.7%)
製造業 2413件(10.8%)

平成27年

商業 3949件(17.7%)
建設業 3554件(15.9%)
接客娯楽業 3345件(15.0%)
その他の事業 2948件(13.2%)
製造業 2304件(10.3%)

 

 

賃金不払の案件の状況

上記のとおり、申告監督の多数を占めている賃金不払の問題については、事件として取り上げて、厚生労働省も労働基準監督年報で個別に統計を発表しています。

前年の平成26年に比べると、平成27年は事件数や対象労働者数、金額ともに減少傾向にあります。

しかしながら、減少傾向とはいえ、依然として労働基準監督官の調査により年間9000件以上の案件が解決され、対象となった労働者は1万7000人以上であり、2万人に迫る状況です。金額も42億円に上っています。

業種別の件数では、商業、建設業、接客娯楽業の順に件数が多くなっています(下図)。

他方で、対象労働者数は、平成26年、平成27年ともに、件数トップの商業ではなく製造業が一番多くなっています。

このことから、製造業では、1件の事件で複数の労働者に対する賃金不払が問題となっているという傾向がわかります。平成27年に関しては、対象金額のトップも製造業という結果が出ています(約22億1829万円)。

賃金不払事件の処理状況(平成26年、平成27年)

平成26年

新規案件 解決案件
件数 1万6021件 9917件
対象労働者数 3万3494人 1万8540人
金額 約104億5645円 約43億533万円

平成27年

新規案件 解決案件
件数 1万5002件 9604件
対象労働者数 2万9647人 1万7178人
金額 約97億7364円 約42億4959万円

 

賃金不払事件の業種別件数(平成26年、平成27年)

平成26年

業種 件数
商業 2946件(18.4%)
建設業 2618件(16.3%)
接客娯楽業 2604件(16.3%)

平成27年

業種 件数
商業 2774件(18.5%)
建設業 2475件(16.5%)
接客娯楽業 2398件(16.0%)

 

 

裁判所との関係

裁判所のイメージ画像申告監督については、裁判所との関係も問題になります。すなわち、労基署へ相談、申告を行った労働者が紛争解決手段として、後に裁判所の訴訟や労働審判を選択するということがあります。

この場合、申告の内容になっている問題については、最終的には裁判所の司法判断がなされることになります。そのため、調査を行う労働基準監督官も事案に応じて対応が変わってきます。

すなわち、賃金不払の事件のうち、最低賃金違反による賃金不払のケースであれば、裁判所の司法判断を待たずとも、最低賃金の基準が明確にあるため、労働基準監督官の方で違反の有無を判断し、指導や勧告を出すことができます

しかしながら、時間外労働についての賃金不払で、労働者と使用者との間で、そもそも時間外労働があったかどうかが争点になって、裁判所に訴訟が提起された場合、労働基準監督官としては、調査を進めて、事業場へ指導、勧告を行うには、争点となっている時間外労働の有無について判断せざるを得ません。

そうすると、裁判所の判断と異なる可能性も出てくる上、そもそも明確に法令違反の事実を確認できないという状態で指導、勧告を出すのを躊躇するということもあります。

したがって、労働者が裁判所での手続を選択した場合には、労基署としては対応を一旦終了して、その後の経過を見守るということも申告監督では起こり得ます

 

 


「労基署対応」についてよくある相談

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