メンタルヘルス不調者の休職期間満了時に、解雇することはできますか?


メンタルヘルスについてよくある相談Q&A

質問 経営者現在、メンタルヘルスの不調により私傷病休職中の従業員がいます。

間もなく休職期間が満了するのですが、使用者からみて従前の業務に復職させることが出来るとは思いません。

そのため、①休職期間満了と同時に普通解雇したいのですが、可能でしょうか。また、②その従業員が復職を申し出たとしても医師の診断を確認することなく解雇することはできますか。

 

 

Answer

メンタルヘルス不調者の休職期間満了時における解雇の判断

①休職期間満了と同時に普通解雇できるか

職種や職務内容が特定された従業員について

その職種や職務が遂行できる場合すなわち「原則として従前の職務を通常の程度に行える健康状態に復したとき」は治癒したといえますが、休職期間を満了しても傷病から回復していない場合は解雇が可能です。

職種や職務が特定されていない従業員について

従前の業務について完全な労務提供ができなくとも、
「雇用契約における信義則からすれば、使用者はその企業の規模や社員の配置、異動の可能性、職務分担、変更の可能性から能力に応じた職務を分担させる工夫をすべき」であり、
「現実に復職可能な勤務場所があり、本人が復職の意思を表明している」場合には、
復職させることなく解雇することは無効となります。

(※職種や職務内容が特定されているか否かのいずれのケースで解雇する場合であっても労基法20条の解雇予告の適用があるため、休職期間満了の30日前に予告するか、又は休職期間満了時に予告手当を支払って解雇する必要があります。)

 

②医師の診断を確認することなく解雇できるか

医師の診断を踏まえずに解雇したような場合には、解雇が無効とされるリスクがあります。

 

 

補足

休職期間満了による解雇

職種・職務内容が特定された従業員について

一見、当該従業員の職種が限定されているとみられるような場合であっても、就業規則上「他の職種」への変更も予定されているときがあるため注意が必要です。

職種・職務内容が特定されていない従業員について

上述のとおり、職種や職務内容が特定されていない従業員の私傷病による休職期間の満了にあたり、従前の業務について完全な労務提供ができなくとも雇用契約の信義則上、総合的な判断から「治癒」を認めて、使用者が下した「解雇」の判断が無効とされるケースがあります。

裁判所最高裁判決では、労働者が従前の業務についての完全な労務提供がない場合であっても、
「能力、経験、地位、当該企業の規模、業績、当該企業における労働者の配置、異動の実情及び難易に照らして、当該労働者が配置される現実的可能性があると認められる他の業務について労務の提供をすることができ、かつ、その提供を申し出ているならば、なお、債務の本旨に従った履行の提供がある」
とされました(最判平10.4.9)。

すなわち、職種・職務内容が特定されていない場合、治癒の判断にあたっては、当該従業員の他の軽易な業務への現実的な配置可能性を踏まえて判断をする必要があることになります。

 

配置可能な業務について

「配置可能な業務」について、裁判例上、当該労働者の職務遂行能力に応じた職務を創りだして担当させることまで要求している例が存在します(大阪地判平11.10.4)。

しかし、ごく短期間軽易な業務を行えばほどなく通常の業務を遂行できるような例外的な場合は別として、復職を求める労働者の能力に応じた職務を分担させることまでを使用者に求めることには疑問が残ります。

労働契約において予定された職務とはいえない職務についての遂行可能性があったとしても、それをもって労働者の債務の本旨に従った労務提供とはいえない以上、「配置可能な業務」についても労働契約で予定されている職種についての遂行可能性を検討すべきでしょう。

裁判や弁護士実際の事例として、商社の「総合職」として採用された労働者の休職からの「復職可能性を検討すべき職種」は「総合職」であり、復職に際しての配置可能な「他職種」とは、当該商社の「総合職の中で原告(労働者)が休業前に従事していた(特定の職種)以外の職種を指すと解すべき」として、総合職という枠の中での他職種の遂行可能性の有無を判断すべきとしたものがあります(東京地判平25.1.31)。

 

医師の診断を踏まえずに解雇したような場合

医師②について、復職の可否の判断は、最終的には会社がなすことになりますが、精神的疾患の場合に復職が可能であるかどうかを判断することは実際には非常に難しいため、医師(主治医や産業医)の診断が重要な意味を持ちます。

医師(主治医や産業医)の診断を踏まえず、治癒していないとして復職を認めず退職あるいは解雇したような場合には、退職・解雇が無効とされるリスクがあります。

また、治癒していないにもかかわらず復職させ、疾病を憎悪させたような場合には、安全配慮義務違反を問われ損害賠償を請求されるリスクがあるので注意が必要です。

 

 


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