パートでも有給はもらえる!有給がないと言われた場合の対処法

執筆者
弁護士 木曽賢也

弁護士法人デイライト法律事務所 パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士


結論から申し上げると、パートやアルバイトといった非正規雇用でも有給を取得することができます。

ただし、パートやアルバイトの有給の取得日数は、その雇用条件に応じて正社員よりも少なくなることが多いです。

パートやアルバイトの有給も法律上保障されていることから、条件を満たしているにもかかわらず、パートやアルバイトであることを理由として有給を与えないとする会社の対応は違法となります。

このような違法な対応をされた場合には、労働基準監督署や弁護士などに相談して状況を改善してもらう必要があります。

本記事では、パート・アルバイトの有給について、労働問題を多く扱う弁護士が解説します。

パート・アルバイトの有給について詳しく知られたい方は、是非本記事をご覧になってください。

 

パート・アルバイトでも有給休暇はもらえる

正社員ではないパート・アルバイトの場合でも有給休暇はもらうことができます。

パート・アルバイトの有給休暇については、労働基準法第39条3項、労働基準法施行規則第24条の3に規定されています。

参考
労働基準法|e-GOV法令検索
労働基準法施行規則|e-GOV法令検索

パート・アルバイトで有給休暇がもらえる条件は、正社員と同様、以下の条件を満たす必要があります。

 

6カ月間継続勤務している

1つめの条件として、採用日から6ヶ月間継続勤務している必要があります。

6ヶ月間継続勤務しているかどうかは、実質的に判断されるため、6ヶ月未満の有期契約のパート・アルバイトが更新して勤務している場合についても、基本的にこの条件を満たすと考えられています(昭和63年3月14日基発150号)。

参考:昭和63年3月14日基発150号 労働基準法関係解釈例規について|厚生労働省

 

継続勤務の要件を満たすと判断した裁判例

判例 1年契約を更新していた有期雇用契約について継続勤務をしていたと判断した裁判例

東京地裁平成9年12月1日労判729号26頁(国際協力事業団事件)
(判旨)

・・・それぞれ途中中断することなく引き続き被告に雇用されていたのであるから、その契約の形式に従って一年の雇用期間の定めのある雇用契約が繰り返し更新されたと見るか、期間の定めのない雇用契約に転化したと見るかはさておき、労働基準法(以下「労基法」という。)三九条の適用の上では、継続勤務したものと解すべく、原告らは各年度ごとに同条二項の規定に基づいて算出される日数の年休が与えられなければならない。・・・

判例 競馬の開催期間ごとの雇用を継続する馬券販売員について継続勤務をしていたと判断した裁判例

東京高裁平成11年9月30日労判780号80頁

(判旨)

前記認定の事実及び原判決掲記の証拠によれば、上告人と被上告人間において、昭和五六年以降平成三年四月一四日までの間実態として各雇用関係が同一性を維持して継続していたものし(ママ)た原審の判断は正当として是認することができる。

判例 学期間で約2ヶ月の空白期間がある語学学校非常勤講師の有期雇用契約反復更新につき継続勤務をしていたと判断した裁判例

東京地裁平成30年11月2日労判1201号55頁(学校法人文際学園事件)

(判旨)

被告が指摘するとおり、前期と後期との間には約半月、後期と次年度の前期との間には約2か月の期間があるものの、これはa専門学校が専門学校であることから、各学期間に講義が行われない期間が存在し、講師契約の性質上、この間も契約関係を存続させておく実益が極めて乏しいことによるものであり、上記のアベイラビリティ・シートの運用を併せ考慮すると、少なくとも本件においてこれらの期間が存在することを重視することは相当でない。

また、講師契約上、貸与品の返還等が定められていることや、ハローワークに対する届出等を行っている旨の被告の主張については、講師契約が形式的には有期契約であることから導かれるものであり、これらの事情も、年次有給休暇の趣旨に照らし、実質的に継続勤務と評価できるかどうかの判断にあたっては重視すべき事情とは評価できない。

以上のとおり、原告X1及び原告X2と被告との間の講師契約に関する諸般の事情を年次有給休暇の趣旨に照らして考慮すると、被告が主張する点を踏まえても、原告X1及び原告X2が年次有給休暇の申請を被告に対して行って時点で、両者とも継続勤務の要件を満たしていたものといえる。

 

全労働日の8割以上を出勤している

2つめの条件としては、全労働日の8割以上の出勤をしていることです。

「全労働日」に入らない日

全労働日には、以下のような日は含まれません。

全労働日に入らない日
  1. ① 休日や休日と同様の一般休暇日
  2. ② 不可抗力による休業日
  3. ③ 会社側に起因する経営・管理上の障害による休業日
  4. ④ 正当な争議行為により就労しなかった日
  5. ⑤ 就業規則上の慶弔休暇を取った日

 

出勤したものとみなされる日

以下の日については、出勤したものとして扱われて計算されます。

出勤したものとみなされる日
  1. ① 業務上の負傷・疾病にかかり療養のために休業した期間
  2. ② 産前産後の休業期間
  3. ③ 育児休業、介護休業期間
  4. ④ 育児休業、介護休業期間

 

 

パート・アルバイトの有給休暇の取得日数

パート・アルバイトの労働者の有給の法定付与日数

上記のように、パート・アルバイトの労働者にも、条件を満たせば有給は与えないといけません。

しかし、週所定労働日数が4日以下、週所定労働時間が30時間未満の労働者は、フルタイムで働いている正社員と同様に有給の日数が取得できるわけではありません。

週所定労働日数が4日以下、週所定労働時間が30時間未満のパート・アルバイトの有給の取得日数は、週の所定の労働日数や1年間の所定の労働日数によって下表のように規定されています。

 

パートタイム労働者の年休の法定付与日数

週所定労働日数 4日 3日 2日 1日
1年間の所定労働日数

169日 ~ 216日

121日 ~ 168日 73日 ~ 120日

48日~ 72日

継続勤務した期間に応じた付与日数 6ヶ月 7日 5日 3日 1日
1年6ヶ月 8日 6日 4日 2日
2年6ヶ月 9日 6日 4日 2日
3年6ヶ月 10日 8日 5日 2日
4年6ヶ月 12日 9日 6日 3日
5年6ヶ月 13日 10日 6日 3日
6年6ヶ月以上 15日 11日 7日 3日

弊所では、企業側の労働問題を数多く取り扱う弁護士が対応させて頂きますので、パートタイマーの労務管理等でお困りの経営者の方はお気軽にご相談ください。

有給がないと言われた場合の対処法

会社の方から有給がないと告げられた場合、従業員としては以下のような対処法が考えられます。

人事や総務に確認する

現場の方などに有給がないと言われた場合には、法律や出勤状況などを正確に把握していない可能性があるため、人事や総務の方に確認するようにしてください。

人事や労務の方に確認しても有給がないと言われた場合には、その理由を必ず聞きましょう。

また、念の為、就業規則や雇用契約書(労働条件通知書)の内容も確認してみてください。

 

労働基準監督署に相談する

有給がないと言われた場合に、最寄りの労働基準監督署に相談することも一つの手段です。

本来有給が与えられる状況で与えられていない場合、労働基準監督署から会社に対して是正の指導がされることがあり、その場合は有給がしっかり与えられるようになる可能性があります。

特に、雇用形態がパートやアルバイトであるという理由のみで有給が与えられていないとしたら、上記で説明した法律を遵守していないということになりますので、会社が労働基準監督署から指導を受けることはほぼ確実でしょう。

 

弁護士に相談する

有給がないと言われた場合には、労働者側の案件を扱う弁護士に相談するということも考えられます。

弁護士であれば、有給が与えられない現状を的確に分析して、有益なアドバイスをもらえることが期待できます。

※デイライト法律事務所は、企業側の労働問題を中心に扱っているため、労働者側の有給休暇の相談を受け付けておりません。

 

 

まとめ

  • パート・アルバイトでも条件を満たせば有給はもらえる。
  • パート・アルバイトの場合でも、有給がもらえる条件は、正社員と同様、「6カ月間継続勤務している」こと及び「全労働日の8割以上を出勤している」ということである。
  • パート・アルバイトの有給の取得日数は、週所定労働日数や週所定労働時間によって異なる。
  • 有給がないと言われた場合の対処法としては、①人事や総務に確認する、②労働基準監督署に相談する、③弁護士に相談するなどが考えられる。

パートやアルバイトでも有給はもらえるため、会社が有給を与えないとした場合には、その理由を確認した上で、上記で解説したような然るべき対処をするのが良いと思います。

 

 


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