年休申請を拒否した場合、労基署に指導されることはありますか?


労働時間・賃金についてよくある相談Q&A

質問従業員が年休の申請をしてきましたが、繁忙期だったため拒否しました。労基署から指導等されることはあるのでしょうか?

Answer
弁護士鈴木啓太イラスト繁忙期だからという理由のみでは、時季変更権の行使は違法になる可能性があります。

代替要員の確保ができないか十分に検討し、労働者と協議した上で、時季変更権を行使すべきです。違法な時季変更権の行使と認定されれば、労基署から是正勧告を受ける可能性があります。

年次有給休暇の取得要件

カレンダーのイラスト労働者は、①6カ月間継続勤務し、かつ、②全労働日の8割以上を出勤することで年次有給休暇(以下、「年休」といいます。)の権利を取得します。

逆に言えば、勤務期間が6カ月未満の従業員や全労働日の8割に満たない日数しか出勤していない労働者に対しては、年休を与える必要はありません。

年休の法定の付与日数は、下表のとおりです。

年次有給休暇の法定の付与日数

勤続年数 年次有給休暇付与日数
6ヶ月 10日
1年6ヶ月 11日
2年6ヶ月 12日
3年6ヶ月 14日
4年6ヶ日 16日
5年6ヶ月 18日
6年6ヶ月 20日

 

 

時季変更権の行使

年休は、上記の①、②の条件を満たせば、当然に発生する権利です。したがって、労働者が、特定の日を指定して有給を申請した場合には、原則として使用者は年休を与えなければなりません。

解説する弁護士のイメージイラストしかし、労基法39条5項ただし書きには請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては年休を与える日を変更することができることを規定しています。使用者のこの権利を時季変更権といいます。

ここでいうところの「事業の正常な運営を妨げる場合」について、裁判例(此花電報電話局事件 大阪高判昭53.1.31、判タ468号95頁)では、「当該労働者の所属する事業場を基準として、事業の規模、内容、当該労働者の担当する作業の内容、性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、労働慣行等諸般の事情を考慮して客観的に判断すべきである。」と判示されています。

使用者としては、裁判例の挙げる要素の事情を踏まえて、客観的にみて代替要員を立てることが困難であれば、「事業の正常な運営を妨げる場合」として、有効な時季変更権を行使できると考えられます。

また、労働者が事前の調整を経ることなく長期の年休を請求した場合に、は、時季変更権の行使にあたり、使用者にある程度の裁量的判断を認めた判例がありますので、ご紹介します。

【判例】時事通信社事件(最判三小平4.6.23民集46巻4号306頁、労判613号6頁、判時1426号35頁)

ビル街(事案の概要)

科学技術庁の専門の記者クラブに所属する記者である労働者が、1か月の年休を申請したところ、会社が2週間ずつ2回に分けて年休を採るように時季変更権を行使した。

労働者はこれを無視して欠勤したため、会社はけん責処分した上で、賞与を減給した事案であり、会社の時季変更権の行使が適法か争われた事案。

(判事の概要)

「労働者が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、使用者において代替勤務者を確保することの困難さが増大するなど事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、使用者の業務計画、他の労働者の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である。

しかも、使用者にとっては、労働者が時季指定をした時点において、その長期休暇期間中の当該労働者の所属する事業場において予想される業務量の程度、代替勤務者確保の可能性の有無、同じ時季に休暇を指定する他の労働者の人数等の事業活動の正常な運営の確保にかかわる諸般の事情について、これを正確に予測することは困難であり、当該労働者の休暇の取得がもたらす事業運営への支障の有無、程度につき、蓋然性に基づく判断をせざるを得ないことを考えると、労働者が、右の調整を経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、右休暇が事業運営にどのような支障をもたらすか、右休暇の時期、期間につきどの程度の修正、変更を行うかに関し、使用者にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。」と判示した上で、本件の労働者の職務は専門性が高く代替要員を長期にわたり確保することは困難で事前調整をせずに年休の申請を行ったなどの理由から、時季変更権の行使は適法であると判示しています。

このように、判例は、労働者が事前の調整を経ることなく長期の年休を請求した場合には、時季変更権の指定に関して使用者にある程度の裁量的判断を認めています。

 

 

時季変更権行使のポイント

年休を使用して休暇を取ることは労働者の権利ですので、使用者としてもその点は、配慮する必要があります。したがって、繁忙期で年休を与えることは困難な状況でも、代替要員を確保できないか検討すべきです。

十分に検討し、代替要員確保のための行動をしたけれども確保はできなかったという場合に時季変更権を行使することが無難です。時季変更権を行使する場合には、労働者と協議してなるべく近い時期に年休を与えることが望ましいです。

弁護士竹下龍之介イラスト年休についてお悩みの経営者の方はお気がるにご相談ください。企業側に立った労働問題を数多く取り扱っている弁護士がご対応させていただきます。

 

 


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