解雇通知書とは?弁護士がわかりやすく解説【テンプレート付】

執筆者
弁護士 阿部尚平

弁護士法人デイライト法律事務所 弁護士

保有資格 / 弁護士

解雇通知書とは、会社が従業員を解雇する際に交付する書面のことをいいます。

解雇は、会社と従業員との雇用契約を解除するものであるため、労使双方にとって重大な影響を及ぼします。

すなわち、解雇された従業員は、職を失うため、給料をもらうことができなくなります。

解雇通知書を作成する会社は、後日不当解雇を理由に訴えられる可能性もあります。

ここでは、労働問題に注力する弁護士が解雇通知書の書き方や確認すべきことについて、くわしく解説しています。

ぜひ参考になさってください。

解雇通知書とは

解雇通知書とは

解雇通知書とは、会社が従業員に対して渡す書面であり、当該従業員を解雇する会社の意思表示が示された書面のことをいいます。

 

解雇通知は口頭でもOK?

解雇通知を口頭で行うことは、法律上は可能となっています。

しかしながら、解雇とは会社が従業員との雇用契約を一方的に終わらせるものですから、最もトラブルになりやすい口頭のみで解雇通知を行なった場合、あとから解雇通知が行われたかどうか、いつ解雇となったのか(解雇の日)などを巡ってトラブルとなる可能性があります。

したがって、会社としては、確実に解雇の意思表示を示したことを証明するために、解雇通知書を作成することが重要といえます。

 

解雇通知書の重要性

企業側

既に述べたとおり、解雇を行う場合には、基本的に解雇通知が必要とされています(労働基準法第20条1項)。

解雇通知書を交付して解雇の意思表示を明確にすることで、企業としては解雇を行なった事実を明確にすることができ、解雇予告の有無に関する紛争を未然に防止することが出来ます。

労働者側

解雇通知書には、自分が解雇される理由が記載している場合が多いです。

したがって、解雇の有効性を検討するために重要な書面ということになります。

なお、後記において詳しく解説しますが、解雇通知書に解雇の理由が記載されていない場合、労働者は使用者(会社)に対して、解雇理由を照会することが可能です。

また、解雇日を確認することで解雇予告手当を受け取れるか否かが変わってきます。

したがって、その点を確認できる意味でも解雇通知書は重要になります。

 

 

解雇通知書と解雇予告通知書の違い

解雇通知書と解雇予告通知書の違い

解雇通知書と似ている名前の書面として、解雇予告通知書というものがあります。

この2つの書面の違いはどのような点にあるのか、以下で解説をしていきます。

解雇は、原則として30日前までに解雇予告をしておかなければならないとされています(労働基準法第20条1項)。

【根拠条文】

(解雇の予告)

第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
(略)

引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

そのため、解雇を行う場合には、解雇予定日の30日前までに労働者に対して解雇の意思表示を行いますが、このときに発出する書面が解雇予告通知書になります。

他方、解雇までの予告日数が30日に満たない場合、会社側は労働者に対して解雇予告手当を支払わなければなりません。

解雇予告手当を支払ってでも即日解雇したいと考える場合には、解雇通知書を発出し、その後に解雇予告手当を支払うことになります。

以上のように、2つの書面の違いは解雇予定日の30日前までに発出されているかどうかという点にあります。

 

両書面の違い

項目 解雇通知書 解雇予告通知書
共通点 解雇の意思を通知する書面
使用時期 即日解雇のときなどに使用 30日前までに解雇するときに使用
解雇予告手当 必要 不要

なお、当事務所は、解雇予告通知書のサンプルをホームページ上に公開しており、無料で閲覧やダウンロードが可能です。

解雇予告通知書の書き方・書式についてはこちらからどうぞ。

 

 

企業は解雇理由を求められたら解雇理由証明書を提示しよう

労働基準法は、「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の理由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」と定めています(労働基準法第22条1項)。

引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

そのため、解雇した従業員から解雇理由の通知を求められた場合、この規定に従って企業は遅滞なく証明書を交付する義務があることになります。

「遅滞なく」とは、「可及的速やかに」という意味で理解されていますから、可能な限り早く交付するようにしましょう。

 

 

解雇通知書のテンプレート

解雇通知書や解雇予告通知書の書式がほしいという方は、以下で無料ダウンロードが可能となっています。

ただし、企業の方による書式の使用は、自社において使用する場合のみに限らせて頂きます。

その他の場合は非弁行為(弁護士法違反)等の法令違反となる可能性があるため、使用は認めておりません。

また、こちらの書式はあくまでサンプルであり、個々のケースによって最適な内容は異なりますので、より詳しくは専門家にご相談ください。

ダウンロードはからどうぞ

 

 

解雇通知書の書き方

必要最低限の項目

最解雇通知書に低限必要な記載すべき事項

解雇通知書に記載すべき事項としては、①解雇する従業員の氏名、②社名(代表者名を追記しても可)、③解雇通知書の作成日、④解雇する日付、⑤解雇の意思表示、⑥解雇の根拠となる就業規則の規定などが挙げられます。

解雇通知書は法律で作成が義務付けられているものではありませんので、何を書くべきかが法律で決まっているわけではありませんが、以上のような事項は最低限必要でしょう。

上記の解雇通知書のサンプルは、上記の必要項目を網羅しています。

これに加えて、解雇理由をあらかじめ記載しておく方法も考えられます。

解雇理由をあらかじめ記載するメリットは、後から従業員に解雇理由を求められた際に、応答する必要がないということです。

 

注意点〜解雇理由を書くべきか?〜

解雇理由を記載する場合、その記載内容には十分注意すべきです。

従業員が解雇を争う場合、解雇理由が事実と異なることを理由に反論することが予想されます。

その場合、解雇理由の存在について、企業は立証責任を負います

また、解雇理由が存在したとしても、それが解雇相当と言えるほど重大なものでなければなりません。

裁判実務において、この解雇理由の立証は簡単ではありません。

したがって、解雇通知書を作成される場合、事前に労働問題に精通した弁護士に相談されることをお勧めいたします。

解雇理由について、詳しくはこちらをご覧ください。

 

注意点〜条件付きの解雇予告〜

問題を起こした従業員を解雇する前に、退職勧奨を行っているケースもあります。

そのような場合に、自主退職しない場合には解雇するとか、●●の条件を満たさない場合には解雇するといった解雇通知を行うこともあるかもしれません。

このような条件付の解雇予告は、労働基準法の求めている解雇予告としては認められていません。

そのため、解雇が確定している場合には条件付の解雇予告であると捉えられないよう、文言に注意する必要があります。

 

試用期間の場合の解雇通知書で注意すべきこと

試用期間中でも解雇は簡単にできない?

試用期間について、多くの会社はその文字通り、「お試し期間」と捉えています。

すなわち、お試しで働いてもらって合わなければ即解雇できる、という捉え方です。

しかし、これは明らかな誤解です。

試用期間中といえでも、会社はよほどのことがなければ、その従業員を解雇できません。

 

解雇予告は不要?

試用を開始してから14日以内に解雇を行う場合には解雇予告は不要とされています(労働基準法第21条)。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

しかしながら、試用開始から14日を超えて解雇をする場合には、通常の解雇と同様に30日前までの解雇予告が必要となる点に注意が必要です(労働基準法第20条)。

30日前に満たない場合には解雇予告手当てに相当する金額を支払う必要が出てきますので、試用期間中の解雇判断は余裕を持って行いましょう。

 

無断欠勤の場合の解雇通知書で注意すべきこと

既に解説したとおり、従業員には解雇の通知を行わなければなりません。

これは無断欠勤を続けている従業員であっても同じです。

たとえ就業規則に「無断欠勤●日以上の場合は自動的に退職となる」というような条文を置いていたとしても、労働基準法が優先されますから、解雇通知は基本的には必要となる可能性が高いと思われます。

会社に出てこない以上、手渡しで交付することは難しいでしょうから、基本的には郵送による通知となることが予想されますので、内容証明郵便による通知を行うように注意しましょう。

 

会社都合の場合にどのように記載する?

整理解雇の場合

整理解雇を行うためには以下の4つの要件を満たす必要があると考えられています。

整理解雇を行う場合の解雇通知書には、既に解説した項目以外にもこれらの4つの要件についても軽く触れておくことが望ましいかもしれません。

整理解雇を行うための4つの要件

①人員を削減する必要があること

「経営の再建を図るため」といった理由などが挙げられます。

他方、「事業の生産性をより向上させるため」といった理由は、整理解雇を行う場合の理由としては不十分となる可能性があります。。

②解雇される人物の選定に合理性があること

解雇通知書の中に記載をするのであれば、整理解雇の対象となった者の条件を示しておくという程度で十分でしょう。

例えば、「◯◯営業所の社員」、「◯◯事業部門の社員」といった形です。

もちろん、整理解雇の対象となった者の条件は評価者の主観的なものではなく、合理的・公平なものである必要があります。

③解雇を回避する努力を尽くしたこと

解雇通知書には、希望退職者の募集、経費の削減、資産の売却など、会社が取り組んだ内容を具体的に列挙し、解雇を回避する努力を尽くしたことを盛り込んでおくことも考えられます。

④解雇の手続きが適切であること

労働組合などと協議した結果であることや就業規則等に基づいて解雇を行なっていることなどを示す文章を盛り込むことが考えられます。

デイライトでは、概ね上記のような内容を盛り込んだ解雇通知書の書式を提供しています。

各会社によって実際に解雇通知書に記載すべき事情は異なりますが、自社で解雇通知書を作成する場合の参考にして頂ければと思います。

整理解雇の場合における解雇通知書の書式は以下のページをご覧ください。

合わせて読みたい
整理解雇通知

 

 

解雇通知書の通知方法

面談して書面を手渡す方法

法律上、解雇通知が有効とされるためには、解雇予告通知が解雇する従業員に間違いなく届くことが必要になります。

【ワンポイント・アドバイス】

面談して書面を手渡す場合、後から手渡した事実を証明するために、解雇予告通知書のコピー等を準備しておくか受領証を作成し、受領した旨の記載や受領日を記載してもらい、署名押印をするよう促しましょう。

このような手続きを踏んでいない場合、後々解雇通知書を受け取ったかどうかについてトラブルとなる可能性が残ってしまいますから、確実に手渡したことを示す証拠を残しておきましょう。


郵送する方法

解雇する従業員が既に出勤していない場合や、従業員が解雇通知書の手渡しに際しての受領証等の記載を拒んだ場合には、郵送によって通知する方法も考えられます。

郵送による通知の場合、配達証明の付いた内容証明郵便を利用するべきです。

配達証明の付いた内容証明郵便によって、会社から従業員宛に郵便を送付した事実と送付した解雇通知書の内容を証明することが可能になります。

そのため、後から従業員がそのような書面を受け取っていないという主張を行うことを封じることが可能になります。

ただし、配達証明の付いた内容証明郵便は、本人に直接渡す郵便物ですので、受領拒否をされる可能性が残っています。

このような場合に備え、普通郵便を併用することも考えられますが、受領拒否の場合であっても、法律上は通常到達すべきであったときに到達したものとみなされますので(民法第97条2項)、特に心配する必要はありません。

メール等で送信する方法

解雇を通知する方法として、メール等を利用することも可能です。

メールの表題に解雇通知と記載し、本文に解雇通知書と同様の内容を記載して、添付ファイルに解雇通知書のデータを貼り付けるという形式を取れば問題はないでしょう。

ただし、メールは従業員に届いたかどうか、確認したかどうかを確かめる手段があまりなく、郵送や手渡しの方法よりも通知方法としては不安が残ります。

状況にもよりますが、より慎重を期したい場合は、メールでの通知だけでなく、郵送による通知も合わせて検討されると良いでしょう。

 

 

解雇通知書で確認すべきこと【企業側】

解雇であることが確実に伝わる書面であるか

例えば、「●日からは会社に来なくてよい」といった漠然とした表現にとどまっている場合、従業員が書面を見ても自宅待機命令なのか解雇なのか分かりません。

このような解雇通知書では正しく解雇通知が行われたと認められない可能性もありますから、「解雇する」ということを明記しましょう。

 

解雇日が正確に伝わる書面であるか

解雇通知書に「本日をもって解雇とする」という記載しかされておらず、書面の作成日と従業員が書面を受領した日が一致しない場合には、従業員と会社との間で解雇日の認識が一致しない可能性があります。

解雇日は、解雇予告手当の要否に影響してきますから、●月●日付ということをしっかりと明記しましょう。

 

従業員に解雇を通知したことをあとから証明できるか

解雇通知を発出したとしても、その事実をあとから証明できなければ意味はありません。

解雇通知を行った事実を証明できるような方法を取れているかどうかを確実に確認しましょう。

 

 

解雇通知書で確認すべきこと【従業員側】

解雇される日はいつか

まずは解雇日がいつかを確認しましょう。

解雇予告を受けている日が30日に満たない場合には、原則として、その日数分の給与相当額を解雇予告手当てとして請求することが可能になるからです。

ただし、①地震などの天変地異やそのほかのやむを得ない理由によって事業を継続することが困難となった場合や、②労働者に帰責性がある場合には、即時解雇が可能とされていますので、このような例外的な場合には解雇予告手当を受け取ることは出来ません(労働基準法第20条1項但書、同条3項)。

 

解雇理由の記載があるか

解雇通知書に解雇理由や解雇予告に至った経緯が記載してある場合には、法律上そのような理由による解雇が有効かどうかについて検討する必要があります。

そのため、解雇理由がどのようなものになっているかをしっかりと確認しておきましょう。

また、上で解説したとおり、解雇通知書に解雇理由が記載されていない場合、会社に解雇理由証明書の交付を請求するとよいでしょう。

 

 

よくあるQ&A

不当解雇と思ったら解雇通知書の受け取りは拒否できる?

不当解雇であると考えた場合、解雇通知書を受け取ることで解雇に納得したと思われるのではないかという気持ちから、解雇通知書の受け取りを拒否する方もいらっしゃるかもしれません。

解雇通知書の受け取りを拒否すること自体はもちろん可能です。

しかしながら、手渡しでの受け取りを拒否したとしても、会社が内容証明郵便によって解雇通知書を送付してきた場合、最終的には解雇の通知が有効に行われたとして扱われる可能性が高くなりますから、受け取りを拒否する意味は乏しいといえます。

一刻も早く解雇通知書の内容を確認して、解雇の有効性を争えるかどうかを検討する方が有意義でしょう。

 

解雇通知書はアルバイトにも必要?

解雇するのであれば、アルバイトにも解雇通知書は渡す方がよいでしょう。

アルバイトとは、法律上の用語として用いられるものではありません。

一般的にフルタイムを前提としている正社員と比べ、パートタイムを前提としている非正規従業員のことをアルバイトと呼んでいるというだけです。

つまり、アルバイトという呼び方はあくまでも会社が区別しやすいように呼んでいるだけであり、実態としては雇用契約の内容が正社員とは異なるだけです。

アルバイトであったとしても、雇用契約を結んでいる以上は、当然、労働基準法の適用があります。

既に解説したとおり、解雇を行う場合には、解雇通知が必要であるというのが労働基準法のルールとなっています(労働基準法第20条1項)。

そのため、アルバイトを解雇する場合にも何かしらの方法で解雇通知を行わなければなりません。

既に解説したとおり、口頭で解雇を伝えるだけでも解雇通知としては有効です。

しかしながら、口頭での解雇通知だけでは、後から解雇通知の有無を争われた際に、解雇通知を行なったことの証明が難しくなります。

そのため、多少面倒であったとしても、アルバイトに対して解雇通知書を交付しておく方が無難といえるでしょう。

参考:e-Gov法令検索|労働基準法

 

解雇通知書をもらえない、どうすればいい?

正当な理由なく解雇通知書を交付されない場合には、労働基準法第22条1項所定の書面を交付するよう求めましょう。

会社が解雇通知書を交付してくれない理由としては次のような理由が考えられるかもしれません。

①解雇を行う正当な理由がないと自覚している場合

会社が解雇通知書を交付してくれない理由としてまず考えられるのは、会社が解雇を行う正当な理由がないと自覚している場合です。主に小規模の会社で起こり得ることですが、会社の人事権を持っている代表者などが、従業員に対してその場の勢いで解雇を言い渡したものの、冷静になって考えると解雇を行う正当な理由がないことに気付くというようなことがあります。

このような場合、解雇の有効性が争われれば会社に勝ち目はありませんから、会社も解雇を無かったことにしようと考えているかもしれません。

解雇に正当な理由がないと考えられる事案であれば、解雇の有効性を徹底的に争うと伝えると、解雇を無かったことにしたいと会社から申し出がある可能性があります。

②会社は解雇したとは考えていない場合

会社が解雇通知書を交付してくれない理由として次に考えられるのは、会社としては従業員を解雇したと考えていない場合です。

①と似た事例になりますが、会社の人事権を持っている代表者などが従業員を叱り、「もう来なくていい!」などと発言した場合にこのような事態が起こる可能性があります。

このような場合、会社はそのような発言をしたものの、解雇とは明言しておらず、解雇を行なった認識がないと考えていることもありますから、解雇通知書の交付を求められたとしても、当然解雇通知書の交付に応じるはずがありません。

解雇をしたつもりはないと会社からの説明があれば基本的にはそれで済んでしまう話ですので、解雇通知書の交付を拒否された時点で、そもそも自分は解雇されているのか否かを尋ねてみるとよいでしょう。

③従業員の自主退職ということにしようと考えている場合

会社が解雇通知書を交付してくれない理由としてそのほかに考えられるのは、会社が従業員の自主退職ということにしようと考えている場合です。

このような場合には、会社からは退職届を書くよう促されることになります。

諭旨解雇とすべき事案であれば、このような会社の行為は特段不当とはいえませんが、解雇の正当な理由が認められないような事案なのであれば、安易に退職届を書いてはいけません。

退職届を書いてしまうと、法律上解雇が行われたと認められず、従業員の不利に働くことがあるからです。

自分の事案が諭旨解雇相当なのか否か、今後どのように対応するべきかを弁護士に相談するとよいかもしれません。

④特に理由がない場合

会社が解雇通知書を交付してくれない理由が特にないことも十分に考えられます。

従業員としては、解雇された事実を明らかにするとともに、今後どのように対応するべきかを判断するために解雇の理由等を明らかにしてほしいと考えることでしょう。

しかしながら、法律上、解雇通知は口頭でも問題なく、解雇通知書を必ず交付しなければならないという決まりはありません。

口頭で解雇通知が行われている場合には、解雇通知書の交付を求め続けても会社が応じない可能性があります。

そのため、会社が法律上交付を義務付けられている書面で代替が出来ないか、考える必要があります。

労働基準法第22条1項は、「労働者が退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の理由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。」と定めています。

こちらの書面については、会社が法律上交付を義務付けられている書面になりますから、確実に受け取ることが出来るでしょう。

使用期間や、解雇の理由が含まれた書面を交付してもらえれば、ある程度は解雇通知書に代替出来ると思われます。

従業員としては、解雇が正当なものか、今後どのように対応すればいいかを判断するために労働法第22条1項の証明書を受け取ることをお勧めします。

参考:e-Gov法令検索|労働基準法

 

従業員が解雇通知書の受け取りを拒否、どうすればいい?

従業員の住居に解雇通知書を郵送すれば、それ以上は何もする必要はありません。

既に解説したとおり、解雇の意思表示を確実に伝えるため、会社は従業員に対して解雇通知書を交付しておくべきです。

しかしながら、解雇を不当だと考えている従業員が解雇通知書の受領を拒否することも起こり得ます。

なかには、解雇通知書を郵送しても、返送してくる従業員もいることでしょう。

このような場合に解雇通知の効力が認められるのか、不安に思われるかもしれませんが、心配はいりません。

解雇通知は、解雇される従業員が確実に知ることが出来る状態で行われる必要がありますが、この条件は郵便物が労働者の住居に配達された時点で満たされることになっています。

なぜならば、民法97条1項に「隔地者に対する意思表示では、その通知が相手方に到達したときからその効力を生ずる。」と定められているからです。

隔地者とは、遠くにいる人、意思表示を認識できるまで時間がかかる状態の人というような意味ですから、郵送によって解雇通知を行う場合の従業員も隔地者といえます。

そのため、従業員が解雇通知書を受け取らず、やむを得ず解雇通知書を郵送したという場合は、一度解雇通知書が従業員の住居に配達されれば、それ以上何もする必要はありません。

従業員が解雇通知書を返送してきたとしても、解雇通知の効力には一切影響はありませんから、安心してください。

ただし、送った解雇通知書を従業員が返送してこなかった場合には、配達されたかどうかがわからないと後日受け取っていないなどと争われる可能性があります。

そのため、会社としては内容証明郵便を使用して、解雇通知書を送付し、あわせて配達したことを記録として残す特定記録郵便も併用するという方法を取ることをおすすめします。

 

 

まとめ

解雇通知書に関する注意点についての解説は以上となります。

解雇通知書は、解雇が行われることを示す重要な書類ですが、解雇そのものが有効となるためには、解雇理由が認められることも必要になりますが、経営者の方が想像されているよりも、解雇理由の認定が厳しいということが往々にして起こり得ます。

従業員の解雇を行いたいとお考えの経営者の方は、解雇に着手する前に労働事件を専門に取り扱うチームがある当事務所にご相談ください。

 

 




  

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