解雇理由は書面で通知する必要がありますか?
解雇した従業員が解雇理由の証明書を求めてきました。本人には口頭で解雇理由を説明していたのですが、解雇理由を書面で通知する必要があるのでしょうか?
また、どのようなことを記載する必要があるのでしょうか?
従業員から解雇理由の証明を求められた場合、会社は遅滞なく証明書を交付する必要があります。また、解雇理由については具体的に示す必要があります。
退職証明書
労働基準法は、「労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない」と規定しています(労基法22条1項)。
したがって、解雇した従業員から解雇理由の証明書を求められたとき、会社は遅滞なく証明書を交付する義務があります。
あくまで従業員から証明書を求められた場合に交付義務がありますので、求められない場合は交付する必要はありません。
交付の時期
労働基準法は、交付の時期について、明確に定めず、「遅滞なく」と規定しています。この「遅滞なく」とは「可及的速やかに」の意と解されています。
また、労働者が期限を付して解雇理由の証明書を求めた場合、使用者は可能な限り、これに応じるべきでしょう。
解雇の理由
解雇の理由については、具体的に示す必要があると解されています。
行政解釈では、就業規則の一定の条項に該当することを理由として解雇した場合、当該就業規則の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならないとされています(平成11年1月29日基発第45号、平成15年12月26日基発第1226002号)。
なお、退職時に雇用保険の離職票をハローワークへ提出しますが、これをもって退職時の証明書に代えることはできません。
解雇理由証明の期限
退職時の証明書の請求権の時効は、退職時から2年です(労基法115条、前掲通達)。
したがって、解雇してから2年以上経過した場合、仮に解雇理由の証明を求められてもこれに応じる必要はありません。
実務上の留意点
解雇理由の記載は、具体的に示すべきですが、事実に基づき、的確に記載する必要があります。
裁判等において、解雇理由の変更が問題となる場合があります。
例えば、解雇理由証明書には、「会社業績悪化のため」と記載していたのに、その後、不当解雇として、雇用契約上の地位確認訴訟が提起され、同訴訟において、解雇理由に被解雇者の非違行為を追加する場合です。
普通解雇の場合、解雇理由証明書への記載がない解雇事由を追加で主張することが認められないわけではありませんが、裁判所の心証を悪くする可能性があります。
したがって、解雇理由については、慎重に判断すべきです。
解雇・退職問題については、労働問題に詳しい専門家にご相談ください。
当事務所の労働弁護士は、使用者側専門であり、企業を護るための人事戦略をご提案しています。
まずはお気軽にご相談ください。
関連Q&A

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士
所属 / 福岡県弁護士会
保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者
専門領域 / 法人分野:労務問題、外国人雇用トラブル、景品表示法問題 注力業種:小売業関連 個人分野:交通事故問題
実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所のパートナー弁護士であり、北九州オフィスの所長を務める。労働問題を中心に、多くの企業の顧問弁護士としてビジネスのサポートを行っている。労働問題以外には、商標や景表法をめぐる問題や顧客のクレーム対応に積極的に取り組んでいる。
