解雇理由証明書とは?弁護士が注意点を解説【記載例・サンプル付】

監修者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

保有資格 / 弁護士・MBA・税理士・エンジェル投資家


解雇理由証明書とは、会社が、解雇予告した従業員に対して、その解雇の理由を証明する書類のことをいいます。

解雇理由証明書は、解雇予告をされた従業員が、①その解雇の正確な理由を明確に知るとともに、②その記録を残すためのものです。

仮にその記載内容に不備があると、解雇が不当解雇として、無効となるおそれもあります。

したがって、解雇理由証明書は会社側、従業員側双方にとって重要な法律文書となります。

このページでは、解雇理由証明書の意味、書き方、会社側・従業員側それぞれのポイントを労働問題に詳しい弁護士が解説しています。

ぜひ参考になさってください。

 

解雇理由証明書とは?

解雇理由証明書(かいこりゆうしょうめいしょ)とは、会社が、解雇予告した従業員に対して、その解雇の理由を証明する書類のことをいいます。

労働基準法では、解雇予告された従業員が、解雇理由について証明書を請求した場合、会社は「遅滞なく」この証明書を交付する必要があるとされています(労働基準法第22条第2項)。

労働基準法第22条第2項

(退職時等の証明)

第二十二条

② 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

なお、解雇の予告の後に、その従業員がその解雇以外の理由で退職した場合には、会社は、その退職の日以後、解雇理由証明書を交付する必要はありません(労働基準法第22条第2項但書)。

 

解雇理由証明書と退職証明書の違い

解雇理由証明書と類似したものとして、「退職証明書」(労働基準法第22条第1項)というものもあります。

解雇理由証明書が、解雇予告の時から解雇日までの間に請求されるものであるのに対して、退職証明書は、退職日(解雇の場合は解雇日)以降に請求されるものです。

解雇理由証明書は、解雇の場合に限った解雇の理由についての証明書です。

一方、退職証明書は、解雇の場合に限らず、従業員が退職した場合に請求できる証明書で、退職理由(解雇の場合は解雇の理由)だけでなく、他の事項についても従業員の請求に応じて証明する必要がある点で異なります。

なお、解雇予告がされない、いわゆる「即時解雇」で解雇された場合には、従業員は解雇日以降に証明書を請求することになります。

そのため、即時解雇の理由については、「退職証明書」が請求されることになります(平成15年10月22日基発第1022001号)。

参考 平成15年10月22日基発第1022001号 第2 2(2)イ

(2) 法第22条第1項との関係

イ 法第22条第2項の規定は、解雇予告の期間中に解雇を予告された労働者から請求があった場合に、使用者は遅滞なく、当該解雇の理由を記載した証明書を交付しなければならないものであるから、解雇予告の義務がない即時解雇の場合には、適用されないものであること。

この場合、即時解雇の通知後に労働者が解雇の理由についての証明書を請求した場合には、使用者は、法第22条第1項に基づいて解雇の理由についての証明書の交付義務を負うものと解すべきものであること。 

引用元:平成15年10月22日基発第1022001号|厚生労働省

以上で説明した、解雇理由証明書と退職証明書の違いを表にまとめると以下の通りです。

解雇理由証明書 退職証明書
対象となるケース 解雇の場合
※即時解雇の場合を含まない
・解雇の場合
・解雇以外の退職の場合
※即時解雇の場合を含む
請求される時期 解雇予告時~解雇日
※解雇予告日以降に別の理由で退職した場合には交付が不要になる(法22条2項但書)。
・解雇日以降
・退職日以降
証明事項 解雇理由
※解雇理由以外の事項を証明してはならない(法22条3項)
・在職した期間
・在職中に担当した業務の種類
・在職中の地位
・在職中の賃金
・退職の理由(解雇の場合は解雇理由)
※このうち、従業員が求めた事項を証明する。
※従業員が請求していない事項を証明してはならない(法22条3項)
根拠の法律 労働基準法第22条第1項 労働基準法第22条第2項

このページでは、解雇理由証明書について解説していますが、解雇日以降に、退職証明書として解雇理由の証明を求められた場合についても、基本的に解雇理由証明書と同じ説明が当てはまりますので、このページをぜひ参考にしてください。

必要に応じて、退職証明書についても意識して補足説明を加えています。

労働基準法第22条第2項

(退職時等の証明)

第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

解雇理由証明書の重要性

解雇予告した従業員から解雇理由の証明書を求められたとき、会社には、遅滞なく「解雇理由証明書」を交付する義務があります。

解雇理由証明書について、会社が交付を拒否すれば会社の法律違反になってしまいます(罰金の定めあり)。

また、もし適当に作成して交付してしまった場合にも会社が予期せぬ不利益を受けてしまう可能性があります。

一方、従業員側でも、解雇理由証明書の意味をしっかり理解することが、自分の身を守ることにつながります。

このように、会社・従業員のいずれの立場であっても、「解雇理由証明書」を知ることは非常に重要です。

このページでは、この「解雇理由証明書」について、詳しく解説していきます。

 

解雇理由証明書は何に使うの?

そもそも、「解雇理由証明書」は何に使うのでしょうか。

解雇理由証明書は、解雇予告をされた従業員が、①その解雇の正確な理由を明確に知るとともに、②その記録を残すためのものです。

①正確な解雇理由を知る

口頭やメールでは、その場限りの曖昧な説明がされてしまうことも多いですし、場合によっては解雇の理由が何も説明されないまま解雇を通知されてしまうこともあります。

このような場合、解雇された従業員は、十分に解雇の処分に納得できないこともあると思います。

しかし、解雇というのは、従業員にとっては非常にインパクトのある出来事ですから、その理由をしっかり把握して納得しないと、なかなか受けいれることはできないでしょう。

そこで、法律上、従業員側を保護するため、会社としての正式な解雇理由を解雇理由証明書で教えてもらえるようになっています。

②記録を残す

仮に、解雇予告された従業員が、解雇の理由に納得できない場合には、解雇の有効性について裁判などで会社と争いになる場合があります。

このような場合には、解雇理由証明書が重要な記録・証拠になります。

裁判では、解雇理由証明書に記載された理由が解雇の理由であること(他には、解雇の理由がないこと)を前提として、基本的に裁判官が判決を下すことになります。

このように、解雇理由証明書は、正確な解雇の理由を示す重要な記録になりますので、特に裁判などで会社と解雇について争う可能性がある従業員の方にとっては、解雇理由証明書は欠かせないものになります。

 

なぜ、解雇について裁判が起こるの?

なぜこのように解雇について裁判が起こる可能性があるのでしょうか。

そもそも、解雇は、従業員にとっては生活に与えるインパクトが非常に大きいです。

そのため、日本では、会社が従業員を解雇することに法律上の制限があり、よほどの事情がない限り、会社は従業員を解雇できません。

具体的には、解雇することに「客観的に合理的な理由」があり、さらに、解雇することが「社会通念上相当」(解雇の相当性)と言えるような場合でない限り、解雇は法律上禁止されています(労働契約法第16条、解雇権濫用法理)。

労働契約法第16条

(解雇)

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

引用元:労働契約法|e-Gov法令検索

十分な理由がないにもかかわらず解雇されてしまった従業員は、解雇が無効であることを主張して、解雇日以降の賃金相当額を会社に請求したり、復職を求めることができます。

このように、理由が不十分な解雇(いわゆる「不当解雇」)がされた場合に、解雇された従業員と、会社との間では、解雇について裁判がされることが珍しくありません。

なお、裁判(訴訟)の他にも、裁判所における労働審判という手続きで争われる場合もあります。

労働審判とは、裁判(訴訟)と同じく、裁判所で行う手続きですが、従業員と会社の間のトラブルを迅速に、そして柔軟に解決するために用意された非公開の手続きです。(これに対して、訴訟は誰でも原則として傍聴が可能な公開の手続きです。)

労働審判は、従業員・会社の双方にとってメリットも多いですので、従業員の方が裁判所で会社に申し立てを行う場合には、労働審判も積極的に検討するとよいでしょう。

引用元:労働審判法|e-Gov法令検索

具体的に、どちらの手続きを取るべきか悩ましい場合には、労働問題に詳しい弁護士にアドバイスを求めることをお勧めします。

 

どのような解雇理由であればいいの?

どのような解雇理由であれば解雇が認められるのでしょうか?

上でも説明した通り、解雇には、「客観的に合理的な理由」であり、その理由に対する対応として解雇が「社会通念上相当」である必要があります。

このうち、「客観的に合理的な理由」については、具体的には、その会社で定めている就業規則に記載されている解雇事由に該当する事実が存在するか、ということが問題になります。※

※なお、解雇理由は基本的に就業規則に全て記載されていることが望ましいですが、就業規則に記載されていない理由で解雇(いわゆる、「普通解雇」)をすることも、一定の場合には認められる可能性があります。

そして、仮に「客観的に合理的な理由」があるとされた場合においても、さらに、その解雇が「社会通念上相当」(解雇の相当性)であることが必要になります。

解雇の相当性とは、その理由が解雇するほどの重大な程度のものか、ということです。

例えば、従業員の勤務態度に問題があることや、規律違反がある場合、それは解雇の理由として合理的とされています。

もっとも、一回の無断欠勤など、一回の軽い失敗だけを理由にして従業員を解雇することは過剰な処分と考えられやすいため、解雇の相当性が認められにくいでしょう。

一方で、会社側からの指導や注意にもかかわらず、従業員が故意に無断欠勤を多数回繰り返すような場合には、解雇の相当性が認められるといえるでしょう。

このように、解雇の相当性は、従業員側の責任・悪質性や、それによって会社が受けた損害などの様々な事情を総合的に考慮して判断されることになります。

 

 

解雇理由証明書のサンプル

解雇理由証明書を理解するためには、具体的なサンプルや記載例を確認するのが一番です。

本ページでは、弁護士が作成した解雇理由証明書サンプルや、記載例を公開しています。

ぜひご確認ください。

解雇理由証明書のサンプル

解雇理由証明書サンプル

 

解雇理由証明書の記載例

解雇理由証明書記載例

解雇理由証明書の書式のダウンロードはこちらから。

 

厚生労働省の解雇理由証明書の書式

なお、厚生労働省でも、解雇理由証明書の書式を公開しています。

当事務所で作成しているサンプルと比較して、就業規則違反がない事例で解雇する場合に使いやすい書式になっていますので、こちらも参考にご覧ください。

参考:解雇理由証明書|厚生労働省

 

 

解雇理由証明書の記載例と解説

解雇理由証明書を具体的に作成する手順を見ていきましょう。

上でお示しの記載例をもとに、項目ごとに解説していきます。

冒頭(タイトル・宛名)

まず、「解雇理由証明書」という文書のタイトルを記載して、その直下に宛名(「  ⚫⚫⚫⚫  殿」)を記載します。

「⚫⚫⚫⚫」の部分には、解雇された従業員の方の名前をフルネームで記載しましょう。

なお、解雇された従業員が複数いる場合であっても、解雇理由証明書は従業員1人分ずつそれぞれ作成するようにしましょう。

 

作成日付

続いて、作成日付を記載しましょう。

解雇理由証明書は、会社が解雇の理由を証明する正式な文書になります。

そのため、その文書が、「いつ、どの時点で作られたのか」も重要な要素になります。

作成日付を忘れずに記載するようにしましょう。

なお、「年」については西暦表示(20●●年)でも、元号表示(令和●年)でも構いませんが、元号表示は誤記が多くなりがちですので注意しましょう。

 

会社名

作成日付の真下に、会社名を記載しましょう。

会社名は、正式名称を記載するのが原則です。

そして、会社名に続いて、代表者名(原則として、代表取締役名)を記載しましょう。

「印」マークの部分には会社の印鑑を押しましょう。(実際には、書面全体が完成してから印鑑を押すことになります。)

会社の印鑑は必要?

解雇理由証明書に、会社の印鑑が必要なのか、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、会社の印鑑がないからといって、解雇理由証明書が無効になるわけではありません。

したがって、印鑑が押されていない場合でも、会社が法律違反になるわけではありません。

もっとも、会社の印鑑は、会社がその文書を正式に作成したことを示す「印」ですから、解雇理由証明書のような正式な書面には印鑑を押すのが、慣習上自然です。

また、会社の印鑑を押すことで、従業員が解雇理由証明書を偽造する(例 解雇理由を書き換えた偽物の証明書を作る)ことを妨げる効果も期待できます。

解雇理由証明書を作成する場合には、会社の印鑑を押すことをおすすめします。

 

本文冒頭

いよいよ、解雇理由証明書の本文に入ります。

本文の冒頭では、以下のように記載するとよいでしょう。

「当社が2023年1月31日付で貴殿に予告した解雇については、下記の理由によるものであることを証明します。」

まず、解雇予告の日付を明記しましょう。※

 

※解雇の場合には、原則として、解雇の30日前までに解雇予告が必要になります。

具体的な解雇理由は、下に箇条書きをする必要がありますので、「下記の理由による」といった記載にしましょう。

最後に、解雇理由証明書は「証明書」ですから、「~証明します。」という文末にします。

なお、解約日以降に、(退職証明書として)解雇理由の証明書を請求された場合には、解雇予告日をここで記載するのは不自然ですから、解雇日を示す形で以下のように記載するのがよいでしょう。

 

解雇理由

まず、「下記の理由による」としたことに対応して、真ん中に「記」を記載しましょう。

続いて、就業規則の条項およびその具体的な内容を記載します。

そもそも、10人以上の従業員がいる会社では、解雇理由などを定めた就業規則が制定されていなければなりません(労働基準法第89条第3号)。

そのため、今回の従業員の解雇が、就業規則に定めるどの条項に該当するのか、解雇理由として記載する必要があります

これについては、厚生労働省の通達でも、退職証明書及び解雇理由証明書の双方で、就業規則の条項に該当することを理由として解雇する場合には、就業規則の該当する条項の内容を記載する必要があることが示されています(平成15年10月22日基発第1022001号)。

具体的には、「就業規則⚫条⚫号(・・・・・・・・・)に該当するため。」と記載して、解雇理由となった就業規則を明示します。

「(・・・・・・・・・)」の部分には該当する就業規則の条項をそのまま引用すれば結構です。

参考 平成15年10月22日基発第1022001号 第2 2(3)

(3) 記載すべき内容

「解雇の理由」については、法第22条第1項に基づく請求における場合と同様に、具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当する事実が存在することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならないものであること。

引用元:平成15年10月22日基発第1022001号|厚生労働省

労働基準法第89条第3号

(作成及び届出の義務)

第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

引用元:労働契約法|e-Gov法令検索

なお、就業規則がない会社の場合など、就業規則に定めている解雇事由以外の理由で解雇する場合には、就業規則の該当条項を書く必要はありません。

しかし、この場合でも解雇理由を記載する必要はあります。

一般的に、解雇理由として考えられる※のは、以下のような場合となります。

  1. ① 天災その他やむを得ない理由による解雇
  2. ② 事業縮小など会社側のやむを得ない事情による解雇
  3. ③ 職務命令に対する重大な違反行為があったことによる解雇
  4. ④ 業務についての不正行為による解雇
  5. ⑤ 勤務態度又は勤務成績が不良であることによる解雇
※実際に解雇理由として認められるかは、具体的な事実の中身次第ですので、これらの理由であれば必ず解雇が認められるわけではありませんので注意してください。

トラブル防止のためには、就業規則の作成義務がない会社であっても、就業規則を作成し、解雇できる場合を明記しておくことをお勧めいたします。

就業規則に定めている解雇事由以外の理由で解雇する場合には、これらの理由を参考にして「解雇理由」の箇所に記載しましょう。

例えば、以下のように記載します。

職務命令に対する重大な違反行為があったことによる解雇に該当するため。

 

解雇理由に該当する具体的な事実

具体的には次のとおり。

  • 2022年12月15日に所定労働時間になっても出社せず、無断で欠勤した。
  • 2022年12月16日、これについて上司である⚫⚫⚫から理由を尋ねたところ、貴殿は「特に理由はない」と回答した。
  • 2022年12月20日、上司である「無断での欠勤は厳禁である」旨の注意を行ったにもかかわらず、3日後の2022年12月23日に再度無断欠勤した。
  • 2022年12月22日、当社より、繰り返しの無断欠勤を理由として、就業規則⚫条⚫号に基づく戒告処分を行って本人に通知し、無断欠勤について人事部に所属する⚫⚫⚫から直接指導を行った。
  • 2023年1月4日から2023年1月30日にかけて、上司である⚫⚫⚫からの連絡に   応じることなく、理由の説明をしないまま無断での欠勤を継続した。

以上

最後に、上で記載した解雇理由に該当する具体的な事実を記載します。

解雇理由証明書において、この具体的な事実の記載が最も重要です。

厚生労働省の通達で、退職証明書及び解雇理由証明書の双方で、解雇の理由については具体的に記載する必要があることが示されています(平成15年10月22日基発第1022001号)。

具体例 平成15年10月22日基発第1022001号 第2 2(3)(3) 記載すべき内容

「解雇の理由」については、法第22条第1項に基づく請求における場合と同様に、具体的に示す必要があり、就業規則の一定の条項に該当する事実が存在することを理由として解雇した場合には、就業規則の当該条項の内容及び当該条項に該当するに至った事実関係を証明書に記入しなければならないものであること。

引用元:平成15年10月22日基発第1022001号|厚生労働省

書き方としては、「いつ(年月日など)」、「誰が」、「何を」、「どうしたか」などの事実を淡々と記載するのがよいでしょう。

また、代表的な事実だけではなく、就業規則違反などの理由に該当すると考える事実を、できるだけ漏れなく記載しましょう。

ただし、間違った事実や嘘を記載することはもちろんNGですので、正確な事実であることを社内の聞き取りや証拠によって確認できた事実のみを記載しましょう。

一通りの事実を書ききれたら、最後に文書の終了を示すため、「以上」と記載します。

以上で解雇理由証明書の完成です。

 

 

会社側のポイント

次に、解雇理由証明書に関して、会社側で注意するべきポイントを見ていきましょう。

従業員から求められたら速やかに証明書を発行する

まず、会社としては、従業員から求められたら速やかに解雇理由証明書を発行するように注意しましょう。

従業員から求められた場合、解雇理由証明書などの証明書を発行することは、会社の義務です。

仮に、解雇理由証明書を速やかに発行し、交付しなかった場合、会社は法律違反の罰を受けることになります。

証明書の発行は義務

労働基準法では、解雇予告を受けた従業員が解雇理由証明書を請求した場合、会社は「遅滞なく」この証明書を交付しなければならないとされています(労働基準法第22条第2項)。

このように、解雇予告した従業員から解雇理由証明書を求められたとき、会社には、遅滞なく「解雇理由証明書」を交付する義務があります。※

※解雇日以降については「退職証明書」という名前になりますが、同様の義務があります。(「解雇理由証明書と退職証明書の違い」参照)

なお、あくまで従業員から証明書を求められた場合に交付の義務があるだけですので、求められない場合には交付する必要はありません。(もちろん、会社が、任意で証明書を交付することは問題ありません。)

仮に、この義務に会社が違反した場合には、30万円以下の罰金を科される可能性があります(労働基準法第120条第1号)

労働基準法第120条第1号

第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。

一 ~~第二十二条第一項から第三項まで~~の規定に違反した者

引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

 

具体的にはいつまでに発行すればいい?

解雇理由証明書は、従業員から交付を求められた場合、「遅滞なく」交付する必要があります。

「遅滞なく」というのは、「事情が許す限り早く」といった意味合いです。

法律でよく登場する似た言葉としては、「直ちに」、「速やかに」などがありますが、「遅滞なく」はこの2つと比べると、もっとも急ぎの度合いが緩やかです。※

※「直ちに」が一番急ぐ必要があります。

明確な日数は決められていませんが、おおむね、1週間から2週間ほどまでに対応するのを目安とすればいいでしょう。

もっとも、証明書の交付が遅れてしまうと、その分、従業員や第三者(裁判が起きた場合の裁判官など)の印象は悪くなってしまうので、できる限り早く、交付するようにするべきです。

会社としては、請求を受けた場合、早々に準備に着手して必要な手順を踏んで証明書を作成するようにしましょう。

 

事実関係を調査する

解雇理由証明書には、解雇理由となった具体的な事実を記載する必要があります。

その具体的な事実は、正確である必要がありますから、あらかじめ丁寧に事実関係を調査するようにしましょう。

調査の方法としては、当事者への事情聴取をすることが重要ですが、それだけでは、その方の記憶間違いや嘘が入り込んでしまう危険があります。

そこで、当事者の証言を信じすぎることなく、できるだけ多くの関係者からも証言を集めましょう。

それとともに、証言だけではなく、メールや文書などの客観的な資料も確認しましょう。

合わせて読みたい
事情聴取書

 

証拠を集める

事実関係を調査するにあたっては、証拠を集めるように意識しましょう。

当事者や関係者の証言を聞く際には、証拠を残すために録音をしておくのが望ましいです。

また、電子メール、出勤簿などの書類、防犯カメラの映像など、証言の裏付けとなるような証拠もできるだけ集めてまとめて保管しておきましょう。

将来的に、従業員が裁判などを起こした場合には、これらの証拠が会社側の重要な武器になります。

逆に、これらの証拠がないと、解雇理由が認められず、解雇が無効になってしまう恐れがありますので注意しましょう。

 

解雇理由の記載内容には要注意

解雇理由の記載は、要注意です。

網羅的に、そして、正確に、記載する必要があります。

解雇理由は網羅的に

解雇が複数の理由や複数の事実による場合には、必ずそれらの理由・事実を網羅的に記載しましょう。

解雇の理由を全て証明書に記載できなかった場合、解雇が無効になる可能性があるためです。

具体的にどういうことか、説明します。

そもそも、解雇理由証明書は解雇の理由を証明するための文書で、ここに書かれている理由が従業員にとっての重要な判断材料になります。

証明書に記載された理由以外の解雇理由を、後日会社が裁判などで追加主張できてしまうと、この証明書の意義がなくなってしまいます。
そのため、解雇理由証明書に記載されていない理由を会社が後になって主張した場合、従業員側から「解雇無効」と反論される可能性があります。

また、追加主張を行った場合、解雇理由証明書に書かれていなかったような解雇理由については、会社側が重視をしていない些末な理由である、と考えられやすいです。

したがって、一部の理由しか書かれていない場合でも、もっぱらその書かれている理由だけで解雇の合理的な理由となるかが評価されるおそれがあります。

そして、その理由だけでは不十分と裁判所などに判断されてしまえば、解雇が無効になる可能性があります。(この場合、請求されれば、解雇日以降の賃金を従業員に支払う必要が生じる可能性があります。)

このような事態を避けるため、解雇の理由は漏れなく網羅的に記載するように注意しましょう。

解雇理由は正確に

解雇理由の記載内容、特に事実についての記載については、慎重に正確な内容を記載するようにしましょう。

もし事実を間違って記載してしまうと、会社が間違った事実をもとに従業員を解雇したことになってしまいますから、解雇が無効になってしまう可能性があります。

裁判になった場合には、会社側で、解雇理由に記載された事実関係を証拠によって立証・証明する必要が出てきます。

そのため、証拠が揃った間違いのない事実だけを解雇理由証明書に記載するように徹底しましょう。

労働問題に強い弁護士に相談する

解雇理由の記載に当たっては、非常に高度な検討を要するため、専門家の力を借りることを強くお勧めします。

具体的には、

  • どのように証拠を集めるか
  • 集めた証拠でどのような事実が証明できるのか
  • その事実をどのように解雇理由証明書に記載すればよいのか
  • 記載した理由や事実だけで解雇の理由として十分か

など、法的に高度な分析や評価が必要になります。

そのため、少しでも悩みがあれば労働問題に詳しい弁護士の助けを借りるべきです。

労働問題に詳しい弁護士に相談すれば、将来裁判になった場合を見据えてアドバイスが受けられますから、安心して対応が進められるはずです。

 

コピーを取る

解雇理由証明書の作成が完了したら、それは従業員に交付されることになります。

もっとも、会社側でも、どのような解雇理由証明書を作成して従業員に交付したのかを記録しておく必要があります。

そのため、必ず、交付前にコピーを取ることをお勧めします。

具体的には、会社側で印鑑を押して作成が完全に完了した正本(交付するそのものの紙)のコピーを残すようにしましょう。

 

 

従業員側のポイント

続いて、従業員側からみた解雇理由証明書についてのポイントを見ていきましょう。

解雇理由証明書には請求できる期限がある

解雇予告や解雇を受けた従業員は、会社に対して解雇理由の証明書を請求する権利があります。

具体的には、解雇予告から解雇までの期間には、「解雇理由証明書」として、解雇日以後は「退職証明書」として、解雇理由の証明書を会社に請求することができます。

もっとも、この権利にも期限があることを知っておきましょう。

具体的には、2年が経過すると、会社に対して証明書を請求できなくなります(労働基準法第115条)。

仮に期限が経過してしまっても、会社が任意で(親切で)証明書を交付してくれる可能性はありますので、請求をしてみる価値はあります。もっとも、期限が経過している場合には、会社が交付を拒む場合もあり得ることに注意しましょう。

労働基準法第115条

(時効)

第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

引用元:労働基準法|e-Gov法令検索

 

記載内容が虚偽の場合

解雇理由証明書を受け取ったら、必ず記載内容に虚偽がないかを確認しましょう。

もし、正しい記載内容であれば、解雇理由がそもそも不十分となって、解雇の無効を主張することができるかもしれません。(具体的には、解雇されなかったと仮定した場合に自分が受け取れていた賃金などを会社に請求できる可能性があります。)

そこで、記載内容に虚偽があると感じた場合には、会社に証明書の内容を修正するよう求めるのがよいでしょう。

修正を求めたにもかかわらず会社が応じてくれない場合には、労働問題に詳しい弁護士へ対応を相談することを検討しましょう。

 

記載された解雇理由に納得できない場合

解雇理由証明書は、従業員が、解雇の理由を正確に把握するための文書です。

では、実際に交付された解雇の理由について、従業員が納得できない場合にはどうすればよいでしょうか。

仮に、その解雇が不当な解雇である場合、解雇が無効になるため、会社に従業員として戻ることもできますし、さらに、解雇日以降の期間分の賃金を会社に請求することができます。

具体的方法としては、まずは会社と交渉をし、うまく交渉がまとまらなければ裁判(訴訟)を起こしたり、労働審判という裁判所における手続きを申し立てることになります。

ただ、会社に対して、従業員の方個人が一人で戦いを挑むのは非常に大変なのが実態です。

会社側は弁護士などの法律の専門家を味方につけて、社員全体で徹底抗戦してくる可能性が高いです。

これに対抗するためには、法律や裁判例についての詳しい知識や分析、裁判などの手続きの対応などが必要になります。

そのため、解雇理由に納得できないと思ったら、できるだけ早い段階で、労働問題に詳しい弁護士へ相談して意見を求めたり、サポートを依頼するようにしましょう。

弁護士であれば、会社側とうまく和解の交渉をして、和解金をもらうなど、柔軟な対応もしやすくなります。

 

会社が解雇理由証明書を渡してくれない場合

従業員から解雇理由証明書を請求したにもかかわらず、会社がこれを拒んだり、時間が経っても交付されない場合には、その会社は法律に違反していることになります。

このような場合、後日、会社に対して、裁判などでこの点を主張できる可能性があります。

そこで、会社が法律に違反して証明書の請求に応じなかったことの証拠を残しておくのがよいでしょう。

具体的には、会社へ証明書を請求したことが記録に残っていない場合には、その証拠を残すために、改めて書面で交付を請求することが考えられます。

この際には必ず、請求前に請求書のコピーや郵送記録のコピーなどを残しておきましょう。

また、そもそも会社が法律違反をするようなケースでは、従業員の方おひとりでは手に余る事態であることが多いですから、労働基準監督署や労働問題に詳しい弁護士に速やかに相談するようにしましょう。

 

 

まとめ

本ページでは、解雇理由証明書について詳しく解説してきました。

解雇は、従業員にとっては自分の生活にかかわる一大事ですから、会社と従業員との間でトラブルになりやすい場面です。

会社としては、トラブルを回避して、従業員に納得して解雇に応じてもらう為にも、法律を守って丁寧に解雇理由証明書を作成して交付するべきです。その際に、もし何か不安があれば、労働問題に詳しい弁護士(企業側)に相談しましょう。

従業員としても、解雇理由証明書に関する会社側の対応が不誠実であったり、記載されている解雇理由に納得できない場合には、泣き寝入りせず、労働問題に詳しい弁護士(労働者側)に相談して適切に対処するのがよいでしょう。

デイライト法律事務所では、解雇や解雇理由証明書に関するご相談について、トップクラスのサービスを提供するため、労働問題に注力する弁護士で構成された労働事件チームがあり、企業の解雇問題を強力にサポートしてご対応しています。

ぜひ、お気軽にご相談ください(利益相反防止のため、企業側専門となります。)

 

 


退職・解雇問題
   
執筆者
弁護士 宮崎晃

弁護士法人デイライト法律事務所 代表弁護士

所属 / 福岡県弁護士会・九州北部税理士会

保有資格 / 弁護士・税理士・MBA

専門領域 / 法人分野:労務問題、ベンチャー法務、海外進出 個人分野:離婚事件  

実績紹介 / 福岡県屈指の弁護士数を誇るデイライト法律事務所の代表弁護士。労働問題を中心に、多くの企業の顧問弁護士としてビジネスのサポートを行なっている。『働き方改革実現の労務管理』「Q&Aユニオン・合同労組への法的対応の実務」など執筆多数。



  

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