「かとく」過重労働撲滅特別対策班とは?わかりやすく解説
過重労働撲滅特別対策班(通称:かとく)とは、平成27年、厚生労働省の「労働基準局監督課」に新設された、過重労働による健康被害の防止などを強化するための機関のことです。
従来、かとくは、月100時間超残業が疑われる全ての事業場を重点監督の対象としていました。
昨今のブラック企業問題を踏まえ、重点監督対象を拡大し、現在は月80時間超の全ての事業場を対象としています。
以下では「かとく」について、より詳しく解説していきます。
ぜひ参考になさってください。
かとくとは
平成27年、過重労働による健康被害の防止などを強化するため、違法な長時間労働を行う事業所に対して監督指導を行う過重労働撲滅特別対策班、通称「かとく」が東京労働局と大阪労働局の2カ所に設置されました。
このとき、かとくに配属されたのは、ベテランの労働基準監督官(東京に7名、大阪に6名)です。
厚生労働省の発表では、違法な長時間労働を強いる企業のなかには、パソコンに保存された労働時間のデータを改ざんするなど悪質なケースも多いことから、それに対応するための高度な捜査技術が必要となってくるため、専門機器を用いてデータの解析を行い、過重労働が認められる企業などに監督指導や検査を行っていくとの紹介がありました。
発足したとき、マスコミからは、いわゆるブラック企業対策として設けられた特別チームと大々的に報じられました。
また、最近では、大手広告代理店・電通の過労死自殺の事件の際、「黄色い腕章を付けたスーツ姿の男女7人の精鋭からなる、かとくチームが、電通本社ビルにさっそうと乗り込んでいった」などと報道されました。
かつては、東京地検特捜部による捜査がマスコミに大きく取り上げられていましたが、最近は検察よりもかとくの捜査に関心が寄せられています。
厚生労働省は、平成28年4月、「第3回長時間労働削減推進本部」の会合を開催し、今後の長時間労働対策として、監督指導・捜査体制の強化について発表しました。
そして、従来、かとくは東京局・大阪局のみ設置されていましたが、都道府県すべての労働局(47局)に、長時間労働に関する監督指導等を専門に担当する「過重労働特別監督監理官」を各1名配置するとしました。
また、企業本社への監督指導や都道府県労働局の行う広域捜査活動を迅速かつ的確に実施できるよう、本省(労働基準局監督課)に司令塔的機関として、過重労働特別対策室(本省かとく)を設置しました。
これにより、かとくの取締対象は日本全国に広がり、かつ、厚生労働省と各労働局が連携して取締を実施し得る体制が構築されています。
労働基準監督署が定める重点監督対象
従来、かとくは、月100時間超残業が疑われる全ての事業場を重点監督の対象としていました。
厚生労働省の発表によれば、平成27年4月から12月の間に約8500の事業場に監督を行い、その結果、違法な残業が行われていたのは6割弱、そのうち、月80時間超の残業があったのが約8割、月100時間超の残業があったのが約6割となっています。
このような結果を受けて、厚生労働省は重点監督対象を拡大し、現在は月80時間超の全ての事業場を対象としています。試算では、月100時間超残業が疑われる事業場は約1万事業場であったのに対し、月80時間超の事業場は約2万事業場に登るといわれています。
労働基準監督官とは
労働基準監督官とは、労働条件の確保・向上、働く人の安全や健康の確保を図ること等を任務とする厚生労働省の専門職員をいいます。
労働基準監督官は、国家公務員であり、労働基準関係法令に基づいてあらゆる職場に立ち入ることができます。
「かとく」の目的
「かとく」は、長時間労働対策について、過重労働に関する大規模なケースや複雑なケースに対応するために設置されてました。
近年、企業の全国展開や広範囲での事業活動が一般化し、加えて悪質かつ複雑な事案が増加しました。
そのため、個別指導による是正が困難なケースが散見されました。
こうした状況に対応すべく、各労働基準監督署の所管範囲を超えて、統括的に調査・勧告を実施する専門組織のニーズが高まり、かとくが設立されました。
「かとく」による送検事例
ここでは、かとくによる送検事例をご紹介します。
2024年 大阪労働局:違法な時間外、休日労働を行わせた事例
大阪市西淀川区の業務用冷凍庫・冷蔵庫メーカーが、従業員3名に対し、以下の違法な長時間労働をさせていました(労働基準法第 32 条第 1 項、労働基準法第 36 条第6項第2号、第3号)。
- 36協定で定められた延長時間を超える時間外労働
- 1ヶ月に100時間を超える時間外・休日労働
- 複数月の平均で1ヶ月あたり80時間を超える時間外・休日労働
2021年 大阪労働局:労働基準法等違反事件の事例
大阪市住之江区に本社を置き全国に飲食店を展開する会社が、大阪市内の5店舗で働く従業員12名に対し、労働基準法第 36 条に基づく時間外労働に関する協定で定める限度時間を超えて、違法な時間外労働を行わせました(労働基準法第 32 条・40 条違反)。
「かとく」についてよくあるQA
ここでは、「かとく」についてのご質問とその回答をご紹介いたします。
労基に通報したらクビになりますか?

例えば、違法なサービス残業の場合、公益通報保護法の「通報対象事実」に該当します。
この場合、通報を理由とする解雇は無効となります(公益通報保護法第3条)。
また、「通報対象事実」に該当せずとも、会社の解雇はよほどの事情がないと認められません。
労基に相談したら会社にバレますか?

しかし、労基署に相談すると、労基署は違反の事実の有無を確認するために、会社に対して調査が入る可能性があります。
会社の状況(大企業か中小零細かなど)や違反事実の内容にもよりますが、労基署が調査に入ったことで、情報提供した従業員が特定される可能性もゼロとはいえないでしょう。
まとめ
かとくへの対応について、詳しくは労働問題に詳しい弁護士へご相談ください。
当事務所の労働弁護士は、使用者側専門であり、企業を強力にサポートしています。
まずはお気軽にご相談ください。
