健康診断は会社の義務?【弁護士が解説】 


掲載日:2017年12月18日|最終更新日:2019年10月15日

質問 経営者

  • 従業員に健康診断を受けさせていませんが問題はありますか?
  • 健康診断の実施義務に違反した場合、労基署から指摘されますか?
  • 実施すべき健康診断の具体的な内容とは?

Answer

デイライト法律事務所の労働事件チームには、このような健康診断に関するご相談が多く寄せられています。

会社の健康診断について、労働事件に精通した弁護士が解説しますので、ご参考にされてください。

 

健康診断の種類と罰則

健康診断 イメージ労働安全衛生法は、使用者に対して、自ら雇用する労働者に健康診断を実施しなければならないと規定しています(同法66条)。

この健康診断には、定期的に行うこととされている一般健康診断(同条1項)と有害業務に従事する労働者に対する特殊健康診断(同条2項)ないし歯科検診(同条3項)があります(下図参照)。

一般健康診断には、労働者を雇い入れる際に行わなければならないもの(安衛法規則43条)と年1回行わなければならないもの(同規則44条)があります。なお、深夜業などの特定業務従事者は年2回の健康診断が必要です(同規則45条)。

健康診断を行わなければならない労働者(対象者)は、ストレスチェックの場合と同じく、期間の定めのない無期契約労働者、有期契約でも1年以上雇用することがみこまれる労働者及び更新により1年以上雇用されている労働者で、事業場の所定労働時間の4分の3以上の労働時間である者です。

また、これらの健康診断については、労働安全衛生法上、使用者に義務づけられたものであることから、健康診断にかかる費用については、使用者が負担しなければなりません。

さらに、実施した健康診断の結果については、遅滞なく労働者に通知しなければならず(同法66条の6、同規則51条の4)、その結果を使用者は5年間保存しなければなりません(同法66条の3、同規則51条)。雇入時の保存様式は下図のとおりです。

ここまで説明した健康診断の実施や結果の本人通知については、事業場の規模を問わず、すべての使用者に課された義務ですが、常時50人以上使用する事業者は、定期健康診断の結果を下図の書式で労基署に書面により報告しなければなりません(同規則52条)。

そして、労働安全衛生法は、労働者に健康診断を受診させていない使用者に対して、50万円以下の罰金を科しています(安衛法120条1項)。

 

健康診断の種類と検査項目

 

一般健康診断

健康診断

  • 雇入時の健康診断
  • 定期健康診断
  • 特定業務従事者の健康診断
  • 海外派遣労働者の健康診断
  • 結核健康診断
  • 自発的健康診断
  • 給食実施者の検便

 

特殊健康診断

健康診断 イメージ

  • 有機溶剤健康診断
  • 鉛健康診断
  • 四アルキル鉛健康診断
  • 特定化学物質健康診断
  • 高圧作業健康診断
  • 電離放射線健康診断
  • 石綿健康診断
  • 歯科健康診断
  • じん肺健康診断

 

健康診断個人票(雇入時)

定期健康診断報告書

 

労働者の健康診断受診義務

前項で説明したとおり、使用者には健康診断を実施する義務を課していますが、他方で、労働安全衛生法は労働者に対しても、使用者の実施する健康診断を受診する義務を課しています(同法66条5項)。

この義務違反に対して、罰則はありませんが、使用者は健康診断を受診しない労働者に対して、就業規則に基づいて懲戒処分を行うことはできます

ただし、労働安全衛生法は労働者に対し、原則として医師選択の自由を与えていますすなわち、同法66条5項但書で、労働者が使用者の指定する者以外の医師による健康診断を受け、その結果を提出することを認めています。

したがって、労働者がかかりつけの医師など、主治医による健康診断を希望した場合には、使用者としては合理的な理由がない限り、この申出に応じなければなりません。

【判例】愛知県教育委員会事件(最一小判平成13年4月26日労判804号15頁)

教師(事案の概要)

中学校の教諭に対して、教育委員会が学校で開催する定期健康診断において、結核の有無を確認するためにエックス線検査を受診するよう指示したものの、同教諭がこれを拒否し続けたため、校長がエックス線検査を受診するよう命令した行為が問題となった事例

(判旨)

最高裁は、教諭が労働安全衛生法66条5項や結核予防法(当該法令は2007年に廃止されている。)により、エックス線検査を受診する義務を負っていることを述べた上で、学校保険法上も定期健康診断(特に結核の有無に対する検査)は、「教職員の健康が保健上及び教育上、児童、生徒等に対し大きな影響を与えることにかんがみて実施すべきものとされている」として、これを受けるように校長が命令した行為は適法と判断している。

 

 

労基署の調査のポイント

解説する弁護士健康診断の受診については、上述のとおり、事業規模を問わず、使用者に課された罰則つきの義務です。

そして、健康診断の受診は、労働者の健康に深く関わるもので、近年は過労死の問題も社会問題となっています。

したがって、労災事故が発生した場合に、健康診断を受診させていなかった事実が判明した場合には、送検される可能性が高くなるでしょう

実際に、業務中に心疾患で死亡した労働者に定期健康診断を受けさせていなかったとして、送検されたケースがあり、注意が必要です(【送検事例】石巻労働基準監督署平成28年1月)。

 

 

健康診断のよくある誤解

① パートタイマーや契約社員は受けさせなくていい?

会社の中には、健康診断は正社員にのみ受けさせる必要があると考えているケースが見受けられます。

しかし、健康診断の対象となるのは、上記のとおり、一般健康診断については、有期契約でも1年以上雇用することがみこまれる労働者及び、更新により1年以上雇用されている労働者で「所定労働時間の4分の3以上労働している労働者」については、受診させなければなりません。

したがって、パートタイマーや契約社員だから健康診断を受けさせなくて良いという認識は誤りです。

 

具体例

1日の所定労働時間が7時間30分で週休2日の事業の場合

週所定労働時間は2250分となります。

7時間30分 × 5日 = 2250分

この場合、週所定労働時間が1687.5分以上労働しているパートタイマーは対象となると考えられます。

2250分 × 3/4 = 1687.5分

また、法令上の実施規定はないものの、一般健康診断の場合、無期契約もしくは契約期間が1年以上の有期契約で、正社員の週所定労働時間の2分の1以上、4分の3未満働くパートタイム労働者は、実施が望ましいとされています。

なお、2分の1未満の場合は、実施根拠規定がありません。

さらに、特殊健康診断の場合、契約形態や労働時間に関わらず、有害業務に常時従事する場合は実施が義務付けられています。

これらをまとめると下表のとおりとなります。

②健康診断は業務時間中でなければならない?

健康診断は、上記のとおり、一定の要件に該当する場合、会社に実施義務があります。

それでは、健康診断の受診に要する時間は労働時間に該当するでしょうか。

この問題については、一般健康診断と特殊健康診断に分けて解説します。

 

一般健康診断について

雇入れ時健康診断や定期健康診断については、業務との直接の関連がないため、当然に業務時間中に実施する必要はないものと考えられます。

したがって、例えば、所定労働時間外に受診させたとしても、時間外労働手当等の賃金の支払い義務はありません。

なお、この問題について、行政解釈も同様に解していますが、この通達は受診に要した時間の賃金を使用者が支払うことが望ましいとしています(昭和47年9月18日基発第602号)。

 

特殊健康診断について

特殊健康診断は、体に危険がある、有害な業務を行う職業の場合に義務付けられるものであり、業務を遂行する上で必要な健康診断であると考えられます。

したがって、業務時間外に実施した場合、時間外労働手当等の賃金の支払いが必要と考えられます。

 

 

まとめ

裁判や弁護士以上、会社の健康診断の実施義務について、詳しく説明しましたがいかがだったでしょうか?

労働法令は、細かい義務が規定されており、かつ、改正も頻繁なので、専門家のサポートがないとコンプライアンスを遵守することが難しい場合があります。

デイライト法律事務所には、企業の労働問題を専門に扱う労働事件チームがあり、健康診断などの労働問題について、労働事件に精通した弁護士が対応しています。

まずは当事務所の弁護士までお気軽にご相談ください。

 

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