統合失調症で奇行が見られる従業員の解雇や、本採用を拒否できる?
ただちに解雇することが妥当とはいえません。
まず、病気欠勤又は休職命令を発動し、回復可能性の有無を確認すべきです。
従業員が試用期間中の場合であっても、同従業員についても休職に関する就業規則の適用があるときには、まず休職規定を適用すべきであり、直ちに本採用を拒否することは解雇権濫用となる可能性があります。
以下で詳しく解説していきます。
ぜひ参考になさってください。
統合失調症の従業員の解雇について
我が国において、多くの会社では就業規則等において傷病休職制度を設けています。
これは、一般的に、休職期間中の就労を免除し、病気の回復を待って解雇を猶予する制度です。
したがって、傷病休職制度を設けているにもかかわらず、いきなり解雇した場合、労働契約法16条により解雇権の濫用であるとして、解雇が無効となる可能性があります。
もっとも、回復の見込みのない場合に、休職措置を経ること無く解雇が認められた事例も存在します。
しかし、この事例は約30年も前の事案であり、統合失調症も薬物療法やその他の治療法が進歩していることから、現在も直ちに回復の見込みがないと判断することは困難であると思われます。
そのため、休職制度があるにもかかわらず、傷病回復の機会を与えることなく解雇することが可能となる場合とは、高次脳機能障害を負い日常生活もままならないほどの意思無能力となり回復の見込みがないなどの傷病であればともかく、メンタルヘルス不調の場合に直ちに解雇等の措置を講じることは解雇権濫用の大きなリスクがあります。
すなわち、過去の事例においてうつ病等のメンタルヘルス不調の場合であって、将来の回復可能性のないことが明らかなときには、休職制度を利用することなく解雇することも可能ということになりますが、将来の回復見込みがないことについて専門家の判断が必要です。
そのため、まずは休職発令など休職制度を利用してから、休職期間満了時において復職の可否を判断すべきこととなります。
統合失調症の試用期間中の従業員の本採用について
試用期間中の労働契約の法的性質は、個別の試用契約ごとに決定されますが、多くの場合は解約権留保付の労働契約となります。
試用期間中の労働契約が解約権留保付労働契約と解される以上、試用期間中の従業員についても就業規則が適用されることになります。
そして、就業規則に休職規定がある場合には、試用期間中の従業員についても、その規定に従って対応する必要があります。
すなわち、就業規則上、心身の故障により業務に堪えないと認められるなどの場合に休職命令を発令する旨の規定(休職規定)がある場合には、原則として試用期間中であっても休職規定を適用する必要があり、休職規定を適用せず解雇することは、解雇権の濫用として無効となります。
試用期間中の従業員について、休職規定を除外するためには、就業規則において明示する必要があるでしょう。
