労基署が休憩時間の違反を指摘するのはどのような場合ですか?


労働時間・賃金についてよくある相談Q&A

Answer

弁護士森内公彦イラスト1勤務に必要な休憩時間を与えていなかった場合や、休憩時間とされているにもかかわらず、合間に書類作成をするなど労働から解放させていなかった場合がこれにあたる可能性があります。

 

休憩時間該当性

休憩時間

休憩時間とは、労働者が労働時間の途中において休息のために労働から完全に解放されていることを保障されている時間と解されています(菅野466頁)。

そのため、たとえ、形式的に「休憩時間」とされていても、労働からの解放がない場合は、使用者の指揮命令下にあるため、労働時間に該当する可能性があります。

 

問題となる事例

手待時間

上記の休憩時間の考え方から、単に作業をしない時間(手待時間)は休憩時間に含まれません労働からの解放が保障されていないからです。

寿司職人手待時間について、すし処「杉」事件(大阪地判昭56.3.24労経速1091号3頁)は、
すし店に勤務していた店員が勤務時間中の客の途切れた時などを見計らって適宜休憩していた(ただし、客が来店した際には即時に対応しなければならなかった)場合において、こうした時間は手待時間であって、休憩時間には該当しないと判断しました。

 

仮眠時間

また、仮眠時間が休憩時間に該当するかについて、以下の裁判例があります。

深夜の仕事大星ビル管理事件(最一小判平14.2.28民集56巻2号361頁、労判822号5頁)】

(判旨抜粋)

「労基法32条の労働時間(以下「労基法上の労働時間」という。)とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、実作業に従事していない仮眠時間(以下「不活動仮眠時間」という。)が労基法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が不活動仮眠時間において使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものというべきである。」

「そして、不活動仮眠時間において,労働者が実作業に従事していないというだけでは、使用者の指揮命令下から離脱しているということはできず、当該時間に労働者が労働から離れることを保障されていて初めて、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていないものと評価することができる。」

本件では、従業員ら(ビル内巡回巡視の業務に従事)が仮眠時間中においても、警報や電話等に対して、ただちに相応の対応をすることが義務づけられていました。

そのため、当該仮眠時間は労働からの解放が保障されていないとして、休憩時間該当性が否定されました。

 

 

休憩時間に関する規制

法律上、休憩時間に関して、休憩時間の長さ、休憩時間の与え方、休憩時間の利用方法等について、さまざまな法規制がなされています。

主な法規制の概要は、下図(休憩時間の法規制)のとおりです。

時間のイメージ画像① 休憩時間の長さ(労基法第34条第1項)

② 休憩時間の与え方

・与える時間帯(労基法第34条第1項)

・一斉付与(労基法第34条第2項)

③ 休憩時間の利用方法(労基法第34条第3項)

~ 自由利用の原則

 

 

休憩時間の長さ

時間のイメージ画像労働基準法第34条第1項は、使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少くとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。と規定しています。

ですので、例えば、1日8時間労働であれば少なくとも45分、1日8時間30分労働であれば少なくとも1時間の休憩時間を与える必要があります。

もちろん、法定の休憩時間を超える時間の休憩時間(例えば、1日8時間労働で1時間の休憩時間)を与えることは問題ありません。

 

 

休憩時間の与え方

与える時間帯

休憩時間は、労働時間の途中に与えなければならない(労基法第34条第1項)とされています。

そのため、例えば、必ず12時から休憩時間を与えなければならないというように休憩を与える時間帯は決まっていません。

また、休憩時間は、まとめて与えることも、分けて与えることもできます

例えば、1日9時間の労働において、9時~12時(労働、3時間)、12時~12時30分(休憩、30分)、12時30分~16時30分(労働、4時間)、16時30分~17時(休憩、30分)、17時~19時(労働、2時間)とすることも可能です。

 

一斉付与

一斉付与原則

労働基準法第34条第2項本文は、前項の休憩時間は、一斉に与えなければならないと規定しています。休憩時間の一斉付与原則の規定です。

休憩時間を一斉に付与する範囲は、作業場単位ではなく、事業場単位と解されています。

ここで、事業場と作業場の区別について説明します。

事業場について、行政解釈では工場、鉱山、事務所、店舗等の如く、一定の場所において相関連する組織のもとに業として継続的に行われる作業の一体をいうと解されています(昭和22年9月13日基発17号)。

工場そのため、例えば、工場がこれに該当することがあります。他方、作業場は、事業場の中にあるそれぞれの場所です。

 

一斉付与原則の例外

(ア)労使協定

労働基準法第34条第1項ただし書は、「ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、この限りではない。」と規定しています。

つまり、労使協定がある場合には、休憩を一斉に付与する必要はなく、交互に付与することができます。

具体的には、斉に休憩を与えない労働者の範囲当該労働者に対する休憩の与え方について労使協定を結ぶ必要があります(労基則第15条、平成11年1月29日基発第45号)。

なお、この労使協定を締結した場合、所轄労働基準監督署長への届出は不要です。

一斉休憩の適用除外に関する協定書はこちらからどうぞ。

 

(イ)特定の業種

労働基準法第40条には、一斉付与原則について、「厚生労働省令で別段の定めをすることができる。」と規定されています。

これを受けて、労働基準法施行規則第31条において、運輸交通業(別表第1第4号)、商業(同第8号)、金融・広告業(同第9号)、映画・演劇業(同第10号)、郵便・電気通信業(同第11号)、保健衛生業(同第13号)、接客娯楽業(同第14号)、官公署の事業では、休憩時間を一斉に付与する必要はなく、交替休憩をすることができるとされています。

休憩時間の与え方(一斉付与原則とその例外)についてまとめると、下図のとおりです。

解説する弁護士のイメージイラスト原則:一斉に与えなければならない(労基法第34条第2項本文)

例外:①労使協定を締結した場合(労基法第34条第2項ただし書、労基則第15条)②特定の業種(労基法第40条、労基則第31条)

 

 

休憩時間の利用方法

休憩時間自由利用の原則と例外

休憩イメージ労働基準法第34条第3項には、使用者は、第1項の休憩時間を自由に利用させなければならない。」と規定されています。休憩時間自由利用の原則の規定です。

休憩時間は労働から完全に解放されている時間であるため、例えば、昼寝をすることを禁止することはできません。

なお、この原則について、労働基準法施行規則第33条は、

①警察官、消防吏員、常勤の消防団員及び児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者(労基則第33条第1項第1号)

②乳児院、児童養護施設及び障害児入居施設に勤務する職員で児童と起居をともにする者(同項第2号)

については、休憩時間自由原則を適用しないとしています(ただし、②については、所轄労働基準監督署長の許可を受けた場合に限ります。労規則第33条第2項)。

 

制限の可否と程度

休憩時間の利用方法について、使用者が労働者の休憩時間自由利用に対する制限をすることが可能かという問題があります。

この点について、行政解釈では、休憩時間の利用について事業場の規律保持上必要な制限を加えることは、休憩の目的を害わない限り差し支えないとしています(昭和22年9月13日基発第17号)。

以下、外出、ビラ配布について見ていきます。

(ア)外出

休憩時間中は労働から解放されているため、外出についても本来自由と考えるのが自然です。

そのため、「休憩時間中の外出も原則として自由であり、合理的理由がある場合に最小限の態様の規制(届出制、客観的基準による許可制)をなしうるにすぎない」(菅野466頁)と解する見解もあります。

なお、この点について、行政解釈では、休憩時間中の外出許可制について、事業場内において自由に休息し得る場合には必ずしも違法にはならないとしています(昭和23年10月30日基発第1575号)。

(イ)ビラ配布

休憩時間中のビラ配りについて、以下2つの裁判例を紹介します。

電波搭電電公社目黒電報電話局事件(最三小判昭52.12.13民集31巻7号974頁)】

(事案の概要)

従業員が休憩時間中に、上司が従業員の貼ったベトナム戦争に対する反戦プレート(ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止)を取り外すよう命令したことに抗議するビラを無許可で配布した。

それに対して、会社が、当該行為が就業規則に違反し懲戒事由に該当するとして、従業員を懲戒処分にした事例

※会社の就業規則には、職員が職場内で演説やビラ配布等を行う場合には事前に管理責任者の許可を受けなければならないという内容の規定(ビラ配布許可制)があった。

(判旨抜粋)

休憩時間の自由利用といつてもそれは時間を自由に利用する ことが認められたものにすぎず、その時間の自由な利用が企業施設において行われる場合には、使用者の企業施設に対する管理権の合理的な行使として是認される範囲内の適法な規制による制約を免れることはできない。また、従業員は労働契約上企業秩序を維持するための規律に従うべき義務があり、休憩中は労務提供とそれに直接附随する職場規律に基づく制約は受けないが、右以外の企業秩序維持の要請に基づく規律による制約は免れない。」

本件は、上記のとおり判示した上、従業員への戒告処分を有効としました。

 

牛乳明治乳業事件(最三判小昭58.11.1 労判417号21頁)】

(事案の概要)

休憩時間中に、従業員が、会社工場の食堂内で、食事中の従業員に対し政党の選挙ビラを平穏に手渡し、または卓上に置いた。

それに対して、会社が、従業員の当該行為が、会社の就業規則(ビラ配布の事前許可制)に違反するとして、戒告処分とした事例

(判旨抜粋)

「本件ビラの配布の態様、経緯及び目的並びに本件ビラの内容に徴すれば、本件ビラの配布は、工場内の秩序を乱すおそれのない特別の事情が認められる場合に当たり、右各規程に違反するものではないと解するのが相当である。」

本件は、電電公社目黒電報電話局事件を引用しつつ上記のとおり判示して、戒告処分を無効としました。

上記①②の両裁判例を比較すると、ビラ配布の態様、経緯、目的等を考慮していると考えられます。

休憩時間管理等の労働時間管理は会社にとって必要不可欠なものです。

労働時間管理についてお悩みの方は、労務問題に詳しい弁護士へご相談ください。

 

プロの労働弁護士はここが違う!当事務所の労基署対応サポート

当事務所の企業法務部・労働事件チームは、企業の労務問題に関する様々なお悩みを解決するために、以下のサポートを行っています。

①専門チームによる労基署相談サービス

当事務所では、弁護士の専門特化を第1の行動指針としています。

これは、多種多様な法律問題について、一人の弁護士が幅広く何でも対応するというスタンスでは、クライアントに対して十分なサービスが提供できないからです。

当事務所の労働事件チームは、労働法を注力分野とする弁護士のみで構成されており、労務問題について高度なリーガルサービスを提供しています。

また、労基署対応のように刑事事件に発展する可能性がある場合、当事務所の刑事事件チームと連携し、両チームが一体となってサポートします。

なお、労基署対応等の労働問題については、初回無料で法律相談を受け付けております。

②遠方の社労士・企業をサポート

労働問題や刑事事件を専門とする弁護士は決して多くありません。

当事務所の専門チームは、専門の弁護士がそばにいない企業をサポートするため、他県からのご依頼も受け付けております。

また、社労士の方からの相談も多く寄せられております。

遠方の相談者の場合、電話での相談も受け付けているので、お気軽にご相談ください。

③ソリューションを提供

労働問題は、顕在化しているトラブルに対処することだけで解決とはなりません。

例えば、労基署対応であれば、是正勧告書の作成などで対処することが可能です。

しかし、より重要なのは、その問題発生の原因を特定し、課題を洗い出し、今後の再発防止に努めることです。

そのため、当事務所の労働事件チームは、例えば、雇用契約書や就業規則等の各種規定の診断や改訂等を行います。

また、人事制度の見直しや働き方の改革をもサポートしています。

さらに、労基署対応であれば、必要に応じて、労基署調査時の立会や労基監督官との交渉も行っています。

そのため、当事務所では、単発での依頼よりも、継続的なサポート(顧問サービス)をご希望される企業や社労士の方が多い傾向です。

労基署対応は、対応を誤ると刑事事件にも発展しかねないデリケートな問題です。

まずは当事務所の労働事件チームまで、お気軽にご相談ください。

ご相談の流れについてはこちらをごらんください。


「労働時間・賃金」についてよくある相談

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