是正報告書とは?是正勧告書に対応するための記載方法

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


是正勧告書を労働基準監督官より交付された場合、是正期限までに、指摘された項目を改善しなければなりません。

その上で、是正報告書を作成し、労基署へ報告することが求められています。

是正報告書には、違反についての言い訳を書くのではなく、あくまで改善した内容を記載します。

以下では、是正勧告書の対応方法と是正報告書の記載方法について詳しく解説していきます。

ぜひ参考になさってください。

是正勧告書とは

是正勧告書とは、企業に労働法令違反の事実が認められる場合に労基署から交付される改善を促す書面です。

この是正勧告書には、企業に認められた労働法令違反の該当する法令、具体的な違反内容、是正期限が記載されます。

 

 

是正勧告に対する対応方法

是正勧告に対する対応方法

労働基準監督官による監督調査の結果、労働法令違反の事実が確認された場合、是正勧告書が事業場へ交付されます。

これに対して、事業場としては、指摘された事項を是正期日までに改善しなければなりません

なぜなら、改善がなされていない場合、改善の意識が欠如している、労基署の勧告を無視する悪質な事業場であるとして送検される可能性があるからです。

したがって、是正勧告書を受け取った場合、まずは労働基準監督官が問題視している点は何であるかをしっかり把握することが重要です。

その上で、改善するために必要な対応や施策を具体的に検討していきます

例えば、常時雇用する労働者数が10名以上いる事業場で就業規則を作成していない点を是正勧告書で問題視された場合には、中身はともかくとして就業規則を作成し、これを労基署へ届け出ることによって、是正の改善はなされたことになります(もちろん、就業規則は、当該事業場の最低基準や基本的ルールを定める非常に重要なものですので、中身の検討が不十分な規則を作成すべきものではありません)。

 

是正報告書とは

是正報告書とは、労基署からの是正勧告書で指摘された事項について、どのような改善を実施したかについてまとめ、労基署に違反が解消されたことを示す書面です。

是正報告書は、企業が作成し、労基署に提出するという書類になります。

 

 

是正報告書の作成方法

是正勧告に対して、是正報告書を提出するように労基署から指示されますが、是正報告書の書式に関する法律上の規定はありません。

とはいえ、企業が是正報告書を全くの一から作成するのは大変ですので、

是正報告書の作成方法としては、

  • 労働基準監督官から所定の用紙を利用
  • 労働局の公式サイトからダウンロードした用紙を利用

する方法などがあります。

 

是正報告書の記載内容

是正報告書には主に以下の項目を記載していきます。

宛名(XX労働基準監督署長殿)      提出する労基署の名称を記載
提出年月日               提出する日付を記載
事業場所在地・事業場名・電話番号    会社名と連絡先を記載
代表者氏名               会社の代表者を記載
違反法令条項              是正勧告書に記載された違反法令を記載
是正年月日               会社が是正を実施した日を記載
是正内容(是正状況、是正事項など)       会社が実施した具体的な内容を記載

 

是正報告書

是 正 報 告 書

 

○○労働基準監督署長 殿

令和○年○月○日

○○(株)

代表取締役○○  印

 

令和○年○月○日貴署より指摘された労働基準法、労働安全衛生法等の違反事項又は指導事項につき、下記のとおり是正いたしましたので、本書をもってご報告いたします。

 

法違反条項 是正内容 是正年月日
労働基準法89条 新たに正社員就業規則、パートタイマー就業規則を制定し、該当労働者へその内容を説明、告知するとともに、貴署へ届出を行った。 令和○年○月○日
労働基準法32条 従業員代表者との間で時間外・休日労働に対する協定届を締結し、貴署へ同届を提出した。 令和○年○月○日

 

以上

 

 

 

是正報告書を提出しないとどうなる?

是正勧告自体は、直ちに何らかの法的効果をもたらすものではありませんが、この是正報告書を提出しない場合には、そのまま改善がされていないと労基署は考えますので、かなりの確率で再監督が行われることになるでしょう。

この再監督は、抜き打ちの可能性もあります。

 

虚偽の是正報告書を提出するとどうなるのか

実際には指摘された事項を何ら改善していないにもかかわらず、是正したように虚偽の是正報告書を提出することはもちろん許されません。

仮に、その後の再監督、事業場で勤務する従業員からの申告や別の内容での定期監督により、是正勧告の事項が改善されていないことが判明した場合は、悪質な使用者であると判断されて、送検される可能性が極めて高くなりますし、虚偽の報告を行ったこと自体が労働基準法104条の2への違反となって、30万円以下の罰則が科されるおそれも出てきます(労基法120条5号)。

なお、是正勧告書に記載されている期限までに改善ができなかったことが直ちに罪になるわけではありません。

したがって、期限までに改善ができそうにない場合には、虚偽の是正報告書を作成してその場しのぎの対応をするのではなく、あらかじめ調査を担当した労働基準監督官に連絡して、改善の進捗状況と改善が期限までに完了しない理由を説明するようにします。

労働基準監督官としてもその理由に納得ができれば、期限の延長に応じてくれるケースもあります。

 

 

専門家への相談

労働基準監督官による調査によって是正勧告を受けた場合、当該事業場には少なくとも何かしらの労働法令違反があるということですから、何が問題であるかを専門家である弁護士や社労士に相談すべきでしょう

その上で、是正勧告期限までにどのように改善策を講じるかのアドバイスを受け、サポートを受ける必要があります。

専門家に依頼することで、改善策の提案はもちろん、その後の是正報告書の作成や労働基準監督官とのやりとりもサポートを受けることができ、企業が本来の活動に注力することが可能になります。

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