労働基準監督署の是正勧告で企業名は公表される?弁護士解説

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


労働基準監督署の是正勧告を受けた場合、一定の基準を満たす企業は公表されます。

具体的には、次の基準を満たす場合には公表の対象となります。

  • 社会的に影響力の大きい企業であること
  • 違法な長時間労働が相当数の労働者に認められ、このような実態が一定期間内に複数の事業場で繰り返されていること

是正勧告で公表された企業は、社会ではブラック企業と認知されることになります。

このページでは、労働基準監督署の是正勧告で公表される場合の条件を詳しく弁護士が解説します。

労働基準監督署の是正勧告で企業名は公表される?

労働基準監督署の是正勧告を受けた場合、一定の基準を満たす企業は公表されます。

是正勧告で公表された企業は、社会ではブラック企業と認知されることになります。

ブラック企業の定義は法律用語ではないため、明確にはありませんが、労働法令違反が重大で、労働環境が劣悪な企業を指すと考えられています。

こうしたブラック企業の要因の一つとして、長時間の時間外労働の常態化があります。

この長時間の時間外労働を強いている企業について、厚生労働省が公表基準を定めています。

近年、長時間労働に対する取締りが強化され、労働基準監督署の是正勧告を受けた企業についても、一定の基準を満たせば企業名が公表されるようになりました。

平成27年までは、是正勧告は行政指導にとどまり、企業名が明らかにされることはほとんどありませんでした。

しかし、労働法令違反の抑止を目的として、送検前の段階でも社会への公表が行われるよう制度が変化しています。

とくに、長時間の時間外労働の常態化はブラック企業と認識されやすい要因の一つです。

これを踏まえ、厚生労働省では、企業名を公表する基準を定めています。

なお、「ブラック企業」は法的な定義はありませんが、労働法令違反が重大で、労働環境が著しく悪い企業を指すとされています。

 

 

是正勧告で企業名が公表される基準

労働基準監督署の是正勧告で企業名が公表される基準は、次のとおりになっています。

労働基準監督署の是正勧告で企業名が公表される基準
  • 社会的に影響力の大きい企業であること
  • 違法な長時間労働が相当数の労働者に認められ、このような実態が一定期間内に複数の事業場で繰り返されていること

以下で詳しく解説していきます。

 

社会的に影響力の大きい企業であること

具体的には、複数の都道府県に事業場を有している企業であって、中小企業基本法でいう中小企業に該当しないものをいうとされています。

 

違法な長時間労働が相当数の労働者に認められ、このような実態が一定期間内に複数の事業場で繰り返されていること

「違法な長時間労働」について

ここでいう「違法な長時間労働」については、労働時間、休日、割増賃金について、労働基準法違反の事実が存在し、かつ、1か月あたりの時間外・休日労働時間が80時間を超えている場合をいいます。

 

「相当数の労働者」について

「相当数の労働者」については、1箇所の事業場において10名以上の労働者又は当該事業場の4分の1以上の労働者が該当するとされています。

 

「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」について

「一定期間内に複数の事業場で繰り返されている」という点については、概ね1年間程度の間に2箇所以上(本社で2回以上も含む。)の事業場で違反がある場合を指すとしています。

この基準により企業名を公表されたのが、千葉県に本社のある「株式会社エイジス」という企業です(平成28年5月19日)。

千葉労働局より公表された情報によれば、この企業では、4つの事業場で、10名以上(最大18名)、最長で約197時間の時間外・休日労働が存在していたとされています。

この企業の事案が是正勧告の段階の公表として全国で初めての事案だったため、報道も大きくなされました。

 

 

是正勧告で企業名が公表された場合のリスク

基準の改定により、1年以内に2箇所以上の事業場で、1か月80時間を超える時間外・休日労働が発覚した場合、企業名の公表の可能性が出てきます。

この公表制度について、厚生労働省は、当該企業への制裁ではなく、あくまでその事実を広く社会に情報提供することにより、他の企業における遵法意識を啓発し、法令違反の防止の徹底や自主的な改善を促進させ、もって、同種事案の防止を図るという公益性を確保することを目的とすると位置づけています。

しかしながら、公表された企業は、当然マスコミなどを通じて、企業名を明らかにされるわけですので、事実上社会的な信用や企業イメージの悪化は避けられません。

こうした悪影響が及ばないように、日頃から労働時間の管理を行うことが重要になってきています。

当事務所では、トラブルを未然に防ぐというスタンスの下予防法務に注力している事務所です。お困りの方は、是非ご相談ください。

 

 


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