労基署の事務所の設備使用不可の指示はどのような処分ですか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


質問労基署から、事務所の設備を使用しないように指示されました。これはどういった処分でしょうか?

 

Answer

弁護士西村裕一イラスト使用停止処分とは、労働災害を未然に防止するために、事業場の施設や機械について、その使用を禁止するものです。これは、是正勧告や指導と異なり、行政処分にあたります。

使用停止命令は主に、労働災害の多い建設業と製造業で出されています。

 

使用停止処分とは

労働基準法は96条の3第1項で、「労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関し定められた基準に反する場合においては、行政官庁は、使用者に対して、その全部又は一部の使用の停止、変更その他必要な事項を命ずることができる。」と規定しています。

また、同法103条は、「労働者を就業させる事業の附属寄宿舎が、安全及び衛生に関して定められた基準に反し、且つ労働者に急迫した危険がある場合においては、労働基準監督官は、第九十六条の三の規定による行政官庁の権限を即時に行うことができる。」と定めています。

すなわち、労働基準監督官は、安全衛生基準に違反した状態で、それが労働者に対して急迫した危険があると判断した場合には、すぐに使用停止命令を発令できることになっています。

同様の規定は、労働安全衛生法にも見られます(安衛法98条1項、99条1項)。

使用停止命令は、是正勧告や指導と異なり、事業場の施設や機械を使用できないという具体的な不利益が生じますので、行政処分に当たります

したがって、当該処分に不服のある場合には、行政不服審査法や行政事件訴訟法の規定に基づいて、不服申立てや取消訴訟を提起することができます

 

 

使用停止命令の現状

建設業こうした使用停止命令の実際の発令状況ですが、平成27年は全国で5884件です。発令された業種ですが、労働災害の多い、建設業や製造業がほとんどで、この2業種で全体の94.9%を占めています(下図)。

具体的には、定期検査を受けていないフォークリフトやクレーン車の使用について、検査を受けるまで禁止するといったケースがあります。

命令は、下図のような書面により発令されます。

使用停止命令の発令状況(平成27年)

発令件数
全体 5884件
建設業 3671件(62.4%)
製造業 1910件(32.5%)

 

使用停止命令書

使用停止命令書

平成○年○月○日

(株)○○ 殿

○○労働基準監督

労働基準監督署長○○    印

貴事業場における下記の「命令の対象物件等」欄記載の物件等に関し、「違反法令」欄記載のとおり違反があるので労働基準法第96条の3、103条、労働安全衛生法第98条に基づき、それぞれ「命令の内容」欄及び「命令の期間又は期日」欄記載のとおり命令します。なお、この命令に違反した場合には送検手続をとることがあります。

番号 命令の対象物件 違反法令 命令の内容 命令の期間又は期日
1 フォークリフト 労働安全衛生規則第151条の21 フォークリフトの定期検査を行うこと 平成○年○月○日

1 上記命令について、当該違反が是正された場合には、その旨報告してください。なお、「番号」欄に□印を付した事項については、今後同種違反の繰り返しを防止するための点検責任者を事項ごとに指名し、確実に点検補修を行うよう措置して併せて報告してください。

2 この命令に不服がある場合には、この命令があったことを知った日の翌日から起算して60日以内に厚生労働大臣○○労働局長○○労働基準監督署長に対して審査請求をすることができます(命令があった日から1年を経過した場合を除きます。)。

3 この命令に対する取消訴訟については、国を被告として(訴訟において国を代表するものは法務大臣になります。)、この命令があったことを知った日の翌日から起算して6か月以内に提起することができます(命令があった日から1年を経過した場合を除きます)。

4 この命令書は3年間保存してください。

受領年月日、受領者

平成○年○月○日 ○○ 印

 

 


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