労基署はどのような場合に派遣可能期間制限に関し指摘しますか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


質問 社長派遣可能期間制限に関し、労基署からこれに違反したとして指摘等を受けるのはどのような場合ですか?

Answer

弁護士森内公彦イラスト派遣可能期間が3年を超えた場合、派遣先の事業所の過半数労働組合等からの意見を聞かないまま派遣期間を延長した場合等に、違反を指摘される可能性があります。

 

派遣期間制限に関する新たな枠組み

平成27年労働者派遣法改正に伴い、派遣期間制限に関して新たなルールができました。この改正内容は、平成27年9月30日からの労働者派遣契約に適用されています。

改正前までは、業務内容(28の専門的業務、自由化業務)による派遣期間の制限がなされていましたが、改正法では、業務単位から派遣先事業所単位・人単位の派遣期間制限に変更されています。

派遣期間制限のルールは、まずは派遣元事業主と派遣労働者の締結する労働契約が、有期労働契約か無期労働契約かによって見ていくのが分かりやすいため、以下では、有期労働契約の場合と無期労働契約の場合とに場合分けをして記述していきます。

 

 

有期労働契約の場合

時間経過 イメージ有期労働契約とは、期間の定めのある労働契約をいいます。例えば、1年、2年というように雇用期間が限定されています。

派遣先事業所単位の派遣期間制限

派遣先の同一の事業所への派遣可能期間は、3年間が原則です(派遣法第40条の2第2項)。そして、これを超える期間の派遣の受入れ使用は原則として違法となります(同法第40条の2第1項柱書本文)。

もっとも、派遣期間満了の1か月前までに、派遣先の事業所の過半数労働組合等(過半数労働組合または過半数代表者)の意見を聴取して、この期間を延長することができます(派遣法第40条の2第3項・第4項)。

過半数労働組合等の内容については、下記をご参照ください。この意見聴取で反対意見の表明があった場合は、延長する理由を過半数労働組合等に派遣期間満了の前日までに説明することになります(同法第40条の2第5項)。

なお、派遣延長可能期間は、3年間までです(派遣法第40条の3)。

過半数労働組合等

〇 過半数労働組合

⇒ 派遣先事業所に、労働者の過半数が加入している労働組合がある場合における、その労働組合

〇 過半数代表者

⇒ 派遣先事業所の過半数が加入している労働組合がない場合に、その事業所の従業員の過半数を代表する者

※なお、過半数代表者とは、次のいずれにも該当する者とされています(労基則第6条の2)

・労基法第41条第2号に規定する監督または管理の地位にある者ではないこと(いわゆる「管理監督者」)

・労基法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること

派遣先事業所単位の派遣期間制限については、下記のとおりです。

なお、下記について、労働者派遣法の手続きに則って派遣事業所への派遣可能期間を延長した場合であっても、人単位の派遣期間制限の規制に服します。

つまり、同一の有期雇用の派遣労働者を、引き続き同一の組織単位に派遣することはできません。

人単位の派遣期間制限については後述いたします。

派遣先事業所単位の派遣期間制限

解説図

※図のうちの、A~Hはそれぞれ別の従業員を指しています。

 

人単位の派遣期間制限

派遣元事業主は、同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位(課に相当)に対し、継続して3年を超えて労働者派遣を行ってはならないことになっています(派遣法第35条の3)。

ここで、事業所と組織単位の区別を説明します。組織単位は事業所に包含される概念になります。

例えば、A事業所にあるB課(例:人事課)とC課(例:経理課)というイメージです。

事業所と組織単位

解説図

人単位の派遣期間制限についてのイメージは、下記のとおりです。

重要なポイントは、同じ人が課(組織単位)を変更して同一事業所内で引き続き就労することは認められますが(経理企画課から庶務課へ)、同じ人が3年を超えて同じ課で派遣就労すること(庶務課1係から庶務課2係へ)は認められないことです。

なお、上述の派遣先事業所単位の派遣期間制限がありますので、派遣期間を延長する場合には、派遣期間満了の1か月前までに、派遣先の事業所の過半数労働組合等(過半数労働組合または過半数代表者)の意見を聴取等する必要があります。

人単位の派遣期間制限

解説図

※AとBは、別の従業員です。

 

クーリング期間

解説する弁護士のイメージイラスト派遣事業所単位の派遣期間制限、人単位の派遣期間制限の両方に、「クーリング期間」の考え方が、厚生労働省から出されている「派遣先が講ずべき措置に関する指針」に設定されています。

すなわち、派遣事業所単位の派遣期間制限の場合、ある事業所への労働者派遣が終了した後に再び派遣しようとする場合に、その派遣終了と次の派遣開始との期間が3か月を超えないときは、労働者派遣は継続しているものとみなされます。

また、人単位の派遣期間制限の場合、派遣先の事業所における同一の組織単位での就労について、ある労働者の労働者派遣が終了した後に、同じ労働者を当該組織単位に派遣する場合、その派遣終了と次の派遣開始との期間が3か月を超えないときは、労働派遣は継続しているものとみなされます。

 

 

無期労働契約の場合

無期労働契約とは、期間の定めのない労働契約をいいます。

無期労働契約の場合は、上記改正法による派遣期間の制限が適用されません(派遣法第40条の2第1項1号)。その理由は、無期労働契約を締結している派遣労働者の場合、安定雇用がなされていると考えられるからです。

派遣期間(無期労働契約の場合)

解説図

※派遣期間の制限が適用されないため、派遣期間に上限はありません(Aは同一人物)。

 

 

派遣期間制限の適用を受けない場合

上述のとおり、無期労働契約の場合は、派遣期間の制限が適用されません。

その他に、派遣期間制限の適用を受けないのは、60歳以上の高齢派遣労働者、終期が明確なプロジェクト等の場合です。

派遣期間制限の適用を受けない場合

・無期労働契約の派遣労働者の派遣

・60歳以上の派遣労働者の派遣

・日数限定業務への派遣労働者の派遣

※1か月の勤務日数が通常の労働者の半分以下で、かつ10日以下のもの

・終期が明確な有期プロジェクト業務への派遣労働者の派遣

※但し、当該プロジェクトが3年以内のもの

・産前産後休業、育児休業、介護休業等を取得する労働者の業務への派遣労働者の派遣

・紹介予定派遣

※期間は6か月以内

 

派遣期間制限は、数年前に改正がなされた点で見落とし等が予想される問です。

現在の体制で問題がないかどうかを確認するためには、この問題に精通した弁護士にご相談されるのが適切といえます。

お悩みの方は是非ご相談ください。

 

 


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