労基署はどのような場合に外国人実習において指導等をしますか?

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


経営者のイメージイラスト外国人技能実習生の実習実施において、労基署から監督指導等をされるのはどのような場合ですか?

 

Answer

弁護士竹下龍之介イラスト例えば、違法な時間外労働、割増賃金の不払い、危険な場所での作業にもかかわらずそれを防止するための必要な措置がなされていない場合です。

 

技能実習制度についての労働行政運営方針

ポイント厚生労働省は、「平成29年度地方労働行政運営方針」の「第4平成29年度地方労働行政の重点施策」において、「技能実習制度の適正かつ円滑な推進」を重点施策にあげています。

また、労働基準担当部署の重点施策にもあげられています。

これによると、
「技能実習生に係る強制労働が疑われる事案」
「技能実習生への暴行・脅迫・監禁、技能実習生からの違約金の徴収または技能実習生の預金通帳・印鑑・旅券等の取上げ等が疑われ、かつ、技能実習生に係る労働基準関係法令違反が疑われる事案」について、
出入国管理機関との合同監督・調査を実施し、労働基準関係法令違反が認められ、悪質性が認められるもの又は社会的にも看過し得ないものについては、積極的に司法処分に付すこととしています。

この背景には、外国人技能実習生の労働環境の劣悪さや労働関係法令違反が後を絶たないことがあると考えられます。

こうしたことから、今後、技能実習生の受入れ、労務管理等は、ますます重要になってくると予想されます。

 

 

外国人技能実習制度

外国人技能実習制度とは、国際貢献のため、日本国内の企業が開発途上国等の外国人を日本で一定期間(現行:最長3年間)に限り受け入れて、技能を移転する制度です。

技能実習制度の受入れには、企業単独型団体監理型の2種類があります。

企業単独型とは、日本の企業が、海外の企業等(合弁企業、取引先企業等)から従業員を受け入れて技能実習を実施するものをいいます。

団体監理型とは、非営利の監理団体(商工会等)が外国人技能実習生を受け入れて、その実習生が監理団体傘下の企業等で技能実習を実施するものをいいます。

技能実習生の在留資格は、「技能実習」となります。それぞれの受入れの流れは、下図のとおりです。

技能実習制度の受入機関別タイプ(現行制度)

解説図

 

 

雇用関係

外国人技能実習制度の下、外国人技能実習生は最長3年間技能実習を行います。技能実習において、実習生は、当初の2か月間は講習(座学)を受け、その後は実習に入ります。

講習期間中(2か月間)は実習生と受入企業との間に雇用関係がないので、労働関係法令は適用されません。

講習期間が終了し実習に入ると、実習生と受入企業との間に雇用関係があるため、実習生は労働関係法令による保護を受けます。そのため、実習期間中に違法な時間外労働等の労働問題が生じる可能性があります。

なお、在留資格は、最初の1年目が「技術実習」の1号で、2年目以降が「技術実習」の2号となります(在留資格の変更)。

解説図

※1 講習は、実習実施機関(企業単独型のみ)又は監理団体で原則2か月実施

※2 実習は、実習実施機関で実施

団体監理型では、監理団体による訪問指導・監査

※3 企業単独型が、それぞれ「技能実習1号イ」「技能実習1号ロ」

監理団体型が、それぞれ「技能実習2号イ」「技能実習2号ロ」

 

 

違反例

時間のイメージ画像外国人技能実習において、労働関係法令違反内容で多いものは、労働時間関係(違法な時間外労働等)、安全基準(危険作業場での危険防止措置をとらない等)、割増賃金の不払い等です。

過去に労基署が監督指導、送検した事例には、

「実習生に月平均120時間を超える違法な時間外労働(36協定では、特別延長時間が月60時間)を行わせていた事例」

「賃金を時給換算すると約290円で、地域最低賃金額を下回っているとともに、賃金を直接技能実習生に支払っていなかった事例」

「フォークリフトの無資格運転により技能実習生の死亡事故を発生させた事例」

などがあります。

 

 

新たな外国人技能実習制度

(1)法整備

平成28年11月28日に、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律が公布され、平成29年11月1日から施行されることになっています。

(2)新制度の概要

新しい制度は、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図ることを目的としています。そのため、概要、以下の点が定められています。

新しい外国人技能実習制度のポイント

技能実習制度の適正化

・技能実習の基本理念及び関係者の責務規定。技能実習に関する基本方針の策定

・技能実習計画についての認定制

・実習実施者についての届出制

・監理団体についての許可制

・技能実習生に対する人権侵害行為等についての罰則規定、通報・申告窓口を整備

・事業所管大臣等に対する協力要請等を実施。「地域協議会」の設置

・外国人技能実習機構を認可法人として新設

 

技能実習制度の拡充

優良な実習実施者・管理団体に限定して、第3号技能実習生の受入れ(4~5年目の技能実習の実施)を可能とする

⇒最長5年間の受入れ

 

その他

技能実習の在留資格を規定する出入国管理及び難民認定法の改正等

 

外国人技能実習制度は新制度の導入に伴い、様々な問題が生じることが予想されます。お悩みの方はご相談ください。

 

 


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