偽装請負とは?【違反例とポイントを弁護士が解説】 


質問 社長偽装請負として、労基署から指摘を受けるのはどのような場合ですか?

 

 

 

Answer

偽装請負とは、契約書上は「業務請負契約」としながら、注文者が労働者を指揮命令して就労させているような場合のことをいいます。

偽装請負は、違法であり、違反していると罰則の適用があります。

偽装請負とならないためのポイントや留意点について、使用者側弁護士が解説しますので、参考にされてください。

 

偽装請負とは?

偽装請負とは、形式的には業務処理請負、実態は労働者派遣であるものをいいます。

偽装請負は、労働者派遣法に規定されている許可・届出の手続き(派遣法第5条等)、派遣可能期間(同法第40条の2等)などの規制を潜脱するものとして違法となります。

労働者派遣法の平成15年改正により、製造業への労働者派遣が解禁されて以降、社会的問題となったのが偽装請負です。

実態は労働者派遣(または労働者供給)ですが、業務処理請負・委託を偽装して行われているもので、以下のようなタイプに分けられます。

①労働者派遣タイプ

業者Aが業者Bから業務処理を請け負い(受託し)、自己の雇用する労働者XをBの事業場に派遣し就労させているが、Xの就労についての指揮命令(労務管理)を行わず、これをBに委ねているものが典型的なものです(労働者派遣タイプ)。

②個人請負タイプ

業者Aが業者Bから業務処理を請け負い(受託し)、その遂行を個人事業主である業者Xに下請けさせて(再委託し)、XがBの事業場でBの指揮命令を受けて業務処理に従事するという個人請負タイプもあります。

製造業のイメージ画像このような偽装請負は、その実態からは労働者派遣法が規制する「労働者派遣」に該当するか(上記①の労働者派遣タイプ)、または職業安定法が禁止する「労働者供給」に該当します(上記②の個人請負タイプ)。

すなわち、これらの偽装請負は、業務処理請負・委託が労働者派遣または労働者供給とみなされないための要件(派遣する労働者の就労について自ら指揮命令を行い、発注者(委託者)からの指揮命令を受けさせないことなど)を満たさず、違法な労働者派遣または労働者供給とみなされるのです。

偽装請負のつもりでなくとも、偽装請負と認められかねないケースも見られますので、事前の対策が必要となります。

 

 

業務処理請負と労働者派遣の区別等

業務処理請負と労働者派遣の区別

偽装請負がどのようなものかのイメージを持つためには、業務処理請負と労働者派遣の違いを知っておくことが重要です。そこで、まずは業務処理請負と労働者派遣の区別について、以下説明いたします。

業務処理請負は、注文者(B)が請負会社(A)に対して業務処理を請け負わせて、請負会社が従業員(C)を指揮命令して業務処理をさせます。

そして、その仕事の結果に対して注文者(B)が請負会社(A)に対して報酬を支払います。

解説図

他方、労働者派遣は、派遣元事業主(A)が派遣先(B)に派遣労働者(C)を派遣し、派遣労働者(C)は派遣先(B)の指揮命令下で就労します。

そして、派遣先(B)が派遣元事業主(A)に対して派遣料金を支払います。

 

 

偽装請負

業務処理請負と労働者派遣を比較すると、見た目はとてもよく似ています。しかし、決定的に異なるのは、(実質的に見て)誰が指揮命令しているかという点です。

業務処理請負の場合は、請負会社です。他方、労働者派遣の場合は、派遣先です。

そして、偽装請負は、一見すると業務処理請負のように見せながら、実際は注文者(実質的な派遣先)が指揮命令している状態をいいます。

上記のとおり、労働者派遣をするにあたっては、労働者派遣法上、許可・届出の手続き、派遣可能期間等の厳しい制約があります。

他方、業務処理請負においては、こうした制約がありません。そのため、労働者派遣法等の規制を潜脱する目的で業務処理請負の形式をとるケースがあり、その場合、違法となります。

解説図

※AとBの契約は業務請負契約であるため、Aの指揮命令下になければならない。

なお、業務処理請負と労働者派遣の区分基準としては、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年4月17日労働省告示第37号)に示されています。

 

派遣と請負の区分基準のチェックポイント

偽装請負の判断ポイント

労働者派遣との区別が問題となる請負は業務委託(準委任)を含むものですが、請負と労働者派遣の根本的な違いは、業務に従事する際の指揮命令系統にあります。

つまり、就労上の指揮命令を発しているのが、実際の就労場所の事業者(発注者)であるのかがポイントになります。

合法的な請負

請負会社が労働者に対して「雇用契約+指揮命令」を行い、発注元で勤務する場合(就労場所の事業者)である場合のことをいいます。

この場合、指揮命令は請負会社から発せられるため、偽装請負とはならず合法です。

偽装請負

請負会社が労働者に対して「雇用契約」を行うにとどまり、「指揮命令」を発注元(就労場所の事業者)が行いながら勤務する場合をいいます。

この場合、指揮命令は実際の就労場所の事業者(発注者)から発せられるため、偽装請負とみなされ、違法行為となります。

 

構内請負の場合

上記のとおり、業務処理請負と労働者派遣の区別で重要なのは、(実質的な)指揮命令者が誰なのかということです。

この点、建設現場等でよく見られる構内請負の場合は、誰の指揮命令下で作業を行っているかが不明確になる場合があります。

すなわち、構内請負とは、請負会社が請け負った業務を、注文者の事業所内で行う場合です。

この場合、同じ事業所内に、注文者関係者と請負会社関係者がいるため、請負会社の従業員がいったい誰の指揮命令下にあるかが不明確になることがあります。

解説図

※労働者(C)は、B社の敷地内にあるA社事業所内にいる。

構内請負の場合において、従業員が、実際は請負会社ではなく注文者の指揮命令下で就労していた場合は、偽装請負になります。

他方、請負会社の指揮命令下で就労している場合であっても、偽装請負の疑義を生じさせないための対応をしておくのが適切です。

具体的には、注文者の事業所内に、請負会社の事業所を独立して設けること等が必要になります。

 

 

労働契約申込みみなし制度

平成27年労働者派遣法改正によって、労働契約申込みみなし制度ができました。

この制度は、一定の類型の労働者派遣が行われた場合に、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込みをしたとみなすものです。そして、偽装請負が行われた場合にも、この制度の適用を受けます。

 

偽装請負の罰則

労基署監督イメージ偽装請負(実態が労働者派遣)によって労働者派遣を受けた場合、派遣先は無許可事業主から労働者派遣を受けている(派遣法第24条の2)として、以下のような処分の対象になります。

①行政指導(派遣法第48条第1項)

②改善命令(同法第49条)

③勧告(同法第49条の2第1項)

④企業名の公表(同法第49条の2)

偽装請負の問題は上記のとおり、非常に複雑な問題といえるため、時に慎重な対応を迫られることも少なくありません。

こうした問題にお悩みの方は、是非ご相談ください。

 

偽装請負対策

偽装請負とみなされた場合は、労働者派遣法などに違反するため、法律違反として罰則の適用を受けることになります。

したがって、偽装請負を防止する対策が重要です。

請負契約の明確化・詳細化

事前に内容を十分に協議した場合でも、作業の進捗に応じて変更が生じることはどの業務においてもよくあることです。

その際、発注元が請負会社の労働者に変更の指示命令を直接行うと、発注元が労働者に指揮命令を与えたと判断され兼ねません。

したがって、請負契約を行う場合は、事前に仕様書等を詳細に定め、業務に変更が生じた場合の手続きも明確にしておく必要があります。

就業場所を注視

請負会社の労働者が発注元へ出張して作業を行う場合がありますが、その際は請負会社の労働者が発注元の指示命令に従っているわけではないことを客観的に説明できるようにする必要があります。

例えば、机の配置を工夫することで、発注元からの直接的な指示命令を受けていないことを明示する必要があります。

請負会社の労働者と発注元の労働者が混在した状態で作業に従事すると、発注元の労働者と同視されかねませんので、注意が必要です。

発注元の技術指導に注意

発注元が行う技術指導が指示命令とみなされるレベルにまで達しないように注意する必要があります。

 

 

 

早めに弁護士に相談しましょう

弁護士鈴木啓太画像以上、偽装請負について、意義やチェックポイントについて、詳しく説明しましたがいかがだったでしょうか?

偽装請負と判断されてしまうポイントは、一見してわかりにくい部分にも存在している場合があります。

したがって、偽装請負とみなされないようにするためには、労働諸法の専門家に早めに相談されることをお薦めします。

偽装請負となるか否かは、ケース・バイ・ケースですので、上記は参考程度にとどめ、詳しくは労働問題に詳しい弁護士へご相談ください。

偽装請負対策については、こちらのページで詳しく解説しております。ぜひ、ごらんください。

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