女性労働者に対して、会社にはどのような配慮が求められますか?


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質問女性労働者に対して、会社にはどのような配慮が求められていますか?

Answer

弁護士勝木萌イラスト会社には、賃金について、男女の差別的取扱いの禁止や産前産後休業その他の母性保護措置が義務付けられています。

 

男女同一賃金の原則

会社は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはなりません(労基法4条)。

「女性であることを理由として」差別的取扱いをするとは、労働者が女性であることのみを理由として、あるいは社会通念として又はその事業場において、女性労働者が一般的又は平均的に勤続年数が短いこと、主たる生計の維持者ではないことなどを理由とすること」を意味します(昭和22年9月13日基発第17号、平成9年9月25日基発第648号)。

なお、「差別的取扱いをする」とは、不利に取扱う場合だけでなく有利に取扱う場合も含みます

具体的には、下図に該当するような場合が男女同一賃金原則違反の典型です。

男女同一賃金原則違反の典型例

①男女別の賃金表を設定する。

②年齢給を女性のみ頭打ちにする。

③住宅手当等の各種手当を男性のみに支給する。

④女性のみを対象として早期退職における退職金を優遇する。

労働基準法4条に違反した場合、使用者は、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条1号)。また、これを背景とした労基署による是正指導もなされます。

さらに、同法は、強行法規と考えられています。すなわち、男女同一賃金原則に違反する行為は無効となります。

したがって、上図のような賃金規定は無効となり、差別された労働者は使用者に対して差額賃金の額を請求できます。また、使用者が損害を与えていれば不法行為として被害者に賠償責任を生じさせます。

実務上の留意点

解説する弁護士のイメージイラスト男女同一賃金原則は、性別を理由とする差別が禁止されているのであり、職務内容や労働成果によって賃金に差を設けることを禁止しているものではありません

そのため、裁判等において、会社側からは「性別による差別ではなく、職務内容や労働成果によって賃金に差を設けていた」と反論することが見受けられます。

しかし、裁判においては、男女同一賃金原則は厳しく審査される傾向にあります

すなわち、男女間で賃金に差がある場合、会社側は、その差額について、職務内容や労働成果の違いによるものであることを具体的に立証し得ない限り、性別による差別と推定する傾向にあります(秋田相互銀行事件・秋田地判昭50.4.10労民26巻2号388頁、内山工業事件・広島高岡山支判平16.10.28労判884号13頁など)。

 

 

男女雇用機会均等法

雇用管理の各ステージにおける性別を理由とする差別の禁止

男女男女同一賃金原則は労働基準法に規定されていますが、男女差別については、男女雇用機会均等法においても規制されています

同法は、事業主が、労働者の募集・採用、配置(業務の配分及び権限の付与を含む)・昇進・降格・教育訓練、一定範囲の福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由として差別的取扱いをしてはいけないと定めています(均等法5条、6条)。

具体的には、下図に該当するような場合が禁止される差別の典型です。

禁止される差別の典型例

①募集・採用時

例:営業職は男性、事務職は女性に限定して採用

正社員男性、パートタイマーは女性に限定して採用

②職務内容

例:外勤は男性、内勤は女性限定とする。

③役職

例:女性のみ一定の年齢に達したことを理由に一定の役職にまでしか昇進できないものとする。

④福利厚生

例:女性のみ社宅を利用できない。

⑤退職勧奨

例:女性を優先的に退職勧奨する。

 

間接差別の禁止

また、同法は、間接差別を禁止しています。すなわち、労働者の性別以外の事由を要件とする措置のうち、実質的に性別を理由とする差別となるおそれがあるものとして、厚生労働省令で定める措置(下図参照)について、合理的な理由がない場合、これを講ずることを禁止しています(均等法7条)。

厚生労働省令で定める措置

①労働者の募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること。

②労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること。

③労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること。

なお、省令で定めるもの以外については、均等法違反ではありませんが、裁判において、間接差別として違法と判断される可能性もあります。

 

ポジティブ・アクション

解説する弁護士のイメージイラスト男女雇用機会均等法は、性別による差別的取扱いを原則として禁止する一方、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の「支障となっている事情」を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置を講ずることは、違法でないと規定しています(均等法8条)。

「支障となっている事情」とは、固定的な男女の役割分担意識に根ざすこれまでの企業における雇用管理などが原因となって、雇用の場において男女労働者の間に事実上格差が生じていることをいうものです。

この格差は最終的には男女労働者数の差となって表れるものと考えられることから、事情の存否については、女性労働者が男性労働者と比較して相当少ない状況にあるか否かにより判断することが適当です。

具体的には、一定の雇用管理区分における職務、役職において女性労働者の割合が4割を下回っているか否かにより判断することとしています。

なお、現に女性労働者の割合が4割を下回っている場合であっても、例えば、事実上生じている格差を解消しようとする意図からではなく、単に男性ではなく女性をその職務に配置したいという意図で女性を配置することは、目的に合致しないため、均等法違反となります。

具体的には、下図に該当するような場合が認められる場合の典型です。

女性優遇が認められる典型例

①募集・採用時

例:女性の応募を促すために、女性求職者を対象とした職場見学会を実施する。

②配置

例:配置のために必要な資格試験の受験を女性労働者のみに奨励すること。

③昇進

例:昇進の基準を満たす労働者の中から、女性労働者を優先して昇進させること。

 

婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止

男女雇用機会均等法は、下図の行為を禁止しています(均等法9条)。

不利益取扱いの禁止例

①婚姻、妊娠、出産を退職理由とする定め。

②婚姻を理由とする解雇。

③妊娠、出産、産休取得、その他厚生労働省令で定める理由(下図参照)による解雇その他不利益取扱い。

また、妊娠中・産後1年以内の解雇については、事業主が、妊娠等が理由でないことを証明しない限り無効としています。

厚生労働省で定める理由

①妊娠したこと。

②出産したこと。

③妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め、又は当該措置を受けたこと。

④坑内業務・危険有害業務に就くことができないこと、これらの業務に従事しない旨の申出をしたこと、これらの業務に従事しなかったこと。

⑤産前休業を請求したこと、産前休業をしたこと、産後の就業制限の規定により就業できなかったこと、産後休業をしたこと。

⑥軽易業務への転換を請求したこと、軽易業務に転換したこと。

⑦時間外等に労働しないことを請求したこと、又は労働をしなかったこと。

⑧育児時間の請求をし、又は育児時間を取得したこと。

⑨妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと、又はできなかったこと、労働能率が低下したこと。

 

 

産前産後休業その他の母性保護措置

妊婦さん労働基準法は、女性労働者の母性保護のために、以下の規定を設けています。

産前産後休業等(同法65条)

使用者は、6週間(双子以上妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が請求した場合においては、その者を就業させてはなりません

また、使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはなりませんただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えありません

さらに、使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければなりません。

 

妊産婦の時間外・休日労働、深夜労働等の禁止(同法66条)

使用者は、妊産婦が請求した場合においては、変形労働時間制により労働させる場合であっても、その者を、1週又は1日の労働時間が法定時間を超えることとなる時間について労働させてはなりません

また、使用者は、妊産婦が請求した場合においては、時間外労働、休日労働又は深夜業をさせてはなりません

 

育児時間の付与(同法67条)

生後満1年に達しない生児を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求することができます

この場合、使用者は、その時間中にその者を使用してはなりません。

 

妊産婦等に係る危険有害業務の就業制限(同法64条の3)

使用者は、妊産婦を、妊娠、出産、哺育等に有害な一定の業務に、また、妊産婦以外の女性を、妊娠、出産に係る機能に有害な一定の業務に、それぞれ就かせてはなりません

 

坑内労働の就業制限・生理休暇(同法64条の2)

使用者は、妊婦及び産婦(申し出た者に限る。)が行う業務並びに厚生労働省令で定める業務(下図参照)については、女性を坑内で労働させてはなりません

坑内労働の就業を制限される業務

①人力により行われる土石、岩石若しくは鉱物(以下「鉱物等」という。)の掘削又は掘採の業務

②動力により行われる鉱物等の掘削又は掘採の業務(遠隔操作により行うものを除く。)

③発破による鉱物等の掘削又は掘採の業務

④ずり、資材等の運搬若しくは覆工のコンクリートの打設等鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務(鉱物等の掘削又は掘採に係る計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理、保安管理その他の技術上の管理の業務並びに鉱物等の掘削又は掘採の業務に従事する者及び鉱物等の掘削又は掘採の業務に付随して行われる業務に従事する者の技術上の指導監督の業務を除く。)

 

生理休暇(同法68条)

使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求した場合には、その者を生理日に就業させてはなりません

 

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