賃金と退職金は自己都合退職者の要求通り支払うべきですか?


退職・解雇問題についてよくある相談Q&A

経営者のイメージイラスト自己都合で退職した従業員が在職中の賃金と退職金を速やかに支払うよう求めています。当社規定では、賃金の支払日は月末締めの翌20日払い、退職金は退職後2か月以内となっています。

このような場合、退職者の求めに応じてすぐに賃金と退職金を支払わなければならないでしょうか?

 

Answer

弁護士本村安宏賃金については退職日から7日以内に支払わなければなりません。退職金は規定どおりの支払期日でかまいません。

 

金品の返還

解説する弁護士のイメージイラスト労働基準法は、使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。と規定しています(同法23条1項)。

ここでいう「権利者」とは、労働者が退職した場合はその労働者本人、労働者が死亡した場合はその労働者の遺産相続人をいうと解されています。

また、「退職」は、労働者の自己都合退職のみではなく、使用者による解雇等を含みます。

「賃金」とは、労働基準法11条に規定する、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」です。

 

 

賃金規定等との関係

ほとんどの会社は、賃金に関して、その算定方法や支払い方法について、就業規則で定めています(賃金規定、給与規定などの名称が用いられています。)。

支払い方法については、事務手続の効率化のために、一律で月末締めの翌20日払い、月末締めの翌10日払い、などの賃金の対象期間(締め日)から一定日数を設けているのが通常です。

そのため、就業規則と労働基準法23条1項との関係について、いずれが優先するのかが問題となります。

この点、同法は、労働者の足止め防止策と労働者の遺族の生活確保の見地から、労働者の退職又は死亡の場合に、権利者の請求から7日以内に賃金等を支払うことを会社に義務付けたものであり、強行法規であると解されています。

したがって、就業規則よりも本条が優先され、就業規則の賃金支給日にかかわらず、会社は7日内に支払わなければなりませ

 

 

退職金規定との関係

退職金は、法律で義務付けられてものではありません。昨今、多くの企業では、退職金制度自体を採用していません。

退職金制度を採用するか否か、採用したとしてその支給要件や額、支払い方法をどのようにするかは企業の経営戦略であり、支給条件は、就業規則等(退職金規定などの名称が用いられています。)によって明確になります。

解説する弁護士のイメージイラストしたがって、退職金については、退職した労働者から請求があっても、7日以内ではなく、通常の支給期日に支払っても本法律には違反しません。

 

 

実務上の留意点

本法律は、あくまで権利者から請求があった場合が対象です。したがって、退職した労働者から速やかに賃金を支払うよう求められていなければ、通常の支払日に賃金を支払ってもよいと考えます。

また、多くの企業では、実務上、通常の賃金の支払いと同様に処理していると思われます。

ただし、権利者から請求があったにも関わらず、賃金の額等について異議もなく7日以内に支払わない場合、30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条)。

企業法務チーム解雇・退職問題については、労働問題に詳しい専門家にご相談ください。

当事務所の労働弁護士は、使用者側専門であり、企業を護るための人事戦略をご提案しています。

まずはお気軽にご相談ください。

 

 


退職・解雇問題

「退職・解雇問題」についてよくある相談

よくある相談Q&A