弁護士コラム

福岡の外国人雇用の現状と今後の課題【弁護士が解説】

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


2019年4月に入管法が改正されるなど、外国人労働者をめぐるルールは目まぐるしく変わっています。

外国人労働者は全国的に年々増加しているという傾向があります。

今回は、デイライト法律事務所のある福岡県のデータを専門家である弁護士と行政書士が分析し、福岡の外国人の雇用状況と今後の課題について解説していきます。

福岡県の外国人の現状

大学日本での国際化が進むなか、福岡の外国人の数も年々増加しています。

福岡県が発表したデータによると、2018年12月末現在の福岡県の在留外国人数は77,044人と過去最多を記録しており、全国でも9番目の多さとなっています。

福岡は、国際線の定期便だけ見ても10か国・23都市を結び、週に23路線808便(片道を1便とする)を就航する福岡空港をはじめ、3か国・6都市を結び、週に6路線78便(片道を1便とする)就航する北九州空港のほか、国際拠点港湾(北九州港、博多港)や重要港湾(苅田港、三池港)といった充実した拠点があることもその一因と考えられます。やはり、アジアに近いという立地が大きく影響しています。

福岡の外国人の国籍の内訳ですが、多い国から中国、韓国・朝鮮、ベトナムとなっています。

外国人登録法が改正された2012年以降の数字を見ますと、中国は2015年までは毎年減少傾向にあり、2016年から再度上昇してきています。韓国・朝鮮は、昨今の関係悪化のためか毎年減少しています。

これに対して、3番目に多いベトナム、4番目に多いネパールは毎年増加しており、その数は2012年と比べてベトナムは約9倍、ネパールは約4倍になっています。

この点、ベトナムの大手格安航空会社(LCC)ベトジェットエアは2020年1月13日、今夏にも日本路線を5路線新設すると発表し、福岡-ハノイを結ぶ路線も新設するとしています。これは、福岡において今後も技能実習生や留学生の利用が増えることを見込んでのものと思われます。

福岡県内で在留外国人数が多い自治体は、1位 福岡市(37,733人)、2位 北九州市(13,410人)、3位 久留米市(4,091人)です。

外国人の国籍比率は、各自治体によってバラつきがあります。福岡市では一番多い中国が12,479人で、2位の韓国の2倍近くを占めています。

北九州市で一番多いのは韓国(4,734人)で、2位の中国(3,227人)の約1.5倍となっています。

他方、久留米市では1番多いのがフィリピン(1,185人)、次いでベトナム(1,061人)となっており、3番目に多い中国(726人)、4番目に多いネパール(327人)と比べても、また、福岡市、北九州市と比べてもフィリピン、ベトナムの比率が高くなっています。

こうした国籍別データをみると、久留米市は外国人の中でも技能実習生の割合が多いのではないかと推測されます。

県内の外国人を在留資格別で見ると、一番多いのは留学(約26%)です。次いで就労制限のない、身分に基づく在留資格である永住者(約18%)、特別永住者(約15%)となっていますが、続いて技能実習(約15%)、技術・知識・国際業務(7%)です。

外国人労働者数では、一番多いのはベトナム(30.0%)、次いで中国(香港等を含む)(25.1%)、ネパール(15.7%)となります。

いずれも資格外活動の比率が一番高く、ネパールでは9割近くを占めています。ベトナムは技能実習、中国は技術・人文知識・国際業務、が資格外活動に続いて比率が高くなっています。

産業別では、製造業(21.1%)及び卸売業・小売業(19.3%)の2業種が全体の4割を占めています。

小売の割合が多いということからは、資格外活動でも就労することができるコンビニのアルバイトが多いと推測できます。

 

 

 

外国人を雇用する企業の課題

面談少子高齢化による人材不足により、福岡においても今後も引き続き外国人労働者の数が増えてくることが予想されます。

外国人を雇用する企業はどのような取り組みを行うことが求められるでしょうか。

2015年に実施された「外国人労働者の受入れに関する実態調査」(厚生労働省)では、最大の課題として「日本語能力的に問題がある」(29.5%)、「日本人社員とのコミュニケーションに不安がある」(19.5%)を挙げた企業が合計で半数を占めています。

中でも、技能実習生、製造派遣・請負、製造現場の技術者・技能者での割合が高くなっています。

先ほど取り上げたように、福岡においても技能実習生や製造業に携わる外国人は多く、日本語教育の重要性は高いと思われます。

福岡県の小川洋知事も、改正入管法施行に伴い、在住外国人や受け入れ事業者のニーズに合った日本語教室のモデルを複数の市町村で構築し、県内全域に広げる構想を検討していると昨年12月の定例会見にて発表しています。

日本で暮らす外国人にとって、日本語教育は業務においてのみならず、近年多発する自然災害時の避難情報や病気や事件の際等、生命を守るためにも重要です。

業務で必要なだけでなく、コミュニケーションツールでもある日本語の教育に重点を置き、スムーズに意思疎通できる環境を整え、外国人・日本人双方にとって居心地の良い住環境・職場環境を提供することが、外国人受入れ・安定雇用の為にも重要になってくるのではないでしょうか。

こうした外国人の住環境、日本語教育、従業員とのコミュニケーションなど外国人のマネジメントにおいては、注意すべき点が日本人に比べて多くあります。

技能実習生の逃亡などを防ぐためにも、日頃から監理団体などはもちろん、労務管理を専門とする弁護士にも相談するなどしておくことが大切です。

外国人雇用についてもっと知りたい方はこちらをごらんください。

 

参考

 

 

 




  

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