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トラック運送業コラム~トラックドライバーの過労死について労働問題に強い弁護士が解説


弁護士鈴木啓太トラックドライバーの過労死について労働問題に強い弁護士が解説します。

 

問題の背景

トラック厚生労働省により、「過労死等の労災補償状況」(平成28年)が公表されています。

これによれば、道路貨物運送業の脳・心臓疾患による過労死認定の件数は、33件であり、各業種の中で最も多く過労死認定を受けています。

長距離のトラックドライバーは、不可避的に労働時間が長くなりがちです。

長時間の過重業務としての過労死の労災認定は以下のように、主に労働時間を指標として判断されるため、労働時間が長いトラックドライバー該当するケースが多いのです。

健康診断①発症前1カ月ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと評価できること

②おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症の関連性が徐々に強まると評価できること

③発症前1カ月間におおむね100時間又は発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって、1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できること

ここで、トラックドライバーの過労死に関する裁判例をご紹介します。

大阪地判平成28年4月14日

交通事故亡くなったトラックドライバーは、大型トラックのドライバーで運転中に心身の異常を発症して運転不能となりガードレールに接触して停止しましたが、救急隊員が駆け付けたときには心肺停止状態で、病院で死亡が確認されました。

ドライバーの走行距離は、概ね1日当たり300kmから400kmであり、閑散期には200km程度のときもあったが、繁忙期には400kmを超えることも多く、日によっては500kmを超えることもありました。

ドライバーの死亡する直前6か月の時間外労働数は、死亡する直前の1カ月は160時間を超えており、過去6ヶ月で最も短い場合でも92時間の時間外労働を行っていました。

こうした事実を踏まえて、労働基準監督署においても、業務とドライバーの死亡との間には因果関係が認められるとして、労災認定がされています。

これに対して、会社がとしては、ドライバーの体調管理は十分行っており、過重労働も存在せず、責任を負わないと主張している事案です。

判旨の概要(一部分かりやすく修正しています。)

「亡ドライバーの労働時間が恒常的に長時間にわたっていたことに加え、亡ドライバーが、
① 型トラックの運転というそれなりに精神的緊張を伴う作業に乗車し、日常的に300km~500kmという長距離運転を行っていたこと、
②配送品は商品自動車であって、財産的価値が高く、荷積み、荷下ろしの際には取扱いに相応の注意が求められること、
③亡ドライバーは、平成25年1月7日から死亡した同年4月4日までの間、週に1日しか休日がなかったこと、
④出勤時刻及び退勤時刻がその日の業務の内容によって異なり、繁忙期には午前3時前に出勤することもあるなど、就寝時間等の生活が不規則であったことなどの事情を総合勘案すると、亡Bが死亡する直前の6か月間(特に直前の2か月間)において従事していた労働は、質的、量的に過重なものであったというべきである。」
と判示して、業務とドライバーの死亡の因果関係を認めています。

また、会社は、亡ドライバーが労使協定で定められた最大拘束時間の320時間を超えて労働していたことを認識していたにもかかわらず、長時間労働を是正する具体的な措置を何ら講じることがなかったと認定して、会社の安全配慮義務違反とドライバーの死亡の因果関係を認めています。

裁判例この裁判例では、会社に対して、約6000万円の損害賠償を命じる判決が出されました。

トラック運送業は、どうしても労働時間が長くなりがちですから、万一、脳・心臓疾患で亡くなった場合には、上記した労災の認定基準から労災認定されるドライバーは相当数存在すると思います。

そうした場合には、上記の裁判例のように数千万円あるいは1億円を超える賠償を命じられる可能性もあり、会社としても死活問題となる危険性もあります。

現在の物流業の取り巻く環境を考えると、トラック運送業において労働時間を削減することは容易なことではありませんが、自社で過労死者を出さないために、できる限りの労働時間の削減を行うべきといえるでしょう。

 

 


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