退職後の給料や退職金は7日以内に支払われるべき?請求の仕方

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者


退職後、未払いの給料は会社に対してすぐに請求することができます。

労働基準法では、退職日から7日以内に賃金を支払うことが義務付けられており、これを守らない場合、会社は罰則の対象になることもあります。

退職金については、就業規則などで定めた支払期日で問題ありません。

このページでは、退職後の給料や退職金の支払いについて、会社に正しく請求する具体的な方法をわかりやすく解説します。

退職後の給料は7日以内に支払い義務がある

労働基準法は、使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。と規定しています(同法23条1項)。

参考:労働基準法|e-Gov法令検索

ここでいう「権利者」とは、労働者が退職した場合はその労働者本人、労働者が死亡した場合はその労働者の遺産相続人をいうと解されています。

また、「退職」は、労働者の自己都合退職のみではなく、使用者による解雇等を含みます。

「賃金」とは、労働基準法11条に規定する、「賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」です。

 

 

就業規則で決まっていても給料は7日以内に請求できる?

ほとんどの会社は、賃金に関して、その算定方法や支払い方法について、就業規則で定めています(賃金規定、給与規定などの名称が用いられています。)。

支払い方法については、事務手続の効率化のために、一律で月末締めの翌20日払い、月末締めの翌10日払い、などの賃金の対象期間(締め日)から一定日数を設けているのが通常です。

そのため、就業規則と労働基準法23条1項との関係について、いずれが優先するのかが問題となります。

この点、同法は、労働者の足止め防止策と労働者の遺族の生活確保の見地から、労働者の退職又は死亡の場合に、権利者の請求から7日以内に賃金等を支払うことを会社に義務付けたものであり、強行法規であると解されています。

したがって、就業規則よりも本条が優先され、就業規則の賃金支給日にかかわらず、会社は7日内に支払わなければなりませ

 

 

退職金も7日以内に支払う必要がある?

退職金は、法律で義務付けられてものではありません。

昨今、多くの企業では、退職金制度自体を採用していません。

退職金制度を採用するか否か、採用したとしてその支給要件や額、支払い方法をどのようにするかは企業の経営戦略であり、支給条件は、就業規則等(退職金規定などの名称が用いられています。)によって明確になります。

したがって、退職金については、退職した労働者から請求があっても、7日以内ではなく、通常の支給期日に支払っても本法律には違反しません。

 

 

退職後の給料は請求しないと7日以内に支払われない?

本法律は、あくまで権利者から請求があった場合が対象です。

したがって、退職した労働者から速やかに賃金を支払うよう求められていなければ、通常の支払日に賃金を支払ってもよいと考えます。

また、多くの企業では、実務上、通常の賃金の支払いと同様に処理していると思われます。

ただし、権利者から請求があったにもかかわらず、賃金の額等について異議もなく7日以内に支払わない場合、30万円以下の罰金に処せられます(労基法120条)。

 

 

退職後の賃金請求|すぐにできる具体的なやり方

退職後にすぐに賃金を受領したい方は、会社に対して、労働基準法23条1項に基づき、7日以内に賃金を支払うことを求めてください。

具体的には、口頭、メール等のメッセージ、文書などにより、退職日までの賃金を7日以内に支払うように請求する旨を伝えます。

メッセージの例
私の未払いの賃金について、労働基準法23条1項に基づき、7日以内にすでに指定している給与口座にお支払いください。

なお、請求する際には賃金の額を特定する必要はなく、金額は会社に計算してもらえば良いです。

 

 

まとめ

労働基準法23条の規定は、一般に知られていないことも多く、適切な対応がされないこともある印象です。

労働基準法に定められた従業員の権利であるため、会社側も従業員の請求を無視することは禁物です。

退職問題でのトラブルは、労働問題に詳しい専門家にご相談ください。

 

 


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