弁護士コラム

採用にあたっては、労働条件を明示しましょう!


現在、会社にとって社員の採用が非常に厳しくなっています。このようないわゆる「売手市場」の時期は、会社は選考よりも人材の確保を優先した採用活動を行いがちです。

しかし、日本の労働法では、簡単には解雇は認められません。

弁護士竹下龍之介そのため、安易な採用活動を行ってしまうと、会社は、いわゆるモンスター社員に苦しめられることになってしまいます。

そこで、この記事では、採用に関する法的な注意点のうち、労働条件の明示義務について、書きたいと思います。

労働条件の明示義務について

売手市場の情勢では、会社は、どうしても人手がほしいという事情から、労働条件を綿密に定めることなく雇用契約を締結してしまうことがあります。

しかし、人を採用するに際しては、トラブルを防ぐために、以下の内容をきちんと書面で定めておく必要があります。

なお、労働条件の明示は、労働基準法15条等の法律上の義務で、これを怠ると、労基署などに発覚してしまうと、場合によっては 30万円以下の罰金が課されるため注意が必要です(労働基準法120条)。

 

書面で明らかにしておくべき労働条件

①労働契約の期間
②就業の場所及び従事すべき業務
③就業時間(始業、終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇等)
④賃金の決定、計算、支払いの方法、支払の時期、昇給の有無
⑤退職(解雇の事由を含む)
…(以下は、その内容の定めを置く場合に限る)
⑥退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法ならびに退職手当の支払いの時期
⑦臨時に支払われる賃金、賞与等
⑧労働者に負担させるべき食費、作業用品その他
⑨安全および衛生
⑩職業訓練
⑪災害補償
⑫表彰および制裁
⑬休職

チェックリスト特に、①~⑤は、法的にも(単なる明示ではなく)書面による明示が義務付けられています。

①~⑤は、いずれも、労働契約の根幹となる内容ですので、後々のトラブルを防ぐため、絶対に契約時に明確に定めておかなければなりません。

 

 

明示義務を怠った場合のトラブル

解説する弁護士上記の明示義務を怠った場合、会社が罰金を課されることは前述のとおりですが、民法上の労働契約が無効となるものではありません。

そのため、仮に、上記①~⑤の内容について、社員と争いになった場合も労働契約は当然に有効であることが前提となります。

例えば未払い賃金等の支払いを社員から求められた場合、「そもそも労働契約が労働基準法15条の明示義務に反するものだから、労働契約そのものが無効だ。したがって、未払賃金も発生しない。」ということは、当然ながら言えません。

労働条件通知書

また、雇用契約書や労働条件通知書といった書面がないと形式的にも労基法違反となりますが、実質的にも労働者とトラブルになるケースが増えます。

例えば、残業代などの未払賃金が問題になった場合に、書面がなければ労働者の言い分と使用者の言い分が食い違ってしまい、割増賃金の計算にも大きな影響を与えてしまいます。

雇用契約書や労働条件通知書は単に作成するだけでなく、各企業に応じたものにしておく必要があります。

当事務所の企業法務部では、労働専門チームがこうした採用関係書類の作成やチェックを行っておりますので、お気軽にご相談ください。

なお、この労働条件の明示は、アルバイトやパート等の非正規社員に対しても行わなければなりません。

解説する弁護士このように、採用においては、法律上、労働条件の明示が義務付けられていますので、契約書や労働条件通知書で、きちんと労働条件を明示しておかなければ、トラブルになった際に、会社側が不利になりかねません。

採用の法律問題について、より詳しくお知りになりたい方は、当事務所の弁護士へお気軽にご相談ください。

 

 


この記事を書いた人

弁護士 竹下龍之介

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