弁護士コラム

アカデミック・ハラスメント(アカハラ)【弁護士が解説】

掲載日:2018年1月10日|最終更新日:2020年3月17日

 

アカハラとは、大学をはじめとする教育現場で、教育・研究上の権力を濫用して、修学・教育・研究等に支障をきたす行為をいいます。

アカハラが発生してしまうと、加害者はもちろん、学校側にも損害賠償責任が発生してしまいます。

指針の策定や教員の研修を実施していくことが必要です。

近年、アカデミック・ハラスメント(アカハラ)という言葉がメディアで報じられることが増えました。

そこで、本コラムではアカデミック・ハラスメントについて弁護士が解説いたします。

 

アカデミック・ハラスメント(アカハラ)とは

セクハラと異なり、アカデミック・ハラスメントを明確に定めた法的な根拠規定はありません。

しかしながら、例えば、東京大学のアカデミック・ハラスメント防止宣言では以下のように定義されています。

「大学の構成員が、教育・研究上の権力を濫用し、他の構成員に対して不適切で不当な言動を行うことにより、その者に、修学・教育・研究ないし職務遂行に差し支えるような精神的・身体的損害を与えることを内容とする人格権侵害」

ポイントとしては、「教育・研究上の権力の濫用」、「不適切で不当な言動により修学・教育・研究等に支障を与える」という点です。

典型的には、以下のような間柄で発生する可能性があります。

  • 大学教授、准教授と研究室に在籍する研究生、ゼミ生
  • 大学教授と准教授
  • 大学院生と学部生

なお、アカハラとセクハラが重なる部分もあります。

例えば、大学教授が研究生に対して、卒業単位を与える代わりに性的な関係を要求するといった行為はセクハラにも該当しますし、卒業単位を要求材料にしている点でアカハラにも該当します。

 

 

アカハラの具体的な態様

具体的にどのような場合に、アカハラといえるのかという点については、パワハラと同じく、認定が難しい側面があります。

しかしながら、主なものとしては、以下のような行為がアカハラに該当する可能性があります。

アカハラに該当する可能性がある行為
  • 指導・研究中の些細なミスを過剰に叱責する
  • 言うことを聞かないと学位をやらないという脅迫をする
  • 長期間にわたって、朝から深夜まで実験をさせる
  • 学生の業績を自分の業績にする又は論文を盗用する
  • 研究妨害をする
  • 業績を不当に低く評価する

 

 

大学等の高等教育機関の環境

大学等の高等教育機関は、構成員である教授と研究員、学生がピラミッド構造になっており、閉鎖的な人間関係をベースにハラスメントが発生しやすい環境にあります。

そして、理系分野に顕著ですが、巨額の研究費や実験設備が必要になり、チームでの研究スタイルが主となります。

チームを離脱するということは、研究者生命を絶たれることになりかねません。

ハラスメントがあったとしても、簡単には離脱できないのです。

そのような環境下で、アカハラを防ぐには、大学側がアカハラの存在を意識して、教授その他ヒエラルキーの上層部に注意をうながすことが重要です。

具体的には、先ほどの東京大学のようにアカハラについても、セクハラやパワハラと同様に指針を定めて、年に1度、教授に対して、ハラスメントに対する講習を行うなどの措置が必要になります。

また、学生側からの相談を受け付ける相談窓口を設けておくことも必要です。

 

 

アカハラが起こると・・・

アカハラは、セクハラやパワハラと同様に不法行為になります。

そのため、アカハラが発生した場合、被害者は不法行為責任に基づく損害賠償を請求することができます。

その対象は、実際にアカハラを行った加害者はもちろん、大学をはじめとする学校側も含まれます。

学校の経営者の皆様は、自校のアカデミック・ハラスメントにご注意ください。

 

 

アカハラに関する裁判例

判例 東京高判令和元年6月26日

裁判官この事案は、大学の5年間の准教授への降格処分という懲戒処分に対して、不服のあった大学教授が大学側を訴えた裁判です。

この裁判の中で東京高裁は、アカハラに該当するかどうかの判断については、「行為者の主観的要素(優越的地位の利用や対象者の不利益発生等についての故意・過失)は,考慮に入れるべきではない」と言及しています。

つまり、実際にアカハラ行為を行った教授がどのようなつもりであったかは、認定に影響しないということになります。

その上で、今回の事案では、大学院生であった女性を食事に誘い、頻繁にメールをしていた行為について、「授業担当教官である教授から性的危険にさらされる状態の継続をB(被害者)に危惧させて、Bの大学院での修学環境を著しく汚染し、修学等を困難にしている」、「メールによる接触回数を無用に増やすことにより第1審原告を嫌忌する気持ちをBに生じさせ、Bの大学院での修学環境を汚染し、修学等を困難にしている」として、アカハラを認定しています。

この裁判例では、「大学院生は,本音や言いたいことを,教授に直接的に伝えることができず,黙っていたり,婉曲な表現(私も防犯意識が薄かった)をしたりすることがよくあることに,教授としては常に配慮していくべきである。セクシュアル・ハラスメントや,アカデミック・ハラスメントに該当するかどうかの判断においては,指導教授や上司の立場にある者は,知らなかったでは済まされないのが普通であることに留意すべきである。」とも指摘されています。

運営する学校側としては、今回の裁判例も踏まえて、教員の方々のマネジメントを図っていくことが必要です。

 

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この記事を書いた人

弁護士 竹下龍之介


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