弁護士コラム

パワハラの指導強化で求められる企業の対応~厚労省の通達改正

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

厚生労働省は、4月3日付でパワーハラスメントに対する行政通達を改正しました。近年社会問題化しているパワーハラスメントについて、その予防・解決のための対策に行政をあげて取り組む姿勢を明確に打ち出しました。

昨年大ヒットしたドラマ「半沢直樹」でも、出向した会社で奮闘する人が職場の内外でいやがらせを受けて、精神的にまいってしまうという姿が描かれていました。

このドラマのように、パワーハラスメントにより、体調を崩してしまうというケースが増えてきています。

それを物語るように、ハラスメントに対する相談、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた」ことによる精神障害の労災補償の支給件数も増加しています。

パワハラのイメージ画像また、パワーハラスメントにより休職、退職に追い込まれたとして、企業に対して、責任追及をする事例も後を絶ちません。企業としても労働審判などの法的手続への対応は多大な労力とコストを要してしまいます。

今回の通達や通達の中で引用されている提言でパワーハラスメントは以下のように定義され、その典型的な行為類型として具体的に6つ挙げられています。

「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう」。


 
 

行為類型

(1)暴行・傷害

(2)脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言

(3)隔離・仲間外し・無視

(4)業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害

(5)業務上合理性がなく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと

(6)私的なことに過度に立ち入ること

特に、(4)~(6)は何が業務上適正な範囲を超えるかの線引きが困難であり、具体的な事例に応じて判断するしかないのが実情です。企業としては、パワーハラスメントを恐れるあまり、適切な指導、注意ができないという事態にならないようにする必要があると思います。

今回の通達では、パワーハラスメントの是正に向けて、国が都道府県や労働基準監督署と協力して活動していくことが明記されています。

これを受けて、企業の方で求められる対応は、パワーハラスメントは許されない行為であり、厳重に処罰されなければならないという認識を社内で共有することです。

パワーハラスメントを放置すれば、職場環境が悪化し、労働者のメンタルヘルス問題が生じるリスクが大きく高まります。企業規模に関わらず、事業主は職場環境を適切に保ち、ハラスメントを防止する義務が課せられています。これを怠ると、企業は安全配慮義務違反等の理由で損害賠償責任を負うことになります。

対応策の一つとして、就業規則において、禁止事項として、パワーハラスメントを追加し、懲戒事由とすることや朝礼や社内セミナーを通じて、各労働者に意識づけを行うといった方法が考えられます
そして、問題行為が発覚した場合には、十分な聞き取り調査を行った上で、指導書や注意書を交付し、出勤停止や減給などの懲戒処分を行う必要があります。この関係で懲戒処分の中で最も重い懲戒解雇ですが、労働者の地位を奪ってしまう重大な処分ですので、慎重な対応が必要です。もっとも、先ほども述べたとおり、企業として問題なのは、ハラスメント行為に対して、処分をせずに事実上黙認してしまうことです

悲しい女性のイメージ画像仮に問題が起こった場合に、マスコミといった外部に駆け込まれると、企業イメージを損なう事態となってしまいます。そのような事態を防ぐためには、相談窓口を設け、労働者に周知する必要があります。

当事務所では、顧問先企業の皆様に当事務所をハラスメントの外部相談窓口としてご利用いただけるサービスを無料でご提供しております。是非、ご利用していただければと思います。

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