弁護士コラム

最高裁、マタハラ訴訟で初の判断!

執筆者
弁護士 西村裕一

弁護士法人デイライト法律事務所 北九州オフィス所長、パートナー弁護士

保有資格 / 弁護士・入国管理局申請取次者

妊婦のイメージ画像広島市内の病院に勤める女性が、妊娠を理由に降格されたのは男女雇用機会均等法違反であるとして、勤務先の病院運営者に175万円の損害賠償を求めた裁判で、今月23日、判決が言い渡されました。

一審・二審ともに女性側の敗訴判決でしたが、最高裁判所は、女性側敗訴判決を破棄し、二審の広島高裁に審理を差し戻しました。判決は、「明確な同意」や特段の事情がない限り、妊娠を理由とした降格は原則違法との基準を示したうえで、「女性が降格を承諾していたとはいえない」と指摘し、降格を正当化する業務上の必要性があったか否かを高裁で改めて検討するよう求めています。

この裁判は、「マタハラ(マタニティ・ハラスメント)訴訟」といわれ、大きな注目を集めていました。

 

マタハラとは?

困る妊婦のイメージイラストマタハラとは、職場において、女性が、妊娠や出産を理由として受ける、精神的・肉体的嫌がらせを指す言葉です。

実際に、妊娠が発覚した際に上司から、「うちの会社は階段を使わなければいけなくて妊婦さんには危険だよ」と退職勧奨を受けたり、雇用時に「妊娠が発覚した場合は契約を更新しません」と妊娠時には解雇する旨の説明をされたりするなど、違法なマタハラと疑われるケースは非常に多いです。

しかし、妊娠や出産を理由とした解雇や降格などの不利益取り扱いについては、男女雇用機会均等法9条で禁じられています。また、労働基準法19条では産前産後休業期間中及びその後30日間の解雇は禁止されています。

違法なマタハラと評価された場合、企業は、被害者から損害賠償請求をされたり、社会的イメージが低下したりするといったリスクを負うことになります。

 

 

マタハラ対策

最高裁が原判決を破棄したことで、差戻審において女性側が逆転勝訴する可能性が強まりました。そのため、事業主としては、マタハラを防止するための対策を早急に講ずる必要が生じたといえます。

マタハラを防止するためには、以下の対策が有効です。

社員教育

マタハラは、働く妊産婦に対する意識の低さが原因で生じます。

従業員に対し、マタハラは違法となりうることに加え、実際にどのような言動が違法なマタハラとなるおそれがあるのかなどという点について、意識改革のための研修を行うことが有用です。

 

育児短時間勤務制度

育児短時間勤務制度とは、3歳未満の子を養育する従業員が希望した場合、従来の勤務時間(日数等)を短縮して勤務することができる制度です。就業規則等で規定しておく必要があります。

妊娠中もしくは出産後の女性が、妊娠前のように働くことができない時期については、育児短時間勤務制度を用いて、配慮するといいでしょう。

少子高齢化の現代社会において、女性従業員は企業にとって貴重な戦力でもあります。早期にマタハラ対策を講じ、有用な人的資源を活用しましょう。

 

 




  

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