弁護士コラム

女子アナ内定取消し裁判が和解へ―残る火種


弁護士西村裕一イラスト昨年秋に内定取消しを求めて東京地方裁判所に地位確認訴訟を提起していた大学生笹崎さんの事件ですが、今月に入って和解が成立するという報道がありました。

訴訟提起からわずか数か月のスピード解決となった今回の事件について考えてみます。

 

早期解決に至った2つのポイント

今回、早期解決に至った背景には法的な観点では2つのポイントがあったと考えられます。

一つが、裁判所の本件に対する心証、もう一つが日本テレビ側の法的なリスクです。

 

 

裁判所の和解勧告の意味

裁判所のイメージ画像報道によれば、今回の裁判では、第1回の期日が行われたのちに、その後の裁判の進行を協議する場が設けられたとのことです。そして、間もなく、笹崎さんの内定取消しを日本テレビ側が撤回し、今年4月からの入社を内容とする和解が成立しています。

一般的に第1回目の期日のすぐ後に進行協議の期日が設けられるのは稀です。日本テレビ側の答弁に対して、笹崎さん側が反論するという流れになるのが通常です。したがって、今回の経過からすれば、日本テレビ側が主張していた理由が内定取消しの要件を満たさないという心証を裁判所が抱いていた可能性があるといえます。そのため、裁判所が和解勧告も視野に協議を進め、早期解決を促したのです。

日本テレビ側は、笹崎さんの銀座でのホステス経験の報告がなかったことを虚偽報告として内定取消しの主な理由に挙げていました。女子アナウンサーにとって、世間のイメージが大切であることはいえても、そこから直ちに清楚さが要求されるわけではありません。そもそも清楚さということ自体も明確な定義ができない不透明な概念です。その意味では、女子アナウンサーは特別な資格などが要求されているわけではないので、今回のレベルでは内定取消しの要件は満たされないと裁判所が考えている可能性が高いといえます(内定取消しについて詳しくはこちらへ。)。

 

 

日本テレビ側の法的リスク

他方で、今回のスピード解決の背景には日本テレビ側の企業イメージ悪化はもちろん、法的なリスクを踏まえての判断だったといえます。

すなわち、今回の裁判が長期化すれば、入社予定日であった4月を過ぎてしまいます。この場合、内定取消しが無効であると判断されると、日本テレビ側に勤務できなかったことの責任があるということになるため、4月以降の賃金の支払いを命じられるリスクがあったのです。その他に別途、慰謝料という可能性もあります。

そこまでのリスクを負って、取消しを維持することに日本テレビ側も消極的になったということでしょう。

 

 

残る火種-配置転換などの新たな問題

発言者のイメージ画像和解が成立し、これでこの問題はいったん終結したことになります。しかし、笹崎さんは4月から日本テレビの従業員となります。フリーアナウンサーであれば、個別に出演契約をしていますが、テレビ局のアナウンサーですので、雇用契約です。

つまり、今後、日本テレビは就業規則など各種規則に則って、笹崎さんの人事を管理していくことになります。

そのため、入社後に配置転換などを行う可能性も十分にあり、改めて労務トラブルに発展する可能性があるということです。

したがって、日本テレビと笹崎さんとの間に労務トラブルが再燃するかもしれません。今後の日本テレビ側の対応が注目されます。

この問題については、こちらのコラムもあわせてご覧ください。

 

 


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