休憩時間でも労働時間と判断される場合とは|判例をもとに解説
休憩時間中でも労働者が使用者の指揮命令下にあると判断される場合は、労働時間とみなされる可能性があります。
長時間労働が原因と訴えた裁判では、裁判所が休憩時間に無線機を持たされ、労働を義務付けられていたとし、労働災害と認めました。
ここでは、休憩時間でも労働時間と判断される場合について判例をもとに解説していきます。
ぜひ参考になさってください。
東京地裁平成28年7月14日
脳内出血で後遺症が残った警備員の男性が、勤務先での長時間の労働が原因だと訴えた裁判で、東京地方裁判所が「休憩時間に無線機を持たされるなど労働を義務付けられていた」として、労働災害と認める判決を言い渡しました。
休憩時間の判断基準
休憩時間は、従業員が労働から完全に解放され、その時間を自由に使う(例えば、昼寝、買い物に行く、友人と電話する等)ことができる時間のことをいいます(労働基準法34条3項)。
労働時間の判断基準
労働基準法上の労働時間といえるかは、労働者が会社の指揮命令下に置かれている時間をいいます。
この労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が会社の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協定等のいかんにより決定されるものではありません。
休憩時間が「労働時間」とみなされる場合|判例で解説
今回の判決のケースでは、勤務先から「休憩時間」として定められていた時間に、勤務先や上司からの指示が入る「無線機」を持たされていたことが重視されています。
すなわち、この警備員は、無線機からの指示が入ればいつでも動く準備ができていたといえる以上、この警備員が「会社の指揮命令下」から開放された状態になかったと評価されたものと考えられます。
その他の例
《大阪地裁平成16年3月31日》
今回の裁判例と同じく警備会社の例ですが、休憩時間とされた時間が、原則として車中で連絡応答し、制服を着用し、仕事に使用する鞄を常に携行し、出動の支持があった場合には即座にこれに対応しなければならないという事情から、労働から解放される「休憩時間」とはいえないとして、賃金の支払対象時間とされたものがあります。
《大阪地裁昭和56年3月24日》
寿司屋の従業員が、「労働時間中、客が途切れたときに適宜休憩してもよい」とされた時間について、客が来店した際は即時に業務に従事しなければならないことから、休憩時間とは認められず労働時間とされた例もあります。
「休憩時間」が「労働時間」とされる不利益
会社として、「休憩時間」等の仕事をしていない時間が「労働時間」にあたるとすれば、労働者側からの残業代請求等の危険があるため、注意が必要です。
労働者から残業代請求訴訟が提起され、未払賃料が発生すると判断される場合、未払い金のほかに付加金の支払を命じられることがあります。
この付加金が命じられる場合、時間外労働等により会社が支払わなければならない金額の未払金と同一の金額の支払義務が生じることになりますので、企業にとっても大きな負担となります。
まとめ
上記の判例のように、会社側が休憩時間と思い込んでいたものが、実は労働時間に該当するケースといった事例は少なくありません。
本来の休憩時間が労働時間とみなされてしまった場合には、会社にとっては多額の未払賃金を支払うことになりますし、休憩を与えていなかったとして労働基準監督署から指導されることもあり得ます。
加えて、従業員が休憩時間を与えないブラックな会社と考え、優秀な社員でも退職してしまうことも考えられます。
休憩時間にあたるかどうか微妙なケースでは、労働基準法の理解や裁判例を正しく理解していなければなりませんので、労働問題に精通している弁護士に相談してアドバイスを受けるようにしてください。
