弁護士コラム

怠慢従業員への対応~業務中に私的メール・ネット利用をする従業員~

掲載日:2019年4月25日

業務のIT化

IT化が進む昨今、業務にパソコンを利用するのは当たり前の社会であり、皆様の会社でも当然のように従業員がパソコンを利用しているのではないでしょうか。

業務のIT化が進むことで、業務の効率化を図ることができ、従業員のITスキルの習熟度によっては特別な業務を任せることもあるかもしれません。

しかしながら、従業員の中には、私用のメールをしたりネットサーフィンをしたりする等、勤務時間中であるにもかかわらずパソコンを私的に利用していることがあります。

このような行為は、当該従業員の仕事の能率を下げるだけでなく、その他の従業員の士気を下げることになるため、会社としても何らかの対策が必要です。

 

 

事実の調査と従業員のプライバシー

私的利用について、外見上では従業員がパソコンを私的に利用しているのか業務で利用しているのか、明確に判別することは困難です。

そのため、勤務時間中のパソコンの私的利用が疑われる場合、会社としては事実関係の調査のため、従業員のパソコンを閲覧し、パソコンのアクセスログやメールの送受信履歴を確認する必要があります。

一方で、会社のパソコンとはいえ従業員が使用しているパソコンの閲覧をするため、従業員のプライバシー権との関係で、パソコンの履歴等の調査に関する就業規則の規定の整備やその周知徹底が必要になります。

 

 

 

就業規則等で定めていなかった場合の調査・処分は可能?

調査について

会社員 周知会社が、調査に関し明文の規定を設けていなくても、企業秩序を維持確保するため、違反者に対し懲戒処分を行うための事実関係の調査をすることはできるとされています。

ただし、その調査が企業の円滑な運営上必要かつ合理的なものであり、その方法や態様が労働者の人格や自由に対する行き過ぎた支配や拘束でないことを要し、調査の必要性を欠き調査の態様等が社会的に許容しうる限度を超えていると認められる場合には労働者の精神的自由を侵害した違法行為として、不法行為を構成しうるとされているため注意が必要です(東京地判H14.2.26参照)。

そのため、やはり事前に就業規則等で使用者の監視調査権限について明示する等して、従業員のプライバシー侵害等の主張がないようにしておくことが重要です。

 

処分について

就業規則等でパソコンの私的利用に関する定めをしていなかった場合でも、私的利用が社会通念上相当な限度を超えていれば、職務専念義務違反があるとして処分をすることは可能です。

 

しかしながら、就業規則等に特別の定めがない場合は、職務遂行の妨げとならず、会社に過度の経済的負担をかけないなど社会通念上相当と認められる限度で会社のパソコンを私的利用したとしても、職務専念義務に違反したとはいえないとされており(東京地判H15.9.22参照)、よほど酷い状況でなければ処分をすることは困難です。

 

 

 

会社がとるべき対応は?

就業規則にパソコンの私的利用に関する規定の整備

例えば、インターネットの私的利用を制限・禁止する服務の基本原則を定め、必要な場合には会社が従業員のパソコンのデータやインターネット利用履歴を閲覧できる旨の規定を定めておく必要もあるでしょう。

 

従業員教育

パソコンの私的利用は発覚しづらい問題であることから、就業規則を整備するだけでなく定期的に従業員教育を行うことも大切です。

 

懲戒処分

事前対策の甲斐なくパソコンを私的利用する従業員が現れた場合には、事実を調査の上、違反の程度に応じた懲戒処分を検討することになります。

経営者の皆様としては、パソコンの私的利用をするような怠慢従業員はできる限り解雇したいとお考えになるかと思いますが、違反の程度やメールの内容等の事情によっては解雇権の濫用とされ無効とされてしまう事例もあります。

そのため、従業員の懲戒処分を行う場合には、一律に厳しい処分を行うのではなく、私的利用の頻度や違反の程度等を検討した上で事案に即した処分を行う必要があるでしょう。

 

 

 


この記事を書いた人

弁護士 小野佳奈子