弁護士コラム

セクハラは予防こそが何よりも大切です。


セクシャル・ハラスメント(セクハラ)の予防

セクシャル・ハラスメント(いわゆるセクハラ)は予防こそが、何よりも大切です。

というのも、一度、会社でセクハラの被害が生じてしまうと、会社の責任を否定するのがなかなか困難だからです。

法的な理屈でいえば、男性従業員のAさんが女性従業員のBさんに行ったセクハラは、職務に関連して行われている限り、会社も損害賠償責任を負うことになります。

これは、民法715条に基づくものです。

民法715条は「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定しています。

この点、民法715条1項但書きは、
「ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りではない。」
と規定しているため、会社が職場におけるセクシャルハラスメント対策について、雇用管理上必要な措置を講じていれば、免責されるのではないかと思われます。

セクハラしかしながら、判例上、この使用者の免責については、極めて厳格に解釈されており、たとえ使用者が、職場におけるセクシャルハラスメント対策につき、雇用管理上必要な措置を適切に講じていたとしても、使用者が損害賠償責任を免れることは困難です。

もっとも、いわゆるセクハラ指針(「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」(平成18年10月11日厚生労働省告示615号))に従った雇用管理上の措置を十分に講じていれば、その損害賠償責任も制限される可能性は十分にあります。

したがって、以下、セクハラ指針に基づく雇用管理上講ずべき措置について説明します。

 

セクハラ指針に基づく雇用管理上講ずべき措置

六法全書まず、均等法11条1項は、
「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」
と定めています。

そして、前述のセクハラ指針は、10項目を具体的にあげていますので、ご紹介します。

1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

①職場におけるセクハラの内容、セクハラがあってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

②セクハラの行為者については、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること

2.相談(苦情含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

③相談窓口をあらかじめ定めること

④相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。また、広く相談に対応すること

※なお、セクハラは、マタハラ等その他ハラスメントと複合的に生じることも想定されることから、セクハラ相談窓口はマタハラ等相談窓口と一体的に設置し、一元的に相談に応じることができる体制が望ましい

3.職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

⑤事実関係を迅速かつ正確に確認すること

⑥事実関係が確認できた場合には、被害者に対する配慮のための措置を適切に行うこと

⑦事実確認ができた場合は、行為者に対する措置を適正に行うこと

⑧再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も同様)

1.から3.までの措置を併せて講ずべき措置

⑨相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること

⑩相談したこと、事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発すること

 

措置義務に違反するとどうなるか

では、この均等法11条1項の措置義務に違反するとどうなるのでしょうか?

措置義務違反は、以下のような公法上の効果があります。

1 厚生労働大臣の行政指導(均等法29条)
2 企業名公表(均等法30条)
3 都道府県労働局長による助言・指導・勧告(均等法17条)
4 機会均等調停会議による調停の対象(均等法18条)。

では、措置義務違反は、上記の公法上の効果以外に、損害賠償等の民事上の義務を基礎づけるのでしょうか?

事業主の措置義務違反については、公法上の義務であり、直ちに、私法上の損害賠償請求権を直接基礎づけるものではない、とされています。

もっとも、事業主の措置義務を斟酌して、使用者自身の不法行為責任を判断した裁判例もありますので、私法上の損害賠償請求権にも影響を与えると考えておくべきです。

以上、みてきたとおり、セクハラに対しては、事業主に均等法上の措置義務が、課されており、措置義務を果たしていない場合、損害賠償に影響を与えることが予想されます。

もっとも、措置義務を果たしたとしても、直ちに、民法上の使用者責任が免責されるわけではありませんので、セクハラに対しては予防が何より大切なのです。

セクハラの予防策として、当事務所は、ハラスメント問題に注力する弁護士が、社内研修等も行っています。

興味がある方は、ぜひ、一度、相談に来られてください。

 

 


この記事を書いた人

弁護士 竹下龍之介

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